113 / 222
【第2部】25.休息
1
しおりを挟む
25.休息
トモが聡子に会いに来ると、聡子はなんだか顔色が良くない気がした。具合が悪そうだ。
「どうした? またどこか具合悪いか?」
ジャケットを脱ぐと、聡子はハンガーに掛けてくれる。
顔色が悪いようだが、動きにおかしな様子はない。
(?)
彼女は言いづらそうだったが、どうやら《女の子の日》らしく、今日は出来ないですごめんなさい、と先に言われてしまった。
これまでにも、もう何度もそう言われたことはある。
「今日はわたしが口でしても……」
いいですか、と言いかけた聡子を制止した。
「別にするためだけに来てるわけじゃないよ」
おまえに会いたいから会いに来てるんだ、とトモは小さく笑った。
「でも……智幸さん」
「いいんだよ。なんか俺がいつもセックスしかしねえ男みたいだな」」
「そんなこと思ってません」
隣に聡子を座らせ、肩を抱く。
「好きだからその延長でおまえとしたいだけだ、昔の俺じゃない。おまえの顔が見たいだけだ、それだけで会いに来るのは迷惑か?」
嘘偽りのない言葉を口にした。
「迷惑なんかじゃないです。すごく……嬉しい……」
聡子はトモに身体を預ける。重みを感じ、肩を抱く腕に力を加えた。
「体調が悪いなら、無理して会うなんてしないほうがいいのかもしれないけどさ。俺は会いたいんだよな」
わたしもです、と聡子は笑った。
「気が合うな」
「そうですね」
「腹が痛いか?」
「ちょっと」
トモは聡子の腹を擦った。
「カイロ、買ってこようか。あ、でも今の季節売ってないか」
「大丈夫です。トモさんの身体が温かいから」
「そうかあ?」
「はい」
聡子はトモの腕の中で目を閉じた。
「会いに来てよかったな」
額にくちづけをするトモだ。
「おまえのためなら何だってするよ」
「ありがとうございます。でも悪いことはだめですからね」
するかもしれねえな、というと聡子は困った顔でトモを見上げる。
だめですよ、と唇がふれそうな至近距離で言うと、トモは唇を突き出す。が唇は触れなかった。
「そんなに優しくされたら……」
「だめか?」
「嬉しくて困る」
「じゃあもっと困らせてやるよ」
トモにしがみつくようにして聡子は胸のなかで顔を埋めた。
「もう……そんなこと言って……」
「おまえの気持ちを踏みにじってきたことがあったしな。うぜえって言われるくらい、尽くせるもんならおまえに尽くしたいよ。まだまだできてねえけどな」
そんなことない、と腕のなかで頭を振っている。
「じゃあ、たまには智幸さんから『好き』って言ってくれたら嬉しいですねえ」
「……それは、また今度な」
「…………」
聡子はやっぱりだめか、と言うような顔をして、
「はーい」
と素直に言った。
(やけに素直だな)
なぜか聡子の態度が気にかかる。
いつもなら「ケチ」だとか「ですよねー、わかってましたけど」と言うが、今日は何も言わなかった。
本当に腹が痛むようだ。
女性の身体の造りなどわかろうとしたことはなかったが、聡子のためにも自分のためにも理解しないといけないと思うようにはなっていた。自分の知識はまだ中学生の頃のままなのだ。
「わたしを好きって思ってくれてるのがわかるから、大丈夫です」
「え?」
「さっきは、わがまま言ってみただけです」
「…………」
「さっき嬉しいこと言ってくださったので」
「さっき?」
自分の言った台詞を振り返ってみる。
「おまえの顔が見たいだけだ、って」
「ああ、言ったな」
「めちゃくちゃ嬉しいんです」
そう言われると急に恥ずかしくなるトモだ。前はこんなこと言わなかったはずだ。というより言う機会はなかった。歯の浮くような台詞を言うようになったのは、全部聡子に出会って、彼女に惚れてからだ。
「……そうか」
胸のなかの聡子の頭を撫で、背中を撫でた。
(可愛いんだよな……)
初めて出会った頃は、自分や連れに突っかかって来て、吠える犬のような女子高生だったが、今では可愛い自分の恋人だ。世の中何が起こるかわからない。
トモが聡子に会いに来ると、聡子はなんだか顔色が良くない気がした。具合が悪そうだ。
「どうした? またどこか具合悪いか?」
ジャケットを脱ぐと、聡子はハンガーに掛けてくれる。
顔色が悪いようだが、動きにおかしな様子はない。
(?)
彼女は言いづらそうだったが、どうやら《女の子の日》らしく、今日は出来ないですごめんなさい、と先に言われてしまった。
これまでにも、もう何度もそう言われたことはある。
「今日はわたしが口でしても……」
いいですか、と言いかけた聡子を制止した。
「別にするためだけに来てるわけじゃないよ」
おまえに会いたいから会いに来てるんだ、とトモは小さく笑った。
「でも……智幸さん」
「いいんだよ。なんか俺がいつもセックスしかしねえ男みたいだな」」
「そんなこと思ってません」
隣に聡子を座らせ、肩を抱く。
「好きだからその延長でおまえとしたいだけだ、昔の俺じゃない。おまえの顔が見たいだけだ、それだけで会いに来るのは迷惑か?」
嘘偽りのない言葉を口にした。
「迷惑なんかじゃないです。すごく……嬉しい……」
聡子はトモに身体を預ける。重みを感じ、肩を抱く腕に力を加えた。
「体調が悪いなら、無理して会うなんてしないほうがいいのかもしれないけどさ。俺は会いたいんだよな」
わたしもです、と聡子は笑った。
「気が合うな」
「そうですね」
「腹が痛いか?」
「ちょっと」
トモは聡子の腹を擦った。
「カイロ、買ってこようか。あ、でも今の季節売ってないか」
「大丈夫です。トモさんの身体が温かいから」
「そうかあ?」
「はい」
聡子はトモの腕の中で目を閉じた。
「会いに来てよかったな」
額にくちづけをするトモだ。
「おまえのためなら何だってするよ」
「ありがとうございます。でも悪いことはだめですからね」
するかもしれねえな、というと聡子は困った顔でトモを見上げる。
だめですよ、と唇がふれそうな至近距離で言うと、トモは唇を突き出す。が唇は触れなかった。
「そんなに優しくされたら……」
「だめか?」
「嬉しくて困る」
「じゃあもっと困らせてやるよ」
トモにしがみつくようにして聡子は胸のなかで顔を埋めた。
「もう……そんなこと言って……」
「おまえの気持ちを踏みにじってきたことがあったしな。うぜえって言われるくらい、尽くせるもんならおまえに尽くしたいよ。まだまだできてねえけどな」
そんなことない、と腕のなかで頭を振っている。
「じゃあ、たまには智幸さんから『好き』って言ってくれたら嬉しいですねえ」
「……それは、また今度な」
「…………」
聡子はやっぱりだめか、と言うような顔をして、
「はーい」
と素直に言った。
(やけに素直だな)
なぜか聡子の態度が気にかかる。
いつもなら「ケチ」だとか「ですよねー、わかってましたけど」と言うが、今日は何も言わなかった。
本当に腹が痛むようだ。
女性の身体の造りなどわかろうとしたことはなかったが、聡子のためにも自分のためにも理解しないといけないと思うようにはなっていた。自分の知識はまだ中学生の頃のままなのだ。
「わたしを好きって思ってくれてるのがわかるから、大丈夫です」
「え?」
「さっきは、わがまま言ってみただけです」
「…………」
「さっき嬉しいこと言ってくださったので」
「さっき?」
自分の言った台詞を振り返ってみる。
「おまえの顔が見たいだけだ、って」
「ああ、言ったな」
「めちゃくちゃ嬉しいんです」
そう言われると急に恥ずかしくなるトモだ。前はこんなこと言わなかったはずだ。というより言う機会はなかった。歯の浮くような台詞を言うようになったのは、全部聡子に出会って、彼女に惚れてからだ。
「……そうか」
胸のなかの聡子の頭を撫で、背中を撫でた。
(可愛いんだよな……)
初めて出会った頃は、自分や連れに突っかかって来て、吠える犬のような女子高生だったが、今では可愛い自分の恋人だ。世の中何が起こるかわからない。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる