上 下
2 / 143
序章

第二話 登校日

しおりを挟む

 表現には注意していますが、”いじめ”や虐待の描写があります。苦手な人は、スキップしてください。

---

 なんで、夏休みなのに、学校に行かなければならない?

 アイツらに会いたくない。僕が何をした。何もしていない。

 パパは、助けてくれない。それどころか、僕がアイツらに言われて、パパの財布からお金を盗んでも何も言わない。最初は、1,000円だった。それが、5,000円になって、10,000円になった。パパは、僕に無関心なのだ。僕が、殴られて、顔を腫らして帰ってきて何も言わない。見てもくれない。
 ママは、話を聞いてくれた。でも、聞いてくれただけだ。『僕が、悪い』と言った。僕は、悪くない。それから、ママは、僕を叱るようになった。殴ってくる、夜中にママとパパが喧嘩するようになった。喧嘩が終わると、ママは泣きながら僕を殴る。

 昨日も、ママに殴られた。僕が、『勉強を頑張らない』からいじめられるのだと言って、勉強をしなさいと怒ってきた。勉強は、学校でトップだと言ったら、『一番じゃないから』と殴られた。ご飯も、食べさせてもらえなかった。寝る時間があるのなら、『勉強をしなさい』と言われて、椅子に腰を縛られた。おしっこをしたいと言ったら、殴られた。おしっこに行きたくならないように、のどが渇いても飲み物を我慢しろと言われた。
 パパは、僕に無関心だ。僕が、椅子に縛られていても、見ないふりをする。そして、ママと喧嘩をして家を出ていく。

 ママは、パパに文句を言っている。パパはママを殴って黙らせる。僕は、ママの殴られる音を聞いて”ざまぁ”と思う。パパは、ママを殴った後で、僕の部屋に来て、お金を置いていった。パパは、僕の部屋から出ると、お酒を飲んで寝てしまう。
 パパが寝てしまったあとで、ママは僕の所に来て、『私は悪くない。私は悪くない』そう言いながら、僕を叩く。僕が”痛い、やめて”と言うと『うるさい。勉強をしなさい』そう言いながら、僕を叩く。

 夏休みに入って、アイツらに会わなくて済んだ。
 僕が家に居るとママに叩かれる。でも、外に行こうとすると『勉強をしなさい』と叩かれる。僕が何かを言おうとしたら『私を見捨てるの!』と言って、僕を叩く。僕の居場所は、学校にも家にもない。

 登校日だ。
 夏休みなのに・・・。アイツらに・・・。でも、ママが居る家には居たくない。パパも、僕と同じ気持ちなのか、家に帰ってこなくなった。夏休みに入ってから、パパが僕にスマホを渡してきた、”困ったら連絡してきなさい”と言われた。でも、パパに連絡しても、何も変わらない。スマホを持っていることは、ママには内緒にしていなさいと言われた。

 学校には、スマホを持っていっても問題にはならない。
 初めて持つスマホ。クラスの人が使っているのを知っている。それに、アイツらが使える物が僕に使えないはずがない。

 僕は、勉強でもトップだし、何をやってもアイツらよりはうまくできる。だから、アイツらは固まって僕に暴力を振るうことで、自己のプライドを満たしている。僕は、アイツらとは違う。高校を卒業して、いい大学に入るのは決まったことだ。そして、アイツらを顎で使う人生を送る。僕は、勝ち組で、アイツらは負け組だ。僕は、エリートだ。アイツらとは違う。違う。違う。違う。違う。違う。

 朝になり、学校に向かった。

 やはり、学校に着いたら、アイツらが僕に絡んできた。

「おい!」

「何。高橋くん」

「あぁ!”くん”だぁ!お前は、何度、教えれば解る。俺のことは、”様”と呼べ!」

「あっ・・・。高橋様」

「そうだ!ウスノロ!何も出来ないお前でも、俺たちの、俺様の為に働いてもらおう!」

「え?僕・・・」

「”僕”じゃないよ。お前が、俺の役に立ちたいのだろう?そうだろう!えぇ!」

 高橋は、僕の制服を掴んだ。臭い。息が臭い。

「何をすれば」

「市内に、魔物が出たのは知っているか?」

「え?魔物?本当?」

「あ?俺が、嘘を言っていると?」

「いや、ごめん。でも、魔物は、管理されて居て・・・」

「洋平が見たと言っていた。お前、捕まえて、俺の前に連れてこい」

「え・・・。無理だよ・・・。魔物だよ?捕まえたら消えるよね?」

「あぁそれな。早苗の奴が、魔物は人の血に寄ってくるって話していた」

「え?」

「お前が餌になれ!お前は、足が早いのだろう?魔物に襲われても逃げられるだろう!俺の前に連れてこいよ。そうしたら、俺が倒してやる」

 高橋が、僕を乱暴に突き飛ばす。
 話が終わったと言うのか?僕はやるとは言っていない。でも・・・。

「あぁ出来なくてもいいぞ!そうしたら、お前が・・・。万引したことを・・・」

「わかった。やるよ。やればいいでしょ」

「ハハハ。そうだ。お前は、俺の為に、俺の言うことを聞けばいい!おぉい。美保。お前も来るだろう!ウスノロが、魔物を釣ってくるぞ」

「えぇ私・・・。面倒だからいい。それよりも、財布から5,000円ほど借りてよ。カラオケに行こう!」

「そうだな。おい、10,000。よこせ」

 高橋は、僕のカバンを乱暴に奪って、中身を床にばらまく。

「お!こいつ、20,000も、持っている。借りておく!」

 財布を僕に投げつける。
 高橋は、美保の所に行った。集まっている奴らが僕を見て笑っている。

「何をしている!」

 先生が教室に入ってくる。僕を見て、”ため息”を吐き出すだけで、何も言わない。僕も、この教師には、何も期待していない。
 僕が偉くなって、TVに出たときに全部を暴露してやる。教師に見捨てられたと・・・。社会的に抹殺してやる。僕が、有名になって、人気者になって、インタビューで、お前たちのことを、暴露してやる。その時になって後悔しても遅い!

 でも・・・。魔物か・・・。
 たしか、倒すとかなりの確率でスキルが得られるのだったよな。

 天才な僕が、スキルを得られば・・・。そうだ、高橋なんかに負けない。強大な魔法スキルを得て、ヒーローにだってなれる。
 今は、自衛隊が富士山を封鎖しているから、魔物を倒すのも許可が必要になっている。でも、市内に居るのなら、襲われて倒したと言えば、許されるはずだ。そうだ、僕が倒して、スキルを得たら、自衛隊に感謝される。そうしたら、ママもパパも頑張ったって褒めてくれる。

 ホームルームだけの登校日に、意味があるのか解らない。解らないが、終わった。アイツらに絡まれる前に、教室を出る。村上洋平が自慢していた、魔物を見たと言っている場所に向かう。他にも、土屋も見たと行っていた。間違いなく、コボルトだったと言っている。

 コボルト。犬の魔物だったよな?優秀な僕だから、怖くはないし、倒せるのは当然だけど、”万が一”があるから、家に帰って・・・。ダメだ、ママが居る。どうしよう。武器が欲しい。そうだ!学校の家庭科室なら、包丁がある。それに、理科準備室!なんだ、やっぱり、僕は天才だ。すぐに、方法を思いつく。

 家庭科室に忍び込むのは、高橋たちがやっていたから知っている。理科準備室も同じだ。盗むのではない。借りるだけ、僕がスキルを得るのに必要なことで、学校も許してくれる。僕は、間違っていない。

 そうだ、僕がスキルを得たら、高橋たちに自慢しないとダメだな。
 魔法で脅せば、僕の偉大さを思い知るはずだ。

 確か、学年の名簿に、連絡先が書かれているはずだ。僕は、スマホを持っていなかったから、連絡先は家の番号だけが書かれている。

 僕だと知られないで、アイツらを呼び出せる。そこで、魔法を使えばいい。なんだ、簡単なことだ。
 ふふふ。僕は、選ばれた。僕が、得るのにふさわしいスキルが手に入るはずだ。そして、皆が僕を敬うに違いない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。

みみっく
ファンタジー
女神様の手違いで通勤途中に気を失い、気が付くと見知らぬ場所だった。目の前には知らない少女が居て、彼女が言うには・・・手違いで俺は死んでしまったらしい。手違いなので新たな世界に転生をさせてくれると言うがモンスターが居る世界だと言うので、バリアとアイテム生成スキルと無限収納を付けてもらえる事になった。幸せに暮らすために行動をしてみる・・・

異世界転移ボーナス『EXPが1になる』で楽々レベルアップ!~フィールドダンジョン生成スキルで冒険もスローライフも謳歌しようと思います~

夢・風魔
ファンタジー
大学へと登校中に事故に巻き込まれて溺死したタクミは輪廻転生を司る神より「EXPが1になる」という、ハズレボーナスを貰って異世界に転移した。 が、このボーナス。実は「獲得経験値が1になる」のと同時に、「次のLVupに必要な経験値も1になる」という代物だった。 それを知ったタクミは激弱モンスターでレベルを上げ、あっさりダンジョンを突破。地上に出たが、そこは小さな小さな小島だった。 漂流していた美少女魔族のルーシェを救出し、彼女を連れてダンジョン攻略に乗り出す。そしてボスモンスターを倒して得たのは「フィールドダンジョン生成」スキルだった。 生成ダンジョンでスローライフ。既存ダンジョンで異世界冒険。 タクミが第二の人生を謳歌する、そんな物語。 *カクヨム先行公開

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】

一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。 追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。 無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。 そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード! 異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。 【諸注意】 以前投稿した同名の短編の連載版になります。 連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。 なんでも大丈夫な方向けです。 小説の形をしていないので、読む人を選びます。 以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。 disりに見えてしまう表現があります。 以上の点から気分を害されても責任は負えません。 閲覧は自己責任でお願いします。 小説家になろう、pixivでも投稿しています。

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

処理中です...