スキルが芽生えたので復讐したいと思います~スライムにされてしまいました。意外と快適です~

北きつね

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第三章 スライム今度こそ街へ

第十四話 会話

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 ”ライ”が私を見つめている。多分・・・。スライムに目があるのか解らないが、”ライ”から視線を感じる。

 まず、このスライムは”ライ”。本体が別に存在している。その本体との繋がりが出来て、はっきりと意思があるのだと言っている。
 そして、スライムに名付けした者が存在している。”ライ”はマスターと呼んでいるが、主人なのだろう。

 それだけではない。
 ”ライ”は、円香さんのスキル構成を見抜いてしまっている。そういうスキルを持っているのか?それとも、スライム特有の能力なのか?

「千明?」

「ん?あっそうね。うん。茜に任せた」

 今の間は、何?
 任せたって、”ずるい”。

「ねぇ”ライ”。ギフトを持っていない人に意思を伝える事は?会話は可能?」

『この個体では無理です。本体に合流すれば可能です』

「え?本体ならできるの?」

『はい』

 本体が有能すぎる。
 それにしても、蟻をスライムに変える?そんなスキルが存在するの?

「本体に、この場所に来てもらう事はできる?」

『解りません』

 ”できる”や”できない”ではなく、解らない?

「え?会話を望んでいるのだよね?」

『はい。こちらから、本体に場所を伝える事が出来ません。ここがどこなのかも解りません。あと、本体はマスターの安全を求めています』

 公園だと言うのは、解っているけど、この公園がどこにあるのか解らない。
 当然だな。私も、急にどこかの公園らしき場所に放置されて、スマホも何も無ければ、場所を伝える事ができない。見える物を伝えて、相手が解ってくれるのを、期待するしかない。

「マスターの安全?スライムなの?」

『禁則事項です』

「え?あっ。内緒ってこと?」

『はい。もうしわけございません』

 謝られた。
 人間を相手にしているようだ。

 千明も、私も任せると言っておきながら、”ライ”に振れている。話は聞いてくれている。

 円香さんに話をするときに、私が覚えていない内容でも捕捉してくれることを期待しよう。
 千明の顔を見ると、話は聞いているけど、衝撃が強すぎるようだ。やはり、説明の時に”ライ”に居てもらう方法を考えた方がいいかもしれない。

「いいよ。貴方たちのマスターの安全が絶対条件なのよね?」

『いえ。違います。安全で無ければ、私たちが安全にします』

 ニュアンスが違う。
 安全にする?私たち?

「え?安全にする?」

『危険だと思える者を排除します』

 排除?
 殺すって事?

「それは、魔物だよね?」

『マスターに危害を加える可能性がある者、”全て”です。家族に危害を加える者も対象です』

 マスターが大事なのは理解した。
 家族云々は解らない。

「家族?」

『禁則事項です』

 うん。
 秘密にされると思った。

「私たちが、”ライ”の所に訪ねるのは?」

『検討します』

「え?」

『マスターと私と家族が、揃って居る所に、ギルドの方々が来る?と、言う解釈で合っていますか?』

 正直に話をしよう。

「え?あっ。うん。私も、ギルドの責任者。榑谷円香さんに確認をしないと・・・。無責任なことは言えない。でも、多分、検討はしてくれると思う」

 私には、ギルドを動かすような権限はない。できるだけ、円香さんに丸投げしたい。でも、”ライ”と会話ができるのが、私か千明しかいない。その千明は、話は聞いているけど、会話は拒否している。アトスを撫でる事で、心の平穏を保っているようだ。

 千明が撫でているアトスも、私の膝の上に居るクロトとラキシも、正体を知られたら大騒ぎになる。聞いたことがないスキルにギフトそれだけでも、ギルドは大騒ぎになる。そのうえで、猫が魔物になる事例が目の前にある。

『解りました。マスターのお住まいは無理です。しかし、マスターが指定される場所なら可能です』

 え?
 マスターの指定する場所?地名や建物が解るの?それとも、もっと違う指定の方法?緯度経度とか?
 これも、円香さんに任せるしかない。

「”ライ”から、何か聞きたい事はないの?」

『私や私たちからでは無いのですが、よろしいですか?』

「何?」

『マスターが、魔石や魔物のドロップ品の買い取りを希望しています』

「え?魔石?誰の?ドロップ品?武器や防具?」

『はい。後、不要なスキルが付与された物や、マスターが作った物です』

「え?作った?何を?」

『禁則事項です』

 そりゃぁそうだけど・・・。

「買い取れない物もあるかもしれません」

『その場合には、私たちが処理します』

「え?処理?」

『スライムは、物を取り込んで、自分のスキルにする能力があります』

「え?あ!」

 魔物鑑定で見た時に大量のスキル!
 でも、魔物を取り込んでもスキルにはならない。これは、実験した記憶が残されている。賢者ワイスマンにも記憶として残されている。

 賢者ワイスマンの情報と違うことが多すぎて、対応を考えなければならない。
 なんで、静岡でこんな重要な事案が発生しているの?

「”ファントム”って知っている?」

『知りません』

 そりゃぁそうだよね。ギルドの中での隠語のような物だし・・・。知っていたら怖い。

「そうだ。知っていたら、教えて欲しいのだけど、動物・・・。この子たちが魔物になってしまっているけど、何か知っている?」

 3匹の猫を指さして聞いてみた。

『スキル付きの魔石を食べさせる。魔石が浸かった水を与え続ける。マスターと同じ力を持つ物が眷属にする』

「え?眷属にする?」

『名を能えて、力の一部を分け与えることです。3体は、眷属です』

「うーん。それは違うかな?名前は、私と千明が付けたから・・・」

『名付けをした時に、力が漏れたような印象は?』

「疲れていたから・・・。よく覚えていないけど・・・。私の近くに居た二匹を抱きかかえて、名前を呼んだのかもしれない」「そうだね。私は、アトスを抱きかかえていた」

 千明が会話に入ってきた。
 当時の様子を思い出す。ケージから出ていた3匹を、私がクロトとラキシを抱きかかえ名前を呼んだ。名前は、千明が候補を出して、3姉妹だからと決めた名前だ。

『その時に、眷属になったのです。”嬉しかった”と言っています。クロト殿に聞いた所、クロト殿たちは、スキル付きの魔石を与えられたそうです』

「え?クロト?本当?」

”にゃ!”

「茜。そんな高級品。どこにあったの?」

 千明は、私がクロトたちに魔石を与えたと思っているようだが、3匹を実験台にするような事はしていない。
 それに、私のお給料では3匹に与える魔石が変えない。それも、”ライ”の話では、スキル付きの魔石だ。そんな魔石、聞いたことがない。

「私は、知らない。買い取りは行っているけど、本部に送付しちゃっている。もしかして、荷物から漏れた物だとしたら・・・」

 あるとしても、普通の魔石だ。
 スキル付きの魔石なんて、賢者ワイスマンにも登録されているか解らない。

 全部、”ライ”の作り話や、私と千明の頭がおかしくなっているとか、”ライ”の幻惑のスキルで夢を見ている。と、言ってもらえた方が信じられる。

『里見茜殿。ラキシが覚えていて、3匹で何かに乗せられて、人が沢山居る所で過ごしている時に、魔石を貰ったと言っています。人が沢山居て、怖い気配も沢山あったと言っています』

「・・・」

「・・・」

 場所と事件に覚えがある。
 ”天使湖魔物氾濫事案”あの時に、キャンピングカーに引き取ったばかりのクロトたちを乗せていた。

「千明?」

「うん。今、茜が考えた場所じゃないかな?人が多くて、怖い気配がしていた?あの時は、外には出していないよね?」

「ううん。ケージからは出さなかったけど・・・。何度か、キャンピングカーからは降ろした」

「でも、魔石には振れないよね?」

「あ!!」

「どうしたの?」

「あのね。ケージをキャンピングカーに戻すときに、小さな石みたいな物を見つけて・・・。すっかり忘れていた」

「まだ持っている?」

「うん。ギルドに戻ればある」

「・・・。それが、魔石だとして、どこからか運ばれてきて、それを偶然、クロトたちが食べて、魔物になってしまった?」

「天使湖の魔物討伐?」

「それしか考えられない。魔石がどこから来たのかは解らないけど・・・」

 もう限界だ。
 円香さんに丸投げしよう。”ライ”にも、ギルドのトップとの話に参加してもらおう。それがいい。そうしよう。
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