おちゆく先に

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5話

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 翌日、朝から組合には寄らずに外へ出るために大通りを歩いて門に向かう、行き先は草原だ。
 メイルの周りにある草原は草木があまり高くなく滅多に奇襲されることがないため、初心者にとっては大切な狩場である。

 朝早いこともあってか門にはそれ程列はできてなくすんなり外に出ることができた。
 それから暫く警戒しながら数キル程歩いていると茶色い毛皮で頭頂部に立派な緑色のトサカをもつ1匹の魔物が草むらから飛び出てきた。完全に色の違うニワトリである。
 「うお!」
 いきなり飛び出てきた鳥の魔物に驚き尻もちをついてしまった。そんな俺を馬鹿にしているのか、
 「クケェエエ!」
 と一鳴きしてから鳥の魔物はここぞとばかりに嘴でつつこうとしてきた。そのため、なかなか立ち上がれない。
 「くっそ!」
 ジグレイドは焦りながらも鳥の魔物がつつこうと首を後ろに引いたときに手に持っていた槍で牽制(振り回しただけ)した。
 「おらっ!」
 “ザシュ”控えめな音がしたので鳥の魔物を見てみると、運よく鳥の魔物の顔に短槍が掠っていた。

 この鳥の魔物は主に初心者が狩る魔物でありほとんど動物と変わらないため短槍で少し傷つけただけですぐに逃げていってしまった。
 鳥の魔物のあまりの逃げっぷりに唖然とするが、すぐ我に返り、
 「あー、情けない!」
 あまりの無様さに手に持っていた短槍を地面に叩きつけたくなるがすんでのところで我慢した。
 武器は大切にしろって武器屋のおっさんに言われたしな。内心は未だにイライラしていたが逃がしてしまったのはしょうがないと無理やり考え気持ちを入れ替えるが、もう魔物狩りって気分ではなくなってしまっていたため街に帰ることにした。

 こうしてジグレイドの初戦闘は苦い形で終わった。
 
 魔物は動物と違って体内に魔力を持っており、その魔力量によって強さが違う生き物である。弱い魔物だと子供でも倒すことができるが、長年生きた強い魔物は一国の軍でも簡単に蹂躙できる強さをもつと云われている。

 ジグレイドはこの1年ひたすらメイル近郊の森や草原で薬草採取ばかりをしていた。うまく採取すれば初心者にとってはいい稼ぎになるためである。
 ジグレイド自身は採取に出た際、たまに出る魔物を相手に倒してはいたが、あまり強くはなっていないと思い込んでいた。
 だが薬草を採取しつつ魔物とも戦うという普通はパーティーで分担することを1人でこなしていたため気配察知や身体能力が大幅に上がっていた。

 「ジグ君また薬草採取?」
 少しだけ呆れた感じをだしつつそう聞いてきたのは組合の受付嬢のお姉さんことミルファ・ロッフェンさんだ。この1年でなんとか名前を聞き出せたのだ。人付き合いの苦手な俺からしたらかなり進歩したはずだ。
 それにこの1年で色々変わった。まず武器が鉄製になったのだ。そのお値段、銀貨50枚!実に高い。
 そのせいか未だに銅貨3枚のボロ宿に泊まっている。
 身長も伸びた160くらいあるんじゃなかろうか。1日2食ちゃんと食べれば身長も伸びるよな。
 俺は身長が伸びたけど未だに短槍を使っている。意外と短槍って森の中でも振り回せるし使いやすいんだ。
 おっと、そろそろ回想をやめねば!ミルファさんがジト目で睨んでいらっしゃる・・・。
 「そうですよ、でもそろそろ薬草採取メインは終わりですかね。目標金額貯まったので」
 「やっと貯まったのですね。これで組合員らしい姿になり、魔物との戦闘で怪我しにくくなりますね」
 ミルファさんは安堵しながらそう言ってくれる。俺はこの1年で少なからず重症ではないが怪我を負っていたため、ミルファさんに防具を揃えないと一流になる前に怪我で引退する羽目になりますよ。と助言を受けていたのだった。

 早速防具を買いにいく。今回買うのは皮の防具と盾である。
 防具屋ではつまみ出されるといった出来事もなく皮の防具と盾を買うことができた。
 防具の方は【クック】という魔物の皮を使ったものだ。クックというのは主に草原に生息している鳥の魔物だ。そう!あの忌々しい鳥の魔物である。この1年の間にちゃんとリベンジは果たしてはいるのだが、やはり憎いことは憎いのだ。
 そして盾の方はラウンドシールドといって直径40くらいの丸い盾だ。いろいろな形の盾を持ってみたが1番しっくりきたのがこの鉄の丸盾だった。これも鉄製!お金に余裕があるって素晴らしい!
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