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第三章 帝国脱出
第四話 カリン実験をする
しおりを挟むイーリスが不思議そうな顔をしてから、護衛の剣を貸してくれた。
「カリン様。剣は、護衛が使っている物です。予備がありますから、壊してしまっても問題はありません」
イーリスが、不思議そうな表情をした意味が解った。
私が、剣を的にするつもりだと思ったのだろう。
剣を手に持つ。
初めて持つけど、少しだけ重いけど、竹刀を持つような感じかな?
護衛は片手で持っていたけど、両手で持つ。
意識を集中する。魔法はイメージ。
「カ、カ、カリン様?それは?」
驚いているイーリスの声が聞こえる。
ん?あぁ成功した!
「剣に、火を纏ってみた?」
「なぜ疑問形なのですか?でも、本当に、そのような事が出来るのですか?」
「え?出来ない?」
火を消して、聖の剣にしてみた。意味があるとは思えないけど、”の”を外せば、”聖剣”だなと関係ないことを考えてみた。
「え?あっ今度は、聖ですか?剣に属性を纏わせているのですか?」
「正解。これなら、属性にそった攻撃が出来る」
剣道の授業で習った構えから、剣を振り抜いてみる。
少しだけ重く感じる。イーリスに剣を返して、馬車から自分のサイズに調整してもらった、太刀と脇差を持ってくる。最初から、これを持って森に出かければよかった。
抜刀術なんて習っていないから、剣道の構えを自分流に変えていくしか無い。今は、授業で習った構えから太刀を振り抜いてみる。もう少しレベルが上がれば、片手でも扱えるかもしれない。太刀は、両手で扱って、脇差を二本もってもいいかもしれない。
馬車に戻って、まーさんに脇差を借りよう。
「まーさん」
「どうした?」
「まーさん。脇差を作っていたよね?」
「あぁそうだ。カリンに、渡すのを忘れていた」
「え?私の脇差?持っているよ?」
「あぁ違う。違う。王都を出たら、武器を使うことになるだろう?」
「うん」
「予備が必要になるだろうと思って、脇差を二振りと太刀を一振り。作ってもらった。銘は打っていないから、カリンが名前を付けてくれ」
「え?いいの?」
「必要になったのだろう?」
まーさんは、私が持っている脇差を見て、笑いかけてくれた。こういう所が”ずるい”と思ってしまう。大人だとは解っている。でも、姿が若くなっている。多分、20代の前半だと言っても通用する。私の姿は変わっていない。イーリスに勧められて、化粧をすこしだけするようになって、雰囲気は変わったと思うけど、17歳の小娘だ。まーさんは、大人だ。こんな小娘を・・・。
え?私、今、何を・・・。
「どうした?」
顔が暑い。きっと動いたからだ。
「え?あっなんでもない。なんでもない。まーさん。ありがとう!」
まーさんから差し出された脇差と太刀を奪うようにして、馬車から出てしまった。恥ずかしい。あとで、しっかりとお礼を言わないと・・・。
「カリン様?」
「ごめん。イーリス。もう少しだけ、休憩していい?」
「はい。大丈夫です。私は、まー様にお伝えしてきます。森に入るのなら、護衛を連れて行って下さい」
「わかった。ありがとう」
今、まーさんの顔を見るのが、若干・・・。本当に、若干だけど・・・。恥ずかしい気持ちになっている。
太刀と脇差を鞘にしまう。
まーさんから、新しく受け取った脇差を使ってみたいと思えた。
刀身が黒と銀だ。すごく綺麗。光を吸い込むような黒い刀身は、黒鉄。光を反射する銀色の刀身は、白銀。脇差に名前を告げると、不思議な現象が発生した。二振りの脇差が金色に光りだした。そのまま、刀身に光が集まって、文字を形成する。
光が治まると、刀身に”日本語”で私が考えた名前が打たれている。銘が刻まれた。脇差だから?太刀を取り出して、銘が刻まれているか確認をすると、たしかに、こちらの文字で銘が刻まれていた。打った人の名前だろうか?もう一本の太刀には、銘が刻まれていない。私が”銘”を考えていいのだろうか?殺生〇様が持っていた。「天〇牙」や「鉄〇牙」なんて名前を着けてもいいのだろうか?
天生〇なんて名前にしたら。聖をまとっている時には、まさに癒しの刀になってしまいそうだ。
名前は、後で考えよう。黒鉄と白銀は気に入っているから、問題はない。
さて、実験を行ってみよう。
黒鉄を右手に、白銀を左手に持つ。二刀流なんて習っていない。今は、実験だし、問題はないだろう。
黒鉄には、火を。白銀には、聖を纏わせる。
イメージが難しい。何度か、失敗をしていると、弱いながらも、二つの属性を纏うことができた。
他の属性は?
使える気がするのだけど・・・。
イーリスが戻ってきて、時間は大丈夫だと伝えてきた。
もう少しだけ集中をする。
他の属性は、そうだ!雷と氷!
雷は、できそうだ。
黒鉄に雷のイメージを纏う。黒の刀身に、雷は綺麗だ。白銀は、氷のイメージを纏う。
私の足元で、丸くなっていたバステトさんが、起き上がって、私の足をタップする。私がやろうとしていることが解って、手助けをしてくれているようだ。
”にゃ!”
【魔術:風を取得しました】
【魔術:雷を取得しました】
【魔術:水を取得しました】
【魔術:氷を取得しました】
【魔術:炎を取得しました】
え?
思わず、バステトさんを見てしまった。
もう終わりだというのか、足元から離れて馬車に向かっている。
「カリン様?」
脇差を鞘にしまう。
「イーリス。一般的な話を聞いていい?」
「なんでしょうか?」
「人って、どのくらいの属性が使えるものなの?」
「質問の意図がわからないのですが?」
「簡単にいうと、炎は火の上位版だよね?」
「はい。そうです」
「風の上位は、雷。水の上位は氷。で、有っている?」
「はい。問題は・・・。まさか!」
「うん。取得した。火は、さっき獲得したけど、今・・・。炎と風と雷と水と氷。バステトさんが”何か”した可能性もあるけど・・・」
「そうですか・・・。6属性の魔術を・・・」
「うん。普通だよね?ね?ね?」
ダメな奴だ。
イーリスの表情から、解ってしまった。複数の属性は持てるのだろうけど、6属性は多いのかもしれない。もしかしたら、他にも問題があるのか?
「カリン様。勇者様の中に、埜尻玲羅様がいらっしゃいます」
「え?あっうん?」
元同級生だから知っている。まだ、覚えていた。
「埜尻玲羅様は、勇者様の中で、魔術が得意で、”聖杖”の持ち主です」
「うん?」
知らないけど、そうなのだろう。
魔術が得意なら、杖が武器になるのだろう。
「そして、”魔術の勇者”と呼ばれている、埜尻玲羅様が使える属性は、火・土・風・水の4属性です」
「え?うそ?上位属性は?」
「幻です。あると言われていますが、書物の中にしか存在しません」
「・・・。えぇーと。気のせいってことには・・・」
「なりません。カリン様にも協力していただいた。初代様の日記ですが、その中にも上位属性が出てきていますが、誰も取得には至っていません」
「・・・。ふぅ・・・。イーリス。すこしだけ、本当にすこしだけ落ち着いて、近づかないでね?」
「はい。解っております。異世界の知識が影響しているのだと思います。なので、カリン様。上位属性を使って見せてください。お願いします」
イーリスは、土下座する勢いで頼んできた。
上位属性には、憧れがあるのだろう。それにしても、勇者たちでも取得ができていないのは、すこしだけびっくりした。条件が解らないけど、簡単に取得ができた印象がある。バステトさんが居たからなのかもしれないけど・・・。それでも・・・。うーん。よくわからない。
それから、時間まで上位属性を発動し続けた。
イーリスは、一生懸命にメモを取っている。
取得できていないのは、土と土の上位属性の鋼だけど・・・。ダメだ。イメージが固まらない。土ってどうしたらいいのかわからない。鋼なんて、もっとわからない。土壁とかならイメージ出来るけど・・・。出来たら、使い勝手がよさそうだから、欲しいのだけど、そうなると”闇”以外のすべての属性が取得できたことになってしまう。目立ってしまうのは、避けられそうにない。現状でも目立つだろうな。また偽装してから隠蔽しておこうかな?偽装だと、まーさんにお願いしないと・・・。
まーさんに・・・。
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