大人の恋愛の始め方

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【第2部】23.不安

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 トモへのメッセージに「既読」が付かない。
(どうしたんだろう……)
 妙な胸騒ぎがする。
 この三日間、何の音沙汰もない。
 付き合ってからは、既読にならなかったことはない。
《今日は行けそうにない》
 というメッセージだけの日もあり、それに対しても返事を送ると、それでもこちらからのメッセージは既読になっていた。
(どうしたんだろう……)
 研修に行くとか聞いてないし、と記憶を辿る。
 三日前の土曜日の夜、久しぶりにトモに抱かれた。明け方トモが部屋を出ていき、それからは会っていない。
 朝起きて、昨日はありがとうございました、とメッセージを送り、それが既読になったのが最後だった。
(忙しいのかな……)
 ふと考え、
(もしかしてスマホをなくしたとか?)
 あり得るかもしれない、と思った。
 だったらそのうち連絡くださるよね、と前向きに考えることにした。

 やはりおかしい。
 三日くらい、と思ったが、トモへのメッセージに既読がつかないことがやはり心配になってしまう。
 電話をしてみようかと思うが、いつ電話をしていいものかも悩む。定休日でももし神崎会長と一緒なら迷惑をかけてしまう、と躊躇ってしまった。
「着信だけでも残そうか……」
 仕事が終わっているであろう時間に、着信だけでも、のつもりで電話をかけてみる。出てもらえればラッキーだと思えばいい。そう思ってコールをするが、出る様子はない。
(どうしたのかな……)
 他の女の人と一緒、なんてことはないだろう……ないと思いたい。
 連絡がないのはともかく、メッセージを読まれた形跡もないのは不安でしかなかった。
 スマホを無くして、新しいスマホを手に入れることができなかったとしても、トモの性格からすれば、近い人間──例えばカズを通じてだとか、きっと連絡をくれるはずだ。何かあったとしか思えなくなっていた。
 しかし。
 トモの近くの人物の連絡を知らないことに気付いた。
(市川さん、智幸さんの働いているお店のオーナーさん……くらいしか……)
 自分はトモのことを何も知らないことを思い知らされた。「好き」なだけで何も知らないのだ。
(カズさんの会社も住まいもわからない……神崎会長さんのおうちに一緒に住んでるって言ってたよね)
 神崎の連絡先は、もしかすると裕美ママはご存じかも、とふと考える。
(会長さんに尋ねるにしても……なんて言ったらいいのかな)
 カズに尋ねるのが一番適切な気がしたが、そのカズの連絡先を知ろうとすると、波及してしまう。
(はあ……)
 こうなったら店に行こう、素知らぬふりして行こう、そう決めた。
 客として行けば問題ないだろうと聡子は考え、早速今日の仕事帰りに行くことにした。
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