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【第1部】5.誕生日
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誕生日当日、トモは来店した。
「ミヅキ、影山様がいらっしゃったわ」
ママはもうトモが来店すると聡子に声をかける。トモも聡子しか指名をしないのだから当然のことだった。
「いらっしゃいませ」
聡子はトモのテーブルについた。
座るなり、トモは聡子に、
「ほら、これやるよ。プレゼントだ」
と言って紙袋を差し出した。中には包装された細長い箱が入っていた。
「な、なんですか?」
「今日、二十歳なんだろ」
トモは声をひめそる。年齢のことは秘密だと言ったことがあったからだろう。
「誕生日だってのに働いて……どうせ誰にも祝ってもらってねえんだろ」
「え……ありがとう、ございます」
目をぱちぱちさせて、礼を言う。
驚いたのだ。
誕生日を訊かれて答えたが、こんなことをしてもらいたくて答えたわけではなかったのにだ。
(嬉しい……)
開けてもいいですか、と尋ね、聡子はそれを開く。
ネックレスだった。
「まあそんな高えもんでもねえけどな」
ありがとうございます、ともう一度伝えた。
「嬉しい……」
すごく嬉しい、と聡子は笑う。
「あ、でも、資金源って……」
「あ? 資金源? 不安か? 前もそんなこと言ってたな。心配すんな。俺はちゃんと昼間はまっとうな仕事して働いて月給もらってる。言っとくけどな、あの頃もちゃんと働いてたぞ」
「そうなんですか? 消費者金融とか?」
「ちげーよ」
ヤクザのイメージが少し変わってきてるんだ、と聡子は思った。
「おまえは俺をなんだと思ってるんだ」
「えと……ち、チンピラ?」
ドラマとか映画のイメージ悪すぎ、とトモは苦笑した。
「まあ、昔は一時期借金の取り立てに付いてったりしたことあったけどな。ちゃんと働いてるよ。ツテで料理人やってる」
その言葉に聡子は驚く。
「料理人……」
「だから、ファミレスでうまいもん食ったりして、研究したりしてたんだよ。基本的にうまいもん食うのが好きなんだよ」
「女もでしたっけ」
「どうでもいいこと覚えてやがるな」
否定はしないけど、とトモは顔をしかめた。
「とにかく、それはまともな金で買ってる。おまえにやるから、素直に受け取ってくれればいい」
「わかりました。ありがとうございます。あの……すごく嬉しいです……大切にします」
と聡子は泣きそうになりながら笑った。
「それほどまでにしなくてもいいけどよ……」
まいったな、とトモはばつが悪そうだった。
(嬉しい……男の人からもらうのも初めてだし、まさかトモさんがこんなことしてくれるなんて……)
「そんなに喜ばれるとちょっとな……」
トモは、聡子の顔を見て、困惑している様子だった。なぜそんな様子なのか、浮かれた聡子には考えが及ばなかった。
「ああそうだ。なあ、終わったらちょっと付き合えないか?」
「え? いいですけど」
「終わるまで待ってるから」
「あの、アフター……ってことですか?」
「あー、いや、そういうつもりはねえけど……ママさんに報告とか許可がいるならちゃんと言ってきてくれ」
じゃあ先出て待ってるから、と小一時間ほど酒を飲んでトモは出ていった。
「ミヅキ、影山様がいらっしゃったわ」
ママはもうトモが来店すると聡子に声をかける。トモも聡子しか指名をしないのだから当然のことだった。
「いらっしゃいませ」
聡子はトモのテーブルについた。
座るなり、トモは聡子に、
「ほら、これやるよ。プレゼントだ」
と言って紙袋を差し出した。中には包装された細長い箱が入っていた。
「な、なんですか?」
「今日、二十歳なんだろ」
トモは声をひめそる。年齢のことは秘密だと言ったことがあったからだろう。
「誕生日だってのに働いて……どうせ誰にも祝ってもらってねえんだろ」
「え……ありがとう、ございます」
目をぱちぱちさせて、礼を言う。
驚いたのだ。
誕生日を訊かれて答えたが、こんなことをしてもらいたくて答えたわけではなかったのにだ。
(嬉しい……)
開けてもいいですか、と尋ね、聡子はそれを開く。
ネックレスだった。
「まあそんな高えもんでもねえけどな」
ありがとうございます、ともう一度伝えた。
「嬉しい……」
すごく嬉しい、と聡子は笑う。
「あ、でも、資金源って……」
「あ? 資金源? 不安か? 前もそんなこと言ってたな。心配すんな。俺はちゃんと昼間はまっとうな仕事して働いて月給もらってる。言っとくけどな、あの頃もちゃんと働いてたぞ」
「そうなんですか? 消費者金融とか?」
「ちげーよ」
ヤクザのイメージが少し変わってきてるんだ、と聡子は思った。
「おまえは俺をなんだと思ってるんだ」
「えと……ち、チンピラ?」
ドラマとか映画のイメージ悪すぎ、とトモは苦笑した。
「まあ、昔は一時期借金の取り立てに付いてったりしたことあったけどな。ちゃんと働いてるよ。ツテで料理人やってる」
その言葉に聡子は驚く。
「料理人……」
「だから、ファミレスでうまいもん食ったりして、研究したりしてたんだよ。基本的にうまいもん食うのが好きなんだよ」
「女もでしたっけ」
「どうでもいいこと覚えてやがるな」
否定はしないけど、とトモは顔をしかめた。
「とにかく、それはまともな金で買ってる。おまえにやるから、素直に受け取ってくれればいい」
「わかりました。ありがとうございます。あの……すごく嬉しいです……大切にします」
と聡子は泣きそうになりながら笑った。
「それほどまでにしなくてもいいけどよ……」
まいったな、とトモはばつが悪そうだった。
(嬉しい……男の人からもらうのも初めてだし、まさかトモさんがこんなことしてくれるなんて……)
「そんなに喜ばれるとちょっとな……」
トモは、聡子の顔を見て、困惑している様子だった。なぜそんな様子なのか、浮かれた聡子には考えが及ばなかった。
「ああそうだ。なあ、終わったらちょっと付き合えないか?」
「え? いいですけど」
「終わるまで待ってるから」
「あの、アフター……ってことですか?」
「あー、いや、そういうつもりはねえけど……ママさんに報告とか許可がいるならちゃんと言ってきてくれ」
じゃあ先出て待ってるから、と小一時間ほど酒を飲んでトモは出ていった。
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