突然恋に落ちたら

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【幸成編】

12.情交(前編)

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 街の外れにあるホテルを見つけ、空いた部屋を適当に見つけ、入るや否や、二人はもつれあうようにキスをしながら服を脱いだ。
 シャワーなんてどうでもいいから、と桃子をベッドに押し倒した。
 頬を挟み、貪るようなキスをした後、荒々しく桃子の両胸を掴む。久しぶりに目の当たりにした彼女の身体に、興奮は収まらず、増す一方だ。
(乳、大きくなった……?)
 あの頃は発展途上だった気がするが、十年もあれば、誰か別の男に散々触れられたことだろう、成長もするはずだ。
(綺麗な形だ……大きくはないけど、俺が悦ぶには充分だ)
「ごめん、相変わらず大きくないよ」
「いえ、そんなのは関係ないです。お嬢のがいいんですから」
 胸の頂を口に含み、口内で、そして舌先で攻めると彼女は小さく啼いた。
「可愛い」
「……っ」
 秘部に手を伸ばすと、しっかり溢れていて、指をその奥へと侵入させた。
 痛んだのか、桃子は顔をしかめた。
「……っ」
「すみません、強くしすぎましたね」
「大丈夫……。ずっとしてないから、びっくりしただけ」
(ずっと……?)
「あの……下世話なことを訊きますが、最近は使ったのはいつ……」
「高校生の時に、鶴丸としただけで、ずっとしてない」
 彼女は顔を背けたあと、覆った。
「鶴丸としか、こういうことはしてない!」
「マジですか……」
 誰のものにもなってない、それは「今」じゃなく、あの日からずっと、という意味だということに気づいた。
 自分以外の男に抱かれたことはない、そういうことだ。
「ここに、俺のしか挿れたことがないって……こと……」
「そうだよ! 言わせないでよ……カッコ悪い……」
 カッコ悪くないです、と幸成は笑った。
「嬉しいです」
「……変なの」
「お嬢ならモテそうなのに」
 そんなこと、と桃子は顔を隠したままだか赤くなっているのが見えていた。
「モテようがモテまいが、好きな人に振り向いてもらえなきゃ意味ないよ」
 桃子の両手をそっと払い、顔を覗き込んだ。
「……可愛いですね」
 両腕を押さえ付け、キスを落とした。
「鶴丸は……相変わらずお盛ん?」
「前はそうでしたけど、今は相手にされなくなりましたよ。遊びの相手に、枯れたオッサンには興味ないんでしょう」
「枯れてない」
「はぁ……いろいろしようと思いましたけど、後でもいいですね」
 あちこちに触れて、彼女には自分のものを咥えてもらおう、そう思っていた。
「へ……?」
「早くお嬢のナカに挿れたい気持ちなんで」
 どうせ歯止めは利きそうにないし、まだまだ彼女を眠らせるつもりはない。彼女の身体を貪って果てるつもりでいるのだ。
「お嬢に会って、性欲が収まらないんでね」
 備え付けのゴムを拝借したあと、桃子の太股を掴んで引き寄せた。
「ゆっくり、しますから……ね」
「……うん」
 ゆっくり、ずぶりと、桃子のナカに侵入してゆく。身体が強ばっているのがわかったが、震えてはいなかったので、そのまま止めることはしなかった。
「……あー……」
「んっ……」
(締め付けてくる……)
 抱き合い、しばらくそのまま動かずにいたが、勝手に結合部がひくついているので、ゆっくりと動き出した。
 上半身を起こし、横たわる桃子の顔を見やる。
 目をぎゅっと瞑って、吐息を洩らしている。
 腰を掴み、奥へぶつけるように打ち付けた。
「……ひゃんっ……」
(今の、良かったんだ……)
 緩急をつけた動きに、桃子の息は荒くなっていく。もちろん幸成の息も荒くなる。
 緩慢な動きのあと、胸に手を置いた。
「思い出しました……お嬢は……胸の先を抓まれると悦んでましたよね……」
 親指と人差し指で抓ると、びくりと身体を震わせた。
「やっ……痛いよ……」
「すみません、強すぎましたね。加減は思い出せなくて……」
 また腰を打ち付ける。
 このまま動くだけで果てそうだった。
「鶴丸ぅ……」
 桃子が手を伸ばしてきた。 
 動きを緩めたあと、桃子が起き上がりたがったので、そっと抱き起こした。対面になり、二人は見つめ合った。
「大丈夫ですか」
「……うん」
「痛くないですか」
「大丈夫だよ」
 首に腕を回してきた桃子がキスをせがんだ。拒む理由もないのでそれを受け入れ、幸成も彼女の腰に手を回した。
 大人になっても、ベッドの上では未熟なあの頃のままのようで、幸成は嬉しくなった。
 目の前の乳房に吸い付き、悶える桃子の顔を盗み見る。
「胸が好きなの……?」
「お嬢の乳が好きですね、可愛くて綺麗でもっと吸い付きたくなる」
 いろんな女のものを見てきたが、目の前にある桃子のものがいちばんだと思った。
「……鶴丸の、その……挟めないよ?」
「そんなことはどうでもいいです」
 つながった場所がビクビクとしている。
「お嬢のがいいんです、そのお嬢と一つになれれば幸せです」
 動かないことが我慢できず、下からぐいぐいと突き上げる。
「待って……待って……それ……」
「イイんですか? イイんですよね?」
「うんっ……」
 肩に手を乗せられ、桃子は天井を仰いだ。
 目の前で、形のいい桃子の胸が揺れ、口元が緩んでいく。
 ごろんと幸成は後ろに倒れ込み、桃子も一緒に雪崩れ込んだ。
「お嬢、俺の上で腰振ってください。できますよね?」
 うん、と頷き、桃子は上半身を起こした。
「下手なままだよ?」
「いいから。動いて」
 桃子が自分の上で揺れるのが好きだった。
 騎乗位で彼女に動いてもらい、その様子を見て興奮していた。あの時は、自分の欲望は半ば抑えつけて、桃子の要望に応えているふりをしていたが。
「上手ですよ」
「……んっ……」
 前後左右に動き、桃子は快感を取り戻しているように見えた。
(気持ち良さの度合いより……お嬢が俺の上で揺れてるって思うと、それだけでも興奮するんだよな……嬉しい……)
 あの頃も、セックスを覚えた桃子が、幸成を悦ばせようと一生懸命になっていた。今もそれは変わっていない。
 他の女に比べれば正直下手だが、そんなことは気にならない。他の女達は遊びだし、その相手も目的は快楽なのだから当然巧い。桃子は比較するに値しないのだ。
「……いい、ですね……」
 目を閉じ、上り詰めてくる快感に集中する。
(このまま……)
 ぐいぐい、ぐりぐり、と桃子は腰の動きを強め、そして早めていく。
「あっ……待っ……」
「……っ……っ……」
 幸成の腹に手を添え、前屈みで桃子は腰を降り続ける。
(ヤバい……)
 もう無理だ、我慢できない、と幸成は腰を浮かせた。
「……だっ……イクっ……!」
 どくどくどく……、溢れていく音が聞こえてきそうな勢いだった。
 幸成の身体に桃子は倒れ込み、腕を回した。


 何度も、果てては欲望を湧かせる、ということを繰り返した。
 幾度絡み合ったかわからないくらい、熱と欲を吐き出した。
 ぐったりした桃子に、
「まだまだ足りませんよ」
 と覆い被さり貪った。
「……うん、いいよ」
 もう無理、もう駄目、とは言わないので、最後には意地になって言わせようと必死で抱いた。
「お嬢……すみません、俺がもう無理です……」
 幸成のほうが降参してしまった。
「うん……休もっか……」
「はい……」
 二人は果てたあと、泥のように眠った。
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