大人の恋愛の始め方

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【第3部】祐策編

18.誕生日の夜(前編)

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 十月。
 祐策の誕生日が近づいてきた。
 二十八になる。
 あと一年ほどで縛りもなくなるという頃だ。
 誕生日は、真穂子が祝ってくれると言っていた。
 どこかへ食事に行こうかと誘われ、真穂子の運転で海沿いにあるレストランへ連れていかれた。夕日が見えるレストラン、と名歌っていたが、あいにく天気は悪かった。
 夜のビーチを散歩しても月も星も見えない。
「落ち込むなって」
「……せっかくお祝いしてあげたかったのに、天気が悪いなんて」
 真穂子はとても不満そうで、申し訳なさそうだったが、
「祝ってくれたことで充分俺は嬉しい」
 そう伝えるくらい、祐策には充分だった。
 手を繋いでビーチを歩いた。誰もいない。こんな天気の悪い夜に歩く人どころか、散歩をする人もいない。
 帰ろうか、と祐策が促し二人は駐車場へ向かう。
 すると……雨が降り出した。
 一気にずぶ濡れになってしまった二人だ。
 濡れたままだが急いで車に乗り込み、アパートに戻る。風邪をひいてはいけない、と祐策を風呂に入れる真穂子だ。
 その間に真穂子は祐策の服を用意してくれた。使ったことはないが、いつか祐策が使うことがあるかもと買っておいたスウェットだという。作業服のサイズを知っている真穂子は、それにあわせて買ってくれていた。
「風呂、ありがと。先に使わせてもらった。このサイズも……ちょうどいい」
「うん、よかったです」
「雪野さんも、早く暖まったほうがいいよ」
「うん、そうですね」
 真穂子が風呂に入る。
 真穂子の部屋で寛ぐ祐策だった。
 真穂子が風呂からあがったら暇をしなきゃいけないな、と考える。服はビニール袋をもらってそれに入れて帰ろうかな、などと思いながら。

 彼女が風呂からあがってきた。湯上がりで化粧をしていない真穂子をまじまじ見つめる。素顔は初めて見たな……と思ったのだ。
「ちょ、そんなに見ないでください」
「あ、ごめん」
(すっぴんもいい……な)
 だが別に普段からバチバチメイクをしているわけではないのだろう、さほどかわりはない。
 濡れた髪の真穂子を見上げる。
「洗濯しましょっか」
「あ、いや……洗濯物、もらって帰るよ」
「乾燥機があればいいんでしょうけど、なくて……ごめんなさい」
 真穂子の部屋に乾燥機はないらしい。
「謝ることないよ。帰りにコインランドリーにでも寄るし」
「あ、それなら、洗濯して乾燥だけさせるとか?」
 なるほどね、と祐策は笑う。
 真穂子の洗濯物と一緒に洗うということになった。一緒に洗うのは抵抗はないのかなと思ったが、彼女は気にしないようだったので甘えることにした。
 洗濯機をセットし、髪を乾かした真穂子が戻ってきた。
 せっかくの誕生日なのに、と真穂子は悲しそうだった。
「そんなことないって」
 真穂子の手を引き、自分の左隣に座らせた。
「俺は嬉しい」
「そうですか?」
「伝わってないか?」
「そんなことは……」
「これまで、こんなふうに祝ってもらったことなんてないしな。だからめちゃくちゃ嬉しい。しかも好きな人に祝ってもらえるなんて、こんな嬉しいことない」
 ありがとな、と真穂子に顔を近づけた。
 察した真穂子が目を閉じ、祐策のキスを受け入れた。
「喜んでもらえたなら、わたしも嬉しいですよ」
「うん、嬉しい。だから雪野さんは落ち込まないでよ」
 真穂子の背中に左腕を伸ばし、肩を抱く。
 右手で顎を掴み、先程よりも深いキスをした。
 彼女の身体が強ばった。
「ありがとな」
 こくん、と真穂子は頷いた。
 まだまだ物足りなくて、祐策は真穂子の手を握り、唇に触れた。
 唇と唇がぶつかる音、彼女の唇を啄む音がやけに静寂に響く。 
(足りない……)
 祐策は真穂子の身体を倒した。
「ひゃ……」
 真穂子の目をまっすぐ見つめると、彼女は瞬きもせずに祐策を見返してきた。首筋にキスを落とし、手を真穂子の胸の上に置く。びくんと身体が跳ねたあと、祐策の腕に彼女は手を伸ばした。
 首筋へのキスを繰り返しながら、やわやわと手を動かしてみる。
 スウェットの裾から手を入れると、真穂子の瞳は怯えるような色になり、侵入するその手を止めるように掴む手に力が加わった。
「…………」
 しばらく見つめ合った。
 まだこの先への侵入は許可されないようだなと悟り、祐策は小さく笑った。
「ごめん。……しない」
「ちが……嫌なわけじゃなくて」
 泣きそうな顔の真穂子が可愛らしく、頬を撫で、髪を撫でた。
 唇が触れそうな至近距離まで近づき、囁くように言う。
「わかってるよ」
「違う、ただ、がっかりされ……」
「しないって」
 前にも言ったことを再び口にした。
 前の男はそんなにひどかったのだろうか。
 また怒りがこみ上げてくる。
「しない自信ある」
 そっと唇に触れる。
 今にも泣き出しそうな真穂子が頷くと、
「お預けってことで」
 祐策が言うと、真穂子は首を振った。
「続けて……いい、ですから」
「……いいの? だったら、最後まではしない。雪野さんが嫌なことはしたくないしな」
「…………」
 彼女はどうしたらいいのか困った顔をしたが、頷いた。
「じゃあさ、嫌な時は嫌って言って。駄目なことや駄目な時は駄目って」
 真穂子は首を縦に振った。
 祐策は起き上がり、彼女を抱き起こして、ベッドに移動させた。
 ベッドの縁に足を開いて座り、その中に彼女を座らせた。
 そして背後からスウェットの上から胸を掴んだ。
「なか……見たい。直接触っても?」
 彼女は頷いた。 
「スウェット、脱がせていいか?」
 真穂子はまた、おずおずと頷いた。
 祐策が裾を掴むと、真穂子はのろのろと上衣を脱ぎ始める。恥ずかしいと思っているのが伝わってきた。
 背中しか見えないが、彼女の上体が目の前に現れた。下着姿の真穂子に欲情するが、ぐっと興奮を抑えた。
「……触るよ」
 背後から手を伸ばして真穂子の両胸を包む。ゆっくり柔らかさを堪能し、真穂子の首筋にキスをする。しばらくのあと、今度は下着の中へと指を侵入させ、いつだったかこっそり盗み見をした胸の先を、背後から覗き見た後に抓んだ。親指と人差し指でくりくりと抓んでいると、先端が固くなっていくのがわかった。
 まだ、真穂子に「嫌」とは言われない。
 ならば続けていいのだ、と祐策は下着を上にずらすと、両手で揉む。
 真穂子の耳が赤くなっていた。
(大きくはないけど……俺の手には余るな)
 DV男もこんなことをしていたのかと思うと腹が立つ。
 先端を指の間に挟んだり、刺激を与えるようにして揉み続ける。
(どんどん固くなってる)
 口に出そうかとも思ったが、今回の目的は最後までするセックスではないし、となんとか耐えた。言葉で攻めて喜ばせるより、自分の手が恐怖でないものだと思ってもらいたかった。
 ブラジャーの後ろのホックを外すと、真穂子の腕から取り去った。
 これで上衣を被うものはなくなった。
 身体をくっつけて抱き締めるように密着させ、それでいて胸を揉みしだき続ける。
「……んっ……」
 真穂子の口から小さく声が洩れた。
「強すぎたか?」
 ううん、と首は横に振られた。柔らかさを暫く堪能した。
「見たい」
 真穂子が返事をしていないのに、身体からすり抜けると、正面に移動した。彼女は慌てて両腕で胸を隠そうとしたが、祐策は素早く腕を掴んで回避した。
 まじまじと彼女の両胸を見つめる。きれいな形にため息が出そうになった。
 顔を背けた真穂子の表情には羞恥があった。
「なんでそんなに見るの……」
「見たいからに決まってんだろ。見せてよ」
「小さいから恥ずかしい……」
「え? 小さくなんかないよ? 綺麗だし。ていうか、美乳だと思う」
 真穂子が腕の力を抜くと、手を離した。だらんと腕を下げたのを見て、正面から両手で胸に触れる。
「あの、でも……」
「でも、なに?」
「宮城さんは胸の大きい人が好きって……」
「え?」
 そんなこと一言も言ったことはない。
(まさか)
 高虎が何かを吹き込んだに違いない。
(くそっ……)
「そんなこと俺は言った覚えはないな。誰に何言われたかしらないけどさ」
 くにくにと先端を弄びながら、彼女の羞恥に満ちた表情を眺める。
 じゃあ横になってよ、と今度は真穂子をベッドに横たわらせた。
 覆い被さり、胸に顔を近づける。
 双房を掴むと、片方の先端を口に含み、舌でそこを刺激した。
 まだ「嫌だ」とは言われなかった。
「んっ……」
「もしかして、気持ちいいのか?」
 思わず尋ねてしまったが、彼女は赤ら顔のまま答えなかった。
「綺麗だ」
 柔らかな乳房に吸い付き、舌先を使って真穂子を快楽へと導く。小さく洩れる声が艶めかしかった。強弱をつけながら堪能する祐策は、舌を動かしながら、右手を両太腿のまんなかへと移動させ、スウェットパンツ越しに触れた。すると、太股がきゅっと閉じられた。
 顔を上げ、
「ねえ、力抜いて。……触りたいから」
 と言うと、彼女は何も言わなかった。ゆっくり力を抜いてくれるのを感じ、布越しに太股を撫でた。
 厚めの生地のスエットが邪魔で、そろりと脱がせていく。白い清楚なショーツ一枚の姿に、祐策の興奮は増していった。
 真穂子の顔を見ながら、指を下半身の真ん中で動かす。
 彼女の吐息が艶っぽく、嫌だとも駄目だとも言われないので、これが悪いものだとも思っていないのだろうと勝手に解釈した。嫌なら拒むはずなのだから。
 恥ずかしそうに目を瞑って耐える真穂子の顔を眺めながら、指の動きはやめない。真ん中の敏感な部分に当たると、そこを擦った。次第に薄い下着が湿っていくのを感じた。
「汚れるから……脱がせてもいいか?」
 こくり、また真穂子は素直に頷いた。
 ついに目の前に、一糸まとわぬ姿になった真穂子が現れた。恥ずかしがって、両脚で秘部を隠そうとするが、祐策はそれを許さなかった。
「なんだよ……めちゃくちゃ綺麗じゃん……」
 細い身体、細い腰、その身体に見合った大きくはないが小さくはない胸、祐策には充分魅力的であるし、そしてその先端は綺麗な桜色だ。つい先程まで吸い付いて味わったのに、また繰り返したなるほど眩しい。痩せている身体の下部へ目を移すと……あまり肉のない下半身が祐策を誘惑している。
「脚、開くけど、いいよな?」
 は……い、とか弱い返事が聞こえた。
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