47 / 143
第二章 スライム街へ
第十五話 結界?
しおりを挟む皆が、私の周りに集まってくる。
報告は、ライが受けている。
「ご主人さま」
ライが、皆からの報告をまとめてくれた。キャンプ場の囲い込みは成功した。問題は、小屋の周りだったけど、成功した。結界を張った周りには、魔物が居ない所までは確認が出来た。
”どうしたの?”
「休んでください」
”うーん。疲れていないけど・・・。そうだね。順番に休もうか?”
「はい」
私が休まないと、家族も休まない。警戒の順番を決める。どうやら私は必要がないようだ。ライも同じだ。
結界が機能しているから、警戒は必要がないとは思うけど、キャンプ場の監視もしてもらっている。結界があるから大丈夫だとは思うけど、動きがあれば対応をしたほうがいい。魔物は、夜行性?だと思うから、暗くなってから動きがあるかもしれない。
”ライ?”
「ダークたちが、キャンプ場の周りにある、山々と森の索敵をしてきたいと言っています」
”索敵?”
「はい。どうやら、近くの山や森に、魔物が4-5体の集団を作っているようです」
”え?複数?”
魔物は、単独で居る。裏山や近隣の山で見つめた魔物は、魔物同士が近かった時もあるが、単独での行動だ。
複数が固まっているのは、この辺りの魔物の特徴なのかな?
状況がわからない。
私たちが対応する必要はないと思っているけど、動物たちが困っている。魔物たちが居るので、動物たちが駆逐されてしまう。なんとか逃げても、生活圏が狭くなってしまっている。
「解っているのは、三ヶ所です。避難してきた者たちから聞いたようです」
”後ろから攻撃される心配はないけど、せっかくだから前哨戦にしようか?”
「ご主人さまも戦われるのですか?」
”ん?私は行かないよ。近場が安全に・・・。魔石はまだ有るから、安全地帯を作ろう!”
裏山の周りと同じように、魔石を使って安全地帯を作ればいい。魔物だけが入られないようにすればいいかな。あとは、動物の数や状況で、範囲を広げていけばいい。
そうしたら、動物たちの棲家は狭くなる可能性はあるけど、魔物から逃げ込める場所ができる。
「はい。作戦に参加しない者で対応を行います」
”うん。裏山と同じくらいの安全地帯があればいいよね?”
「はい。まずは、キャンプ場の近くから探索を開始します」
”わかった。無理はしないようにね”
「はい」
ライの言葉を受けて、一斉に飛び立つ。
私たちが休むと決めた場所は、結界で覆っている。人が入ってこられない状態になっている。今回は、集まっている人にも見せるために、見える状態で飛び立つようにした。夕方だから、それほど変には思われないだろう。
---
野営の準備を始めた。野営と言っても、自衛隊の作戦中の野営とは全く違っている。キャンピングカーで調理ができる。テントを持ってきているのは、俺と孔明が寝るための場所を確保するためだが、作戦用のテントではなく、キャンプ用品のテントだ。快適が優先される。
現地に付く前は、既に戦端が開かれている可能性も考慮していた。
しかし、現地に着いてみれば不思議な状態になっていた。透明な壁が、キャンプ場と近隣の森を覆っている。湖は確認をしていないが、岸から1-2メートルのあたりに透明な壁があるようだ。バリケードを迂回して突破しようとしたマスコミがキャンプ場に近づけなかったと苦情を言ってきたらしい。愚かだな。報道の自由を振りかざせば何でも許されると思っている。ギルドに関して言えば、無駄だ。そんなことを言ってきた者たちは、”出禁”にしている。
女性たちは、キャンピングカーで食事の用意をしている。
俺も手伝おうと思ったが、邪魔だから出て行けと言われた。どうやら、俺の料理は女性陣には不評らしい。
「蒼。蒼」
「ん?なんだ?」
「お前の料理が不評なのは、なにも円香たちだけではないぞ?隊に居る時でも、お前の料理は不評だったぞ」
「え?うそ?」
俺の超絶テクニックを使った、”牛肉の豚肉包、鶏肉を添えて”が不評だと?皆、喜んで食べていたじゃないか?素材の味を殺さないように、塩だけで鶏肉を焼いて、中心の豚肉には香辛料をバッチリと聞かせて、ハーブで臭みをとって、牛肉には下味に魚醤を使った一品だぞ!
「蒼。お前の料理は、単品で食べれば・・・。それでもまずい時もあるが、食える。でも、まとめると最悪だ。高価な食材を無駄に使うのなら、単品で出せ!」
え?
「孔明?」
「部隊としても、食材を無駄にされたわけではないので、黙認していたけど、お前の発想と味付けは、万人受けはしない」
「は?本当か?」
「あぁ」
「俺が、キッチンに立てない・・・。理由は、味付けか?」
「素材が”もったいない”と言っていた」
「・・・。いい物を使えばうまくなる」
孔明の指摘が正しいのは、女性陣の態度から察するべきだった。
「なぁ孔明」
「なんだ」
本を読んでいた孔明が、本を閉じて俺を見る。
孔明も感じているのかもしれない。あと、30分もすれば魔物たちの時間になる。
「透明な壁。今は、”結界”と呼んでおくけど・・・。誰が作っていると思う?」
「円香の意見を聞きたいが、自衛官や警察関係者、マスコミには居ないだろう」
「そうだ。もっと言えば、この辺りの者にも居ないように思う」
孔明が渋い表情を浮かべる。
「そうだな」
孔明が渋い顔をする時には、”何か”を考えている時だ。俺は黙って、テーブルの上に乗っている、ぬるくなった珈琲を喉に流し込む。
「蒼。お前が言っている”結界”を、最悪で考えると・・・」
「魔物たちの誰かが張っている?」
それは、俺も考慮した。
しかし、魔物たちが結界を発動して、人の侵入を防ぐ意味があるのか?
隊のやつらの話では、内側からも外に出られないようになっている。見方によっては、魔物はキャンプ場に閉じ込められている状況になっている。
「それが最悪のパターンで、今、考えられる答えだ。これだけの規模を囲うのは・・・。不可能だ」
人ではスキルを得ているとしても不可能だと考えているようだ。
俺も、同じ考えだが、”方法は存在している”孔明も気がついているようだが、”その方法”は現実的ではない。
隊に居たと気にも議論されたことだ。
確か、教授が実権を行っているが、”成功した”という報告はない。
「そうだな。上も囲まれているのだろう?」
「ドローンで調べたが、上空にも壁が存在している」
飛行可能な魔物が居る可能性は考慮されているが、実際には”鳥類”が魔物になった例は確認されていない。魔物になるためのプロセスに”耐えられない”というのが、考えられている。飛行可能な魔物としては、ガーゴイルやワイバーンやグリフォンなどの名前が出ているが、実際に見たものは居ない。小屋に居ると思われているオーガでさえ、確認されたのは最近だ。
「面白い話をしているな」
料理を作っていたはずの円香が、コーヒーポットを持って、やってきた。差し出された孔明のカップに珈琲を注ぎながら、椅子を取り出して座った。
「円香?」「円香か・・・。いいのか?」
円香は、親指でキャンピングカーの方を指差して、肩を竦める。
「調理は、ほとんど、茜が担当している」
どうやら、俺と同類のようだ。
茜が担当するのなら、今日の夕飯は期待ができる。ギルドで出てくる菓子は、千明が作っているようだが、それ以外は茜が作っているらしい。円香は、珈琲と紅茶と酒が担当だと言っていた。
さすがに、アルコールはダメだろうから、夕飯を楽しみに待つことにしよう。
「そうか・・・」
「それよりも、結界の話をしていたよな?魔物が張っている可能性を論じていたよな?」
「あぁ」「それで?」
「別の可能性を提示する必要を感じた」
円香が、テーブルの上に放り投げた資料は、以前に見せてもらった”ファントム”に関する物だ。
0
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします
藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です
2024年6月中旬に第一巻が発売されます
2024年6月16日出荷、19日販売となります
発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」
中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。
数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。
また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています
この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています
戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています
そんな世界の田舎で、男の子は産まれました
男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました
男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます
そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります
絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて……
この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです
各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます
そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます
カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております
イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で最強に・・・(旧:学園最強に・・・)
こたろう文庫
ファンタジー
カクヨムにて日間・週間共に総合ランキング1位!
死神が間違えたせいで俺は死んだらしい。俺にそう説明する神は何かと俺をイラつかせる。異世界に転生させるからスキルを選ぶように言われたので、神にイラついていた俺は1回しか使えない強奪スキルを神相手に使ってやった。
閑散とした村に子供として転生した為、強奪したスキルのチート度合いがわからず、学校に入学後も無自覚のまま周りを振り回す僕の話
2作目になります。
まだ読まれてない方はこちらもよろしくおねがいします。
「クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される」
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。
みみっく
ファンタジー
女神様の手違いで通勤途中に気を失い、気が付くと見知らぬ場所だった。目の前には知らない少女が居て、彼女が言うには・・・手違いで俺は死んでしまったらしい。手違いなので新たな世界に転生をさせてくれると言うがモンスターが居る世界だと言うので、バリアとアイテム生成スキルと無限収納を付けてもらえる事になった。幸せに暮らすために行動をしてみる・・・
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる