109 / 110
第五章 魔王
第七話 ミアと魔王
しおりを挟む今日は、私のお披露目があると言われた。
魔王島の中央にある私のダンジョンに皆が集まってくる。
「お姉ちゃん」
私の横にはミイがいる。肩には子狐がいる。
それが嬉しい。私たちは、魔王様に救われた。いつ死んでもおかしくなかった。でも、魔王様に保護されてから、私たちの生活は変わった。
魔王様が、幾多の魔王を束ねる大魔王様になった。
魔王様は、私だけではなく、妹にも言葉遣いは自由にしてよいと言われている。甘えるのとは違うが、大魔王様の考えは、魔王は同列で力の違いはあるが、魔王は同列だと言って・・・。魔王の眷属も、言葉遣いを咎めない。
そう、私は魔王になった。
---
魔王様が大魔王様となった後で、私とキアとロアとシアとベアとマアとラアが呼び出された。ヒアは、呼び出されなかったから不思議だった。獣人系の人物だけが呼び出された。
そして、私たちが、魔王になれると教えられた。
魔王になるメリットとデメリットも教えてもらった。
すぐに結論は出す必要はないと言われたが、大魔王様のお力でも3名までしか魔王に引き上げられないらしい。時間がたてばまた引き上げられるようにはなるようだけど、1?2年くらいは時間が必要なようだ。
メリットは、ダンジョンが持てるようになることです。眷属も作ることができる。
デメリットは、大魔王様が討伐されると一緒に死んでしまうことです。
メリットでもデメリットでもあると言われたのが、寿命がなくなることで、子孫を残すことができなくなることだ。
魔王の因子を持っているのが、呼ばれた者たちで、他は因子を持っていないと教えられた。
ヒアは、人族であることや、大魔王様への忠誠は高いが、一番の関心が別方向に向かっているために、因子が芽生えていないようだ。愚かだ。大魔王様以上に大切な存在などいない。
寿命が無くなる?それだけ長く大魔王様のお役に立てる。ルブラン殿やモミジ殿たちと一緒の存在になる?私には、メリットでしかない。
心配事が全くないわけではない。
大魔王様の次にだいじなミイの存在だ。かわいい妹だ。大魔王様に保護された時には、明日には死んでしまうかもしれないと思っていたが、しっかりした食事と適度な運動で、逞しくなった。身長も私と同じくらいになった。ミイには因子が芽生えなかった。
心配だけど、それ以上に大魔王様のお役に・・・。私たちの誰かが魔王になって、魔王たちが集まる場所の管理をしてほしいと言われた。
皆が少しだけ戸惑っている。
気持ちはわかる。わかるけど、私は迷わない。
「大魔王様。私は、魔王になりたいです。私ではダメですか?」
「ミア。いいのか?子孫を残せないぞ?」
「はい。幸いな事に、魔王カミドネが保護してくれた所に、お父様の弟様が居ました。狐人族としては、お父様の後は、弟様が継いでくれます」
「そうか?もう一度、確認するが、本当にいいのか?俺が討伐されると、ミアも一緒に死んでしまうぞ?」
「はい!それこそ、私が望んでいることです。攻めてくるような者が居れば、剣にも盾にも、大魔王様のために命を使います」
「わかった。魔王島のダンジョンは、ミアに任せる。他の者は下がってくれ、持ち帰って相談してきてくれてもいい」
皆が一斉に玉座から出ていく.残ったのは、私と大魔王様だけだ。
ルブラン殿も、モミジ殿も、ナツメ殿も、カエデ殿も、カンウ殿も、バチョウ殿も、皆とは違う扉から出て行った。
「え?」
二人だけになったことに驚いていると、大魔王様は笑ってくれた。
「大丈夫だ。ミア。本当に良いのだな?」
「はい」
「わかった。ミア。ふむ・・・。ミアは、真命ではないのだな」
「え?」
「あぁ皆の名前は、俺が決めたのだったな。そうか、あれは真命にはならないのだな。真命が空白のままだと、コアが生成できないのか?皆に出て行ってもらって正解だな」
大魔王様が、私の頭に触れながら何か難しい表情で呟いていらっしゃる。
「大魔王様?」
「すまん。ミア。ミアたちは、名前がなかったのだよな?」
「・・・。はい」
「俺が決めていいか?」
「え?ミアという名をもらいましたが?」
「うーん。説明が難しいけど、ミアと言うのは、誰もが知っている呼び名だ。そうだ!ルブランがいい例だ。ルブランは、皆が呼んでいる名だが、ルブランには俺とルブランしか知らない名がある。それが、真命だ」
「そうなのですか?それでは、他の方々も?」
「そうだ。モミジたちにも、真命はある。もちろん、他の魔王たちも同じだ」
「そうなのですね」
「そうだ。真命を知られると、名で縛られてしまう」
「わかりました。大魔王様と私だけが知っているのは、真命なのですね。ミアは、皆が知っている名なのですね」
「そうだ」
「お願いします。大魔王様。私に真命をいただけますか?」
「わかった」
大魔王様に、真命をいただいた。
”漢字”で書かれた名前だ。
「よし、真命が入った。ミア。魔王化に移行するぞ」
「はい。お願いします」
真命をいただいた時点で、大魔王様との繋がりを強く感じるようになった。ルブラン殿たちは、こんなにも大魔王様を身近に感じていたのかと考えると、嫉妬してしまいそうだ。
大魔王様が、本の様な物に手をおいて、何か発動した。
くっ!
何か、力が入り込んでくる。
体を力が駆け巡る。
大魔王様の前で無様な姿を見せたくない。
数秒の様な、数分の様な、不思議な時間が過ぎ去った。
「ミア。頑張ったな」
私は倒れてしまっていたようだ。
大魔王様が私の頭を撫でてくれている。
嬉しいけど、申し訳ない気持ちが強く出ている。そして、ふがいない自分が許せない。
立ち上がろうとしても、足に力が入らない。
「動かなくていい。まだ、体の再構築が終わったばかりだ」
「・・・」
返事をしたいが声が出ない。
「わかっている」
大魔王様が優しく頭を撫でてくれる。
どのくらい時間がたったのかわからないが、声が出るようになって、大魔王様に謝罪した。笑って許してくれた。
立ち上がって驚いた。
普段よりも視線が高い。手足を見れば、成長している?胸は成長していない。
「ほぉ・・・。九尾か」
「え?」
尻尾を見れば、確かに根本から9本の尻尾が生えている。
狐人の伝説上の存在だ。私が?本当に?
”何か”が目の前を漂っている。
大魔王様には見えていないようだ。
魔王化に伴う”何か”なのかもしれない。
”何か”に手を伸ばす。
確かに触れているが、触れていない。”何か”が、突然、動き出した。
「え?」
徐々に形になっていく、これは?
大魔王様も驚いているが、何か面白そうだ。
私から何かを吸っているように思える。
5分くらいたったころに、”何か”がはっきりとしてきた。
「子狐?」
「ほぉ・・・。面白いな」
「大魔王様?」
「ミアのコアだな。自立するのか?すごいな」
「え?え?」
コア?
魔王が持つというコア?子狐が?
『マスター』
「え?誰?」
「ほぉ。動くだけではなく、自分から話しかけて来るのか?興味深いな」
子狐に名前を付ける必要があると子狐が話しかけてきた。名前は、大魔王様が考えてくれた。真命と呼び名を別に考えてもらった。大魔王様も子狐に・・・。小狐丸に興味があるようで、二人でいろいろ小狐丸に質問をした。
どうやら、大魔王様や魔王たちの様に、異世界から召喚された魔王ではなく、私のような者が魔王に進化した場合には、種族に関連があるサポートがコアになるようです。
だから、人族のヒアには因子が芽生えなかった可能性があると、大魔王様が考えを変えられていた。
魔王島の支配も小狐丸が行えると言うので、ダンジョンの作成を指示した。
5日ほど必要だと言われた。
そのあとで、居住区やダンジョンに階層や罠を作った。
眷属はまだ作っていない。大魔王様からいただいたポイントで眷属を召喚するのは、小狐丸から辞めた方がよいと言われたからだ。
そして、同じ種族の者・・・。私なら、狐人族ですが、眷属にすることができるようだ。条件はあるようだが、今のところミイだけだけど、眷属に出来ると教えられた。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる