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【第3部】祐策編
23.夢のなかで
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「祐策さん、祐策さん」
「ん……んん……」
身体を軽く揺さぶられているのを感じた。
「まほこ……なに……? もう時間……?」
むぐむぐと口を動かし、薄く目を開く。
「もうっ……寝ちゃうなんてひどいよ」
「え……?」
休んでてって言ったのは真穂子だろ、と寝ぼけ眼のまま言い返そうとしたが、妙に身体が疼き、そう思うと快感が押し寄せてきた。
(なんだ……?)
下半身が特に疼いている。
(気持ちいい……まるでセックスしてるみたいな……)
ゆっくり目を開け、状況を把握し、驚きを隠せなかった。
「な!? え!?」
真穂子が自分の上で揺れているのだ。
ギシギシと狭いベッドが音を鳴らし、真穂子が細い身体を揺らしている。祐策とはつながっていて、その結合部はしっかりとはまっていた。
「ちょっ……なっ……なんで……」
「なんでって……」
真穂子が顔を近づけ、至近距離まで迫ってきた。
「今日は大仕事だったから、わたしがシてあげるって言ったでしょ?」
「そうだっけ……」
彼女から言ってきたのだろうか……祐策は覚えていない。
「祐策さんがしたいって言ったんだよ? なのに寝ちゃうなんて」
(やっぱり俺が誘ったのか)
真穂子から迫ってくることなどない、そんなことだろうと思った。
(セックスしながら転た寝って……俺、思いのほか疲れたのかな)
「ごめん」
「いいよ、別に。気持ちいいって思ってくれてるなら」
「うん、気持ちいい」
じゃあ続けるね、と真穂子は笑ってキスを落とした。
いつもは祐策が攻めるほうなのに、今日の真穂子は大胆な気がした。
祐策の腹に手を乗せ、時々上を仰ぎながら腰を振る。つながった部分がきゅうきゅうと締め付けられ、快感は増していく。
(腰使い、巧くなったんじゃない……?)
快感に酔いしれるのはいいが、自分の手には感触がない。真穂子の身体を撫でた記憶がないのだ。つながる前には充分なくらい真穂子を愛撫するはずなのに、なぜだろう、手にその感触がない気がした。
そう思っているうちに真穂子の揺れが強くなってゆく。
「やば……」
(あ、待った、ゴムつけたか!?)
記憶がなさすぎる。
気がついたら真穂子が跨がっていた。
「ちょっと……待って……ゴム……」
このままではまずい、この体勢で果ててしまったらまずい、せめて自分が上だったらなんとか出来るのだが。
「体勢変えよう……」
「ダーメ」
「なんで……このままじゃナカに……」
「いいよ」
「……ダメだって……」
理性は残っていないが、辛うじて良し悪しを判断する気力が自分の中にあるようだ。なんとか口をついて出てきた。
「どうして?」
「子供出来たら……どうすんだよ……」
真穂子の動きが緩慢になり、また至近距離にまで顔を近づけてきた。
「嫌?」
「嫌じゃない、けどダメだろ……。今じゃない、結婚してないのに……」
「お父さんだって、いいって言ってたでしょ」
「それでもいいっていう譲歩だろ。ダメだ……子供はまだ先。計画的に、だ……」
「意地悪」
そう言って真穂子はまた動き出した。
「ちょっ……やめ……だめだって……」
今日の真穂子はおかしい。
セックスの最中に喋ることは少ないのに、今日はやけに饒舌だ。そして積極的だ。彼女には悪いが、今日は腰使いが巧く感じるが、それもなんとなく妙な気がしている。そんなにすぐに巧くなるものなのだろうか。なんだか変だと祐策は思った。
まあ、こんな真穂子もいいけれど……どうして今日なんだろう。
動きが早くなるにつれて、まずい止めなければ、という気持ちが前面に出てくる。
「マジでヤバいから……頼む、止めてくれ」
「嫌だ」
「頼む……イキそ……」
「いいよ……」
「よくな……い……」
絶頂を迎えようとしているのを感じ、祐策は真穂子の手首を掴んで、強く握った。
「ダメだ!」
手を引いて、彼女の身体を引き寄せた。
「祐策さん、祐策さん……」
「ん……」
ゆっくり目を開くと、真穂子が覗き込んでいた。
「!?」
心配そうな表情で祐策を見下ろしている。
「大丈夫? うなされてたみたいだけど。もしかして、具合、悪かった?」
「え……」
真穂子は服を着ている。
真穂子の実家に行った時のワンピース姿のままだ。
(あれ……)
思わずブランケットの下の自分の腕や腹を探る。自分もスウェットにTシャツ姿だった。身体を少し起こし、思わず下半身に視線をやった。なんとなく疼いている気はするが、欲を吐き出してしまった感覚はなかった。
(汚してない……よかった……)
どうやら夢を見ていたようだ。
(夢精してなくてよかった……)
「気分悪い?」
真穂子は心配そうに見つめている。
「あ、いや、大丈夫だ」
「うなされてたよ?」
「そうか……」
「大丈夫だ」
うなされていた、というのは、きっと夢の中で祐策が真穂子を制止しようとしていた時のことだろう。まさか性的な夢を見ていたなどとは言えない。
(夢だから……)
おかしいと思ったのだ。やはり真穂子はあんなに積極的に攻めてくることはないのだ。行為の最中にあまり口を開かない彼女であるし。
(俺の願望……なのかな……深層心理じゃ、真穂子にしてもらいたいってのがあるのかな)
悪いことではないだろうけれど。
先程、真穂子のほうからキスをしてくれたことが引き金になったのかもしれない。
ふと自分のあの場所が反応していることに気づき、
(やべ……)
真穂子が気づかれないように少し動いた。
ベッドから降りるには、もう少しおさまってからにしたいのが本音だった。
「晩御飯、食べられる?」
「あ……うん、食べたい。もうそんな時間か……。結構寝てたんだな」
「そうだね。ぐっすり寝てたみたいだよ。疲れたんだね」
「疲れたってことはないはずなんだけど」
ふふっ、と真穂子が笑った。
ローテーブルに視線をやると、真穂子の作ってくれた食事が並べられている。美味そうな香りが鼻腔をくすぐった。
「ちょっと、もう少ししたら座るから」
「?」
真穂子は不思議そうに祐策を見た。
「ごめん、今、ちょっと立ち上がれなくて」
「大丈夫……? やっぱり具合良くない?」
彼女は気づいていないようで、素直に心配をしてくれていた。
「いや、具合は悪くないから」
「そう……?」
「マジで、ごめんだけど」
「わかった」
彼女は頷いてくれたが、まだ心配げな様子だ。
真穂子がこちらに背を向けてくれない限り、動けない。
「あのさ……」
「うん」
「ちょっと、今……勃っちまってて……」
言いづらいが祐策は観念して口を開いた。
「…………え!」
真穂子は素っ頓狂な声を出して驚いてくれた。
無理もない話だとは思った。
「ほんと、下品でゴメン」
悄気て詫びたが、真穂子も申し訳なさそうな表情を見せた。
「だから、ちょっと動けない、ごめん」
「そ、そうなんだ、ごめんね。じゃ、じゃあ、落ち着いてからで」
真穂子はそそくさと背を向け、キッチンへ向かった。
祐策が正直に言っただけで赤面する彼女は、やはり夢の中のようなことはしないだろう。
(ふう……)
情けない話だ。
なぜそうなったか、追求されなくてよかったと思う祐策だ。
恋人とはいえ、夢の中で彼女と性行為に耽り、しかも現実とは違う大胆で積極的な彼女を作り上げていた。軽蔑されかねない夢だ。
(でも……悪くはなかった、かな)
何はともあれ果てなくてよかった、と心底思ったのだった。
(欲求不満かよ……)
「ん……んん……」
身体を軽く揺さぶられているのを感じた。
「まほこ……なに……? もう時間……?」
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「もうっ……寝ちゃうなんてひどいよ」
「え……?」
休んでてって言ったのは真穂子だろ、と寝ぼけ眼のまま言い返そうとしたが、妙に身体が疼き、そう思うと快感が押し寄せてきた。
(なんだ……?)
下半身が特に疼いている。
(気持ちいい……まるでセックスしてるみたいな……)
ゆっくり目を開け、状況を把握し、驚きを隠せなかった。
「な!? え!?」
真穂子が自分の上で揺れているのだ。
ギシギシと狭いベッドが音を鳴らし、真穂子が細い身体を揺らしている。祐策とはつながっていて、その結合部はしっかりとはまっていた。
「ちょっ……なっ……なんで……」
「なんでって……」
真穂子が顔を近づけ、至近距離まで迫ってきた。
「今日は大仕事だったから、わたしがシてあげるって言ったでしょ?」
「そうだっけ……」
彼女から言ってきたのだろうか……祐策は覚えていない。
「祐策さんがしたいって言ったんだよ? なのに寝ちゃうなんて」
(やっぱり俺が誘ったのか)
真穂子から迫ってくることなどない、そんなことだろうと思った。
(セックスしながら転た寝って……俺、思いのほか疲れたのかな)
「ごめん」
「いいよ、別に。気持ちいいって思ってくれてるなら」
「うん、気持ちいい」
じゃあ続けるね、と真穂子は笑ってキスを落とした。
いつもは祐策が攻めるほうなのに、今日の真穂子は大胆な気がした。
祐策の腹に手を乗せ、時々上を仰ぎながら腰を振る。つながった部分がきゅうきゅうと締め付けられ、快感は増していく。
(腰使い、巧くなったんじゃない……?)
快感に酔いしれるのはいいが、自分の手には感触がない。真穂子の身体を撫でた記憶がないのだ。つながる前には充分なくらい真穂子を愛撫するはずなのに、なぜだろう、手にその感触がない気がした。
そう思っているうちに真穂子の揺れが強くなってゆく。
「やば……」
(あ、待った、ゴムつけたか!?)
記憶がなさすぎる。
気がついたら真穂子が跨がっていた。
「ちょっと……待って……ゴム……」
このままではまずい、この体勢で果ててしまったらまずい、せめて自分が上だったらなんとか出来るのだが。
「体勢変えよう……」
「ダーメ」
「なんで……このままじゃナカに……」
「いいよ」
「……ダメだって……」
理性は残っていないが、辛うじて良し悪しを判断する気力が自分の中にあるようだ。なんとか口をついて出てきた。
「どうして?」
「子供出来たら……どうすんだよ……」
真穂子の動きが緩慢になり、また至近距離にまで顔を近づけてきた。
「嫌?」
「嫌じゃない、けどダメだろ……。今じゃない、結婚してないのに……」
「お父さんだって、いいって言ってたでしょ」
「それでもいいっていう譲歩だろ。ダメだ……子供はまだ先。計画的に、だ……」
「意地悪」
そう言って真穂子はまた動き出した。
「ちょっ……やめ……だめだって……」
今日の真穂子はおかしい。
セックスの最中に喋ることは少ないのに、今日はやけに饒舌だ。そして積極的だ。彼女には悪いが、今日は腰使いが巧く感じるが、それもなんとなく妙な気がしている。そんなにすぐに巧くなるものなのだろうか。なんだか変だと祐策は思った。
まあ、こんな真穂子もいいけれど……どうして今日なんだろう。
動きが早くなるにつれて、まずい止めなければ、という気持ちが前面に出てくる。
「マジでヤバいから……頼む、止めてくれ」
「嫌だ」
「頼む……イキそ……」
「いいよ……」
「よくな……い……」
絶頂を迎えようとしているのを感じ、祐策は真穂子の手首を掴んで、強く握った。
「ダメだ!」
手を引いて、彼女の身体を引き寄せた。
「祐策さん、祐策さん……」
「ん……」
ゆっくり目を開くと、真穂子が覗き込んでいた。
「!?」
心配そうな表情で祐策を見下ろしている。
「大丈夫? うなされてたみたいだけど。もしかして、具合、悪かった?」
「え……」
真穂子は服を着ている。
真穂子の実家に行った時のワンピース姿のままだ。
(あれ……)
思わずブランケットの下の自分の腕や腹を探る。自分もスウェットにTシャツ姿だった。身体を少し起こし、思わず下半身に視線をやった。なんとなく疼いている気はするが、欲を吐き出してしまった感覚はなかった。
(汚してない……よかった……)
どうやら夢を見ていたようだ。
(夢精してなくてよかった……)
「気分悪い?」
真穂子は心配そうに見つめている。
「あ、いや、大丈夫だ」
「うなされてたよ?」
「そうか……」
「大丈夫だ」
うなされていた、というのは、きっと夢の中で祐策が真穂子を制止しようとしていた時のことだろう。まさか性的な夢を見ていたなどとは言えない。
(夢だから……)
おかしいと思ったのだ。やはり真穂子はあんなに積極的に攻めてくることはないのだ。行為の最中にあまり口を開かない彼女であるし。
(俺の願望……なのかな……深層心理じゃ、真穂子にしてもらいたいってのがあるのかな)
悪いことではないだろうけれど。
先程、真穂子のほうからキスをしてくれたことが引き金になったのかもしれない。
ふと自分のあの場所が反応していることに気づき、
(やべ……)
真穂子が気づかれないように少し動いた。
ベッドから降りるには、もう少しおさまってからにしたいのが本音だった。
「晩御飯、食べられる?」
「あ……うん、食べたい。もうそんな時間か……。結構寝てたんだな」
「そうだね。ぐっすり寝てたみたいだよ。疲れたんだね」
「疲れたってことはないはずなんだけど」
ふふっ、と真穂子が笑った。
ローテーブルに視線をやると、真穂子の作ってくれた食事が並べられている。美味そうな香りが鼻腔をくすぐった。
「ちょっと、もう少ししたら座るから」
「?」
真穂子は不思議そうに祐策を見た。
「ごめん、今、ちょっと立ち上がれなくて」
「大丈夫……? やっぱり具合良くない?」
彼女は気づいていないようで、素直に心配をしてくれていた。
「いや、具合は悪くないから」
「そう……?」
「マジで、ごめんだけど」
「わかった」
彼女は頷いてくれたが、まだ心配げな様子だ。
真穂子がこちらに背を向けてくれない限り、動けない。
「あのさ……」
「うん」
「ちょっと、今……勃っちまってて……」
言いづらいが祐策は観念して口を開いた。
「…………え!」
真穂子は素っ頓狂な声を出して驚いてくれた。
無理もない話だとは思った。
「ほんと、下品でゴメン」
悄気て詫びたが、真穂子も申し訳なさそうな表情を見せた。
「だから、ちょっと動けない、ごめん」
「そ、そうなんだ、ごめんね。じゃ、じゃあ、落ち着いてからで」
真穂子はそそくさと背を向け、キッチンへ向かった。
祐策が正直に言っただけで赤面する彼女は、やはり夢の中のようなことはしないだろう。
(ふう……)
情けない話だ。
なぜそうなったか、追求されなくてよかったと思う祐策だ。
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