おちゆく先に

目日

文字の大きさ
上 下
7 / 126

7話

しおりを挟む
 670年 秋 ジグレイドはフェイシル王国の王都ムルスにいた。

 2年前に武器と防具を揃え、本格的に冒険者もしくは傭兵として活動をするため王都に移動したのである。
 
“カラーン”心地よいベルの音がする扉を開けジグレイドは馴染みのある天秤の看板がある組合に入っていき、
 「ふう、依頼完了の確認と、買い取りお願いします」
 そう言ってジグレイドは空いているカウンターに魔物の素材を置いた。
 「あら、ジグちゃんいらっしゃい。これの査定でいいのかしらん?」
 そう言ったのは身長190は軽くあるだろう大男でひらひらした服の上からでも筋肉が隆起しているのがわかるほどごついおっさん・・・そう、なぜかこのごつい大男は女口調?で女性物の服を着ている。所謂、オカマである。
 「きゃ、キャサリンさんこんばんは」未だに慣れない見た目にどもりながらも挨拶する。
 「うふふ、ジグちゃんのために手早く査定するわねん」
 キャサリンはジグレイドが置いた重そうな袋を軽々と持ち上げ奥に引っ込んでいった。

 組合で依頼の完了報告と素材の売却が終わりジグレイドは大通りを通って宿に帰っていると、前方がなにやら騒がしくなっていた。
 やめとけばいいのに好奇心に負け様子を見に騒ぎの元に足を進めてしまった。

 「まてやこらー!」
 なにやら追いかけっこをしているようだ、などと悠長に思いながら前から走って逃げている人を一目見ようと人をかき分け前に出る、すると逃亡者である少し風変りな少女はフードを被っていたのに目が合った・・・いや、合ってしまった。

 “キラーン”うん、音をつけるならこんな感じの目だったね・・・ほんとうに現実逃避したくなる。
 「はあー、俺さっきの女と全く関係ないんだけど・・・」
 「ふざけんな!さっきのガキと親しく喋ってたじゃねーか!」
 刃物を突き付けながら俺に向かって言ってくる。
 なぜこんなことになったのか・・・そう、少女と目が合ってしまっていきなり少女が
 「あー!お兄ちゃん助けてよおー!襲われそうになってるのおー!」
 極めつけは、
 「んじゃあまたあとでねえー 家で待ってるよおー!」
 無駄に語尾を伸ばした口調でそんなことをほざいて俺をチンピラ風の男たちに向かって押し出し、そのまま少女は走り去っていったのだ!
 この間、俺は一言も喋っていない・・・だからさっきチンピラ風の男たちに親しく喋っていた!とか言われても知らないのである。
 この数秒の出来事で何度ここに来てしまったことを後悔しているのだろうか・・・はあー。

 結果・・・王都の警備兵が駆けつけてきて長々と事情を聴かれ、周りで見ていた人たちが弁明してくれたおかげで何も不利益は被らなかったが・・・ものすごく疲れた。今度会ったら拳骨くらいしても許されるだろう、そんなことを考えながらとぼとぼと歩き宿に帰って、夕食も食べずに眠った。

 数日後、朝食を済ませいつも通り組合に向かい依頼を探していると、
 「ジグ君!久しぶりだね!」
 誰だろうと思い振り返ると・・・。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界就職!?

pさん
ファンタジー
再就職の為にハロワに通っていた 柏手 三木(33) なかなか見つからない就職先に焦りを抱いていたある日、自宅のアパートに1通の白い封筒が届いて… ここからミツキとしての新しい人生が始まる!!

前世で辛い思いをしたので、神様が謝罪に来ました

初昔 茶ノ介
ファンタジー
日本でブラック企業に勤めるOL、咲は苦難の人生だった。 幼少の頃からの親のDV、クラスメイトからのイジメ、会社でも上司からのパワハラにセクハラ、同僚からのイジメなど、とうとう心に限界が迫っていた。 そしていつものように残業終わりの大雨の夜。 アパートへの帰り道、落雷に撃たれ死んでしまった。 自身の人生にいいことなどなかったと思っていると、目の前に神と名乗る男が現れて……。 辛い人生を送ったOLの2度目の人生、幸せへまっしぐら! ーーーーーーーーーーーーーーーーー のんびり書いていきますので、よかったら楽しんでください。

いい子ちゃんなんて嫌いだわ

F.conoe
ファンタジー
異世界召喚され、聖女として厚遇されたが 聖女じゃなかったと手のひら返しをされた。 おまけだと思われていたあの子が聖女だという。いい子で優しい聖女さま。 どうしてあなたは、もっと早く名乗らなかったの。 それが優しさだと思ったの?

虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。 Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。 最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!? ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。 はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切) 1話約1000文字です 01章――バトル無し・下準備回 02章――冒険の始まり・死に続ける 03章――『超越者』・騎士の国へ 04章――森の守護獣・イベント参加 05章――ダンジョン・未知との遭遇 06章──仙人の街・帝国の進撃 07章──強さを求めて・錬金の王 08章──魔族の侵略・魔王との邂逅 09章──匠天の証明・眠る機械龍 10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女 11章──アンヤク・封じられし人形 12章──獣人の都・蔓延る闘争 13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者 14章──天の集い・北の果て 15章──刀の王様・眠れる妖精 16章──腕輪祭り・悪鬼騒動 17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕 18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王 19章──剋服の試練・ギルド問題 20章──五州騒動・迷宮イベント 21章──VS戦乙女・就職活動 22章──休日開放・家族冒険 23章──千■万■・■■の主(予定) タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。

ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら

七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中! ※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります! 気付いたら異世界に転生していた主人公。 赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。 「ポーションが不味すぎる」 必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」 と考え、試行錯誤をしていく…

当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!

犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。 そして夢をみた。 日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。 その顔を見て目が覚めた。 なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。 数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。 幼少期、最初はツラい状況が続きます。 作者都合のゆるふわご都合設定です。 1日1話更新目指してます。 エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。 お楽しみ頂けたら幸いです。 *************** 2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます! 100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!! 2024年9月9日  お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます! 200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!! 2025年1月6日  お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております! ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします!

スキル調味料は意外と使える

トロ猫
ファンタジー
2024.7.22頃 二巻出荷予定 2023.11.22 一巻刊行 八代律(やしろ りつ)は、普通の会社員。 ある日、女子大生と乗ったマンションのエレベーター事故で死んでしまう。 気がついたら、真っ白な空間。目の前には古い不親切なタッチパネル。 どうやら俺は転生するようだ。 第二の人生、剣聖でチートライフ予定が、タッチパネル不具合で剣聖ではなく隣の『調味料』を選んでしまう。 おい、嘘だろ! 選び直させてくれ!

黒豚辺境伯令息の婚約者

ツノゼミ
ファンタジー
デイビッド・デュロックは自他ともに認める醜男。 ついたあだ名は“黒豚”で、王都中の貴族子女に嫌われていた。 そんな彼がある日しぶしぶ参加した夜会にて、王族の理不尽な断崖劇に巻き込まれ、ひとりの令嬢と婚約することになってしまう。 始めは同情から保護するだけのつもりが、いつの間にか令嬢にも慕われ始め… ゆるゆるなファンタジー設定のお話を書きました。 誤字脱字お許しください。

処理中です...