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669年 春 フェイシル王国 王都【ムルス】にある王城のとある部屋にて
「それで将軍、ノストフェルス公爵軍の被害はどの程度だ?」
「北より攻め入ってきたバルクド帝国軍の一個中隊を深緑も森の浅層にて撃退するも、公爵軍は疲弊した戦闘後に森の魔物により壊滅。生き残りは約300のうち数十とのことですが、公爵閣下自身は幸い軽傷とのこと」
「ふむ、深緑の森の魔物は血の臭いに敏感だからな 侵攻してきたバルクドの阿呆共だけを襲えばよかったものを!無駄に被害が増えるではないか!・・・それで森以外の国境線はどうだ?」
「深緑の森以外からは未だバルクド帝国軍は見当たらないそうです あまり信じたくないですがおそらくはまた発見が困難な深緑の森へ先に侵攻させ挟撃を狙っていたものかと」
「ふむ、本当にそんな短慮な作戦なのか・・・?」
そう相槌をうつと国王は小さくため息を吐いた。
今、この会議室に集まっているのは 国王ウルスマグア・フォン・フェイシル 大臣ウォルマ・パーシル 将軍ローレン・マーガイア そして魔法師団団長カリーナ・メルベスである。
「あのバルクドの能無しどもは春になると動き出す虫と同じですな 一昨年の春にも深緑の森に侵入して森の魔物から痛い目に遭っていたではないか」
なかなかな毒舌を吐いているのが小太りの大臣ウォルマである。
「・・・害虫駆除なら私が焼き尽くそうか?」
ウォルマの毒舌に冗談に聞こえない過激な発言で合わせてきたのが水色の髪をボブにした小柄の魔法師団長カリーナである。
そんな過激発言をしている2人を眺め残りの2人がため息を吐いた。
大陸中央に位置するバルクド帝国が南部のフェイシル王国に侵攻してくるのはここ数年の話ではない。
バルクド帝国の皇帝が変わってからというものの数年に1回、酷いときは何回も侵攻してくるようになった。
しかもわかりやすすぎる作戦で侵攻してくるため、なにか裏があるのではないか?とはじめは疑っていたが、いくら隠密や密偵を放ち情報を集めても帝国が何を考えているかわからず、もうただの短慮で済ますことにしたのだ。
「・・・とりあえず!また無駄だと思うがバルクド帝国に抗議文を送りつける!国境線はこれまで通り砦の壁の増設を急がせるのだ!」
国王がそう言い放つと、今日の会議がお開きとなった。
669年 春 バルクド帝国 帝都【マグギル】にある宮廷のとある部屋にて
「この能無しどもがぁ!またノストフェルスのくそどもに追い返されたのか!いい加減にしやがれ!なぜ我の命令通り隠密行動ができんのだ!」
頭の血管が切れそうなくらい怒声を発しているのは金髪の肥え太った豚とさし違いのない姿のバルクド帝国の皇帝アルザーン・ド・バルクドである。
「申し訳ございません なにぶん深緑の森にて主に奴隷が大半ですが魔物と思われるものに多大な被害を受けたらしく、その後のノストフェルス軍にまで十分な余力を残せなかったようで・・・」
この罵声を浴びている人はこの国の将軍ログ・ハイローであるのだが、この後数時間将軍は皇帝の罵声を浴び続ける。
将軍は戦場に出ればその巨漢とそれに見合った剛腕から繰り出される大剣を振り回す一騎当千の猛者であるが少し?頭の方が弱いため戦略とかを考えられない非常に残念な人なのである。
なぜこのような人が将軍をしているのかというと、ただアルザーンが自分の命令に口を出さない将軍が欲しかったためである。
もちろん将軍だけでなく重要な役職はこの呆れた理由で選ばれているため、帝国にはもう未来はないと見切りをつけた優秀な人たちは他国に亡命してしまっている。
642年に18歳でアルザーンが皇帝に即位してからバルクド帝国は大国故にゆっくりと崩壊道を歩んでいるのだった。
「それで将軍、ノストフェルス公爵軍の被害はどの程度だ?」
「北より攻め入ってきたバルクド帝国軍の一個中隊を深緑も森の浅層にて撃退するも、公爵軍は疲弊した戦闘後に森の魔物により壊滅。生き残りは約300のうち数十とのことですが、公爵閣下自身は幸い軽傷とのこと」
「ふむ、深緑の森の魔物は血の臭いに敏感だからな 侵攻してきたバルクドの阿呆共だけを襲えばよかったものを!無駄に被害が増えるではないか!・・・それで森以外の国境線はどうだ?」
「深緑の森以外からは未だバルクド帝国軍は見当たらないそうです あまり信じたくないですがおそらくはまた発見が困難な深緑の森へ先に侵攻させ挟撃を狙っていたものかと」
「ふむ、本当にそんな短慮な作戦なのか・・・?」
そう相槌をうつと国王は小さくため息を吐いた。
今、この会議室に集まっているのは 国王ウルスマグア・フォン・フェイシル 大臣ウォルマ・パーシル 将軍ローレン・マーガイア そして魔法師団団長カリーナ・メルベスである。
「あのバルクドの能無しどもは春になると動き出す虫と同じですな 一昨年の春にも深緑の森に侵入して森の魔物から痛い目に遭っていたではないか」
なかなかな毒舌を吐いているのが小太りの大臣ウォルマである。
「・・・害虫駆除なら私が焼き尽くそうか?」
ウォルマの毒舌に冗談に聞こえない過激な発言で合わせてきたのが水色の髪をボブにした小柄の魔法師団長カリーナである。
そんな過激発言をしている2人を眺め残りの2人がため息を吐いた。
大陸中央に位置するバルクド帝国が南部のフェイシル王国に侵攻してくるのはここ数年の話ではない。
バルクド帝国の皇帝が変わってからというものの数年に1回、酷いときは何回も侵攻してくるようになった。
しかもわかりやすすぎる作戦で侵攻してくるため、なにか裏があるのではないか?とはじめは疑っていたが、いくら隠密や密偵を放ち情報を集めても帝国が何を考えているかわからず、もうただの短慮で済ますことにしたのだ。
「・・・とりあえず!また無駄だと思うがバルクド帝国に抗議文を送りつける!国境線はこれまで通り砦の壁の増設を急がせるのだ!」
国王がそう言い放つと、今日の会議がお開きとなった。
669年 春 バルクド帝国 帝都【マグギル】にある宮廷のとある部屋にて
「この能無しどもがぁ!またノストフェルスのくそどもに追い返されたのか!いい加減にしやがれ!なぜ我の命令通り隠密行動ができんのだ!」
頭の血管が切れそうなくらい怒声を発しているのは金髪の肥え太った豚とさし違いのない姿のバルクド帝国の皇帝アルザーン・ド・バルクドである。
「申し訳ございません なにぶん深緑の森にて主に奴隷が大半ですが魔物と思われるものに多大な被害を受けたらしく、その後のノストフェルス軍にまで十分な余力を残せなかったようで・・・」
この罵声を浴びている人はこの国の将軍ログ・ハイローであるのだが、この後数時間将軍は皇帝の罵声を浴び続ける。
将軍は戦場に出ればその巨漢とそれに見合った剛腕から繰り出される大剣を振り回す一騎当千の猛者であるが少し?頭の方が弱いため戦略とかを考えられない非常に残念な人なのである。
なぜこのような人が将軍をしているのかというと、ただアルザーンが自分の命令に口を出さない将軍が欲しかったためである。
もちろん将軍だけでなく重要な役職はこの呆れた理由で選ばれているため、帝国にはもう未来はないと見切りをつけた優秀な人たちは他国に亡命してしまっている。
642年に18歳でアルザーンが皇帝に即位してからバルクド帝国は大国故にゆっくりと崩壊道を歩んでいるのだった。
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