帰還した召喚勇者の憂鬱 ~ 復讐を嗜むには、俺は幼すぎるのか? ~

北きつね

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第四章 噂話

第八話 勧誘

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 俺の家を監視していた者から連絡が入った。

 CBR400Rの場所を確認する。
 予想とは違う人物だけど、ターゲットの一人が無事に釣れたようだ。

 思念体を飛ばして様子を見ていれば・・・。

 何か考えがあってCBR400Rを盗んだのかと思ったが、何も考えていなかったようだ。

 様子を見た限りだと、整備士は半分拉致の様な形で連れてこられたようだ。背後関係は調べた限りでは、直接の関係はなさそうだ。いわゆる金の繋がりだけだ。あとは直接聞いたほうがいいかもしれない。状況次第では、こちらに引き込めるかもしれない。

 バイクだけだとしても、整備ができる人が仲間に加わってくれると頼もしい。
 馬込先生の繋がりで整備工場とのつながりは出来ているけど、拠点の中に入れるには、”何かが足りない”と感じている。外周部で店を開いてもらって、拠点以外に住む人たちの乗り物のメンテナンスをしてもらっている。

 今回は、釣れたやつを始末した方がいいだろう。やり方を考えなければならない。殺してしまっては、復讐の意図が伝わらない。

 しっかりと苦しんでもらわなければならない。

 日本の法律は本当に素晴らしい。
 特に司法は、しっかりと整備されている。時々、逸脱した適用をおこなうことがあるようだけど、権力者を擁護するようになっている。それも、証拠主義を貫いているのが素晴らしい。どんなに状況が黒でも、証拠がそろわなければグレーのままで物事が推移する。そして、その証拠も立証されなければならない。

 奴らを呪い殺したとしても、”呪い”を立証する責任は検察側にあり、俺が協力する必要がないのが素晴らしい。

 さて、どんな”呪いスキル”がいいだろうか?
 闇属性のスキルを使って、自分の行いによって引き起こされた悪夢をみてもらおう。
 発動条件は、自分以外への暴力でいいかな。ついでに性行為も発動条件にしておこう。
 おっまだスキルに余裕があるのなら、接触部分の痛みを追加しておこう。瞬間的には激痛が襲ってきて、そのあとで鈍痛がつづくようにしよう。

 復讐のターゲットにしていなかったやつだ。ひとまずは、この程度で十分だろう。

 遠隔での”呪い”付与は不可能だ。
 寝たのを確認してから、スキルを発動して”呪い”をかけよう。

 転移のスキルも使い続けていたら、レベルアップしたようだ。
 前は、一度は現地にいかなければならなかったのだが、思念体を飛ばして現地の確認ができれば転移ができる。便利につかえるようになった。思念体は、一般の人がいっている”幽霊”と似た性質がある。移動手段として、空中を進むことができるだけではなく、壁程度なら突破ができる。突破できる壁にも制限があり、結界で覆われている場所は思念体では通過ができない。
 この世界地球では、結界のスキル持ちは仲間俺たちだけだと思うので、制限にはならない。もう一つの制限が、壁を通り抜けるときに一気に通り抜けられる厚さである必要がある。具体的には、頭のサイズとほぼ同じだ。正確なサイズは不明だが、タンスなどの家具が壁ぎわに押し付けられていると壁抜けが失敗する。

 転移を発動しよう。
 まずは、整備を行っている人たちに接触して・・・。

---

「その癖、防犯装置は、簡単に壊せるようになっている。まるで・・・」

「俺もそれは感じた」

「どうする?」

「どうする?」

「無理だよな?会社に帰っても、どうせ、俺たちは、”これ”だろう?」

 首を切るようなしぐさをする。

「そうだな。このCBR400Rの持ち主は、どんな人物だろうな?」

「会ってみたいな。あぁもう一度・・・。8耐に出たかったな」

「無理だろう?」

「狭い世界だからな。どうせ、上の連中が絶縁状を回すだろう?問題を起こした整備士を雇ってくれるファクトリーはないだろうな」

「へぇそんな感じなのですね」

「「え?」」

「あっ自己紹介をしますね。そのCBR400Rの持ち主です」

「「はぁ?」どこから?」

「”どこから”とかは、後で説明しますが、そのCBR400Rを返してもらいますね」

「待て!」

「なんですか?この部屋の持ち主に義理立てするのですか?」

「違う。君が、本当にCBR400Rの持ち主か確認したい」

「あぁそうですよね。書類とかでは納得しないですよね?」

 整備士の二人は、頷いている。

「わかりました。触りますね。いいですよね?」

 CBR400Rの近くに居た男性が、場所を空ける。

「警報装置は力ずくで外したのですね。直結は試しましたか?」

「試した跡がある。俺たちは、エンジンがかからなくなったと依頼を受けて来た。盗難には関わっていない」

「盗難車だと気が付いたのは?」

「・・・」「チグハグだからだ」

「チグハグ?」

「あぁ」

「詳しい話は、後で聞きます。まずは、エンジンをかけますね」

 少年は、CBR400Rに手を触れた。
 整備士たちが、何をやってもエンジンがかからなかったCBR400Rが、本来の持ち主に出会えたのを喜ぶように少年の行動に答える。

「「え?」」

「さて、遮音結界を張りますね。あぁ聞かないでください。話を聞かれたくない人がいますし、エンジンを吹かしたら直ったと思って、愚か者が来てしまうでしょう?」

「「・・・」」

「あれ?俺のことを知らないのですね。そこそこ、名前が売れていると思っていたけど・・・。勘違いやろうみたいで、意外と恥ずかしいですね」

「あ!」

「どうした?知っているのか?」

 少年が手を動かして遮音結界が展開される。

「もう大丈夫ですよ。CBR400Rのロックは解除しましたから触ってもらっても大丈夫ですよ」

 少年は、CBR400Rから離れた。
 面白そうな表情をしているだけだ。

 二人の整備士は、少年が何を言っているのかわからないが、CBR400Rが正常な状態に戻ったことは理解ができた。

「どういうことだ?」

 さきほど、何かに気が付いた整備士が、少年に問いかける。

 少年は面白そうな表情をしている。

「スキルで機械的な制限を加えていただけです」

「・・・。やはり、異世界帰りは・・・。本当なのか?」

「本当ですよ。ここに潜入したのも、スキルを使いました。それから、あなたたちの雇い主とは敵対する関係にありますが、相手は俺の存在には気が付いていません。狙われているとも思っていません」

「は?」

「まぁ詳しいことは、後ほど・・・。それで、お二人は、どうしますか?」

「どうする?とは?」

「”ここ”に残りますか?それとも、俺と一緒に、俺たちの拠点に来ますか?拠点に移動したら俺のために役に立ってもらいます。まぁ”ここ”の住人や関係者よりは、”いい”雇い主だと思いますよ?あっひとごとながら、残ることはお勧めしません。彼の周りでは、3年間で13名が社会的な信頼を失いました。5名が嫁や娘を彼に犯されて病院送りにされて、3名は自ら命を断って、7名は行方不明や事故死しています」

「・・・」「連れて行ってくれ。俺もこいつも、天涯孤独だ。おかしいと思っていた。上の連中は知っていたのだな」

「それはどうでしょうか?そちらの方はどうしますか?一緒に行きますか?」

「質問していいか?」

「答えられることなら」

「拠点はどこだ?」

「伊豆です」

「俺たちは何をしたらいい?」

「あっその前に一つだけ教えてください。バイクの整備ができるのはわかるのですが、車の整備は道具や施設があればできますか?」

「できる。資格も持っている」

「それはよかった。拠点には、バイクや車があります。整備を頼みたい」

「わかった。最後に、俺たちは、伊豆から出ていいのか?」

「ははは。もちろん、大丈夫ですよ。俺たちを裏切らないという契約をしてもらいますが、条件はそれだけです。興味があるのなら、異世界に連れて行くこともできます。あっ8耐に出てもいいですよ?ドライバーは必要でしょうが・・・」

「行く!」「お世話になります」

 少年はにっこりと笑って、握手を求めてきた。
 契約が結ばれた瞬間だが、整備士の二人はスキルを感知できないために、知られることはない。
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