突然恋に落ちたら

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3.嫉妬と欲望

7.真実

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 朝目を覚ますと、隣に佑香がいた。
(夢じゃない)
 すぅすぅと規則正しい寝息を立てて眠っている。
 身体が痛い。
(マジでもってかれそうなくらいだったな)
 濃密な夜になったなと思っている。
 今は二人で布団にくるまっているが、昨夜が汗だくになるまで抱き合った。疲れてそのまま眠ってしまったのが証拠だ。
(散々搾り取られたと思ったけど)
 あんなに淫らな佑香は初めてかもしれない、そう思った。眠っていた性欲をさらけだすように彼女は乱れていた。佑香の相手が自分でよかった、と本当に思う。こんないい女を他の男に取られなくてよかった、と。
 むくり、と自分のモノがまた勃ちあがってゆくのがわかる。思い出すだけでこの有様だ。
 布団を少し上にあげ、佑香の身体に手を伸ばした。
(オッサンだけど、まだまだ俺もいけるのかな)
 彼女が若いってこともあるかもしれないけど、と思う慶孝だ。
 佑香の身体をまさぐっていると、彼女が目を覚ました。
(残念、もうちょっと悪戯したかったのになあ)
「……おはよ。佑香のあそこ、トロトロになってるよ」
「……ふぇっ!?」
 気持ちが冷めることがあるのだろうか、と寝ぼけ眼の佑香を見て考える。
 職場のパートの女性の台詞を思い出し、不安になってしまうこともあるが、幸成が言うように先のことを考えても仕方がないだろう。
「眠いなら寝とけ」
 ぽんぽん、と佑香の頭を撫でると、彼女がふにゃりと笑った。




「佑香」
「はい」
 自分の部屋の浴室、浴槽より、佑香の部屋のほうが少しだけ広い。何度も一緒に入った風呂だが、佑香の所のほうが少し余裕がある。とはいえ、密着するのは同じなのだが。
「あのさ」
「なんでしょうか」
 後ろから佑香の身体を抱き締め、昨夜散々愛し合って疲れてしまった身体を湯船に浸かって休めている。
「なんで俺の名前は呼ばないのに、幸成は名前で呼ぶんだよ」
 ずっと気になっていることがあった。それが自分のことをいつまでも苗字で呼ぶことだった。最初は自分も『佑香ちゃん』だったが、二人が一つになった日からは呼び捨てになっている。きっかけがあれば呼べたのではないだろうかと思っていた。
「……それは」
「それは、なに」
 佑香の両胸に置いていた手に力を入れる。おかしなことを言えば、指で先端を抓んでやろうと身構えている。
「幸成さんの苗字、呼びたくないんで……」
「なんで」
「『鶴丸』さんですよね」
「ああ、鶴丸幸成。あのツラで、侍みたいな名前だよな」
「そうなんです……」
 佑香の声のトーンが落ちた。
「わたしが前に好きだった漫画……ゲームにもなったんですけど、推してたキャラが『鶴丸』っていうカッコいいキャラで」
 え、と慶孝は小さく驚きの声をあげた。
「鶴丸、って言ったらもうそのキャラなんです! 主人公にすごく忠実な臣下のキャラなのに、幸成さんのせいで、もう推せなくなってしまって……」
 そうなの、と慶孝は拍子抜けしてしまった。
 そもそも佑香は漫画や小説のシチュエーションに憧れていた女の子だ。自分と出会ったことで現実と空想は違うことはよくわかってはいるだろう。
 しかし。
「だから絶対に、苗字で呼びたくないんです」
「あ……そう……そうだったんだ……」
 慶孝には理解できなかったが、佑香には佑香のこだわりがあるのだろう。
「松田さんは、幸成さんと差をつけたかったので、苗字で呼んでいます」
「なんだ……」
 それでも差をつけているつもりだったのか、と知り、慶孝は可笑しくなった。佑香の背中に顔をすり寄せ、
「そういう理由か……ははっ……」
 と呟くように笑った。
「もしかして、そのせいで気を悪くされてましたか?」
 軽く振り向こうとした佑香に、
「ちょっと、また、嫉妬してた」
 と言った。首を伸ばして佑香の頬にキスをする。
「嫉妬深い男だな、俺」
「そんなことはないですけど」
「佑香を好きすぎてヤバいな」
「……嬉しい、です」
「こっち向いて」
 佑香を一度立ち上がらせ、再び座らせる。
「可愛い」
「たくさん聞きましたよ」
「可愛すぎてチューしたくなる」
 慶孝が唇を尖らせると、
「いいですよ」
 と佑香も唇と突き出してきた。
 目が合うと、どちらからともなく笑った。
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