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4.一途男子×ツンデレ女子
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「松本、葵姫様とケンカでもした?」
ふいに山下が言った。
屋上で、昼休みに男子高校生は日向ぼっこというように転がっている。
山下は、隆太が最近は終礼が終わるとさっさと帰っていくのを見てそう思ったらしい。
「いや、別に」
「時々、加藤が教室を覗いていくのを見かけるからさ。おまえが加藤のクラスを覗くのは日常茶飯事だけど、反対はなかったなって」
それが事実なら確かに珍しいことだ、と隆太は思った。
自分の様子を伺いにきているのだろうか。
「別になんでもないよ。もうつきまとうなみたいなこと言われただけ」
「そうなの? のわりには、加藤が来るのってどういうこと? まるでおまえを怒らせたみたいだな。逆はありそうだけど」
「……怒ってはないよ。ちょっと、まあそう言われて、反省してるだけ」
「そっか」
ケンカじゃないならいいけど、と山下は言った。
それはそうと、と彼は続けた。
「おまえには相談乗ってもらったから、打ち明けるけど」
「ん? どした? 彼女絡み?」
「うん、俺さ……彼女と……したんだよね」
「した? 何を?」
山下のカミングアウトに、隆太は何をしたのかがわからない。
「まさか……き、す……?」
「いやいや、それは済ませてるって。そのもっと先」
「え」
隆太には衝撃的なことだった。
「セ……」
「そう、セがつくこと」
「セックス?」
「言うのかよ」
山下は苦笑いをして、隣に転がる隆太を見た。照れくさそうだが嬉しさを隠せないでいるのがわかる。
「気持ちよかったのか?」
「うん……俺はね。気持ちいいっていうより、めちゃくちゃ幸せって感じが先だったけど。まあ、彼女は痛がってたけど、それから何度かしてるうちに痛くなくなったみたいで、気持ちいいって言ってくれてる」
「そっか、よかったな」
「うん」
「俺の身近でそういう話聞くの初めてだったから、ちょっと驚いた」
隆太の周りの男子で、経験したという話を聞いたのは始めてだった。言わないだけで、彼女持ちの男子は済ませているのかしれないとは思ったが。
「まあ、言いふらすことじゃないからな」
「高校生で性体験、する人いるんだな」
「うーん、高校生でも、結構性交渉経験率は少なくないみたい」
「そうなんだ」
「悪いことしてるみたいだったけど、そういう雰囲気になって、そのまま……な」
隣の山下がものすごく大人に見えた。
「まあ、一度してしまったら、二回目三回目って……。まあ、俺の彼女、別の高校だし、週に一回会えるか会えないか、って感じだし。俺は、めちゃくちゃ嬉しいし、彼女もそう言ってくれるしな」
「そっか……」
それでな、と山下は急に身体を起こし、ポケットから財布を出した。
「?」
「おまえにも一つやる」
「なに?」
隆太も身体を起こす。
山下は財布から何か小さいパッケージを取り出し、隆太に差し出した。
「一つ持っとけ」
「なに?」
「ゴム」
「ゴム? ……えっ、コンドーム!?」
手にした隆太は悲鳴のような声を出してしまった。周囲に聞こえていないか周囲を伺ったが、誰もこちらを振り向く者はいなかった。
「なんで俺に」
「俺さ、ほんとそういう雰囲気になるって思ってなかった時でさ。まあ、持ってたのは持ってたけど。おまえは、きっと持ってないだろうから。一つ、財布に入れとけ」
「いや、使うことないし」
隆太は首を振った。
「わからんぞ。いつどういうふういに葵姫様とするチャンスが来るか」
「……葵とは、ないよ」
「それはわからない。葵姫様のほうから、おまえに迫ってきたら」
「絶対にない」
「まあそれはないとしても、おまえが迫る可能性があるだろ」
山下も葵からは「ない」と思っているらしい。
「あったとしても、絶対拒否られる。それに今の俺にはその可能性はゼロだ」
「今はゼロでも、明日は1パーセントかもしれない。まあ葵姫様とじゃない可能性もあるし、持っておけ。二個目以降は自分で買ってくれ」
「……ありがとう」
隆太は受け取り、今は財布がないので、そのままポケットにしまった。
「落とすなよ」
「気をつける」
──隆太は家に帰ると、ポケットのコンドームを思い出し、慌てて探った。落としてはいない。急いで財布にしまう。
改めて手にするとドキドキした。
(どうやって使うんだっけ)
使うことはないはずだが、山下の言葉を思い出し、いつ使うかわからないものなのだと実感する。
(まあ、葵とはそんな日は来なさそうだな……)
使うなら葵がいいのはもちろんだ。
(使い方の練習もしたいし、買ったほうがいいのかな……)
自分が健全な男子高校生だということを感じた隆太だった。
ふいに山下が言った。
屋上で、昼休みに男子高校生は日向ぼっこというように転がっている。
山下は、隆太が最近は終礼が終わるとさっさと帰っていくのを見てそう思ったらしい。
「いや、別に」
「時々、加藤が教室を覗いていくのを見かけるからさ。おまえが加藤のクラスを覗くのは日常茶飯事だけど、反対はなかったなって」
それが事実なら確かに珍しいことだ、と隆太は思った。
自分の様子を伺いにきているのだろうか。
「別になんでもないよ。もうつきまとうなみたいなこと言われただけ」
「そうなの? のわりには、加藤が来るのってどういうこと? まるでおまえを怒らせたみたいだな。逆はありそうだけど」
「……怒ってはないよ。ちょっと、まあそう言われて、反省してるだけ」
「そっか」
ケンカじゃないならいいけど、と山下は言った。
それはそうと、と彼は続けた。
「おまえには相談乗ってもらったから、打ち明けるけど」
「ん? どした? 彼女絡み?」
「うん、俺さ……彼女と……したんだよね」
「した? 何を?」
山下のカミングアウトに、隆太は何をしたのかがわからない。
「まさか……き、す……?」
「いやいや、それは済ませてるって。そのもっと先」
「え」
隆太には衝撃的なことだった。
「セ……」
「そう、セがつくこと」
「セックス?」
「言うのかよ」
山下は苦笑いをして、隣に転がる隆太を見た。照れくさそうだが嬉しさを隠せないでいるのがわかる。
「気持ちよかったのか?」
「うん……俺はね。気持ちいいっていうより、めちゃくちゃ幸せって感じが先だったけど。まあ、彼女は痛がってたけど、それから何度かしてるうちに痛くなくなったみたいで、気持ちいいって言ってくれてる」
「そっか、よかったな」
「うん」
「俺の身近でそういう話聞くの初めてだったから、ちょっと驚いた」
隆太の周りの男子で、経験したという話を聞いたのは始めてだった。言わないだけで、彼女持ちの男子は済ませているのかしれないとは思ったが。
「まあ、言いふらすことじゃないからな」
「高校生で性体験、する人いるんだな」
「うーん、高校生でも、結構性交渉経験率は少なくないみたい」
「そうなんだ」
「悪いことしてるみたいだったけど、そういう雰囲気になって、そのまま……な」
隣の山下がものすごく大人に見えた。
「まあ、一度してしまったら、二回目三回目って……。まあ、俺の彼女、別の高校だし、週に一回会えるか会えないか、って感じだし。俺は、めちゃくちゃ嬉しいし、彼女もそう言ってくれるしな」
「そっか……」
それでな、と山下は急に身体を起こし、ポケットから財布を出した。
「?」
「おまえにも一つやる」
「なに?」
隆太も身体を起こす。
山下は財布から何か小さいパッケージを取り出し、隆太に差し出した。
「一つ持っとけ」
「なに?」
「ゴム」
「ゴム? ……えっ、コンドーム!?」
手にした隆太は悲鳴のような声を出してしまった。周囲に聞こえていないか周囲を伺ったが、誰もこちらを振り向く者はいなかった。
「なんで俺に」
「俺さ、ほんとそういう雰囲気になるって思ってなかった時でさ。まあ、持ってたのは持ってたけど。おまえは、きっと持ってないだろうから。一つ、財布に入れとけ」
「いや、使うことないし」
隆太は首を振った。
「わからんぞ。いつどういうふういに葵姫様とするチャンスが来るか」
「……葵とは、ないよ」
「それはわからない。葵姫様のほうから、おまえに迫ってきたら」
「絶対にない」
「まあそれはないとしても、おまえが迫る可能性があるだろ」
山下も葵からは「ない」と思っているらしい。
「あったとしても、絶対拒否られる。それに今の俺にはその可能性はゼロだ」
「今はゼロでも、明日は1パーセントかもしれない。まあ葵姫様とじゃない可能性もあるし、持っておけ。二個目以降は自分で買ってくれ」
「……ありがとう」
隆太は受け取り、今は財布がないので、そのままポケットにしまった。
「落とすなよ」
「気をつける」
──隆太は家に帰ると、ポケットのコンドームを思い出し、慌てて探った。落としてはいない。急いで財布にしまう。
改めて手にするとドキドキした。
(どうやって使うんだっけ)
使うことはないはずだが、山下の言葉を思い出し、いつ使うかわからないものなのだと実感する。
(まあ、葵とはそんな日は来なさそうだな……)
使うなら葵がいいのはもちろんだ。
(使い方の練習もしたいし、買ったほうがいいのかな……)
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