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第四章 スライムとギルド
第四十七話 真子のスキル
しおりを挟むそうだ!
思い出してきた。
腕を上げる。
指が・・・。
足は見なくても解る。布団を掛けられている?でも、布団を確かに感じる。足が、私の失っていた足が・・・。
”プクプク!ププゥ!”
「え?」
”プク!”
「モモ?」
”プクプク!”
え?これがスキルの影響?モモが何を言っているのか解るようになっている。
凄い!
「モモ。私が言っていることが解るの?」
”ププゥ!”
嬉しい。
指や足が治ったのも嬉しいけど、モモと話が出来るのが嬉しい。
「モモ。これからもよろしくね!」
”ププゥ!”
モモが、私の胸に飛び込んでくる。
いつもの仕草だけど、いつもと違う。
身体を起こすと、肩に乗ってくる。
頭を撫でてあげると、嬉しそうに喉を鳴らす。私に身体を擦り付ける。
そういえば、貴子ちゃんとライ君は?
あっ・・・。
思い出したくないことまで思い出した。恥ずかしい。
服を着せてくれたみたいだけど、下着は見つからなかったのかな?
ノーパン・ノーブラだと余計に恥ずかしいと教えた方がいいの?
服を自分で脱いで着替えをする。
まあ足に力を入れるのが怖い。でも、立ち上がれるのは解っている。肌も髪の毛も凄く綺麗になっている。不思議だ。満足したのかな?
指で触ってみる。血は出ていない。初めてだったのに・・・。貴子ちゃん。指で広げて、見たのかな?恥ずかしいな。お風呂にも入っていなかったから・・・。匂いとか大丈夫だったかな?平気だよね。うん。平気だ。
あんなに快楽が襲ってくるとは思わなかった。
声も出ちゃったよね?恥ずかしいな。全部、恥ずかしい事も、見られたよね?
貴子ちゃんは、何も言っていなかったと思うけど・・・。うん。気にしない。それに、私・・・。男の人が怖くて・・・。事故の影響かな?
下着は、見つかった。サイズは丁度いいけど、中学校の時に履いていたパンツだ。ヨレヨレだし、汚れている。そうだ。中学生で、覚えたから、寝る時に毎日・・・。それで、こんなになっているのね・・・。ブラは・・・。いいかな?
パンツを履いて、服を着る。
ただそれだけなのに、涙が溢れて来る。
嬉しい。嬉しい。
無くなっていた指で、無かった足に触れる。
夢じゃない。
机の上に置いてあった鏡で自分の顔を見る。傷が無くなっている。
顔を触った時に、傷が無かった。
鏡で見て・・・。本当に、傷も治った。
モモが、肩に戻ってきて、顔を触っている私の指を舐める。モモが頬を伝っていた水分を舐めてくれた。
身体に、まだ快楽の余韻が残っている。
ブラをしなくても、目立たないが、目立ってしまっている。ブラを身に着ける。自分でブラジャーを身に着けるのは事故後では初めてだ。新鮮な気持ちになる。そうだ!服も買いに行かなきゃ・・・。靴下も、下着も、中学の時に使っていた物しかない。
鏡で自分の顔を見る。
傷が無いのは、治ったからだ。事故にあってから、鏡を見なくなっていた。
酷い傷が心を傷つけていた。でも、私を傷つけていた傷はなくなった。
鏡に映っている自分の姿は、自分の記憶の中にある自分よりも幼く見える。高校生になったばかり位に見えてしまう。貴子ちゃんと同じくらい?スキルの影響?
服を着替えた。
汗の匂いは大丈夫かな?
自分では解らない。
ドアがノックされた。
「真子さん」
貴子ちゃんだ!
「はい」
ドアを開けると、貴子ちゃんが一人で立っていた。こんなに可愛い子に、恥ずかしい所をみられて、それだけじゃなくて・・・。考えると恥ずかしくなってしまう。思い出して・・・。
「よかった。起きたのですね」
「うん!」
貴子ちゃんに抱き着きたい衝動があるけど我慢した。できるお姉さんになろうと思う。貴子ちゃんに頼られる存在になりたい。
「真子さん。スキルの説明をした方がいいと思ったのですが?」
「うん。危険なことはある?」
「真子さんや、モモちゃんが危険な目にあうことはないです」
それなら、スキルの説明は、後回しでいいかな?
「貴子ちゃん。まだ、歩くのは不安だから肩を貸してもらっていい?お兄ちゃんに会いたい」
「わかりました」
貴子ちゃんは背が低いから抱き着く格好になってしまう。
これは、これで嬉しい。スライムと言っていたけど、質感は私と変わらない。それに、すごくいい匂いがする。
ダメ。私は、お姉ちゃんになる。貴子ちゃんの、秘密を知ってしまった。貴子ちゃんの家族の事も聞いてしまった。だから、私が貴子ちゃんのお姉ちゃんになる。お兄ちゃんにお願いして、貴子ちゃんの近くに住まないと・・・。引っ越しかな?許してくれるかな?
貴子ちゃんに支えられながら、自分で・・・。自分の足で歩いている。
不思議な感覚だ。中学生の時には、これが普通だったけど、杖が無くても倒れない。
リビングの扉を開けて、中に入る。
よく見た部屋なのに、どこか違って見える。
「真子・・・」
「お兄ちゃん」
お兄ちゃんが立ち上がって私に駆け寄ってきた。
貴子ちゃんは、お兄ちゃんが私の肩に触れた時に、身体を離した。
「・・・。お兄ちゃん。痛いよ」
「・・・。あぁ・・・。ごめん。真子。顔も、腕も、足も・・・。綺麗に治って・・・。貴子嬢。ありがとう。本当に・・・。ありがとう」
お兄ちゃんは、私を抱きしめたまま、涙声で貴子ちゃんにお礼を伝えている。
嬉しいけど、恥ずかしい。
「お言葉を受け取ります。それよりも、スキルの使い方を早急に覚えた方がいいと思います。あと、今後の事も決めないとダメですよね?」
貴子ちゃんの冷静な言葉で、お兄ちゃんも少しだけ落ち着きを取り戻した。
リビングの椅子に座りなおすことになったけど・・・。
長椅子の真ん中に貴子ちゃんが座って、私が隣。反対側には、茜さんが座っている。
雰囲気から解る。茜さんも私と同じだ。
私の正面には、お兄ちゃんが座っている。円香さんは、茜さんの正面だ。ライ殿・・・。ライは、スライムの状態に戻って、貴子ちゃんの膝の上にいる。
モモは、相変わらず肩に乗っている。
「貴子嬢。真子のスキルは?」
貴子ちゃんが、私に芽生えたスキルの説明をしてくれます。
「そうか・・・。孔明。ギルドへの登録はどうする?」
「そうだな」
お兄ちゃんは考え込んでしまいました。
魔物同調は、モモとの意思疎通が出来るようになるというスキルです。茜さんが持っている”魔物支配”とは違って、モモの感覚に同調ができるようです。実際に貴子ちゃんに言われて、やってみたから、モモの視界と共有が出来た。自分を、モモの視線から見る感じがして変な感じがしました。おかしいのは、私は私として意識があって、モモの中にいる私も私なのです。貴子ちゃんが言うには、慣れるまで大変だと言っていました。
再生は、今は使えなくて、今後も使えない可能性が高いようです。
申し訳なさそうにしていますが、治った手足を考えれば、それだけの強力なスキルです。代償が・・・。
治療は、今後も使えるそうです。
快楽に変えるのではなく、”治療”が行われるので、どんな状況で発動するのかは、貴子ちゃんにも解らないようです。私やモモに治療が必要だと判断した時に発動するスキルだと教えられました。
聖のスキルは、魔法です。
結界は、いろいろできるそうなので、ライが教えてくれるようです。
問題は、災眼のスキルです。
災いが見えるようになると教えてもらいました。魔物の出現も解るようです。ただ、貴子ちゃんにも、詳細は解っていないようで、私が”災い”だと感じる事柄に反応を示す可能性が高いと言われました。
「円香さん。お兄ちゃん。私・・・」
私の希望を伝えます。
ギルドの職員になりたい。
貴子ちゃんからスキルの使い方を習いたい。
そして、私から貴重な時間を奪った奴らを・・・。
「ははは。孔明。お前よりも、はっきりしている」
「真子。お前が、治療を受けている時に、円香と話をした。静岡に引っ越しを考えている」
「え?」
「真子。夜学に通うか?」
「いいの?」
「あぁ昼間は、ギルドで働いてもらう」
「あの・・・」
貴子ちゃんがおずおずと手を上げる。
「貴子嬢?」
「真子さんが通う学校に、私も通えないですか?今なら、スライムだと解らないと思いますし、スキルを隠せるので、可能だと思います。それに、戸籍もまだ残っているので・・・」
「お兄ちゃん!私、貴子ちゃんと学校に通いたい!」
どうやら、貴子ちゃんと学校に通えるようになるようです。
スキルの勉強と合わせて、学校の勉強をしながら、ギルドのことも覚える事になったのですが、大丈夫です。
一度、何もかも諦めた人生です。
頑張れば、手に入る可能性があるのなら、頑張るだけです。
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