異世界の物流は俺に任せろ

北きつね

文字の大きさ
上 下
6 / 293
第一章 異世界?

第四話 遭遇?

しおりを挟む

 ディアナが大きく跳ねた。バンプが有ったのだろう、こんな路面じゃしょうがない。

「ディアナ。俺、どのくらい寝ていた?」

『エミリアが答えます。マスターは、36分42秒ほど、意識を手放されていました』

 おいおい。脈拍でも測っているのか?
 まぁいい。30分ちょっとネタだけで頭はスッキリしている。もともと眠気が強かったわけじゃない。
 気分的に横になりたかっただけだが、やはり混乱して緊張して疲れていたのかもしれない。

 運転席に戻るが、ハンドルは握らない。ディアナの自動運転を見ている事にした。

 観察していて、わかったのだが、俺の運転と似ている。アクセルワークから、ハンドルの切り方、ブレーキングポイントポイント、ブレーキの深さ・・・何から何までというわけじゃないが、俺が運転していてもそうするだろうなと思える運転をしている。
 速度を見ると、20km/h程度だ。周りの景色から、もっと遅いかと思ったが、比較できる物がない場所では、どうしても遅く感じてしまう。

「ディアナ。速度は、これ以上は出せないのか?」

『エミリアが答えます。姿勢制御が切られています。速度を上げると振動が激しくなります』

 そりゃぁそうだよな。
 でも、やってみないとわからない!

「試しに、30km/hで走行」

”了”

 速度が少し上がる。
 振動が激しくなる。ハンドルを握っていないので判断は難しいが細かい調整が必要だろう。

 今はディアナが細かく調整しているのだろう。トラクタだけだから余計に振動には弱いのかもしれない。
 荷物を積んだトレーラーを引っ張っていたら、もっと慎重に走らないと横転しても不思議ではない。

 思った以上に道が悪い。馬車で走っているとしたら、かなりの振動が乗っている人間に伝わるだろう。

 でも・・・。ラリーカーとかで走ったら楽しいかもしれないけどな。そう言えば、WRCのヤリスは総合優勝はできたのか?
 岐阜-愛知で行われるWRC日本を見に行きたかったな。

「ディアナ。運転を変わる」

”了”

 やはりハンドルを握ると、安心できてしまう。
 異世界に紛れ込んだのか、それとも、呼ばれたのかわからないが、マルスが一緒で良かった。俺1人なら、多分最初にゴブリンに囲まれた時点で死んでいただろう。それに、マルス・・・今は、ディアナか・・・に乗っていると、桜と真一と克己や”あいつ”との繋がりを感じる事ができる。アイツらなら、俺が居なくなっても、あの場所をキープしてくれるだろう。アイツらにとっても大事な場所だからな。

”ビィービィービィー”

「どうした!」

『マスター。前方に、ゴブリンが16体。人族と思われる人物が1名。近くに、乗り物の残骸があり、人族と思われる亡骸があります』

 ゴブリンに襲われている!
 ラノベの定番だな。お姫様か商人の娘・・・。まぁいい。助けないという選択肢はない!

「エミリア。接触までどのくらいだ!」

『今の速度だと、23秒後です』

「わかった!飛ばすぞ!」

”了”

 アクセルを踏み込む。
 路面の振動で、ハンドルが取られる。

「ディアナ。姿勢制御は可能か?」

 無茶を言ってみる。
 克己が、ダンパーにコンピュータ制御を入れて、振動が激しいときの姿勢を”なんちゃら”と、言っていたのを思い出す。

『エミリアが答えます。可能です。行いますか?』

「姿勢制御をオン!」

”了”

 揺れが少なくなる。
 ハンドルが安定する。桜は・・・別にして、克己や真一は本当にすごかったのだな。日本に帰る事ができたらしっかり礼をいわないと駄目だな。あいつらすごいことをしていたのだな。

 馬車の残骸が見えてくる

「キャァァァこっちに来ないでぇぇぇぇ来るなァァァ!!!犯されるゥゥ」

 よし!女だ!
 どこかの国のお姫様に決定!馬車は古いようだし騎士や御者の姿も見えないが、お姫様一択でお願いします。

「エミリア。どこに突撃するのが安全か計算できるか?」

『不可能です。経験が少なく、エミュレートに失敗しました』

 なにぃぃぃ経験が少ない!!!!
 道中で、ゴブリンやコボルトを跳ね飛ばしておけばよかったって事か??

 男は度胸!

 狙いは、お姫様の目の前で停止して、ドア開けて、ディアナに引っ張り上げる。
 これしか無い!

 アクセルを緩める。ハンドルに付いている、速度固定のスイッチを押す。
 これで、ブレーキを踏み込むか、アクセルを踏み込むまで、速度が固定されるはずだ。ハンドル操作だけに集中する。

 距離も問題なし。路面の感じも掴んだ。

 あとはブレーキのタイミングだけ。滑るなよ!かっこ悪いからな。

 よし。フルブレーキ!

 少し、リアが流れた!大丈夫、お姫様には当たっていない。砂埃で見えないが、お姫様は無事(だといいな)!

 路面の関係で距離があいてしまった。完全に停止してから、ドアを開ける。

「こっちだ!急げ!」

 言葉が通じるのか?
 女は、驚いているが、とっさに判断したのだろう。頭のいい女は好きだ!

 俺が差し出した右手を握った。
 温かい、人の手だ。

「飛べ!」

 女は地面を蹴った。
 俺は、力任せに女を引っ張り上げる。

 女はハンドルを持った左腕に背中を預ける格好で、俺の腿の上に座るような格好になる。

 ディアナの中に女が入った事を確認して、アクセスを踏み込む。
 ドアを閉めて、女の無事を確認する。

 前方に居たゴブリンを跳ね飛ばした。
 ハンドルに嫌な感触が伝わってくる。ドライバーをやっていて初めて動物・・・人型の生物を跳ねてしまった。

 女が、ハンドルを握った。女はハンドルを回った状態で固定している。

 女が俺の足の上に乗っている、踏み込みを緩める事ができない。

 ディアナが急発進。

 舗装されていない路面での急ハンドル。

 ディアナがスライドする。

 後輪がスライドする。横に居たゴブリンどもを跳ね飛ばす。馬車の残骸が後輪に当たったのだろう。なにか破壊する嫌な音がする。

「おい!手を離せ!」
「え?」

 意味が通じたようだ。
 女は、ハンドルから手を離した。

 ハンドルを緩やかに戻してしっかり固定する。パドルでクラッチを外す。踏み込んだ状態のアクセルを戻す。

 周りを確認するが砂が舞い上がって何も確認できない。落ち着くまで少しかかるだろう。

 女を観察する。どうやら、お姫様ではなさそうだ。

 町娘風だ。お姫様じゃ無かったか・・・。まだ、大商人の娘やお忍びで来ている近隣諸国のお姫様の可能性だってある!

 しょうがない。女である事は間違いない。それに、ファーストコンタクトだ!大切にしよう。

 まだ、俺が差し出した手を握っている。本人も意識していないのだろう。

 年齢は、多分高校を卒業したくらいか?未成年でなければOKだ。何がOKなのかはわからないが、法律に触れなければ大丈夫だ。

 おっぱいは・・・。小さい。まぁ巨乳派ではないから問題ない。巨大よりは、小さいくらいの方がいい。

 髪の毛は、金髪だ。
 かなり汚れている。鎖骨を越えるくらいの長さがある。顔は、一瞬しか見ることができていない。今は、震えて俯いてしまっている。

 握られた手や服から覗く腕や脚は、若さがある事がわかるが、多少汚れているように見える。

 うーん。やはり、風呂は無いと思ったほうがいいかもしれないな。

 見えている部分に大きな傷はなさそうだ。

 1番の問題は、俺の腿の上で動こうとしない事だ。
 その状態で、汗やらもしかしたらゴブリンに襲われて漏らしているのかもしれない匂いもしている。微妙だが、女の匂いもしている。

 いろいろ聞きたいが、今は落ち着くのを待ったほうがいいだろう。

 周りに居たゴブリンどもの耳障りな声も聞こえない。舞い上がっていた砂も落ち着いたようだ。

”ゴブリン15体討伐”

 ん?全部で16体だったはず。どこかに隠れているのか?吹き飛ばされたけど、生き残ったって事か?

 ディアナが停止してから少し経ってから、エンジンを切る。
 エンジン音がなくなって、静寂が訪れる。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

今日結婚した夫から2年経ったら出ていけと言われました

四折 柊
恋愛
 子爵令嬢であるコーデリアは高位貴族である公爵家から是非にと望まれ結婚した。美しくもなく身分の低い自分が何故? 理由は分からないが自分にひどい扱いをする実家を出て幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱く。ところがそこには思惑があり……。公爵は本当に愛する女性を妻にするためにコーデリアを利用したのだ。夫となった男は言った。「お前と本当の夫婦になるつもりはない。2年後には公爵邸から国外へ出ていってもらう。そして二度と戻ってくるな」と。(いいんですか? それは私にとって……ご褒美です!)

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

処理中です...