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第七章 家庭ネットワーク
第五話 新しい生活
しおりを挟む秘密基地で、ハブにケーブルを接続していく、一般回線のルータにも火を入れた。業務回線のルータにはまだ火を入れていない。
固定IPの使い方は、オヤジに相談だな。サーバを置くつもりなのかもしれないからな。
さて、一つだけ刺さっているサーバに火をいれる。
モニターとキーボードとタッチパッドを繋いだ。ひとまず、LANからは分離する。
あぁペンギンが表示される。そういうことだな。
中身は・・・。本当にサービスはOSが起動するだけだな。オヤジから珠を回してもらおう。使わなくなった古い物もあるだろう。
秘密基地を見ると、入口は隠し扉を入った先にある梯子だ。倉庫に続く扉もあるから、倉庫から出入りしてもいいかも知れない。入るだけなら、寝室から滑り台?で降りてくればいい。
よし、パーティションを買ってきて、部屋を区切ろう。
秘密基地には、トイレもある。水道とIHクッキングヒーターもある。スペースを考えると、調理は無理でも、お湯を沸かして珈琲やお茶をいれるくらいはできそうだ。
荷物をいれる前に、サイズを測ってパーティションを購入しよう。空調を考えると、目隠し程度になれば十分だろう。
ユウキも来るだろうから、ソファーは買っておいたほうがいいだろう。
上が騒がしい。
業者が来たようだ。倉庫から上に戻ると、荷物が搬入され始めていた。
「あっタクミ。ちょうどよかった。克己パパから送られてきた物はどうしよう?」
「ん?どれ?」
TVやゲーム機などの荷物に混じって、1Uや2Uのサーバが・・・10台?NASもある?
オヤジのメモが添えられている。
”真一や万人から新築祝いで貰った。好きに使え”
ありがたく使わせてもらおう。最新ではないが、十分現役で使えるスペックのようだ。
「パソコンや器材は地下の倉庫に運んでもらってくれ」
「わかった。TVは?」
「リビングに入れてもらって、設置は自分たちでやるか?」
「そうだね。本とかゲームとかDVDやBDは、倉庫でいいよね?」
「あぁ」
「わかった」
ユウキが嬉しそうに業者に指示を出している。業者には、俺とユウキの関係が何に見えるのだろう?夫婦には若いだろう。やはり兄妹だろうか?
「ユウキ。俺、バイクを取りに行ってくる」
「うん。僕のバイクもお願い」
「了解」
バイクは、駐車場に置いておけばいいだろう。
ヘルメットは、裏口だな。裏門はリモコンで開くようになっているらしいから、しっかりとユウキに言っておかないと、ユウキはリモコンを忘れそうだ。
バイクを移動して、篠崎家の自分の部屋とユウキが使っていた部屋を見る。
荷物が持ち出されると、広かったのだなと思える。パソコンの電源はオヤジが落としたのだろうから大丈夫だろう。引っ越しではなく業者と言っているから、多分事務所の移転を行う専門家なのだろう。
作業部屋に戻ると、ユウキが庭に出ていた。
「ユウキ!」
「何?」
「搬送は終わったのか?」
「うん。地下に運び入れてもらったよ」
「何をしている?」
「花壇を作りたい。いいよね?」
「あぁ好きにしろよ」
「うん。あのね。ジャンボエンチョーに行きたい・・・けど、ダメ?」
「部屋を片付けてから、必要な物がわかるだろう?それからにしたほうがいいと思うぞ?」
「そうだね。わかった」
秘密基地以外を整備して生活できる状態にしないと・・・。
軽く昼を食べてから、ユウキと二人で片づけを行った。荷物が少なかったので、大した手間ではなかった。
だが、日用品は買わなければならない物が多そうだ。家電は、ネットワークに繋がるようにはなっているが”つながる家電”規格ではないようだ。多分、真一さん辺りの趣味なのだろう。別に、家電の操作をさせたいわけではない。情報収集ができれば十分だ。AIにもあまり期待していない。
生活に必要な家電は揃っている。
日用品でまずは、タオルは必須だな。玄関マットや風呂場やトイレのマットも必要だ。消耗品も揃えないとダメだな。食器は買い揃えていけばいいか?客用も必要かな?
「ユウキ!風呂場とトイレは?」
「うん。足ふきの奴とかも必要だよ。あと、洗剤やシャンプーとかも新品が一つだけだよ」
「一つでも、あれば十分だよ。予備は、ポチッとしよう」
「わかった。それじゃ、そのときに、トイレットペーパとかティッシュとかも買う?」
「そうだな。買う物が解っている物は、通販で、自分たちで見ないとわからない物をメインで買いに行こう」
「うん。あっ」
「どうした?」
「うーん。いいや。タクミと結婚するから、言わないとだね」
「なに?」
「あのね。僕、生理が重くて、薬を処方してもらっているの?」
「え?」
「それでね。定期的に産婦人科に行っているけど、明日の予定で・・。行ってきていい?」
「いいも何も、行ってこいよ。診察料が必要なら言えよ」
「うん。ありがとう」
「送るか?」
「ううん。ママが車を出してくれるから大丈夫。ママがダメだったら、バイクで行くよ」
「わかった。そうか、生理用品とかも必要だよな?」
「うん。でも、明日ママと買ってくるよ」
「そうか?わかった。よし、ジャンボエンチョーは、ベイドリームでいいよな?」
「うん。僕、うどんを食べたい!あと、ケーキも買おう!帰ってきて、二人で食べよう。乾杯しよう!」
「わかった。少しだけ大きいけど、荷物が沢山入るから、カバンを背負ってくれるか?」
「もちろん!」
ライダースーツに着替える。
そうか、裏口の近くにあった小部屋はこのためか・・・。俺、考えているな。2畳ほどの部屋だけど、着替えるには十分だ。奥にシャワーも付いている。俺、グッジョブ!
「タクミ?シャワーで水が飛んでくるし、丸見えだけどいいの?僕は、別にいいけど・・・。タクミだけなら・・・」
「カーテンを買ってこよう。レールをつければいいだろう」
「うん。買うものにメモして・・・。タクミ。工具は大丈夫?」
「大丈夫だと思う。篠崎家か森下家に行けばあるだろう?」
「そうだね。早く行こう。僕、お腹が空いてきた!」
ライダージャケットを上から羽織るだけなので問題はない。
買物はスムーズに終わった。ユウキが、猫を飼いたい!水槽が欲しい!とか言ったが却下した。生活が落ち着いたら考えようと説得した。蛇や蜥蜴でも、フクロウでもいいと言っている。家が動物園に・・・。思い出した。家の設計図を書くときに・・・。あとで確認だな・・・。”悪意の塊”のような人たちが手を加えているのなら間違いなく作ってある。カーポートの隣のスペースに小屋が建っていた。地下倉庫から行けるようになっている場所だろう。6畳ほどの広さのはずだ。ユウキはまだ気がついていない。知らないフリは無理だから、帰ったら一緒に見に行くか・・・。
バスタオルを16枚。毎日交換して1週間は雨が降り続けても大丈夫。トイレのタオルやキッチンのタオルも枚数を用意する。
普段遣いする食器は新しくしようとユウキと決めた。ユウキセレクトだ。食洗機で洗える物にしてもらった。俺は、フライパンや鍋を見てメモする。今日は、荷物になるから通販で購入すると決めた。
秘密基地に置くソファーは二人で座れる物でいいだろう。リビングに置くのは、家具センターに見に行く。
フードコートでうどんを食べて、ケーキを買って、二階の100均でハンガーや消耗品を購入する。
荷物はギリギリだったが、カバンに入った。
ソファーは運べないので、配送してもらうが、それ以外のすぐに必要になる物は揃えられた。
帰ってきて、着替えてから、ユウキを連れて地下倉庫に入る。やはり、別の出入り口がある。
上がると、6畳ではなく8畳くらいの部屋だ。窓は少なめになっている。ネットワークも電源も引かれているのだろう。空調もしっかり付いている。部屋は、何も置かれていない。壁にはスクリーンがかけられている。俺が書いた100インチシアター兼ペットルームだ。天井裏があり、そこにペットが飼えるようになっている。スクリーンに投影するためのプロジェクターが設置されている。スピーカーもしっかり付いている。
隣の家に面する場所には、巨大な水槽がはめ込まれている。本当に作りやがった。
「タクミ。これ?」
「ん?何?」
オヤジの癖のある字ではない。多分、真一さんだろう?
”タクミ。100インチシアターを作るには、6畳では無理だ。8畳にした。中央よりも少し後ろに音が集中するようになっている。水槽は、強化ガラスを入れても、建設基準を守ろうと思ったら250cmが限界だった。深さは、80cmだ。水質チェックや水温チェックはモニター出来るようにしてある。屋根裏のペットルームには監視カメラを3つ付けている。変な事はするなよ?婚約おめでとう。婚約の祝いだ。受け取ってくれ”
やっぱり・・・。
メモをユウキに渡す。水槽を見て喜んでいる。電気代は、ソーラパネルがあるから、ある程度は大丈夫だろう。
「タクミ!」
「うーん。飼ってもいいけど、俺は、しばらくはユウキと二人で過ごしたいな。ペットが居ると、ペットが中心になるぞ?」
「あっ・・・。ダメ。僕も、タクミと二人がいい!」
少しだけずるい言い方をしたが、ペットは回避した。俺だって猫を飼いたいが、今は我慢だ。仕事を初めて、しっかりとした収入ができて、ユウキと結婚したら考えてもいいだろう。
離れには、地下倉庫を経由するしか入られない。よく作られたな?
「ユウキ。ジュースで乾杯しよう。ケーキを食べてから風呂に入ろう。さすがに疲れたから寝よう」
「え・・・。うん。わかった」
ジュースで乾杯して、ケーキを食べた。
そこで、ユウキが言いよどんだ理由がわかった。風呂に一緒に入るつもりのようだ。電気を消せば大丈夫とか言い訳しながら二人で一緒に入った。いろいろ見て、見られてしまった。そして、いつもの癖で着替えが脱衣所に置いてあると思ったが、用意するのを忘れた。
身体を拭いて、タオルを身体に巻いて寝室に向かった。
ユウキが片付けた寝間着や下着が見つからない。
「いいよ。タクミ。このまま寝よう」
「ユウキ?」
巻いたタオルを外して抱きついてきた。
俺もタオルを外してユウキを抱きしめる。
その日は、キスをして抱き合いながら眠った。まだやることが多い。ユウキにも落ち着くまで待ってもらった。俺だってユウキが欲しいが・・・。生活の基盤を作ってからじゃないと・・・。
必要な物を通販で購入しているだけなのに、オヤジの手伝いで貯めていた預金がみるみる減っていく。
数日後に、オヤジから業務回線とラックサーバはオヤジの会社や関連会社が行っているサービスの監視用のサーバだと言われた。管理費で、月に10万、稼働率の目標は90%だと言われた。メンテナンスを除いてなので、月に3日程度は緊急メンテナンスが入れられる計算になる。余裕ではないが、なんとかなる数字だ。設定は、オヤジの会社の人間が遠隔で行うらしい。外部からのアクセス制御の準備ができたら連絡すればいい。
パーティションも入れて、ネットワークの設定も完了した。買い忘れも揃えた。服や着替えも足りなかったので新しくした。
そして、昨日・・・。ユウキと初めて一つになった。
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