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【第2部】15.恋愛初心者
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聡子の部屋に招き入れられ、トモは緊張していた。
緊張しているのがバレないよう、何食わぬ顔で上がる。
女の部屋になど幾度も上がり込んできた。どかどかと上がり込むなり、女と交わって帰って行く。聡子の部屋は特別だった。
そこまで広くはない部屋だが、1Kのいい部屋だと感じだ。学生や単身者向けのアパートなのだろう。入ってすぐ右にキッチン、左には恐らくトイレ、その向かいに浴室があるようだ、扉で仕切った向こうにリビングだ。左手にベッド、右手にテレビやタンスがあった。
「お茶がいいですか、コーヒーがいいですか?」
聡子は、ローテーブルの前の座布団を示し、座らせてくれた。茶を頼むと彼女は笑った。
ジャケットをハンガーにかけてくれたり、気遣いはホステスのようだ。
「ホステスじゃなくても、それくらい気付けますよ。ここに掛けておきますね」
「ありがとな」
彼女は当たり前のように気遣う。必要以上ではなく、ごくごく当たり前。自分相手でなくてもきっとそうしているのだろう。
──彼女が茶の準備をしてくれている間に、ちらりと室内を眺める。
テレビボードの横に、見覚えのある箱があった。
(あれは……)
以前、京都土産だと言って渡した金平糖の箱だ。掌に乗るサイズの箱だったはずだ。
(捨ててないのか……)
ふと、さらにその隣のものにも気付く。シルバーのネックレスがかけられている。去年の聡子の誕生日に贈ったものだ。自分が引きちぎって投げ捨てたものだが、あの時彼女は拾っていた。
(大事にしてるのか?)
もう処分したかと思っていた。
あの時は聡子とこうなるとは思っていなかったし、どうでもよくてひどいことをしてしまったと今では思うトモだ。
(新しいネックレス、プレゼントしてやるか……?)
一人の女性のために、必死になる日がくるなんて思いもしなかった。
(俺を変えた女だからな)
聡子の姿を見て、小さく笑った。
聡子の部屋に招き入れられ、トモは緊張していた。
緊張しているのがバレないよう、何食わぬ顔で上がる。
女の部屋になど幾度も上がり込んできた。どかどかと上がり込むなり、女と交わって帰って行く。聡子の部屋は特別だった。
そこまで広くはない部屋だが、1Kのいい部屋だと感じだ。学生や単身者向けのアパートなのだろう。入ってすぐ右にキッチン、左には恐らくトイレ、その向かいに浴室があるようだ、扉で仕切った向こうにリビングだ。左手にベッド、右手にテレビやタンスがあった。
「お茶がいいですか、コーヒーがいいですか?」
聡子は、ローテーブルの前の座布団を示し、座らせてくれた。茶を頼むと彼女は笑った。
ジャケットをハンガーにかけてくれたり、気遣いはホステスのようだ。
「ホステスじゃなくても、それくらい気付けますよ。ここに掛けておきますね」
「ありがとな」
彼女は当たり前のように気遣う。必要以上ではなく、ごくごく当たり前。自分相手でなくてもきっとそうしているのだろう。
──彼女が茶の準備をしてくれている間に、ちらりと室内を眺める。
テレビボードの横に、見覚えのある箱があった。
(あれは……)
以前、京都土産だと言って渡した金平糖の箱だ。掌に乗るサイズの箱だったはずだ。
(捨ててないのか……)
ふと、さらにその隣のものにも気付く。シルバーのネックレスがかけられている。去年の聡子の誕生日に贈ったものだ。自分が引きちぎって投げ捨てたものだが、あの時彼女は拾っていた。
(大事にしてるのか?)
もう処分したかと思っていた。
あの時は聡子とこうなるとは思っていなかったし、どうでもよくてひどいことをしてしまったと今では思うトモだ。
(新しいネックレス、プレゼントしてやるか……?)
一人の女性のために、必死になる日がくるなんて思いもしなかった。
(俺を変えた女だからな)
聡子の姿を見て、小さく笑った。
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