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【第2部】25.休息
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「はっ……」
すみません寝てしまいました、と聡子が目を覚ました。腕の中で彼女がいつの間にか眠ってしまったので、起こさないように抱いたままだった。
「眠れたか?」
「はい……うとうとしちゃって、すみません、智幸さん、帰らなきゃいけないのに……」
聡子は目をこすったあと、慌ててトモの腕から抜けようとした。トモは抱き締め、間近で顔を見つめた。
「いいよ、大丈夫だから慌てるな」
「せっかく会えたのに、寝ちゃったし……」
聡子の頬に張り付いた髪を拭った。
「会えたからいいんだよ。おまえの寝顔もこんな間近で見られたし、俺は満足だな。腹の具合はどうだ?」
「智幸さんが暖かくて……おかげで痛みも和らぎました」
よかったよ、とまた背中を撫でた。
「じゃあ、お礼のチュウ、してくれよ」
「えっ」
「ほら、ほら」
トモは唇を突き出す。
「もうぅ……恥ずかしいなあ、前はそんなこと言うキャラじゃなかったのにな」
ニヤニヤと笑うと、聡子が唇にちゅっと優しく触れた。
「ごちそうさん」
トモは嬉しそうに笑った。
ぽんぽんと背中を撫で、頭も撫でると、聡子も嬉しそうに笑った。
自分の腕のなかが安心できたのだと思い、トモは嬉しかった。以前の自分なら考えられなかった。
「実は俺もちょっとうとうとしてた」
「そうなんですか? 腕しびれてませんか? 明日ちゃんと包丁持てますか?」
「大丈夫だよ、心配しなくても。……気遣ってくれてありがとな」
聡子は腕からゆっくりとすり抜け、トモの隣に座った。
「今日、出来なくて、すみません」
「言うなって。しなくても会えたら嬉しいんだよ。そういうのを教えてくれたのはおまえなんだから。ま、その分今度はたっぷり可愛がるからな」
「もうぅ、言い方! エッチなんだから」
彼女が頬を膨らませると、、
「今知ったのか?」
とトモは聡子の顔を覗き込んだ。
「し、知ってましたけど!」
「だろうな」
「もうっ!」
こんなやりとりにも幸せを感じる二人だった。
少しゆっくりしたあと、
「そろそろ帰るな。おまえはいつも朝早いし、寝る時間遅くなっちまう。具合もよくないだろうからな」
立ち上がりながら、聡子の頭を撫でた。トモに付いて、聡子も立ち上がり玄関へ見送りに来た。
「次は金曜日に来られそうですか?」
「ああ……そうだな。金曜、来てもいいか?」
「もちろんです」
聡子は嬉しそうに頷いた。不自然な様子は何もない。少しは痛みがましになったのかもしれない。
「じゃあ、またな」
「はい、また。おやすみなさい」
「おやすみ」
トモはいつものように聡子にキスをして背を向けた。
ドアノブに手をかけ、トモは動きを止める。
「智幸さん? どうかしました?」
くるりと振り向き、聡子を見た。
「?」
頬に優しく手をやり、顔を近づけ、再び唇に触れた。
「おやすみ」
「!?」
みるみるうちに聡子の顔が赤らんでいく。
「なんか……名残惜しくなっちまった」
「……ずるい!」
「あ?」
「ずるいですよ! わたしだって……わたしだって名残惜しくて、我慢してるのに!」
聡子はとんっと地に裸足で降りると、トモに抱きついた。
「もぉーっ、そういう不意打ちとか……。そういうところ、智幸さんは大人で、わたしが子供だって思い知らされてるみたいな気がするんです」
「そうか?」
「そうですよ! また金曜日まで会えない寂しい、って思っても我慢しようと思ってたのにっ」
「俺だって同じだ」
聡子の背中に手を回す。
「おまえが思ってるほど大人じゃねえよ」
おまえに『好きだ』って言ったら溢れてとまらなくなりそうだからな、とトモは笑った。
「それに簡単に言ったら安売りしてるみてぇだろ。おまえは不満かもしれないけどな。好き好き言ってくれる男のほうがいいかもしれねえけど」
「智幸さんがいいんです!」
わかってていつもそんなこと言うんだから、と聡子は口を尖らせる。
「今日、やけに素直に返事したのはなんでだ?」
はーい、と言ったことを尋ねた。
「だって……いつもみたいにしつこくしたら、子供っぽいってうざがられるかなって……」
「そうだったのか」
「うん。愛想つかされちゃうかもしれないし」
「んなわけねえよ」
ほんとに可愛いやつだな、と聡子の後頭部を優しく撫でた。
「今日はやけに引き下がったから、もう俺に愛想尽かしたかと思ったわ」
「そんなわけないです」
聡子はトモの顔を見上げ、悲しげに笑った。
「おまえは可愛いからな。おまえに釣り合うような年の男が寄って来たら、俺は勝てそうにないな、って……思ってる」
「寄ってなんかこないですよ」
ぎゅうっ、と聡子が抱擁の力を加えた。
「智幸さんしか見えてないですから」
「嬉しいこと言ってくれる」
「わたしだって……不安ですよ。智幸さんの周りにいっぱいきれいな大人の女性がいるはずですし」
「おまえだけだよ」
トモは聡子の唇を貪った。
体勢を変え、聡子をドアに押し付けながら何度も貪った。
「帰り間際に悪い」
「平気です……」
「……今度こそ帰るよ」
「はい、おやすみなさい」
「おやすみ」
トモは聡子の頭をぽんぽんと撫でた。
唇の感触が残っているのを感じ、少し恥ずかしくなるトモだった。
すみません寝てしまいました、と聡子が目を覚ました。腕の中で彼女がいつの間にか眠ってしまったので、起こさないように抱いたままだった。
「眠れたか?」
「はい……うとうとしちゃって、すみません、智幸さん、帰らなきゃいけないのに……」
聡子は目をこすったあと、慌ててトモの腕から抜けようとした。トモは抱き締め、間近で顔を見つめた。
「いいよ、大丈夫だから慌てるな」
「せっかく会えたのに、寝ちゃったし……」
聡子の頬に張り付いた髪を拭った。
「会えたからいいんだよ。おまえの寝顔もこんな間近で見られたし、俺は満足だな。腹の具合はどうだ?」
「智幸さんが暖かくて……おかげで痛みも和らぎました」
よかったよ、とまた背中を撫でた。
「じゃあ、お礼のチュウ、してくれよ」
「えっ」
「ほら、ほら」
トモは唇を突き出す。
「もうぅ……恥ずかしいなあ、前はそんなこと言うキャラじゃなかったのにな」
ニヤニヤと笑うと、聡子が唇にちゅっと優しく触れた。
「ごちそうさん」
トモは嬉しそうに笑った。
ぽんぽんと背中を撫で、頭も撫でると、聡子も嬉しそうに笑った。
自分の腕のなかが安心できたのだと思い、トモは嬉しかった。以前の自分なら考えられなかった。
「実は俺もちょっとうとうとしてた」
「そうなんですか? 腕しびれてませんか? 明日ちゃんと包丁持てますか?」
「大丈夫だよ、心配しなくても。……気遣ってくれてありがとな」
聡子は腕からゆっくりとすり抜け、トモの隣に座った。
「今日、出来なくて、すみません」
「言うなって。しなくても会えたら嬉しいんだよ。そういうのを教えてくれたのはおまえなんだから。ま、その分今度はたっぷり可愛がるからな」
「もうぅ、言い方! エッチなんだから」
彼女が頬を膨らませると、、
「今知ったのか?」
とトモは聡子の顔を覗き込んだ。
「し、知ってましたけど!」
「だろうな」
「もうっ!」
こんなやりとりにも幸せを感じる二人だった。
少しゆっくりしたあと、
「そろそろ帰るな。おまえはいつも朝早いし、寝る時間遅くなっちまう。具合もよくないだろうからな」
立ち上がりながら、聡子の頭を撫でた。トモに付いて、聡子も立ち上がり玄関へ見送りに来た。
「次は金曜日に来られそうですか?」
「ああ……そうだな。金曜、来てもいいか?」
「もちろんです」
聡子は嬉しそうに頷いた。不自然な様子は何もない。少しは痛みがましになったのかもしれない。
「じゃあ、またな」
「はい、また。おやすみなさい」
「おやすみ」
トモはいつものように聡子にキスをして背を向けた。
ドアノブに手をかけ、トモは動きを止める。
「智幸さん? どうかしました?」
くるりと振り向き、聡子を見た。
「?」
頬に優しく手をやり、顔を近づけ、再び唇に触れた。
「おやすみ」
「!?」
みるみるうちに聡子の顔が赤らんでいく。
「なんか……名残惜しくなっちまった」
「……ずるい!」
「あ?」
「ずるいですよ! わたしだって……わたしだって名残惜しくて、我慢してるのに!」
聡子はとんっと地に裸足で降りると、トモに抱きついた。
「もぉーっ、そういう不意打ちとか……。そういうところ、智幸さんは大人で、わたしが子供だって思い知らされてるみたいな気がするんです」
「そうか?」
「そうですよ! また金曜日まで会えない寂しい、って思っても我慢しようと思ってたのにっ」
「俺だって同じだ」
聡子の背中に手を回す。
「おまえが思ってるほど大人じゃねえよ」
おまえに『好きだ』って言ったら溢れてとまらなくなりそうだからな、とトモは笑った。
「それに簡単に言ったら安売りしてるみてぇだろ。おまえは不満かもしれないけどな。好き好き言ってくれる男のほうがいいかもしれねえけど」
「智幸さんがいいんです!」
わかってていつもそんなこと言うんだから、と聡子は口を尖らせる。
「今日、やけに素直に返事したのはなんでだ?」
はーい、と言ったことを尋ねた。
「だって……いつもみたいにしつこくしたら、子供っぽいってうざがられるかなって……」
「そうだったのか」
「うん。愛想つかされちゃうかもしれないし」
「んなわけねえよ」
ほんとに可愛いやつだな、と聡子の後頭部を優しく撫でた。
「今日はやけに引き下がったから、もう俺に愛想尽かしたかと思ったわ」
「そんなわけないです」
聡子はトモの顔を見上げ、悲しげに笑った。
「おまえは可愛いからな。おまえに釣り合うような年の男が寄って来たら、俺は勝てそうにないな、って……思ってる」
「寄ってなんかこないですよ」
ぎゅうっ、と聡子が抱擁の力を加えた。
「智幸さんしか見えてないですから」
「嬉しいこと言ってくれる」
「わたしだって……不安ですよ。智幸さんの周りにいっぱいきれいな大人の女性がいるはずですし」
「おまえだけだよ」
トモは聡子の唇を貪った。
体勢を変え、聡子をドアに押し付けながら何度も貪った。
「帰り間際に悪い」
「平気です……」
「……今度こそ帰るよ」
「はい、おやすみなさい」
「おやすみ」
トモは聡子の頭をぽんぽんと撫でた。
唇の感触が残っているのを感じ、少し恥ずかしくなるトモだった。
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