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【第1部】5.誕生日
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聡子の接客が終わると、ママやボーイは安心した様子だった。
「あの、ママ。さっきのお客様に、終わったらつき合ってくれって言われたんですけど、アフター? ってことでいいんですよね?」
「え」
「え」
ママとボーイが顔を見合わせた。
「やっぱりあなた、狙われて……」
「?」
「ママ、ちょっとオレが一言」
「いえ、私が行くわ。……身持ちのきれいな子だってわかって、食い散らかすつもりじゃないの。女癖の噂がないわけじゃないもの」
「?」
ママは急に怒り出し、トモの居場所を訊いた。外で待っているはず、と告げるとボーイの佳祐と一緒に外に出て行った。
「えっ? ど、どういうことですか?」
聡子はわけがわからずママの後に付いて行く。
表にいるというトモは、店の外に確かにおり、ママと佳祐はトモの姿を見つけてつかみかかりそうな勢いで詰め寄った。
「お客様、よろしいですか。神崎様のお知り合いの方と存じ上げていたので何も申し上げるつもりはなかったのですけどね。あの子、ミヅキのことですが、どういうおつもりかわかりかねますが、当店は性風俗店ではございませんので、性的なサービスはお断りしております。特にミヅキは見習いだと申し上げておりますし、それでもお客様には特別にご指名を受けているのだとご理解いただけないでしょうか? アフターも本来なら許可できません」
「えと……?」
トモはわけがわからない様子で二人を見返している。後ろにちょこんと立つ聡子を見て、ますますわけがわからない様子だ。
聡子も「性的サービス」という言葉を聞いて顔面蒼白になった。
「ママ! 佳祐さん! そんなつもりじゃ!」
「ちが……違いますよ! ミヅキが今日誕生日っていうから、ちょっと、美味いもん食わしてやりてえなって思って……。単純にどこか遅くまで開いている店でケーキでも食わしてやって祝ってやりたいって思っただけですよ……」
「え」
「は」
ママと佳祐は拍子抜けしたようだ。聡子はあわあわとする。こういうときはどうしたらいいのだろうか。
「ひっどいな……そういうサービス受けるなら違う店選びますよ。だいたい会長の息のかかった店のホステスに手ぇ出すわけないでしょう。しかも見習いでしょ? 無理言って指名しているのもちゃんと弁えていますよ」
トモはとても冷静に言っているようだった。
この店は、トモの属している組の関連らしい。
「ええっ……申し訳ございません、私の早とちりで……」
「申し訳ございません」
二人はしきりに謝った。
三人は店内に戻った。
「ミヅキ、あなた今日は誕生日だったんだね。何も知らなくてごめんね」
「いえ、別に言うほどのことでもないですし」
「ほかの子たちは盛大にお祝いしてやってるのに、ごめんね」
ママは申し訳なさそうだが、聡子は別段気にすることはないと思っている。
「でもあの客はあなたの誕生日、知ってたのね」
「前に訊かれた時にうっかり言ってしまって……まさかお祝いして下さるとは思わなかったんですけど」
そうなのね、とママは申し訳なさそうに笑った。
「今日はもういいから、早く上がりなさい。あ、でも、ちょっと待ちなさい。給金は明日渡すけど、あなた、これあげる」
ママはカウンターの中に行くと、バッグの中からぽち袋を出し、札を折って入れ、それを聡子に握らせた。
「ほんの気持ちだけど、これで何か食べてきなさい」
そのぽち袋には、もちろん現金が入っていると思われた。
「くれぐれも狼には気をつけなさい」
「あの、ママ。さっきのお客様に、終わったらつき合ってくれって言われたんですけど、アフター? ってことでいいんですよね?」
「え」
「え」
ママとボーイが顔を見合わせた。
「やっぱりあなた、狙われて……」
「?」
「ママ、ちょっとオレが一言」
「いえ、私が行くわ。……身持ちのきれいな子だってわかって、食い散らかすつもりじゃないの。女癖の噂がないわけじゃないもの」
「?」
ママは急に怒り出し、トモの居場所を訊いた。外で待っているはず、と告げるとボーイの佳祐と一緒に外に出て行った。
「えっ? ど、どういうことですか?」
聡子はわけがわからずママの後に付いて行く。
表にいるというトモは、店の外に確かにおり、ママと佳祐はトモの姿を見つけてつかみかかりそうな勢いで詰め寄った。
「お客様、よろしいですか。神崎様のお知り合いの方と存じ上げていたので何も申し上げるつもりはなかったのですけどね。あの子、ミヅキのことですが、どういうおつもりかわかりかねますが、当店は性風俗店ではございませんので、性的なサービスはお断りしております。特にミヅキは見習いだと申し上げておりますし、それでもお客様には特別にご指名を受けているのだとご理解いただけないでしょうか? アフターも本来なら許可できません」
「えと……?」
トモはわけがわからない様子で二人を見返している。後ろにちょこんと立つ聡子を見て、ますますわけがわからない様子だ。
聡子も「性的サービス」という言葉を聞いて顔面蒼白になった。
「ママ! 佳祐さん! そんなつもりじゃ!」
「ちが……違いますよ! ミヅキが今日誕生日っていうから、ちょっと、美味いもん食わしてやりてえなって思って……。単純にどこか遅くまで開いている店でケーキでも食わしてやって祝ってやりたいって思っただけですよ……」
「え」
「は」
ママと佳祐は拍子抜けしたようだ。聡子はあわあわとする。こういうときはどうしたらいいのだろうか。
「ひっどいな……そういうサービス受けるなら違う店選びますよ。だいたい会長の息のかかった店のホステスに手ぇ出すわけないでしょう。しかも見習いでしょ? 無理言って指名しているのもちゃんと弁えていますよ」
トモはとても冷静に言っているようだった。
この店は、トモの属している組の関連らしい。
「ええっ……申し訳ございません、私の早とちりで……」
「申し訳ございません」
二人はしきりに謝った。
三人は店内に戻った。
「ミヅキ、あなた今日は誕生日だったんだね。何も知らなくてごめんね」
「いえ、別に言うほどのことでもないですし」
「ほかの子たちは盛大にお祝いしてやってるのに、ごめんね」
ママは申し訳なさそうだが、聡子は別段気にすることはないと思っている。
「でもあの客はあなたの誕生日、知ってたのね」
「前に訊かれた時にうっかり言ってしまって……まさかお祝いして下さるとは思わなかったんですけど」
そうなのね、とママは申し訳なさそうに笑った。
「今日はもういいから、早く上がりなさい。あ、でも、ちょっと待ちなさい。給金は明日渡すけど、あなた、これあげる」
ママはカウンターの中に行くと、バッグの中からぽち袋を出し、札を折って入れ、それを聡子に握らせた。
「ほんの気持ちだけど、これで何か食べてきなさい」
そのぽち袋には、もちろん現金が入っていると思われた。
「くれぐれも狼には気をつけなさい」
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