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第三章 スライム今度こそ街へ
第五話 買い物?
しおりを挟む帰りは、セノバから電車に乗って、清水まで移動して、市場に行こう。留守番をしてくれている子たちにお土産を買っていきたい。肉よりも、魚系が好きな子が多い。街中で買ってもいいけど、しっかりした物を買うのなら、河岸の市が便利だ。
「ライ。他に、何か欲しい物はある?」
「お姉ちゃん。文字や言葉が学べる本ってある?」
「ん?文字や言葉?」
「うん。僕は、読めるけど、カーディナルやアドニスたちも、文字が読みたいみたい」
「え?カーディナルたち?」
「うん。他の者たちも!」
「そう?わかった。セノバの上に本屋があるから、寄ってみよう」
「うん!」
河岸の市なら、パルシェから行った方が近いけど・・・。久しぶりに清水の街も歩きたい。一人になってから、清水には近づかなかった。銀座を家族で歩いた。皆で七夕の時に銀座を回った。忘れられない。でも、今なら・・・。横を歩いているライの頭を撫でる。
「なに?」
「何でもない。少しだけブラブラしてから帰ろう」
「うん!」
ライが、上を見つめる。
上空には、心配性な家族が私とライを見守っている。
ライと、パルシェまで移動してから、セノバに戻る。途中まで地下を使おうかと思ったけど、ライから反対された。地下では逃げ場がないと言われてしまった。誰かと戦うことは想定していないから大丈夫だとは思うけど、地上で移動するルートを考える。
心配性な家族が、私とライの姿が見えないと不安になってしまうようだ。建物の中は諦めているようだけど、外を歩いているのなら、できるだけ地上を歩いて欲しいと訴えてきた。
ホテルの横から、松坂屋の横を通ってセノバに抜けるのがコースとしては早い。車道が近いから、自転車が来るとすれ違いのタイミングで少しだけ危ないと思う事はある。
「ライ!」
ライの手を握って、パルシェから郵便局に向かう。派出所の前を通る。悪い事はなにもしていないのに、少しだけドキドキしてしまった。人の姿になると、心臓がしっかりと定位置に来るのか、胸がドキドキしているのが解る。そういえば、血液とかどうなっているのだろう?指紋は、なぜかスマホで認証できたから大丈夫だった。あっ!
「ライ。また、銀行に寄っていい?」
財布の中を見て、銀行のカードを持ってきているのを確認する。静脈認証ができるようになっているはずだ。確か、セキュリティを高めるために登録した。ダメだったら、怖いけど・・・。
信号を渡って、葵ビルの横を抜けて、銀行に向かう。
銀行にも、スキルの検知を行うシステムが入っているが、検知されなかった?ATMには誰も居なかった。そのまま、カードを入れて、静脈認証を行う。
え?
できた?
うん。深く考えても解らない。ようするに、擬態している身体は私だということだ。機械が認めて、認証してくれたのだ。
なんか、スライムにされてから、いろいろ有ったけど・・・。
私が私だと言われたみたいで嬉しい。認められた。
「お姉ちゃん?」
「あっ。何でもないよ。行こう」
「うん」
涙は出なかったが泣きそうな表情をしていたのだろう。ライが心配そうに覗き込んできた。
警備員と銀行員の人も心配そうな表情をしていたので、会釈をしてから銀行から速足で出た。
街なかでも自由に行動ができる。
スキルの検知は、銀行では動いていた。私の後に入ってきた人は、スキルを持っていたようで反応していた。警備員が近寄って確認していた。ギルドに登録しているカードを提出していた。スキルを持っていても、ギルドに登録していれば、カードが発行されると聞いた事がある。そのカードには、所持しているスキルが書かれていて、スキルに該当する事象が発生した場合には、スキル保持者が疑われるが、カードを提示しないと、入店を断られる場合が多い。
私とライが反応しなかった理由が解らないけど、反応しなかったのは事実だ。私もライもスキルを所持している。いや、そもそも、スキルを使って、人の姿になっている。
服や下着は、購入した。
家族から要望された物も購入できた。パパやママが居た時なら、ジャンボエンチョーに行けたのに、今は・・・。
あっ!今度、カーディナルに運んで貰おう。ベイドリームなら・・・。近くに、移動できるよね?三保まで行っちゃうと歩きでは難しいけど、人が居ない場所なら大丈夫だよね?休日なら、港湾部は管理人だけで、人は少ないよね?
一時的に地下を通るけど、スクランブル交差点まで歩いてから、セノバに向かう。
銀行の前を通って、地下道に入る。心配性な家族は、ナップを派遣してきた。そんなに心配しなくても大丈夫だと思うけど・・・。
『マスター。カーディナルやアドニスは、パロットやキルシュから、”車”はマスターを襲ってくる可能性があると・・・』
過保護な理由が少しだけ理解できた。
確かに、パロットやキルシュなら、車を知っている可能性がある。カーディナルたちは、”車”を見たことがあっても、”何”かまでは理解ができていなかった。確かに、家でDVDやBDを見ても、車に轢かれるようなシーンがある。
『わかった。車が危険だと認識していたのね?』
『はい。地下道も、車が襲ってきたら、逃げられないと考えたようです』
笑っちゃわるけど、なんとなくシュールな映像だ。
今の私なら、車に轢かれそうになった瞬間に、スライムになれば大丈夫なような・・・。きがしない・・・。でも、ない。
『わかった。それは、家で話そう』
『はい』
地下から、セノバに向かう。
過保護の理由もわかったから、車は注意していれば大丈夫だと認識させて、いざとなったらスライムになって逃げると説明しよう。
本屋で、必要な物を購入して、1階に移動して、電車に乗る。
ライに、来た時と違う電車に乗せたかった。それだけが理由ではないけど、たまの贅沢はいいよね。
家族が増えたけど、食費が殆どかからないのは嬉しい。
買った本を読む。
魔物とスキルの関係・・・。は、いい本が無かった。ギルドに関する本と、ショッピングサイトを立ち上げる本だ。あと、まさかパパが著者の一人として名前が書かれた本があるとは思わなかった。よくわからない本だけど、買ってしまった。家の中を探せばあるかもしれないけど・・・。
パラパラ、ショッピングサイトを立ち上げる方法を読んでみる。
うん。よくわからない。パルが作っているハチミツは売ってもいいのかな?そもそもが解らないことだらけだ。今日の確認で、貯金はまだ大丈夫だ。今の状態なら、10年以上は大丈夫だ。慎ましく暮らすのなら、多分もっと過ごせる。電気は無理だけど、水道はスキルで代用できる。ガスを使う物も代用が可能だ。電気だけは難しいけど、ソーラパネルで軽減されている。
ライからの質問に答えながら、本を読んでいたら、新清水に到着していた。
港の方向に歩いて、市場を目指す。空を見上げれば、心配性な家族が集結していた。見たことがない個体が居るから、現地でスカウトしたのかな?また、家族が増えるの?裏山ならまだまだ住めるから問題はないけど、食糧とか問題にならないといいな。
市場に入って、質を優先して、買い物を行う。
ここでしか手に入らない調味料もあるので、購入する。食事の必要が無くなったから、完全に趣味であり娯楽であり嗜好品だから、質を求めてみようと考えた。街中でも手に入るけど、市場は質がよくて、買い物がしやすい。魚も捌けるけど、捌いてもらってから持って帰る。量が多くなって、心配されたけど大丈夫。
駐車場を抜けて、コンコースに繋がる道に上がると、人が居なくなる。市場には、車で来る人が多い。マリナートでイベントが行われていたら人は多いけど、今日は何も行われていないようだ。人から見えない場所で、持っていた荷物をライに持ってもらう。
身軽になってから、清水駅に向かう。
「ライ。清水駅を抜けて、銀座で何か食べてから、帰ろう」
「うん!」
珍しい物は何もないけど・・・。
家ではあまり作らない。おでんでも食べようかな。それなら、テンジンヤでおでんを買って、家で食べよう。皆で食べた方がおいしいよね。
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