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第五章 ギルドの依頼
第七話 執事誕生
しおりを挟む無事ボスを配置して、修復が終了したディアナを慣らし運転で走らせて、神殿の様子を確認する事にした。
ついでにヤスは各階層の階層主を配置しておく事にした。階層主が居た方ががカッコイイというすごく”まっとうな”考えだ。
そのために、まずはエルダーエントに話を聞きに行く事にしたのだ。
スマートグラスをかけてモンキーで神殿の中を爆走していった。これがまた面白かった。魔物が出てこない事もだが路面が石畳だったり砂利道だったり土の道だったりといろんな種類が混じっている。車でも楽しいと思うが道幅を限界まで使えるモンキーでの走行は違った面白さがある。
ヤスは、最下層の直線をフルスロットルで爆走した。
(しまった。地下三階のスロープからストップウォッチを起動すればよかった)
ボス部屋の扉を開ける。
『マスター!』
「エルダーエントか?」
『はい。マスター!』
重低音で少しだけ濁った声がヤスの耳に届けられた。
一本の大木がヤスの前に姿を表した。
「一応、お前がボスだからな。頼むぞ。ここに人が来る事はないと思うが、万が一のときには撃退してくれ」
『かしこまりました』
「人化もできるのだよな?」
『はい。行いましょうか?』
「頼めるか?」
『はい』
光がエルダーエントに集まって、大樹の全体を覆ってから徐々に小さくなって、徐々に人型に変わっていく。光が収まって、エルダーエントが居た場所には、全裸の男性が一人立っていた。
「服は着られるのか?」
「可能です」
「服を着てくれ、同性でも目のやり場に困る」
「はい。かしこまりました」
なぜか回転するエルダーエント(人型)。
回転が終わると、ダークグリーンの燕尾服を着ている。○執事の”あくまでしつじ”が口癖?のキャラクターが着ているような服になっている。
ヤスは、こっちでも執事服があるのだと変な感心をしていた。
「マスター。これでよろしいですか?」
「あぁ・・・。エルダーエントが、執事になれるのなら・・・。マルス!エルダーエントなら部屋に入る事ができるのか?」
『できません』
「できるように、ならないのか?」
『支配魔物のままでは無理です。眷属化が必要です』
「眷属化?」
『はい。魔物を、眷属にする事です』
「そりゃぁ解るけどやり方は?」
『不明です』
「おい!」
思わずツッコミを入れてしまったヤスだったのだが、当然の行為だろう。知らないで眷属化を進めていたのか?
『眷属化は、魔物によって違います。望む事が違うので当然の事だと思います』
「え?あっ・・・そういう事・・・。エルダーエント。俺は、お前を眷属にしたいが、どうしたらいい?」
本来は屈服させてから問いかけるのだが、ヤスはストレートにエルダーエントに問いかけた。
びっくりしたのは、マルスだけではない。エルダーエントも自分のマスターがいきなり”眷属にする”と言い出すことは考えていなかった。
なので、エルダーエントは返事がすぐにできなかった。
ヤスは、返事が来なかったので、まだ眷属にするのは難しいのかと落胆の表情を浮かべた。
「そうか・・・。いきなりは、無理だよな」
「マスター。違います。私が眷属でよろしいのですか?」
「ん?なにかダメな理由でもあるのか?」
「・・・」
二人の話は噛み合っていない。
ヤスは、雑用や神殿の管理を任せたいと思っているだけで、戦闘にはディアナがいるので大丈夫だろうと考えていたのだ。今まで、マルスが行っていたようなスケジュールの管理や物資の管理を行ってほしいと思っているのだ。
エルダーエントは、眷属になるという事はマスターの近くで戦闘を行うものだと思っている。エルダーエントという種族は、知識や知恵はあるのだが単純な戦闘力では、中級以上の魔物には対抗できない。オークキングやオーガファイターあたりと対等で、ハイランカーの冒険者やワイバーンなどの劣竜種にも対抗できない。ましてや、通常の神殿のボスに採用されるようなキマイラやオルトロスなどには勝つことはできない。盾にもならないだろうと考えている。そんな弱い種族である自分が眷属になることはないと思っているのだ。
「マスター。他に眷属がいらっしゃるのですか?」
”マルス。お前やディアナやエミリアは眷属なのか?”
”違います”
「いない」
「それでは、私が筆頭眷属になってしまいます」
「うーん。俺としては、それでいいと思っているけどな」
「よろしいのですか!」
「あぁ」
「それでしたら、筆頭眷属の栄誉をお受けしたいです」
「どうしたらいい?」
「名前を、私に、マスター自ら名前を与えてください」
すでに名前は決まっている。
ダークグリーンの執事服でも、執事は執事。名前は一択だろう。
「わかった。エルダーエントの名は、”セバス”・・・。”セバスチャン”とする」
「はっ我は、セバス・セバスチャン。ご主人さま。ご命令を・・・」
あっ・・・。ヤスは、やってしまったと思ったが取り消しもかっこ悪いし、セバスは呼び名だとは今更言えない。
まぁ異世界人でもないと意味はわからないだろうからいいかなと考えていた。
表情には出さないで、自分のミスを華麗にスルーする事にした。
(うん。これから、執事やメイドが増えたら、セバスチャンが家名だと言えばいいかな。それで、セバスが筆頭だと言えばいいだろう)
などと適当な事を考えていたのだ。
「セバス。お前には、俺の寝所がある神殿の管理を任せたい」
「はっ!」
「それから、マルス!」
『はい』
「セバス。神殿のコアになっているマルスだ。俺が居ないときには、マルスの指示に従ってくれ」
「かしこまりました。マルス様。よろしくお願い致します」
『了』
「あぁ・・・。でも、セバスが部屋の管理で神殿の1階に移動したらボスを新たに配置する必要があるよな?」
「ご主人さま。神殿の管理だけでしたら、分体が対応できます。雑事を行う個体が必要なら眷属を呼び出す事にします。マルス様から魔力の提供を受ければ、私と同程度の強さの分体なら7体ほど作成が可能です。眷属も時間はかかりますが、10や20程度なら呼び出せます」
「え?そうなの?」
「はい。多少、お時間を頂戴いたしますが可能です」
「分体と眷属は違うのか?」
「はい。分体は、私から産まれますが、眷属は召喚を行います。エントとドリュアスが中心です」
「へぇそうなのか?その分体は戦えるのか?」
「はい。戦えるように調整する事ができます」
「わかった。一人は、執事長として俺のサポートを頼む、他6名はパーティーを組んで無理のない範囲で、神殿の掃除を頼む」
「かしこまりました。ご主人さま。神殿の中に入る者たちの武器や防具をお願いしてよろしいですか?」
「そうだな。わかった用意しよう」
「ありがとうございます。剣士を二人、弓使いを一人、魔法使いを三人」の構成を考えています」
ヤスが考えていた組み合わせと同じだ。
武器と防具は、ユーラットのギルドに預けているやつから抜いて渡せばいいと思っている。
「ご主人さま。神殿に入る6名は、男性型3名と女性型3名にする予定です。他の冒険者が来ても怪しまれないように、姿を調整したいと思います」
「わかった。そのあたりの調整は、マルスと相談しながらやってくれ」
「かしこまりました。私は、神殿の最奥部にてエント形態になり分体を操ります」
「眷属は、地下一階と地下二階で手伝いを頼む。喫緊では作業はないと思うが、待機していてくれ、暇なら適当に神殿の領域内なら移動や散策は許可する」
「はい。ありがとうございます」
ヤスは、気になっていたことをマルスに聞く事にした。
「マルス。セバスの分体なら部屋に入る事ができるよな?」
『可能です。セバスの眷属は入る事ができません』
「それならよかった。セバス。頼むな」
「お任せください」
「さて、今日は戻って寝る。それから、明日はユーラットに行って来る、そのまま領都に行くから、帰ってくるのは5日後だと思う。それまで頼むな。マルス。セバス」
二人からの返事を聞いてから、ヤスはモンキーに跨って神殿に来たときとは違うルートで帰る事にした。
ストップウォッチを開始するのを忘れたが、帰りもドライブを楽しんだ。
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