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第二章 スライム街へ

第十五話 結界?

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 皆が、私の周りに集まってくる。
 報告は、ライが受けている。

「ご主人さま」

 ライが、皆からの報告をまとめてくれた。キャンプ場の囲い込みは成功した。問題は、小屋の周りだったけど、成功した。結界を張った周りには、魔物が居ない所までは確認が出来た。

”どうしたの?”

「休んでください」

”うーん。疲れていないけど・・・。そうだね。順番に休もうか?”

「はい」

 私が休まないと、家族も休まない。警戒の順番を決める。どうやら私は必要がないようだ。ライも同じだ。
 結界が機能しているから、警戒は必要がないとは思うけど、キャンプ場の監視もしてもらっている。結界があるから大丈夫だとは思うけど、動きがあれば対応をしたほうがいい。魔物は、夜行性?だと思うから、暗くなってから動きがあるかもしれない。

”ライ?”

「ダークたちが、キャンプ場の周りにある、山々と森の索敵をしてきたいと言っています」

”索敵?”

「はい。どうやら、近くの山や森に、魔物が4-5体の集団を作っているようです」

”え?複数?”

 魔物は、単独で居る。裏山や近隣の山で見つめた魔物は、魔物同士が近かった時もあるが、単独での行動だ。
 複数が固まっているのは、この辺りの魔物の特徴なのかな?

 状況がわからない。
 私たちが対応する必要はないと思っているけど、動物たちが困っている。魔物たちが居るので、動物たちが駆逐されてしまう。なんとか逃げても、生活圏が狭くなってしまっている。

「解っているのは、三ヶ所です。避難してきた者たちから聞いたようです」

”後ろから攻撃される心配はないけど、せっかくだから前哨戦にしようか?”

「ご主人さまも戦われるのですか?」

”ん?私は行かないよ。近場が安全に・・・。魔石はまだ有るから、安全地帯を作ろう!”

 裏山の周りと同じように、魔石を使って安全地帯を作ればいい。魔物だけが入られないようにすればいいかな。あとは、動物の数や状況で、範囲を広げていけばいい。
 そうしたら、動物たちの棲家は狭くなる可能性はあるけど、魔物から逃げ込める場所ができる。

「はい。作戦に参加しない者で対応を行います」

”うん。裏山と同じくらいの安全地帯があればいいよね?”

「はい。まずは、キャンプ場の近くから探索を開始します」

”わかった。無理はしないようにね”

「はい」

 ライの言葉を受けて、一斉に飛び立つ。
 私たちが休むと決めた場所は、結界で覆っている。人が入ってこられない状態になっている。今回は、集まっている人にも見せるために、見える状態で飛び立つようにした。夕方だから、それほど変には思われないだろう。

---

 野営の準備を始めた。野営と言っても、自衛隊の作戦中の野営とは全く違っている。キャンピングカーで調理ができる。テントを持ってきているのは、俺と孔明が寝るための場所を確保するためだが、作戦用のテントではなく、キャンプ用品のテントだ。快適が優先される。

 現地に付く前は、既に戦端が開かれている可能性も考慮していた。

 しかし、現地に着いてみれば不思議な状態になっていた。透明な壁が、キャンプ場と近隣の森を覆っている。湖は確認をしていないが、岸から1-2メートルのあたりに透明な壁があるようだ。バリケードを迂回して突破しようとしたマスコミがキャンプ場に近づけなかったと苦情を言ってきたらしい。愚かだな。報道の自由を振りかざせば何でも許されると思っている。ギルドに関して言えば、無駄だ。そんなことを言ってきた者たちは、”出禁”にしている。

 女性たちは、キャンピングカーで食事の用意をしている。
 俺も手伝おうと思ったが、邪魔だから出て行けと言われた。どうやら、俺の料理は女性陣には不評らしい。

「蒼。蒼」

「ん?なんだ?」

「お前の料理が不評なのは、なにも円香たちだけではないぞ?隊に居る時でも、お前の料理は不評だったぞ」

「え?うそ?」

 俺の超絶テクニックを使った、”牛肉の豚肉包、鶏肉を添えて”が不評だと?皆、喜んで食べていたじゃないか?素材の味を殺さないように、塩だけで鶏肉を焼いて、中心の豚肉には香辛料をバッチリと聞かせて、ハーブで臭みをとって、牛肉には下味に魚醤を使った一品だぞ!

「蒼。お前の料理は、単品で食べれば・・・。それでもまずい時もあるが、食える。でも、まとめると最悪だ。高価な食材を無駄に使うのなら、単品で出せ!」

 え?

「孔明?」

「部隊としても、食材を無駄にされたわけではないので、黙認していたけど、お前の発想と味付けは、万人受けはしない」

「は?本当か?」

「あぁ」

「俺が、キッチンに立てない・・・。理由は、味付けか?」

「素材が”もったいない”と言っていた」

「・・・。いい物を使えばうまくなる」

 孔明の指摘が正しいのは、女性陣の態度から察するべきだった。

「なぁ孔明」

「なんだ」

 本を読んでいた孔明が、本を閉じて俺を見る。
 孔明も感じているのかもしれない。あと、30分もすれば魔物たちの時間になる。

「透明な壁。今は、”結界”と呼んでおくけど・・・。誰が作っていると思う?」

「円香の意見を聞きたいが、自衛官や警察関係者、マスコミには居ないだろう」

「そうだ。もっと言えば、この辺りの者にも居ないように思う」

 孔明が渋い表情を浮かべる。

「そうだな」

 孔明が渋い顔をする時には、”何か”を考えている時だ。俺は黙って、テーブルの上に乗っている、ぬるくなった珈琲を喉に流し込む。

「蒼。お前が言っている”結界”を、最悪で考えると・・・」

「魔物たちの誰かが張っている?」

 それは、俺も考慮した。
 しかし、魔物たちが結界を発動して、人の侵入を防ぐ意味があるのか?

 隊のやつらの話では、内側からも外に出られないようになっている。見方によっては、魔物はキャンプ場に閉じ込められている状況になっている。

「それが最悪のパターンで、今、考えられる答えだ。これだけの規模を囲うのは・・・。不可能だ」

 人ではスキルを得ているとしても不可能だと考えているようだ。
 俺も、同じ考えだが、”方法は存在している”孔明も気がついているようだが、”その方法”は現実的ではない。

 隊に居たと気にも議論されたことだ。
 確か、教授が実権を行っているが、”成功した”という報告はない。

「そうだな。上も囲まれているのだろう?」

「ドローンで調べたが、上空にも壁が存在している」

 飛行可能な魔物が居る可能性は考慮されているが、実際には”鳥類”が魔物になった例は確認されていない。魔物になるためのプロセスに”耐えられない”というのが、考えられている。飛行可能な魔物としては、ガーゴイルやワイバーンやグリフォンなどの名前が出ているが、実際に見たものは居ない。小屋に居ると思われているオーガでさえ、確認されたのは最近だ。

「面白い話をしているな」

 料理を作っていたはずの円香が、コーヒーポットを持って、やってきた。差し出された孔明のカップに珈琲を注ぎながら、椅子を取り出して座った。

「円香?」「円香か・・・。いいのか?」

 円香は、親指でキャンピングカーの方を指差して、肩を竦める。

「調理は、ほとんど、茜が担当している」

 どうやら、俺と同類のようだ。
 茜が担当するのなら、今日の夕飯は期待ができる。ギルドで出てくる菓子は、千明が作っているようだが、それ以外は茜が作っているらしい。円香は、珈琲と紅茶と酒が担当だと言っていた。
 さすがに、アルコールはダメだろうから、夕飯を楽しみに待つことにしよう。

「そうか・・・」

「それよりも、結界の話をしていたよな?魔物が張っている可能性を論じていたよな?」

「あぁ」「それで?」

「別の可能性を提示する必要を感じた」

 円香が、テーブルの上に放り投げた資料は、以前に見せてもらった”ファントム”に関する物だ。
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