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第二章 スライム街へ

第二十六話 ??

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 オーガ・キング(仮称)が倒れた。
 ラストアタックは、私がもらってしまった。別に、ラストアタックだから、特典があるわけではない。多分。

”ライ!”

『ダークとフィズの一部がオーガの範囲攻撃で怪我をしましたが、かすり傷です。命にも、移動にも、問題はありません』

”よかった。他は?”

『疲れは出ていますが、問題はありません』

”わかった。一度、拠点で休んでから、家に戻ろう”

『はい。結界に使った魔石は、回収しますか?』

”うーん。回収をしておいたほうがいいとは思うけど、難しいよね?”

『いえ、人と接している場所は、フィズとアイズとドーンが確保して、一斉に飛び立てば・・・』

”それ以外の場所は?”

『数は多くはありませんが、大きめの魔石を利用している場所は、現地スカウト組に対応を頼めるかと思います。回収ではなくなってしまいますが・・・』

”ん?回収じゃない?”

『マスターの懸念が、人に渡ってしまうことなら、現地スカウトした者たちに、吸収させて、力の底上げに使うのもよいかと思います』

”あぁ・・・。確かに、スキルを持っている子が少ないって話だよね?”

『ほとんどが、スキルの獲得ができていません』

”わかった。結界の魔石は、消耗品のつもりだったし、吸収していいよ。やり方がわからない子もいるだろうから、教えてあげて”

『はい』

 ライが、指示を出している。
 周りにいた、フィズとアイズとドーンが、各所に散らばっていく、ダークは、戦利品を持って拠点に移動を開始する。大物は、ライが持っていくようだ。持っていくというよりも、飲み込んでいく、私もできるが、ライだけじゃなくて、アドニスやカーディナルも、私が飲み込むのに反対した。誰が持っても同じだとは思うけど、皆から反対されてまで持ちたいとは思わない。
 理由を教えてくれたから納得しておく・・・。私は、皆の”主”だ。だから、”主”が従者のようなことはしないで欲しい。らしい。

”皆の準備ができたら教えて!”

 私もライも、本体は家だ。
 ここには、分体が来ている。

 今更の話だけど、本体は分体に意識を移していて、どっちが分体だって話だけど、本体は”家”だ。説明が難しい。
 簡単に言えば、スキルが認識できるのは、”本体”のみだ。今まで、分体で戦ってきたからわかっている。本体から分離した時点のスキルしか分体には備わっていない。そして、分体の”経験値”?は、本体にのみ反映される。よくわからない事象だけど、私とライの経験から、”そういうもの”だと理解している。
 何が言いたいのか・・・。
 オーガ・キングを倒したときに、本体側で”なに”かを感じた。多分、新しいスキルを得た。ライも同じだ。

 それから、カーディナルたちも新しいスキルを得ているようだ。
 仕組みがよくわからないが、戦闘の度に”経験値”を得ているはずなのに、一連の戦闘が終了しないと、”経験値”が反映されない。

 拠点よりは、家で確認したほうがいいだろう。
 留守番組へのお土産もある。新たに家族に加わる者たちもいる。飛べない者もいるから、ライが案内をするのだろう・・・。どのくらいだろう?2日くらいで到着するかな?

『マスター!準備ができました』

”魔石の吸収は、先に行って!”

『わかりました』

”吸収が終わったら、教えて”

『はい』

 キングとクイーンが地上に降りて、オーガ・キングのドロップ品をまとめている。

『マスター。人間の遺体があります』

”ん?骨?”

『いえ、綺麗な状態で残されています』

 カーディナルに地上に降りてもらって、遺体がある場所に移動してもらう。
 自分でも移動はできるのだが、カーディナルが降りるのを許してくれない。分体なのに、過保護すぎる。

 遺体は、成人の男性だ。
 裸ではないが、それに近い状態になっている。このくらいの男性なら、持っているはずの物が近くに落ちていたら・・・。身元がわかるかもしれないが、何も落ちていない。違った。

”手になにか持っているようだけど?”

『マスター!』

”どうしたの?”

『マスター!鑑定できますか?』

”え?”

 そうだった。鑑定が使えるのを忘れていた。
 右手をよく見る。手帳だと思える。”黒革の手帖”だ。外には出せない秘密でも書かれているのか?

 手帳を鑑定で見てみる。

// 手帳
// スキルが付与されている

”ライ。スキルが付与されているらしい”

『はい。そのスキルが問題です』

”スキル?”

 手帳のスキルを鑑定する。

// (鑑定失敗)

”ライ。鑑定が失敗するよ”

『そうですか・・・。いやな感じがします。カーディナルもアドニスも同じ意見です』

”わかった。どうしても、って感じじゃないし、気持ちが悪いのなら無視すればいいよね”

『はい』

 手帳を放置するのは、なんとなく気持ちが悪いけど、ライとカーディナルとアドニスが警戒をしている状況で、持って帰るという選択肢は選べない。

 手帳以外には、何もなさそうだ。
 誰なのだろう?知らない人だ。綺麗な状態で遺体が残されているから、身元はすぐにわかるよね。骨だけになっている人間が多い中で、この人だけが綺麗な状態なのは気になるけど・・・。気にしてもしょうがない。難しいことは、偉い人や立場がある人が考えればいい。そのために、沢山のお金と地位をもらっているのだ。それができないのなら、地位を返上すればいい。お金だけもらって、何もしないのなら、そんな人はいなくなってしまえばいい。

『マスター?』

”ごめん。嫌なことを思い出しちゃった。準備は?”

『整いました。あっ。オーガ・キングから出た魔石は、マスターが吸収してください』

”いいの?”

『はい。皆、同じ見解です』

”わかった。家に戻ったら吸収するね”

『はい!』

 キングとクイーンとテネシーとクーラーとピコンとグレナデンが、カーディナルとアドニスの前に来る。
 私とライの前に集まってきた。

 オーガ・キングの魔石を私がもらう。

 空を見上げると、すっかりと明るくなっている。
 時計がないから時間はわからないが、7時くらいにはなっているのだろう。

”よし。カーディナル。アドニス。キング。クイーン。テネシー。クーラー。ピコン。グレナデン。拠点に帰るよ”

 呼ばれた者たちが、羽ばたいて舞い上がる。

”フィズ。アイズ。ドーン。ジャック。回収した物よりも、ナップ。ディック。キール。グラッド。コペン。を、お願い。皆!拠点に戻るよ!”

 フィズとアイズとドーンとジャックが一斉に舞い上がる。人が驚いた声を上げている。上を見上げている様子がわかる。でも、かなりの上空にいるカーディナルとアドニスを捉えられる者はいないだろう。もし、見られたとしても、私とライが見られなければいい。体積をできる限り小さくしているから、見られることはないだろう。

 結界はすぐには解除されないとは思うけど、数分後には結界の効果がなくなってしまう。
 その前に、離脱をしなければならない。

”急ぐよ!ライ!カランとキャロルが、黙って来ているでしょ!帰るように、指示を出して!”

 気が付かれないようにしていただろうけど、川をつたって来た者がいるのは知っている。そうじゃなければ、湖からの人の侵入が防がれた理由がわからない。結界の展開は間に合ったけど、水際には展開できていない。しかし、人が侵入してこなかったのは、川から見張りを・・・。スキルを使用した者がいたのだろう。

 ライは、何も返してこないが、明らかに水面が動いているから、カランとキャロルが来ているのだろう。それだけではなく、現地でスカウトした者もいるのかもしれない。家の近くを流れる川では大型の魚は住めない。改良が必要なら、相談をしないとだめだな。

 まずは、帰ろう。

 私が乗っているカーディナルを先頭にしているが、カーディナルとアドニスは高い場所を飛んでいて、高度が低い場所を、他の者たちが群れで飛んでいる。これなら、私たちが補足される心配はない。と、いいな。

 バレても、困らないから、大丈夫だけど、平穏に暮らしていきたい。
 なるべくなら・・・。
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