勇者召喚に巻き込まれたおっさんはウォッシュの魔法(必須:ウィッシュのポーズ)しか使えません。~大川大地と女子高校生と行く気ままな放浪生活~

北きつね

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第三章 帝国脱出

第二話 バステトの冒険

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 我は、”猫”だ。いや、違う。かつて”猫”だった者だ。

 名前は、バステト。真命は、雄が我に付けた名だ。雄にしては、珍しく素晴らしく我にふさわしい名だ。

 どうやら、今日はこの場所で休むようだ。
 我に、雌の守りを頼んで、雄は外で警戒するようだ。

 話の流れから、まだ時間はあるようだ。雌だけではなく、雄の安全のためにも、周りに居る”まがい者”たちを狩っておいたほうがいいだろう。雄の他にも、人間が居る。強さのほどはわからないが、安全にしておけば、雄も寛げるだろう。
 以前に、雄がしてくれたことを、我は雄に返そう。

”にゃ”

 見回りに行くことを、雄に知らせておく必要があるだろう。
 雄は、心配性なのだ。

「いいですよ。まだ食事も終わっていませんし、侍女から行程を聞かなければなりません。自由にしていいですよ」

 雄からの承諾を貰えた。

”にゃぁ”

 返事をしてから、雄と雌の足に我の匂いを付けておく、こうしておけば、弱い”まがい者”は近づいてこないだろう。知能や感覚が低い弱い”まがい者”が寄ってくる可能性があるが、弱い”まがい者”なら、雄の近くに居る人間で対応ができるだろう。

 我は、雄と一緒にこちらに来た時に、力を得た。我は、強者の一角を占めるのだろう。我の本能が、我に告げている。
 外に出られたことで、我は我の力を把握する必要がある。得た力は、使えるようになって、初めて力となるのだ。癒やしの力は、雌で試した。雄は、わかっていたようで、我が力を使おうとすると、雌の膝の上に移動させていた。確かに、雄よりは雌の方が心の疲労が激しかった。悩んでいるとは違う。心が疲弊していたのだ。我も最初はうまくスキルを使うことが出来なかった。

 さて、我が持っている他のスキルを試さなければ、雄と雌を守るためにも、我の能力を把握して置かなければならない。

 まずは、水が流れている場所に行ってみる。綺麗な水だ。我の”感”が、飲めると言っている。雄や雌が用意する水と違うのだろう。喉も乾いていないことから、前足をつける程度に止める。水は、冷たい。前足に付いた水を舐めるが、嫌な感じはしない。雄や雌が飲んでも大丈夫だろう。奴らは、我よりも弱い。食べ物や飲み物に気を使わなければならない。

 濡れた前足に、【スキル:乾燥】を発動させる。
 濡れていた部分が、乾いた。この能力が前からあれば、雨の日でも気持ちよく過ごせただろう。残念だ。

 身体が濡れるという不快感を解消する方法も見つけた。
 川を飛び越えて、森に向かおう。獣の気配がある方向に動いていけばいいだろう。2-3匹だろう?

”ふにゃ”

 気合を入れて、川を飛び越える。昔の我では不可能だったが、今なら、この程度の川なら簡単に飛び越えられる。着地もうまく決まった。

 獣の気配がする方向に進む。
 人間の幼体よりも小さい、二足歩行の獣だ。人間ではない。我の意識が、あれは”魔なる物”だと示している。まずは、【スキル:聖装】を発動。

 ほぉ。人間が使うような、鎧を纏うスキルだな。我の重要な部分だけを守るようになっているのか?

【スキル:飛翔】

 羽が生えるのか?ん?そうか、このスキルを常時使うと、精神力が必要になってくるのだな。

【スキル:飛翔:解除】

 これで、羽が消える。飛ぶのには、練習が必要だな。
 今は、聖装の力を試すべきだな。

【スキル:敏捷】

 これで、移動が早くなるのか、これも、飛翔と同じで練習が必要だな。
 我に気がついていないような”まがい者”には必要ないだろう。解除しておこう。

”にゃ!”

 上部にある枝を目指して一気に駆け上がる。

 我の武器は、爪と噛みつきだが、噛みつきは遠慮したい。爪を使った攻撃を仕掛ける。聖装の力で、身体能力が上がっている。木に登って真上から攻撃を仕掛ける。

 真上までの移動には苦労しなかった。木から木への移動も、難しくは無い。

”ふぅ”

 ”まがい者”は、我には気がついていない。
 枝から飛び降りて、奴らを爪の攻撃を行う。

【スキル:聖装:聖爪】

 聖装のスキルの一つを起動する。任意の爪の部分から、攻撃が可能な爪が出てくる。我が最も得意とする。左前足に爪を生やす。

 枝から一気に”まがい者”に近づく、我の存在に気がつく前に、爪の攻撃を当てる。
 飛び降りた場所の近くに居た、2匹の首を狙った爪は、首を跳ね飛ばす威力だ。何がおこったのか解らない様子のもう1匹の背後に移動して、爪を”心の臓”に突き刺す。そのまま、爪を伸ばす。

【スキル:聖装:聖爪:解除】

”にゃ”

『スキル隠密を取得』

 新しいスキルを取得したようだ。雄が、我のスキルを偽装した時に使った物だ。使い勝手が良いものだ。
 気配を探ると、移動する気配がある。先程の奴らと同じ者のようだ。

 我が近づいているのに気が付かないのか?

【スキル:隠密】

”にゃ!”

 隠密を発動して、正面から”魔なる者”に接近する。我に気が付かない。攻撃を行えば、さすがに気がつくだろうから、背後に回り込んで、首を狙う。

 1匹は、毛色が違うようだ。
 他の2匹よりは強い。先に攻撃を行うべきだった。2匹を倒した時に、我の存在に気がついたようだ。

 今までの”まがい者”は、緑色の肌をしていたが、最後に残った者は、肌の色が今まで”まがい者”よりも”濃い”、黒までは行かないが、深い緑だ。色の判断ができるようになって、世界が変わった。判断基準が増えた。

 さて、対峙していても何も変わらない。

【スキル:聖装:爪の舞】

 放出系のスキルだ。
 我の爪を複製して、飛ばす。舞うように操作ができるようだが、まだ我の技量では飛ばせるだけだ。このスキルは、時間で爪が消滅する。精神力を使うので、連続での使用は難しいが、牽制には使える。

 ”まがい者”の意識が、飛んできた爪に向いた。

【スキル:飛翔】

【スキル:聖装:聖爪】

【スキル:飛翔:解除】

 ”まがい者”の真上に飛翔して、聖爪を発動して、両の前足に爪を装備する。
 飛翔を解除して、”まがい者”の頭上から攻撃を行う。

 両の攻撃はヒットしたが、”まがい者”を倒すには至らない。かなりのダメージを与えられた。

 ”まがい者”は、持っている剣(のような物)で、我を攻撃してくる。背を守っている聖装に掠るが我にはダメージはない。すぐに、”まがい者”の足ものに潜り込んで、足にダメージを与える。その後に、背に爪を突き立てる。

 ”まがい者”が、静かに前に倒れるのを見つめる。

 なんとかなるようだ。
 我もまだまだだ。この程度で満足しては居られない。もう少しだけ、辺りを回ったほうがいいだろう。

”にゃ!”

 あれは、雌が我に貢いでいた食べ物だ。
 そうか、森にできているのだな。雌の土産に持っていこう。

【スキル:収納】

 雄が言っていたスキルを発動したが、失敗した。
 そうか・・・。鎧が邪魔しているのだな。

【スキル:聖装:解除】

 これで、使えるだろう。

【スキル:収納】

 触っている物を持っていけるのだな。
 それで、目の前に出ている物を触れば、取り出せるのだな。

 これは便利だ。入れたものの重さを感じない。先程、倒した、強い”魔なる者”を雄の土産に持っていこう。雌には、食べ物を持っていけばいいだろう。

 ”まがい者”を探そう。少しでも、雄と雌が安心できるように、討伐をしておこう。

『スキル探索を取得』

 スキルを得たようだ。
 これは、便利なスキルだ。精神力もそれほど使わないようだ、効果が切れた時に、使うようにしていれば十分だろう。

 雄と雌を守るために、我は強くなる。

 そろそろ、雄の所に戻るか、あまり心配させるのも、我の本位ではない。

---
 バステトさん目線です。
 事実(?)と異なる部分もあります。

 偽装していないステータスは次のようになります。

大川大地おおかわだいち
ジョブ
 聖獣
称号
 なし
スキル
 聖装
 飛翔(3/10)
 敏捷(3/10)
 隠密(2/10)
 収納(2/10)
 探索(2/10)
 生活魔法

 ”まがい者”は、ゴブリンです。強い個体は、ゴブリンの上位種で、ゴブリン・リーダーです。
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