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【第1部】1.出逢い
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高校三年生の秋。
聡子は、就職が決まり、学校行事や資格勉強以外に、放課後はこれまでも続けていたアルバイトに勤しんでいた。基本的にアルバイトは認められていないが、申請をすれば承認される。部活動や資格取得学習が盛んな聡子の高校では、アルバイトをする時間が当てられる時間も少ない。聡子は活動日の少ない商業研究部に選択して所属し、あまり大会の成績はいいとは言えないが、それなりに貢献はしているつもりだった。
「卒業したら遠距離だなー」
友達の鈴木美弥が言う。
「下山君、サッカー推薦だったっけ。県外かあ……」
美弥の彼はサッカー部で活躍した生徒で、大学は先頃推薦合格をしていた。
「うん、まあ新幹線で一時間ってところだけど。免許取ったら車でも行けちゃうし」
市内の専門学校に進学する美弥とは、離れてしまう。前々からわかってはいたことだが、その日が少しずつ近づいてくるのが寂しいようだ。
「そうだ聡子、翔太君からの伝言あったんだった」
「下山君から? どんな?」
「聡子に告白したい子がいるんだって」
「ブハッ」
聡子は、ぶんぶんと首を振った。
「いつも言うけど、興味ないから」
「好きな人いないの?」
「いないよ。だいたい、地味なわたしの何を見て気に入るんだろうね」
「聡子のこと気に入ってる男子、結構いるんだよ? 聡子に彼氏はいるのかとか、好きなヤツいるのか、って、翔太君から探りがくるんだよね。そのたびに『相変わらず情報は更新されてないよ』って言うんだけどさ」
「……ごめん」
いつもどおり断って、と聡子は美弥を拝んだ。
美弥には悪いが、本当に好きな人もいないし、いても相手のために割く時間が持てそうにないのだ、今は。
「あっ、バイトの時間だから。ごめん! 先行くね。下山君に謝っといて」
聡子はその場から駆け出した。
「ハイハイ、わかったよ」
美弥は毎度のことだと言うように、頷いて手を振ってくれた。
聡子は、就職が決まり、学校行事や資格勉強以外に、放課後はこれまでも続けていたアルバイトに勤しんでいた。基本的にアルバイトは認められていないが、申請をすれば承認される。部活動や資格取得学習が盛んな聡子の高校では、アルバイトをする時間が当てられる時間も少ない。聡子は活動日の少ない商業研究部に選択して所属し、あまり大会の成績はいいとは言えないが、それなりに貢献はしているつもりだった。
「卒業したら遠距離だなー」
友達の鈴木美弥が言う。
「下山君、サッカー推薦だったっけ。県外かあ……」
美弥の彼はサッカー部で活躍した生徒で、大学は先頃推薦合格をしていた。
「うん、まあ新幹線で一時間ってところだけど。免許取ったら車でも行けちゃうし」
市内の専門学校に進学する美弥とは、離れてしまう。前々からわかってはいたことだが、その日が少しずつ近づいてくるのが寂しいようだ。
「そうだ聡子、翔太君からの伝言あったんだった」
「下山君から? どんな?」
「聡子に告白したい子がいるんだって」
「ブハッ」
聡子は、ぶんぶんと首を振った。
「いつも言うけど、興味ないから」
「好きな人いないの?」
「いないよ。だいたい、地味なわたしの何を見て気に入るんだろうね」
「聡子のこと気に入ってる男子、結構いるんだよ? 聡子に彼氏はいるのかとか、好きなヤツいるのか、って、翔太君から探りがくるんだよね。そのたびに『相変わらず情報は更新されてないよ』って言うんだけどさ」
「……ごめん」
いつもどおり断って、と聡子は美弥を拝んだ。
美弥には悪いが、本当に好きな人もいないし、いても相手のために割く時間が持てそうにないのだ、今は。
「あっ、バイトの時間だから。ごめん! 先行くね。下山君に謝っといて」
聡子はその場から駆け出した。
「ハイハイ、わかったよ」
美弥は毎度のことだと言うように、頷いて手を振ってくれた。
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