おちゆく先に

目日

文字の大きさ
上 下
17 / 126

17話

しおりを挟む
 671年 春 ついにバルクド帝国とフェイシル王国の国境線に広がる広大な湿地にて両軍がにらみ合ったのである。

 両軍がにらみ合っている中央から東に数キルの草木が伸びたい放題になっている場所で、

 「あー、新調したブーツがびちゃびちゃだよ・・・」歩きながら悲し気に言うジグレイドに、
 「でも新しくしないと戦争までに壊れてたでしょ?仕方ないよ」
 サルシャがなんとか慰めようとしていると陽気な声で、
 「ハハハ、バルクドとの戦争は大体この湿地帯でするからな。気にしたら負けだぞ!それに雨なんか降ったらもっと酷いことになるぞ。早めに慣れておくんだな」モルドが言う
 「こんなものどうやって慣れるんですか、雨降っていなくてもこの状態なのに・・・雨降らないよう祈るしかありませんね」ため息を吐きながら肩を落とすジグレイド
 「そろそろ、俺たちの待機ポイントだ。もう少し頑張れ!」
 モルドに励まされつつ漸く少し空けていて程よく周りが見渡せるような丘になっている場所にたどり着いた。


 数日前 フェイシル王国側 本陣にて

 「報告します!深緑の森へ斥候に出た一個小隊帰還いたしました!」
 オウルーゼルとローレンが詰めている本陣のテントで兵士が報告をしていた。
 「深緑の森の中層まで探索しましたが、未だ敵兵の影はありません!」
 「ふむ、将軍どう思う?儂は今回、正面衝突の可能性が高いとみるが」
 「うーむ、私もオウルーゼル閣下の予想通りだとは思いますが、今しばらく様子を見るのが得策かと」
 今は会議中なので2人とも親しくはあるも肩書きで呼び合っている。

 「そうだな、では引き続き君の小隊は深緑の森にて哨戒任務を言い渡す。くれぐれも深層には近づくでないぞ。魔物に兵力を削られたくないのでな。それと夜には戻ってきてよいぞ」
 兵士に命令を出し再び戦略を話し合う。

 その後も続々と斥候部隊が帰還して報告を済ませるとついに最初の布陣が決まるのであった。


 バルクド帝国軍は湿地帯の中央に陣地を張っているのに対し、フェイシル王国は撤退しやすい様にカザフ要塞から3キル程離れた湿地帯の端に陣地を張っていた。

 フェイシル王国側 本陣のテントにて今回の総指揮官のオウルーゼル公爵閣下がまず話し出した。

 「おそらくは例年同様にログ将軍を前面に押し出しての突貫戦術を仕掛けてくるであろう。そのため奴らが突撃してきたのちに左右両方に一個中隊を配置した部隊を前に出し、中央は湾曲型に横に広がりうまく誘い込み3方向から弓による同時攻撃を行う。もし敵が左右どちらかを狙うとしても狙われた部隊は緩やかに後退し他が敵に向かい前進、常に囲い込むようにして飽和攻撃を行う。この際注意してほしいことは誘い込みすぎないことだ!相手はあの“剛鬼”ログ将軍だからな。弓矢なんか無視して突撃してくるであろう。恐らくログ将軍の部隊の突撃は止められないであろう、であるため主に後続を重点的に狙う。もし敵軍が撤退したとしても深追いはせぬように。なにか質問は?」

 「夜はどうするんだい?夜襲の警戒要員を残しておいた方がいいのではないかい?」
 発言したのは組合員で傭兵専門に活動しているベテランの傭兵であった。

 「予測でしか言えないが夜襲はないだろう。湿地帯での奇襲は非常に困難だ。だが可能性はあるため、夜襲の警戒は各ポイントに組合員を割り振って行ってもらいたい」

 他にも質問が出たがすべてに答えてその日の会議は終わった。

 そして数日後に戦端は開かれた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

一人だけ竜が宿っていた説。~異世界召喚されてすぐに逃げました~

十本スイ
ファンタジー
ある日、異世界に召喚された主人公――大森星馬は、自身の中に何かが宿っていることに気づく。驚くことにその正体は神とも呼ばれた竜だった。そのせいか絶大な力を持つことになった星馬は、召喚した者たちに好き勝手に使われるのが嫌で、自由を求めて一人その場から逃げたのである。そうして異世界を満喫しようと、自分に憑依した竜と楽しく会話しつつ旅をする。しかし世の中は乱世を迎えており、星馬も徐々に巻き込まれていくが……。

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

黒豚辺境伯令息の婚約者

ツノゼミ
ファンタジー
デイビッド・デュロックは自他ともに認める醜男。 ついたあだ名は“黒豚”で、王都中の貴族子女に嫌われていた。 そんな彼がある日しぶしぶ参加した夜会にて、王族の理不尽な断崖劇に巻き込まれ、ひとりの令嬢と婚約することになってしまう。 始めは同情から保護するだけのつもりが、いつの間にか令嬢にも慕われ始め… ゆるゆるなファンタジー設定のお話を書きました。 誤字脱字お許しください。

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください

シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。 国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。 溺愛する女性がいるとの噂も! それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。 それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから! そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー 最後まで書きあがっていますので、随時更新します。 表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。

隠れ居酒屋・越境庵~異世界転移した頑固料理人の物語~

呑兵衛和尚
ファンタジー
調理師・宇堂優也。 彼は、交通事故に巻き込まれて異世界へと旅立った。 彼が異世界に向かった理由、それは『運命の女神の干渉外で起きた事故』に巻き込まれたから。 神々でも判らない事故に巻き込まれ、死亡したという事で、優也は『異世界で第二の人生』を送ることが許された。 そして、仕事にまつわるいくつかのチート能力を得た優也は、異世界でも天職である料理に身をやつすことになるのだが。 始めてみる食材、初めて味わう異世界の味。 そこは、優也にとっては、まさに天国ともいえる世界であった。 そして様々な食材や人々と出会い、この異世界でのライフスタイルを謳歌し始めるのであった。

【悲報】人気ゲーム配信者、身に覚えのない大炎上で引退。~新たに探索者となり、ダンジョン配信して最速で成り上がります~

椿紅颯
ファンタジー
目標である登録者3万人の夢を叶えた葭谷和昌こと活動名【カズマ】。 しかし次の日、身に覚えのない大炎上を経験してしまい、SNSと活動アカウントが大量の通報の後に削除されてしまう。 タイミング良くアルバイトもやめてしまい、完全に収入が途絶えてしまったことから探索者になることを決める。 数日間が経過し、とある都市伝説を友人から聞いて実践することに。 すると、聞いていた内容とは異なるものの、レアドロップ&レアスキルを手に入れてしまう! 手に入れたものを活かすため、一度は去った配信業界へと戻ることを決める。 そんな矢先、ダンジョンで狩りをしていると少女達の危機的状況を助け、しかも一部始終が配信されていてバズってしまう。 無名にまで落ちてしまったが、一躍時の人となり、その少女らとパーティを組むことになった。 和昌は次々と偉業を成し遂げ、底辺から最速で成り上がっていく。

処理中です...