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第四章 噂話
第七話 CB400Rと整備士
しおりを挟む俺は、愚かな姉貴や人間を辞めてしまっている姉貴や、偉ぶって成功者風を吹かせる兄貴たちとは違う。俺が、本当の強者で成功者だ。力の使い方もしっかりとわかっている。
「まだなのか!」
「はい。もうしわけありません。バイクにいろいろ仕掛けがあって、解除ができていません」
あの気に喰わない新入生が、俺の異母兄弟だと知らされた。そして、兄貴がほしかった物を使っている。
アイツが何か出来るとは思えないが、姉貴が使っていた連中が行方不明になっている。姉貴は、アイツが原因だと喚いていたが、どうやって今の日本で証拠を残さずに数名を神隠しに合ったように始末できるのか?権力を持たない高校生が?少しでも考える頭があれば、無理なのはすぐに辿り着く答えだ。アイツの後ろに居るのは、オヤジに負けた権力者で負け犬の集団だ。アイツのペテンに騙されるような連中がいくら集まっても、俺に勝てるわけがない。
警察にも何も証拠が見つけられていない。そもそも、家から消えたのなら自分の意思で逃げたと考えるのが妥当だ。姉貴は、頭の中まで脂肪でも詰まっているのだろう、そんな簡単なこともわからない。
姉貴の手下として動くのに嫌気がさしたと考えるのが妥当だ。
俺は、そんな愚かな姉貴とは違う。
そもそも、あんな化け物を姉貴と呼びたくない。死んでくれたら嬉しい。本気で思っている。ブクブク太って、醜い姿をしている。
俺の上には、二人の兄貴と二人の姉貴がいる。
簡単に言えば、俺はオヤジの跡継ぎとしては5番目になってしまっている。能力だけなら、一番だが、年齢の面では遅れてしまっている。それはしょうがないと諦めていたのだが、ここにきて、上の兄貴が使っていた奴らが何者かにとらえられる事案が増えている。病院や警察から連絡がくることが増えている。同じ家業の連中から笑いながら送られてくることもあるようだ。
兄貴の所に潜り込ませている者からの情報だ。
「”大丈夫”だと言ったよな!」
「はっはい。なぜか、エンジンがかからないのです。ばらそうとしても、防犯装置が邪魔して・・・」
「防犯装置は外したのではないのか?」
「はい。盗難防止は解除しました。ホームセキュリティには通報はいきません。しかし、バイクに付けられている防犯装置を解除しなければ・・・」
「おまえ!俺が知らないと思って、適当なことを言っているのではないな!」
「そんなことは、ありません」
「ふん。まぁいい。アイツが、海外に行っているのは間違いないよな?」
「はい」
兄貴の所に送り込んでいた男だが、重要な情報があると言って戻ってきた。
それが、アイツが渡航を計画しているという情報だ。何のために、渡航するのかはわからなかったが、日本に居なくなるのなら、アイツが使っているバイクを俺がもらって問題はない。義弟が持っている物は、俺に使う権利がある。それに、あの女の息子が持つには分不相応だ。俺に使われるほうが、バイクも幸せだ。
免許も取得した。アイツが取れるのだから、俺なら簡単に取れる。実際に簡単だった。
教習所に行けば、口うるさく命令してくる奴らを、首にしていったら簡単に取得ができた。やはり、俺は天才だ。筆記試験も事前に問題がわかれば簡単だと思ったのだが、無理だと言われた。使えない部下を持つと苦労するのは上に立つ者だ。使えない部下は、首にした。何度か、都合がわるくて筆記試験はうまくできなかったが、4度目で合格した。優秀な俺だ。都合が悪くなければ簡単に合格できた。
目の前にあるのは、CB400R。あの女の息子が乗るにはもったいない。名車だと言われている。
あの兄貴がほしがるほどだ。よほどの物なのだろう。俺が手に入れたと言えば、兄貴が悔しがるだろう。そんな顔を見るのも楽しみだ。次の会合に乗っていこう。兄貴の顔が歪むのが楽しみだ。ついでにあの豚にも何か言えないか探してみるのも悪くない。オヤジも跡継ぎは優秀な俺がふさわしいとわかってくれるだろう。俺を後継指名してくれるだろう。
「あの・・・」
「なんだ!」
「ナンバーはどうしますか?このままでは・・・」
「はぁそんなことは、おまえたちでなんとかしろ!おまえたちは、専門家だろう!」
「はぁ・・・。しかし、このままでは・・・」
「うるさい!金なら払ってやる。なんとかしろ!」
本当に使えない。
これで、専門家だと言うのか?
優秀な俺が指示を出さないと何もできないのか?
「・・・。わかりました。動くようにすればいいのですよね?それで・・・。免許は?」
「そうだ!さっさと仕事をしろ!免許。ある。いい加減にしろ。さっさと動くようにしろ」
本当に、こんな者なのか?
専門家なら、俺が言う前にできるだろう?
俺の様な、優秀な人間が指示を出さないと、なにもできないのか?
これは、兄貴たちが食事会の時に話をしていることだな。”優秀な人間が指示を出さないと動かない”俺も今まで後輩たちを動かしていたが、専門家を使うのは初めてだったが、こんなにもひどいとは思わなかった。後輩の方がまだマシだ。優秀な俺が間違えないとわかっている。後輩たちに命令したほうがよかったか?
眠くなってきた。
腕に付けているロレックスの時計を見れば、23時を回っている。
こんな無能どもに2時間も付き合っていたのか?
俺の貴重な時間を・・・。
頭にくるが、専門家に任せなければ、バイクが壊れてしまっては、俺の華麗なる計画に翳りができてしまう。
「俺は、寝る。明日の朝までには終わらせろ!徹夜で仕上げろ。壊すな。汚すな。俺のバイクを汚すなよ!」
これだけしっかりと指示を出せば、使えない専門家でも大丈夫だろう。
ふふふ。
明日の朝には、あのバイクに俺が乗る。そして、あさっての会合にはバイクで向かう。
兄貴の顔が楽しみだ。
---
「おい」
「なんだ?」
「これ、盗品だよな?」
「あぁ」
「上からの命令だから、工具をもってきたけど、問題が発生したら、俺たちが勝手にやったとかいわれそうだよな?」
「そうだな。間違いなく、そうなる。はぁ・・・。簡単な仕事だと思ったけど・・・」
手に持っていた工具を床に投げ出して、男たちは床に座り込んだ。
「それにしても、CB400Rか・・・。いじれると思って・・・。来てみたら・・・」
「あぁ防犯装置は、乱暴に引きちぎっている。ナンバーもそのまま。車体番号が残されていたから・・・」
「調べたのか?」
「当然だろう?」
「それで・・・」
問われた男は首を横に振る。
「そうか・・・。このCB400Rの持ち主は丁寧に乗っているよな?」
「あぁ感心するくらいに奇麗に乗っている。タイヤの減り具合から、攻めてはいるみたいだけど、ステップの減り具合が奇麗で、無理はしていないのだろう」
「あぁそれに、マフラーの中までさらっている。エンジンの火が入らないから・・・。この様子だとエンジンも攫っていそうだな。ここまでするか?」
「同業者なのか?」
「いや、高校生だ」
「え?高校生?親が整備工場でもやっていたのか?」
「わからない。でも、CB400Rが整備に回されたらうわさでも聞くよな?これだけ奇麗に乗っているのなら、頻繁に整備しているのだろう?」
「そうだな。パーツを見れば、三カ月単位で整備しているのだろう?持ち主に会いたいな」
「あぁ・・・。でも、ダメだろうな」
男たちは、男が出て行った扉を見てため息を吐く。
「なぁでも、このCB400Rは・・・」
「そうだよな。直結を試したけどダメだった。何がダメなのかわからないから気持ちが悪い」
「タンクを外そうにも工具を受け付けない。外せない」
「なめている感じではない。噛み合っているけど、噛み合っていない。回っているけど、回っていない。不思議だ」
「その癖、防犯装置は、簡単に壊せるようになっている。まるで・・・」
「俺もそれは感じた」
男たちは、座ったままCBR400Rを眺めている。男たちを監視している者が居なくなってから、1時間ほどたった。
男たちは、CBR400Rの持ち主の考察を始めた。
そして、整備を行った者と話をしてみたいと考え始めた。
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