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【第2部】25.休息
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25.休息
トモが聡子に会いに来ると、聡子はなんだか顔色が良くない気がした。具合が悪そうだ。
「どうした? またどこか具合悪いか?」
ジャケットを脱ぐと、聡子はハンガーに掛けてくれる。
顔色が悪いようだが、動きにおかしな様子はない。
(?)
彼女は言いづらそうだったが、どうやら《女の子の日》らしく、今日は出来ないですごめんなさい、と先に言われてしまった。
これまでにも、もう何度もそう言われたことはある。
「今日はわたしが口でしても……」
いいですか、と言いかけた聡子を制止した。
「別にするためだけに来てるわけじゃないよ」
おまえに会いたいから会いに来てるんだ、とトモは小さく笑った。
「でも……智幸さん」
「いいんだよ。なんか俺がいつもセックスしかしねえ男みたいだな」」
「そんなこと思ってません」
隣に聡子を座らせ、肩を抱く。
「好きだからその延長でおまえとしたいだけだ、昔の俺じゃない。おまえの顔が見たいだけだ、それだけで会いに来るのは迷惑か?」
嘘偽りのない言葉を口にした。
「迷惑なんかじゃないです。すごく……嬉しい……」
聡子はトモに身体を預ける。重みを感じ、肩を抱く腕に力を加えた。
「体調が悪いなら、無理して会うなんてしないほうがいいのかもしれないけどさ。俺は会いたいんだよな」
わたしもです、と聡子は笑った。
「気が合うな」
「そうですね」
「腹が痛いか?」
「ちょっと」
トモは聡子の腹を擦った。
「カイロ、買ってこようか。あ、でも今の季節売ってないか」
「大丈夫です。トモさんの身体が温かいから」
「そうかあ?」
「はい」
聡子はトモの腕の中で目を閉じた。
「会いに来てよかったな」
額にくちづけをするトモだ。
「おまえのためなら何だってするよ」
「ありがとうございます。でも悪いことはだめですからね」
するかもしれねえな、というと聡子は困った顔でトモを見上げる。
だめですよ、と唇がふれそうな至近距離で言うと、トモは唇を突き出す。が唇は触れなかった。
「そんなに優しくされたら……」
「だめか?」
「嬉しくて困る」
「じゃあもっと困らせてやるよ」
トモにしがみつくようにして聡子は胸のなかで顔を埋めた。
「もう……そんなこと言って……」
「おまえの気持ちを踏みにじってきたことがあったしな。うぜえって言われるくらい、尽くせるもんならおまえに尽くしたいよ。まだまだできてねえけどな」
そんなことない、と腕のなかで頭を振っている。
「じゃあ、たまには智幸さんから『好き』って言ってくれたら嬉しいですねえ」
「……それは、また今度な」
「…………」
聡子はやっぱりだめか、と言うような顔をして、
「はーい」
と素直に言った。
(やけに素直だな)
なぜか聡子の態度が気にかかる。
いつもなら「ケチ」だとか「ですよねー、わかってましたけど」と言うが、今日は何も言わなかった。
本当に腹が痛むようだ。
女性の身体の造りなどわかろうとしたことはなかったが、聡子のためにも自分のためにも理解しないといけないと思うようにはなっていた。自分の知識はまだ中学生の頃のままなのだ。
「わたしを好きって思ってくれてるのがわかるから、大丈夫です」
「え?」
「さっきは、わがまま言ってみただけです」
「…………」
「さっき嬉しいこと言ってくださったので」
「さっき?」
自分の言った台詞を振り返ってみる。
「おまえの顔が見たいだけだ、って」
「ああ、言ったな」
「めちゃくちゃ嬉しいんです」
そう言われると急に恥ずかしくなるトモだ。前はこんなこと言わなかったはずだ。というより言う機会はなかった。歯の浮くような台詞を言うようになったのは、全部聡子に出会って、彼女に惚れてからだ。
「……そうか」
胸のなかの聡子の頭を撫で、背中を撫でた。
(可愛いんだよな……)
初めて出会った頃は、自分や連れに突っかかって来て、吠える犬のような女子高生だったが、今では可愛い自分の恋人だ。世の中何が起こるかわからない。
トモが聡子に会いに来ると、聡子はなんだか顔色が良くない気がした。具合が悪そうだ。
「どうした? またどこか具合悪いか?」
ジャケットを脱ぐと、聡子はハンガーに掛けてくれる。
顔色が悪いようだが、動きにおかしな様子はない。
(?)
彼女は言いづらそうだったが、どうやら《女の子の日》らしく、今日は出来ないですごめんなさい、と先に言われてしまった。
これまでにも、もう何度もそう言われたことはある。
「今日はわたしが口でしても……」
いいですか、と言いかけた聡子を制止した。
「別にするためだけに来てるわけじゃないよ」
おまえに会いたいから会いに来てるんだ、とトモは小さく笑った。
「でも……智幸さん」
「いいんだよ。なんか俺がいつもセックスしかしねえ男みたいだな」」
「そんなこと思ってません」
隣に聡子を座らせ、肩を抱く。
「好きだからその延長でおまえとしたいだけだ、昔の俺じゃない。おまえの顔が見たいだけだ、それだけで会いに来るのは迷惑か?」
嘘偽りのない言葉を口にした。
「迷惑なんかじゃないです。すごく……嬉しい……」
聡子はトモに身体を預ける。重みを感じ、肩を抱く腕に力を加えた。
「体調が悪いなら、無理して会うなんてしないほうがいいのかもしれないけどさ。俺は会いたいんだよな」
わたしもです、と聡子は笑った。
「気が合うな」
「そうですね」
「腹が痛いか?」
「ちょっと」
トモは聡子の腹を擦った。
「カイロ、買ってこようか。あ、でも今の季節売ってないか」
「大丈夫です。トモさんの身体が温かいから」
「そうかあ?」
「はい」
聡子はトモの腕の中で目を閉じた。
「会いに来てよかったな」
額にくちづけをするトモだ。
「おまえのためなら何だってするよ」
「ありがとうございます。でも悪いことはだめですからね」
するかもしれねえな、というと聡子は困った顔でトモを見上げる。
だめですよ、と唇がふれそうな至近距離で言うと、トモは唇を突き出す。が唇は触れなかった。
「そんなに優しくされたら……」
「だめか?」
「嬉しくて困る」
「じゃあもっと困らせてやるよ」
トモにしがみつくようにして聡子は胸のなかで顔を埋めた。
「もう……そんなこと言って……」
「おまえの気持ちを踏みにじってきたことがあったしな。うぜえって言われるくらい、尽くせるもんならおまえに尽くしたいよ。まだまだできてねえけどな」
そんなことない、と腕のなかで頭を振っている。
「じゃあ、たまには智幸さんから『好き』って言ってくれたら嬉しいですねえ」
「……それは、また今度な」
「…………」
聡子はやっぱりだめか、と言うような顔をして、
「はーい」
と素直に言った。
(やけに素直だな)
なぜか聡子の態度が気にかかる。
いつもなら「ケチ」だとか「ですよねー、わかってましたけど」と言うが、今日は何も言わなかった。
本当に腹が痛むようだ。
女性の身体の造りなどわかろうとしたことはなかったが、聡子のためにも自分のためにも理解しないといけないと思うようにはなっていた。自分の知識はまだ中学生の頃のままなのだ。
「わたしを好きって思ってくれてるのがわかるから、大丈夫です」
「え?」
「さっきは、わがまま言ってみただけです」
「…………」
「さっき嬉しいこと言ってくださったので」
「さっき?」
自分の言った台詞を振り返ってみる。
「おまえの顔が見たいだけだ、って」
「ああ、言ったな」
「めちゃくちゃ嬉しいんです」
そう言われると急に恥ずかしくなるトモだ。前はこんなこと言わなかったはずだ。というより言う機会はなかった。歯の浮くような台詞を言うようになったのは、全部聡子に出会って、彼女に惚れてからだ。
「……そうか」
胸のなかの聡子の頭を撫で、背中を撫でた。
(可愛いんだよな……)
初めて出会った頃は、自分や連れに突っかかって来て、吠える犬のような女子高生だったが、今では可愛い自分の恋人だ。世の中何が起こるかわからない。
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