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【第3部】祐策編
10.健全な交際
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真穂子の部屋に遊びに行くようになった。
二人で晩御飯を食べたり、のんびりした時間を過ごすことが多くなった。
祐策はなるべく早く帰るようにしていた。入り浸るのも申し訳ないし、居座って彼女の時間を奪うのも申し訳ないと思ったからだ。それに、まるで彼女の身体目当てで居座っていると思われたくなかった。
和宏からの助言で、
「もう少し一緒にいたい、って言われたら、もう少しだけ長居したらいいと思いますよ」
と言われ、従っていた。
身体のつきあいがなくても一緒にいられると幸せだ、ということを感じていたのだ。
いつものように、立ち上がり帰り支度を始める祐策に、
「もう少し、一緒にいませんか」
真穂子にそう言われ、祐策の心臓が跳ねた。
「……いいの? もう遅い時間だし」
「宮城さんがいいなら」
「うん、もちろん……俺はいいけど……」
毎日会社で会えるが、誰にも邪魔されずに二人きりになることはできない。
隣に並んで座って、テレビを見る。
そっと真穂子の手に自分の手を重ねると、真穂子は頬を染めた。
掴んで手をつなぎ、テレビを見つめる。
(嬉しい……)
今までに経験したことのないことだった。
いつも夜九時になり、今度こそ祐策は暇をする。
「お邪魔しました」
「……また見たい映画があったら教えてくださいね。探しておきますから」
「ありがとう、今度は……晩御飯、一緒に作りたい」
「はい」
ヒマワリのような笑顔に、祐策も自然と笑顔になる。
「じゃあ、また。……おやすみ」
「おやすみなさい」
微笑み合って、祐策はドアを閉めた。
(まだ、キス、してない)
祐策は帰り際のキスに憧れている。
ユキミのような遊びの女にされていたのとは中身や意味合いが違うし、そもそも祐策から相手にしたことはなかった。
(雪野さんと……)
バレンタインにチョコレートをもらって、ホワイトデーに祐策が告白をして付き合い始めた。そしてまだ一ヶ月も経っていない。
(キスって、つきあってどれくらいでするものなんだろう……)
参考になる者がいない。
(やっぱカズしかいない)
頼るのはやはり和宏だ。
「いや、俺もわからないです……」
失恋上級者ですし、と和宏は困惑した顔になった。
さすがの和宏でも駄目か、と祐策は落胆した。
「相思相愛になってすぐの人もいれば、三ヶ月の人もいるかもしれないし、人によるんじゃないでしょうか?」
「だよな」
「したいと思った時に、でいいんじゃないでしょうか? 相手が受け入れてくれるなら、ですね。そもそも嫌ならしませんよ」
わからないと言った和宏だが、彼の言葉だと説得力がある気がする祐策だ。
「キスだけじゃ終わらない可能性もありますから、大人ですし。ちゃんとゴム用意しておいてくださいね」
「あ、あ、うん、わかった」
赤裸々に和宏は言った。冷静に考えてみれば、和宏はとんでもないことを言ったような気がしたが、まあそういう展開もあるんだろう、と頷いた。
「いつも相談に乗ってもらって悪いな」
「いえいえ、全然。俺も参考になりますし」
「カズは今は彼女いないんだっけ」
和宏は顔も性格もいいのに彼女がいない。失恋上級者だというのが信じがたかった。
「好きな子はいるんですけどね……、まあ彼氏がいて別れたばっかみたいなので、ちょっと距離を詰めてるところです。トモさんの彼女の聡子さん、実は聡子さんのおかげでちょっと知り合いになれまして……」
彼はコンビニ店員の大学生を想っているときいた。
「え、トモさんの? 彼女たち友達なのか?」
「いえ全然違うんですけどね。ひょんなことから知り合いになったらしくて……。ま、まあ、思うのは自由ですし、しばらくはこんな状態だと思います」
「そっか……」
(うまくいかねえな……)
俺はうまくいったのにな、と祐策は申し訳なく思った。
二人で晩御飯を食べたり、のんびりした時間を過ごすことが多くなった。
祐策はなるべく早く帰るようにしていた。入り浸るのも申し訳ないし、居座って彼女の時間を奪うのも申し訳ないと思ったからだ。それに、まるで彼女の身体目当てで居座っていると思われたくなかった。
和宏からの助言で、
「もう少し一緒にいたい、って言われたら、もう少しだけ長居したらいいと思いますよ」
と言われ、従っていた。
身体のつきあいがなくても一緒にいられると幸せだ、ということを感じていたのだ。
いつものように、立ち上がり帰り支度を始める祐策に、
「もう少し、一緒にいませんか」
真穂子にそう言われ、祐策の心臓が跳ねた。
「……いいの? もう遅い時間だし」
「宮城さんがいいなら」
「うん、もちろん……俺はいいけど……」
毎日会社で会えるが、誰にも邪魔されずに二人きりになることはできない。
隣に並んで座って、テレビを見る。
そっと真穂子の手に自分の手を重ねると、真穂子は頬を染めた。
掴んで手をつなぎ、テレビを見つめる。
(嬉しい……)
今までに経験したことのないことだった。
いつも夜九時になり、今度こそ祐策は暇をする。
「お邪魔しました」
「……また見たい映画があったら教えてくださいね。探しておきますから」
「ありがとう、今度は……晩御飯、一緒に作りたい」
「はい」
ヒマワリのような笑顔に、祐策も自然と笑顔になる。
「じゃあ、また。……おやすみ」
「おやすみなさい」
微笑み合って、祐策はドアを閉めた。
(まだ、キス、してない)
祐策は帰り際のキスに憧れている。
ユキミのような遊びの女にされていたのとは中身や意味合いが違うし、そもそも祐策から相手にしたことはなかった。
(雪野さんと……)
バレンタインにチョコレートをもらって、ホワイトデーに祐策が告白をして付き合い始めた。そしてまだ一ヶ月も経っていない。
(キスって、つきあってどれくらいでするものなんだろう……)
参考になる者がいない。
(やっぱカズしかいない)
頼るのはやはり和宏だ。
「いや、俺もわからないです……」
失恋上級者ですし、と和宏は困惑した顔になった。
さすがの和宏でも駄目か、と祐策は落胆した。
「相思相愛になってすぐの人もいれば、三ヶ月の人もいるかもしれないし、人によるんじゃないでしょうか?」
「だよな」
「したいと思った時に、でいいんじゃないでしょうか? 相手が受け入れてくれるなら、ですね。そもそも嫌ならしませんよ」
わからないと言った和宏だが、彼の言葉だと説得力がある気がする祐策だ。
「キスだけじゃ終わらない可能性もありますから、大人ですし。ちゃんとゴム用意しておいてくださいね」
「あ、あ、うん、わかった」
赤裸々に和宏は言った。冷静に考えてみれば、和宏はとんでもないことを言ったような気がしたが、まあそういう展開もあるんだろう、と頷いた。
「いつも相談に乗ってもらって悪いな」
「いえいえ、全然。俺も参考になりますし」
「カズは今は彼女いないんだっけ」
和宏は顔も性格もいいのに彼女がいない。失恋上級者だというのが信じがたかった。
「好きな子はいるんですけどね……、まあ彼氏がいて別れたばっかみたいなので、ちょっと距離を詰めてるところです。トモさんの彼女の聡子さん、実は聡子さんのおかげでちょっと知り合いになれまして……」
彼はコンビニ店員の大学生を想っているときいた。
「え、トモさんの? 彼女たち友達なのか?」
「いえ全然違うんですけどね。ひょんなことから知り合いになったらしくて……。ま、まあ、思うのは自由ですし、しばらくはこんな状態だと思います」
「そっか……」
(うまくいかねえな……)
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