おちゆく先に

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8話

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 振り返った先には、少しパーマ気味の紫色の髪を肩当たりで切り揃えた前髪ぱっつんの可愛い子であった。
 「えーっと・・・サルシャだよね?」
 たぶん正解のはずなのだが、サルシャはなぜかむくれていた。
 「ジグ君もしかしてボクのこと忘れてたの?」
 「い、いや!忘れてなんかないよ!ほ、ほら!サルシャも随分背が伸びたし、すっかり大人びていたから自信がちょっとなくて・・・」必死の弁明である。
 「ふーん、まあそういうことにして許してあげるよ」
 「ありがとう?」
 なぜに上から?とか思ったが口にはしなかった。女性には逆らわないのが賢い生き方なのだ!情けなくなんかないんだからな!

 久しぶりのサルシャとの再会なので、今日はお互い依頼はやめにして別れてからのことを話すことにした。

 主に食品を売り買いしている通りにある少し小洒落た店に来ていた。
 「ここがボクのおすすめの食堂だよ。個室もあるんだよ。利用したことはないけどね」そう言って俺の腕を引っ張りながら店に入っていくサルシャ。

 「いらっしゃいませー、あら?あらら?あのサルシャちゃんにも漸く春到来かなー?」
 にやにやしながら出迎えてくれたのがこの店で働いている服の上からでもわかるくらいの巨乳の女の子だ。
 「ちょ、ちょっと!何言ってるの!?そんなんじゃないって!」
 必死に弁明してるサルシャを見て少し悲しくなる・・・確かにイケメンとは言い難いがブサイクではないはずだ!絶対違うはずだ!俺はそう信じたい!・・・一層悲しくなってきた、考えるのをやめよう。
 ジグレイドは後ろにいたため気づいていないがサルシャの顔は真っ赤であった。
 「と、とりあえず今日は個室の席に案内してよ!」
 強引に話を切り替えて落ち着こうとするサルシャ。

 席に案内してもらい「注文はこれから選んでねー」といいつつ手をひらひらさせながらサルシャの知り合いは立ち去ってしまった。
 「なかなか個性的な子だね」と苦笑交じりに言うと、
 「いつもはもっと大人しい子なんだけどな、今日はなんかいいことでもあったのかもね。それで!ジグ君いつ王都に来たの?それにいままで何してたの?いきなり孤児院から飛び出したりして」
 いきなりの話題転換に驚きつつ、ぽつぽつと話し始めた。

 「王都には2年前かな?」
 「あちゃー、ちょうどボクが師匠と修行の旅に出た頃だよ・・・」
 落ち込むサルシャをよそに孤児院の話を始めた。

 「孤児院にはね、個人的にいたくなかったんだ・・・あそこはいい思い出なんか一つもない酷いところだったからね」

 ジグレイドが9歳から12歳までいた孤児院は行く当てのない子供たちに日常的に虐待を行っていたのだ。
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