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第四章 スライムとギルド
第三十一話 訪問準備
しおりを挟むライと一緒にギルド職員の茜さんのご自宅に行くことになった。
友達ではないけど、知り合いのおうちを訪ねるなんて、小学生以来で緊張します。
勢いで言ってしまいましたが迷惑じゃなかったのでしょうか?
茜さんの声が、歓迎しているようにも聞こえたので、大丈夫だと思う事にします。
手土産と、治療に必要な準備をしましょう。
「ライ。アイテムボックスを作って、時間停止でいいかな?」
「うん。わかった」
私のスキルの一つ。”記憶保持”が実は、アイテムボックスに付与できることがわかりました。
時間停止とは違うとは思いますが、中に入れた物が劣化しないことが解っています。検証中ですが、ギルドで聞いてみればわかるでしょう。ギルドの献策で出てこないスキルが多すぎるのは、理由はわかりませんが隠しているのだと思います。私が持っているスキルの殆どが、検索しても情報が出てきません。
魔石と結晶は、買い取りに回したので、今回は違う物にしよう。
パロットが足下に来て、お土産の提案をしてくれました。
ポーションの材料にもなるし丁度いいかもしれません。それに、茜さんの所の”聖樹”に与えれば・・・。
エントやドリュアスたちが自分たちになっている果実を大量に持ってきてくれました。
あと、パルが配下の者たちに命令を出して、蜂蜜とロイヤルゼリーを持ってきてくれました。オクトやカラントからは、真珠を渡されましたが、お土産に宝飾品は相応しくないでしょう。今回は見送ります。
「お姉ちゃん。話を聞いた感じでは、ポーションではダメだと思う」
「そうね。”再生”と”治癒”かな?」
「うん。あと”鑑定”を持っていけばいいと思う」
「”鑑定”?」
「うん。”鑑定”があれば、問題があれば自分で治せるでしょ?」
ライの言っていることは理解ができる。
でも、”人”にできるとは思えない。これは、ライが意識を持ったのが、”スライム”になってからだということに関係している。ライの提案を受け入れる形で、”鑑定”を持っていくけど・・・。
茜さんに使ってもらった方がいいと思う。
私のことを信用してくれるか解らないから、ギルドのメンバーが”鑑定”を覚えている方がいいと思う。
鑑定を付与した魔石では、調べられることに限界がある。茜さんたちも詳しく解ったほうがいいと思うし、ギルドの職員さんだから、知識もわたしよりも持っているでしょう。
「そうだね。ライ。”鑑定”の準備をお願い。出来たら二つ。あと、”聖”をお願い」
「”聖”では、治らないよ?」
「そうだね。でも、ちょっと考えがあるの」
「わかった。”再生”のレベルは?」
「うーん。デイジーの時は?」
「最低レベルで作ったよ?」
「中級でいいかな?オークじゃ磨いたら足りないよね?」
「うん。オークの色違いかな?」
「それで、お願い。”聖”は最高レベルでお願い」
磨いた魔石なら、適性がなくても強制的に覚えさせられる。成長は見込めないけど、成長は考えなくていいよね。
治療を受ける人が、再生への適性がなかった時には、強制しなきゃならない。それが少しだけ難しいかな?
「わかった」
ライが準備をしている間に、私は着替えをする。
知り合いの家に着て行けるような服は持っていない。スライムになってから、身体のサイズが自由に出来るのが嬉しい。慎ましかった胸のサイズが変えられる。意識をしていないとダメなので、あまり意味がないけど・・・。
前のサイズのままなので、服を新調しなくてもよかったのは嬉しかった。
もしかしたら、初めて会う人もいるかもしれないから・・・。
迷ったけど、無難に制服を選択した。私の身分は、スライムだけど、元女子高校生だ。学校は辞めてしまったけど・・・。どこかの夜学にでも入ろうかな?
仕事をしなければならないから・・・。高校は卒業しておけばよかった。
試したけど、結界を纏っていれば、スキルの有無のチェックにも、魔物チェックにも引っかからなかったから、学校に通えたよね。復学とか出来るのかな?
「お姉ちゃん?」
「ライ。準備は終わった?」
「うん。でも・・・」
「どうしたの?」
「キングとクイーンとテネシーとクーラーとピコンとグレナデンとフェズたちと、ダークたちと、アイズたちと、ドーンたちと、フリップたちと、ジャックたちと、デックたちと、キールたちと、キルシュたちと、グラッドたちと、ナップたちと、パルとパルの眷属が、一緒に行くと言って・・・」
「うん。無理だね」
「そういったけど・・・」
「私も、こっちに残るのだけど」
「言ったけど・・・」
「飛べる子たちには、途中まで護衛をお願いして、背中に乗れる子だけは着いて来てもらうのは?」
「わかった。カーディナルとアドニスだけなのが不満みたい」
「ギルドの上空で待機出来るのは、フェズとアイズとドーンかな?近くにある浅間神社なら、フリップやジャックが居ても大丈夫かな?」
「わかった。待機させるね」
「お願い」
準備はよかったけど、ギルドに向かうメンバーで揉めるとは思わなかった。
分体を作って意識を移動させる。スキルも最低限で十分だろう。
正直に言えば、”魔物支配”があれば困ることはなさそうだ。ライが居れば、ライの中に潜り込めば、”核”として保存されるのは解っている。
今回の治療でも、魔物支配が有効だと思う。
ギルドに向かう。
私がカーディナルに乗って、ライがアドニスに乗る。
ユグドちゃんに誘導をしてもらいながら、空の旅を楽しんでいる。
風向きから、浅間神社を迂回するようにした。皆は、浅間神社で待っていてくれるようだ。ギルドの周りの警戒も行ってくれる。街中に魔物が現れることはないけど、魔物が現れそうな場所は意外と多い。広い庭があるような場所でも、魔物の素が発生している場面も見ている。霧散しているので、魔物には鳴らなかったけど、警戒をしておいた方がいいだろう。治療が終わったら、魔物の素の事も聞いてみよう。
ユグドちゃんが見えてきた。
『ライ!玄関に回ると伝えて』
『はい』
ライは、スライムの時には丁寧な言葉になる。
よくわからないけど、そういう物だと思っている。人の姿の時とは、主人格が違うとか言っていた。
うーん。
茜さんのスキルの数から考えると、魔人?になってしまっていないかな?
そういえば、クシナ?スサノ?のどちらかは、”再生”と”治癒”を持たせたよね?
大丈夫だよね。多分。
それに、多分・・・。
今更だよね。クロトちゃんとラキシちゃんだけでも十分だよね。魔人になってしまう?
玄関に回った。
どこが、茜さんの家なのか迷ったけど、すぐに解った。
そうか、ユグドちゃんが成長して、茜さんの部屋を守っているのだね。
そうだ、これからの事を考えれば・・・。
あっ!
「ライ」
クシナちゃんとスサノちゃんのスキル構成を忘れていた。
保護した時には、誰かの眷属にするとは考えていなかった・・・。二人だけでも、大丈夫なように、攻性スキルを持たせて、お互いにカバーが出来るようなスキル構成にしたのは覚えている。
「なに?」
「そういえば、茜さんの所に行った二人のどちらかが、”結界”を持たせたよね?」
「うん。スサノが”再生”と”治癒”と”拘束”と各種攻性スキルで、クシナが”結界”と”平行思考”と各種攻性スキルを持っているよ?」
だよね。そんな記憶がある。
カーディナルやアドニスは敵わないけど、私の家族の中でもトップクラスの攻撃力だったはずだ。オークの色違いなら、単独で撃破できると思う。二人で連携しながら挑めば、オーガの色違いや、ミノタウロスの色違いでも対応ができると思う。
茜さんの護衛が出来たと思えばいいのかな?
自衛隊とかには、もっと強い人が居るだろうけど、街中で暴れる程度の人や魔物なら大丈夫になったと安心しよう。
「そうだよね。やっちゃったかな?」
「え?」
「茜さんの眷属になっているから、茜さんが使えるスキルは芽生えるよね?」
「うん。別に、困らないよね?」
そうだよね。
それに、数日で芽生えるようなスキルは、攻性スキルくらいだけど、家に来た時の茜さんの状況では、放出には適性は低そうだから大丈夫だよね。助勢と強化は普通くらいだから、結界と拘束は芽生えるかな?特異は”人”だと低いのかな?よくわからないけど・・・。”平行思考”は強化だから、芽生える可能性が高いかな?”再生”と”治癒”は、助勢だから芽生えるよね。
スキルを剥がす実験をやろうかな?
魔物の確保を考えよう。
茜さんの家のチャイムを押した。
今になって私の格好がおかしくないか気になって・・・。緊張してきた。大丈夫かな?
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