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2.地味男子×無邪気女子
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「吉井さん、花火大会、一緒に行かない?」
期末テストが終わった日、幼馴染の吉井陽花が、三沢千尋の友達、大川翔平に呼び出されていた。呼び出された、というより、陽花を呼んでくれと言われて手引きをしたのは千尋だった。
人が来ないよう見張りながら、翔平が陽花を誘う様子を伺う。
「いいけど……」
「ほんと!?」
(いいの!?)
「でも、ちーちゃん……三沢君も一緒に行ってもいい?」
「えっ」
(えっ!)
陽花の口から自分の名前が出て驚く。
「三沢君と行く予定にしてたし……」
(してないしてないしてないまだ今年はしてないよ!)
なんてこと言うんだ、と千尋は焦る。
翔平が陽花を気に入っているのを知っている。だからお膳立てをしようとしているのに、なぜそこで自分の名前を出すのか、理解ができない。
「うん、いいよ……」
翔平は陽花の圧しに負けたようだった。
陽花とは幼馴染で、高校生になった今でも仲がいい、と思っている。クラスこそ違うが、同じ高校で、幼馴染だということは恐らくみんな知っている。陽花は何気に人気者なので、千尋が彼氏ではなくただの幼馴染とわかると、結構告白をされたり、千尋を使って探りを入れたりする男子生徒も少なくなかった。
大川翔平もその一人だったわけだが。
「ちーちゃん、港の花火、今年も見に行くよね?」
その後、陽花に誘われた。
陽花は今日、大川翔平に誘われたはずだ。
「一緒に行きたい人がいるんじゃないの?」
「ううん、別にいない。でも今日大川君に誘われたから、ちーちゃんも一緒でいいならって言っといたよ。ちーちゃんと今まで一緒に行ったでしょ」
「行ったけど……」
「嫌なの?」
「嫌じゃないよ」
彼氏でもないのに一緒に自分が行ってもいいものか、と考える。
千尋と仲のいいイケメンサッカー部・大川翔平が陽花を好きになってしまったらしく、幼馴染の千尋に探りを入れてくる。
友達だと思っていたが、陽花目当てで仲良くするようになったのではと最近は思ってしまっている。でなければ、あんなキラキラと自分が親しくなれるはずがない。
「ねえ、はるちゃんって、好きな人、いるの……?」
「え」
翔平に探るように言われたことを思い出し、陽花に直接尋ねてみた。
「い、いるよ」
どもりながら陽花は答えてくれた。
「そ、そっか」
「なんで?」
千尋は正直に答えるしかなかった。もしかしたら、翔平のことだと察するかもしれないが、やむを得ない。花火に誘った時点で、もう察しているだろう。
「はるちゃんを好きだっていう人がいて、彼氏とか好きな人がいるのか訊いてほしいって」
「なんだ、そういうこと」
ちーちゃんじゃないんだ、と陽花は残念そうに言った。
「僕じゃないよ」
「じゃあ、いるって伝えておいてよ」
「わかった」
「誰かとは聞かないんだ」
「あー、それは個人情報だから」
「ちーちゃんには教えてあげようか?」
「いいよ別に。なんでも僕に言わなくて大丈夫だから」
陽花に好きな人がいる、そのことに少し胸が痛んだ。
期末テストが終わった日、幼馴染の吉井陽花が、三沢千尋の友達、大川翔平に呼び出されていた。呼び出された、というより、陽花を呼んでくれと言われて手引きをしたのは千尋だった。
人が来ないよう見張りながら、翔平が陽花を誘う様子を伺う。
「いいけど……」
「ほんと!?」
(いいの!?)
「でも、ちーちゃん……三沢君も一緒に行ってもいい?」
「えっ」
(えっ!)
陽花の口から自分の名前が出て驚く。
「三沢君と行く予定にしてたし……」
(してないしてないしてないまだ今年はしてないよ!)
なんてこと言うんだ、と千尋は焦る。
翔平が陽花を気に入っているのを知っている。だからお膳立てをしようとしているのに、なぜそこで自分の名前を出すのか、理解ができない。
「うん、いいよ……」
翔平は陽花の圧しに負けたようだった。
陽花とは幼馴染で、高校生になった今でも仲がいい、と思っている。クラスこそ違うが、同じ高校で、幼馴染だということは恐らくみんな知っている。陽花は何気に人気者なので、千尋が彼氏ではなくただの幼馴染とわかると、結構告白をされたり、千尋を使って探りを入れたりする男子生徒も少なくなかった。
大川翔平もその一人だったわけだが。
「ちーちゃん、港の花火、今年も見に行くよね?」
その後、陽花に誘われた。
陽花は今日、大川翔平に誘われたはずだ。
「一緒に行きたい人がいるんじゃないの?」
「ううん、別にいない。でも今日大川君に誘われたから、ちーちゃんも一緒でいいならって言っといたよ。ちーちゃんと今まで一緒に行ったでしょ」
「行ったけど……」
「嫌なの?」
「嫌じゃないよ」
彼氏でもないのに一緒に自分が行ってもいいものか、と考える。
千尋と仲のいいイケメンサッカー部・大川翔平が陽花を好きになってしまったらしく、幼馴染の千尋に探りを入れてくる。
友達だと思っていたが、陽花目当てで仲良くするようになったのではと最近は思ってしまっている。でなければ、あんなキラキラと自分が親しくなれるはずがない。
「ねえ、はるちゃんって、好きな人、いるの……?」
「え」
翔平に探るように言われたことを思い出し、陽花に直接尋ねてみた。
「い、いるよ」
どもりながら陽花は答えてくれた。
「そ、そっか」
「なんで?」
千尋は正直に答えるしかなかった。もしかしたら、翔平のことだと察するかもしれないが、やむを得ない。花火に誘った時点で、もう察しているだろう。
「はるちゃんを好きだっていう人がいて、彼氏とか好きな人がいるのか訊いてほしいって」
「なんだ、そういうこと」
ちーちゃんじゃないんだ、と陽花は残念そうに言った。
「僕じゃないよ」
「じゃあ、いるって伝えておいてよ」
「わかった」
「誰かとは聞かないんだ」
「あー、それは個人情報だから」
「ちーちゃんには教えてあげようか?」
「いいよ別に。なんでも僕に言わなくて大丈夫だから」
陽花に好きな人がいる、そのことに少し胸が痛んだ。
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