上 下
95 / 96
第四章 噂話

第七話 CB400Rと整備士

しおりを挟む

 俺は、愚かな姉貴や人間を辞めてしまっている姉貴や、偉ぶって成功者風を吹かせる兄貴たちとは違う。俺が、本当の強者で成功者だ。力の使い方もしっかりとわかっている。

「まだなのか!」

「はい。もうしわけありません。バイクにいろいろ仕掛けがあって、解除ができていません」

 あの気に喰わない新入生が、俺の異母兄弟だと知らされた。そして、兄貴がほしかった物を使っている。

 アイツが何か出来るとは思えないが、姉貴が使っていた連中が行方不明になっている。姉貴は、アイツが原因だと喚いていたが、どうやって今の日本で証拠を残さずに数名を神隠しに合ったように始末できるのか?権力を持たない高校生が?少しでも考える頭があれば、無理なのはすぐに辿り着く答えだ。アイツの後ろに居るのは、オヤジに負けた権力者で負け犬の集団だ。アイツのペテンに騙されるような連中がいくら集まっても、俺に勝てるわけがない。
 警察にも何も証拠が見つけられていない。そもそも、家から消えたのなら自分の意思で逃げたと考えるのが妥当だ。姉貴は、頭の中まで脂肪でも詰まっているのだろう、そんな簡単なこともわからない。
 姉貴の手下として動くのに嫌気がさしたと考えるのが妥当だ。

 俺は、そんな愚かな姉貴とは違う。
 そもそも、あんな化け物を姉貴と呼びたくない。死んでくれたら嬉しい。本気で思っている。ブクブク太って、醜い姿をしている。

 俺の上には、二人の兄貴と二人の姉貴がいる。
 簡単に言えば、俺はオヤジの跡継ぎとしては5番目になってしまっている。能力だけなら、一番だが、年齢の面では遅れてしまっている。それはしょうがないと諦めていたのだが、ここにきて、上の兄貴が使っていた奴らが何者かにとらえられる事案が増えている。病院や警察から連絡がくることが増えている。同じ家業の連中から笑いながら送られてくることもあるようだ。
 兄貴の所に潜り込ませている者からの情報だ。

「”大丈夫”だと言ったよな!」

「はっはい。なぜか、エンジンがかからないのです。ばらそうとしても、防犯装置が邪魔して・・・」

「防犯装置は外したのではないのか?」

「はい。盗難防止は解除しました。ホームセキュリティには通報はいきません。しかし、バイクに付けられている防犯装置を解除しなければ・・・」

「おまえ!俺が知らないと思って、適当なことを言っているのではないな!」

「そんなことは、ありません」

「ふん。まぁいい。アイツが、海外に行っているのは間違いないよな?」

「はい」

 兄貴の所に送り込んでいた男だが、重要な情報があると言って戻ってきた。
 それが、アイツが渡航を計画しているという情報だ。何のために、渡航するのかはわからなかったが、日本に居なくなるのなら、アイツが使っているバイクを俺がもらって問題はない。義弟が持っている物は、俺に使う権利がある。それに、あの女の息子が持つには分不相応だ。俺に使われるほうが、バイクも幸せだ。

 免許も取得した。アイツが取れるのだから、俺なら簡単に取れる。実際に簡単だった。
 教習所に行けば、口うるさく命令してくる奴らを、首にしていったら簡単に取得ができた。やはり、俺は天才だ。筆記試験も事前に問題がわかれば簡単だと思ったのだが、無理だと言われた。使えない部下を持つと苦労するのは上に立つ者だ。使えない部下は、首にした。何度か、都合がわるくて筆記試験はうまくできなかったが、4度目で合格した。優秀な俺だ。都合が悪くなければ簡単に合格できた。

 目の前にあるのは、CB400R。あの女の息子が乗るにはもったいない。名車だと言われている。
 あの兄貴がほしがるほどだ。よほどの物なのだろう。俺が手に入れたと言えば、兄貴が悔しがるだろう。そんな顔を見るのも楽しみだ。次の会合に乗っていこう。兄貴の顔が歪むのが楽しみだ。ついでにあの豚にも何か言えないか探してみるのも悪くない。オヤジも跡継ぎは優秀な俺がふさわしいとわかってくれるだろう。俺を後継指名してくれるだろう。

「あの・・・」

「なんだ!」

「ナンバーはどうしますか?このままでは・・・」

「はぁそんなことは、おまえたちでなんとかしろ!おまえたちは、専門家だろう!」

「はぁ・・・。しかし、このままでは・・・」

「うるさい!金なら払ってやる。なんとかしろ!」

 本当に使えない。
 これで、専門家だと言うのか?
 優秀な俺が指示を出さないと何もできないのか?

「・・・。わかりました。動くようにすればいいのですよね?それで・・・。免許は?」

「そうだ!さっさと仕事をしろ!免許。ある。いい加減にしろ。さっさと動くようにしろ」

 本当に、こんな者なのか?
 専門家なら、俺が言う前にできるだろう?

 俺の様な、優秀な人間が指示を出さないと、なにもできないのか?
 これは、兄貴たちが食事会の時に話をしていることだな。”優秀な人間が指示を出さないと動かない”俺も今まで後輩たちを動かしていたが、専門家を使うのは初めてだったが、こんなにもひどいとは思わなかった。後輩の方がまだマシだ。優秀な俺が間違えないとわかっている。後輩たちに命令したほうがよかったか?

 眠くなってきた。
 腕に付けているロレックスの時計を見れば、23時を回っている。
 こんな無能どもに2時間も付き合っていたのか?

 俺の貴重な時間を・・・。
 頭にくるが、専門家に任せなければ、バイクが壊れてしまっては、俺の華麗なる計画に翳りができてしまう。

「俺は、寝る。明日の朝までには終わらせろ!徹夜で仕上げろ。壊すな。汚すな。俺のバイクを汚すなよ!」

 これだけしっかりと指示を出せば、使えない専門家でも大丈夫だろう。

 ふふふ。
 明日の朝には、あのバイクに俺が乗る。そして、あさっての会合にはバイクで向かう。
 兄貴の顔が楽しみだ。

---

「おい」

「なんだ?」

「これ、盗品だよな?」

「あぁ」

「上からの命令だから、工具をもってきたけど、問題が発生したら、俺たちが勝手にやったとかいわれそうだよな?」

「そうだな。間違いなく、そうなる。はぁ・・・。簡単な仕事だと思ったけど・・・」

 手に持っていた工具を床に投げ出して、男たちは床に座り込んだ。

「それにしても、CB400Rか・・・。いじれると思って・・・。来てみたら・・・」

「あぁ防犯装置は、乱暴に引きちぎっている。ナンバーもそのまま。車体番号が残されていたから・・・」

「調べたのか?」

「当然だろう?」

「それで・・・」

 問われた男は首を横に振る。

「そうか・・・。このCB400Rの持ち主は丁寧に乗っているよな?」

「あぁ感心するくらいに奇麗に乗っている。タイヤの減り具合から、攻めてはいるみたいだけど、ステップの減り具合が奇麗で、無理はしていないのだろう」

「あぁそれに、マフラーの中までさらっている。エンジンの火が入らないから・・・。この様子だとエンジンも攫っていそうだな。ここまでするか?」

「同業者なのか?」

「いや、高校生だ」

「え?高校生?親が整備工場でもやっていたのか?」

「わからない。でも、CB400Rが整備に回されたらうわさでも聞くよな?これだけ奇麗に乗っているのなら、頻繁に整備しているのだろう?」

「そうだな。パーツを見れば、三カ月単位で整備しているのだろう?持ち主に会いたいな」

「あぁ・・・。でも、ダメだろうな」

 男たちは、男が出て行った扉を見てため息を吐く。

「なぁでも、このCB400Rは・・・」

「そうだよな。直結を試したけどダメだった。何がダメなのかわからないから気持ちが悪い」

「タンクを外そうにも工具を受け付けない。外せない」

「なめている感じではない。噛み合っているけど、噛み合っていない。回っているけど、回っていない。不思議だ」

「その癖、防犯装置は、簡単に壊せるようになっている。まるで・・・」

「俺もそれは感じた」

 男たちは、座ったままCBR400Rを眺めている。男たちを監視している者が居なくなってから、1時間ほどたった。

 男たちは、CBR400Rの持ち主の考察を始めた。
 そして、整備を行った者と話をしてみたいと考え始めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれたおっさんはウォッシュの魔法(必須:ウィッシュのポーズ)しか使えません。~大川大地と女子高校生と行く気ままな放浪生活~

北きつね
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれた”おっさん”は、すぐにステータスを偽装した。  ろくでもない目的で、勇者召喚をしたのだと考えたからだ。  一緒に召喚された、女子高校生と城を抜け出して、王都を脱出する方法を考える。  ダメだ大人と、理不尽ないじめを受けていた女子高校生は、巻き込まれた勇者召喚で知り合った。二人と名字と名前を持つ猫(聖獣)とのスローライフは、いろいろな人を巻き込んでにぎやかになっていく。  おっさんは、日本に居た時と同じ仕事を行い始める。  女子高校生は、隠したスキルを使って、おっさんの仕事を手伝う(手伝っているつもり)。 注)作者が楽しむ為に書いています。   誤字脱字が多いです。誤字脱字は、見つけ次第直していきますが、更新はまとめて行います。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

異世界でもプログラム

北きつね
ファンタジー
 俺は、元プログラマ・・・違うな。社内の便利屋。火消し部隊を率いていた。  とあるシステムのデスマの最中に、SIer の不正が発覚。  火消しに奔走する日々。俺はどうやらシステムのカットオーバの日を見ることができなかったようだ。  転生先は、魔物も存在する、剣と魔法の世界。  魔法がをプログラムのように作り込むことができる。俺は、異世界でもプログラムを作ることができる! ---  こんな生涯をプログラマとして過ごした男が転生した世界が、魔法を”プログラム”する世界。  彼は、プログラムの知識を利用して、魔法を編み上げていく。 注)第七話+幕間2話は、現実世界の話で転生前です。IT業界の事が書かれています。   実際にあった話ではありません。”絶対”に違います。知り合いのIT業界の人に聞いたりしないでください。   第八話からが、一般的な転生ものになっています。テンプレ通りです。 注)作者が楽しむ為に書いています。   誤字脱字が多いです。誤字脱字は、見つけ次第直していきますが、更新はまとめてになります。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。 貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...