58 / 143
第二章 スライム街へ
第二十六話 ??
しおりを挟むオーガ・キング(仮称)が倒れた。
ラストアタックは、私がもらってしまった。別に、ラストアタックだから、特典があるわけではない。多分。
”ライ!”
『ダークとフィズの一部がオーガの範囲攻撃で怪我をしましたが、かすり傷です。命にも、移動にも、問題はありません』
”よかった。他は?”
『疲れは出ていますが、問題はありません』
”わかった。一度、拠点で休んでから、家に戻ろう”
『はい。結界に使った魔石は、回収しますか?』
”うーん。回収をしておいたほうがいいとは思うけど、難しいよね?”
『いえ、人と接している場所は、フィズとアイズとドーンが確保して、一斉に飛び立てば・・・』
”それ以外の場所は?”
『数は多くはありませんが、大きめの魔石を利用している場所は、現地スカウト組に対応を頼めるかと思います。回収ではなくなってしまいますが・・・』
”ん?回収じゃない?”
『マスターの懸念が、人に渡ってしまうことなら、現地スカウトした者たちに、吸収させて、力の底上げに使うのもよいかと思います』
”あぁ・・・。確かに、スキルを持っている子が少ないって話だよね?”
『ほとんどが、スキルの獲得ができていません』
”わかった。結界の魔石は、消耗品のつもりだったし、吸収していいよ。やり方がわからない子もいるだろうから、教えてあげて”
『はい』
ライが、指示を出している。
周りにいた、フィズとアイズとドーンが、各所に散らばっていく、ダークは、戦利品を持って拠点に移動を開始する。大物は、ライが持っていくようだ。持っていくというよりも、飲み込んでいく、私もできるが、ライだけじゃなくて、アドニスやカーディナルも、私が飲み込むのに反対した。誰が持っても同じだとは思うけど、皆から反対されてまで持ちたいとは思わない。
理由を教えてくれたから納得しておく・・・。私は、皆の”主”だ。だから、”主”が従者のようなことはしないで欲しい。らしい。
”皆の準備ができたら教えて!”
私もライも、本体は家だ。
ここには、分体が来ている。
今更の話だけど、本体は分体に意識を移していて、どっちが分体だって話だけど、本体は”家”だ。説明が難しい。
簡単に言えば、スキルが認識できるのは、”本体”のみだ。今まで、分体で戦ってきたからわかっている。本体から分離した時点のスキルしか分体には備わっていない。そして、分体の”経験値”?は、本体にのみ反映される。よくわからない事象だけど、私とライの経験から、”そういうもの”だと理解している。
何が言いたいのか・・・。
オーガ・キングを倒したときに、本体側で”なに”かを感じた。多分、新しいスキルを得た。ライも同じだ。
それから、カーディナルたちも新しいスキルを得ているようだ。
仕組みがよくわからないが、戦闘の度に”経験値”を得ているはずなのに、一連の戦闘が終了しないと、”経験値”が反映されない。
拠点よりは、家で確認したほうがいいだろう。
留守番組へのお土産もある。新たに家族に加わる者たちもいる。飛べない者もいるから、ライが案内をするのだろう・・・。どのくらいだろう?2日くらいで到着するかな?
『マスター!準備ができました』
”魔石の吸収は、先に行って!”
『わかりました』
”吸収が終わったら、教えて”
『はい』
キングとクイーンが地上に降りて、オーガ・キングのドロップ品をまとめている。
『マスター。人間の遺体があります』
”ん?骨?”
『いえ、綺麗な状態で残されています』
カーディナルに地上に降りてもらって、遺体がある場所に移動してもらう。
自分でも移動はできるのだが、カーディナルが降りるのを許してくれない。分体なのに、過保護すぎる。
遺体は、成人の男性だ。
裸ではないが、それに近い状態になっている。このくらいの男性なら、持っているはずの物が近くに落ちていたら・・・。身元がわかるかもしれないが、何も落ちていない。違った。
”手になにか持っているようだけど?”
『マスター!』
”どうしたの?”
『マスター!鑑定できますか?』
”え?”
そうだった。鑑定が使えるのを忘れていた。
右手をよく見る。手帳だと思える。”黒革の手帖”だ。外には出せない秘密でも書かれているのか?
手帳を鑑定で見てみる。
// 手帳
// スキルが付与されている
”ライ。スキルが付与されているらしい”
『はい。そのスキルが問題です』
”スキル?”
手帳のスキルを鑑定する。
// (鑑定失敗)
”ライ。鑑定が失敗するよ”
『そうですか・・・。いやな感じがします。カーディナルもアドニスも同じ意見です』
”わかった。どうしても、って感じじゃないし、気持ちが悪いのなら無視すればいいよね”
『はい』
手帳を放置するのは、なんとなく気持ちが悪いけど、ライとカーディナルとアドニスが警戒をしている状況で、持って帰るという選択肢は選べない。
手帳以外には、何もなさそうだ。
誰なのだろう?知らない人だ。綺麗な状態で遺体が残されているから、身元はすぐにわかるよね。骨だけになっている人間が多い中で、この人だけが綺麗な状態なのは気になるけど・・・。気にしてもしょうがない。難しいことは、偉い人や立場がある人が考えればいい。そのために、沢山のお金と地位をもらっているのだ。それができないのなら、地位を返上すればいい。お金だけもらって、何もしないのなら、そんな人はいなくなってしまえばいい。
『マスター?』
”ごめん。嫌なことを思い出しちゃった。準備は?”
『整いました。あっ。オーガ・キングから出た魔石は、マスターが吸収してください』
”いいの?”
『はい。皆、同じ見解です』
”わかった。家に戻ったら吸収するね”
『はい!』
キングとクイーンとテネシーとクーラーとピコンとグレナデンが、カーディナルとアドニスの前に来る。
私とライの前に集まってきた。
オーガ・キングの魔石を私がもらう。
空を見上げると、すっかりと明るくなっている。
時計がないから時間はわからないが、7時くらいにはなっているのだろう。
”よし。カーディナル。アドニス。キング。クイーン。テネシー。クーラー。ピコン。グレナデン。拠点に帰るよ”
呼ばれた者たちが、羽ばたいて舞い上がる。
”フィズ。アイズ。ドーン。ジャック。回収した物よりも、ナップ。ディック。キール。グラッド。コペン。を、お願い。皆!拠点に戻るよ!”
フィズとアイズとドーンとジャックが一斉に舞い上がる。人が驚いた声を上げている。上を見上げている様子がわかる。でも、かなりの上空にいるカーディナルとアドニスを捉えられる者はいないだろう。もし、見られたとしても、私とライが見られなければいい。体積をできる限り小さくしているから、見られることはないだろう。
結界はすぐには解除されないとは思うけど、数分後には結界の効果がなくなってしまう。
その前に、離脱をしなければならない。
”急ぐよ!ライ!カランとキャロルが、黙って来ているでしょ!帰るように、指示を出して!”
気が付かれないようにしていただろうけど、川をつたって来た者がいるのは知っている。そうじゃなければ、湖からの人の侵入が防がれた理由がわからない。結界の展開は間に合ったけど、水際には展開できていない。しかし、人が侵入してこなかったのは、川から見張りを・・・。スキルを使用した者がいたのだろう。
ライは、何も返してこないが、明らかに水面が動いているから、カランとキャロルが来ているのだろう。それだけではなく、現地でスカウトした者もいるのかもしれない。家の近くを流れる川では大型の魚は住めない。改良が必要なら、相談をしないとだめだな。
まずは、帰ろう。
私が乗っているカーディナルを先頭にしているが、カーディナルとアドニスは高い場所を飛んでいて、高度が低い場所を、他の者たちが群れで飛んでいる。これなら、私たちが補足される心配はない。と、いいな。
バレても、困らないから、大丈夫だけど、平穏に暮らしていきたい。
なるべくなら・・・。
0
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説
クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]
追放シーフの成り上がり
白銀六花
ファンタジー
王都のギルドでSS級まで上り詰めた冒険者パーティー【オリオン】の一員として日々活躍するディーノ。
前衛のシーフとしてモンスターを翻弄し、回避しながらダメージを蓄積させていき、最後はパーティー全員でトドメを刺す。
これがディーノの所属するオリオンの戦い方だ。
ところが、SS級モンスター相手に命がけで戦うディーノに対し、ほぼ無傷で戦闘を終えるパーティーメンバー。
ディーノのスキル【ギフト】によってパーティーメンバーのステータスを上昇させ、パーティー内でも誰よりも戦闘に貢献していたはずなのに……
「お前、俺達の実力についてこれなくなってるんじゃねぇの?」とパーティーを追放される。
ディーノを追放し、新たな仲間とパーティーを再結成した元仲間達。
新生パーティー【ブレイブ】でクエストに出るも、以前とは違い命がけの戦闘を繰り広げ、クエストには失敗を繰り返す。
理由もわからず怒りに震え、新入りを役立たずと怒鳴りちらす元仲間達。
そしてソロの冒険者として活動し始めるとディーノは、自分のスキルを見直す事となり、S級冒険者として活躍していく事となる。
ディーノもまさか、パーティーに所属していた事で弱くなっていたなどと気付く事もなかったのだ。
それと同じく、自分がパーティーに所属していた事で仲間を弱いままにしてしまった事にも気付いてしまう。
自由気ままなソロ冒険者生活を楽しむディーノ。
そこに元仲間が会いに来て「戻って来い」?
戻る気などさらさら無いディーノはあっさりと断り、一人自由な生活を……と、思えば何故かブレイブの新人が頼って来た。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。
みみっく
ファンタジー
女神様の手違いで通勤途中に気を失い、気が付くと見知らぬ場所だった。目の前には知らない少女が居て、彼女が言うには・・・手違いで俺は死んでしまったらしい。手違いなので新たな世界に転生をさせてくれると言うがモンスターが居る世界だと言うので、バリアとアイテム生成スキルと無限収納を付けてもらえる事になった。幸せに暮らすために行動をしてみる・・・
異世界転移ボーナス『EXPが1になる』で楽々レベルアップ!~フィールドダンジョン生成スキルで冒険もスローライフも謳歌しようと思います~
夢・風魔
ファンタジー
大学へと登校中に事故に巻き込まれて溺死したタクミは輪廻転生を司る神より「EXPが1になる」という、ハズレボーナスを貰って異世界に転移した。
が、このボーナス。実は「獲得経験値が1になる」のと同時に、「次のLVupに必要な経験値も1になる」という代物だった。
それを知ったタクミは激弱モンスターでレベルを上げ、あっさりダンジョンを突破。地上に出たが、そこは小さな小さな小島だった。
漂流していた美少女魔族のルーシェを救出し、彼女を連れてダンジョン攻略に乗り出す。そしてボスモンスターを倒して得たのは「フィールドダンジョン生成」スキルだった。
生成ダンジョンでスローライフ。既存ダンジョンで異世界冒険。
タクミが第二の人生を謳歌する、そんな物語。
*カクヨム先行公開
俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~
シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。
目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。
『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。
カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。
ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。
ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。
【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】
一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。
追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。
無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。
そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード!
異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。
【諸注意】
以前投稿した同名の短編の連載版になります。
連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。
なんでも大丈夫な方向けです。
小説の形をしていないので、読む人を選びます。
以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。
disりに見えてしまう表現があります。
以上の点から気分を害されても責任は負えません。
閲覧は自己責任でお願いします。
小説家になろう、pixivでも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる