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第七章 神殿生活

第五話 神殿街

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 ゲートの設置が終了した。
 隣の部屋に居るはずの二人を呼ぶ。

 俺がゲートを設置している時に、マヤとミトナルが戻ってきた。作業をしていたので、二人にはロルフの作業を手伝ってもらっている。

「ミル!マヤ!」

 先に反応したのは、マヤだ。
 妖精の姿のまま、俺の肩まで飛んできた。

 そのあとを、ミトナルが駆け寄ってくる。その後ろを、ゆっくりとした速度で、ロルフが続いている。

 俺が信頼できる3人?だ。

「終わった?」

「ゲートの設置はできた。猫人族は?」

 マヤが、抱き着いているミトナルの頭の上に戻って、俺に説明をしてくれた。
 やはり、そのままの神殿では過ごしにくかった様で、話をビアンコが聞いて、変更を加えた。洞窟を作って、狭い入り組んだ形にしたようだ。魔力の問題もなく、改修は終わっている。
 手伝いをしたいと猫人族が言い出したので、施設の案内をしていたようだ。

「それで?」

「今は、ジャッロやヴェルデやビアンコと一緒に仕事をしてもらっている」

 ミトナルが答えている間に、マヤが俺の肩に移動する。
 偉そうに腕を組んでいる。話を聞いていると、案内をすると言い出したのはマヤだが、実際に猫人族を案内して施設の説明や眷属との引き合わせをおこなったのは、ロルフだ。多分。

「わかった。ミアは?」

「僕たちと一緒に居る。名目は連絡係」

「わかった。俺は、地上に戻るけど、二人はどうする?」

 ミトナルとマヤがお互いの顔を見て頷いている。

「一緒に行く」

「そうか、連絡係のミアを呼んできてもらえるか?屋敷の者たちにも、挨拶をしておいた方がいいだろう?」

「うん」

 マヤが、飛んで行った。言葉通りだ。

 すぐに、レオに乗ったミアとマヤが戻ってきた。

「あるじ!」

 ミアが、ミトナルと俺の間に飛び込んでくる。優しく受け止めて、頭を撫でてやると嬉しそうな表情を俺とミトナルに向ける。

 レオは、近くでお座りの恰好で待っている。
 頭の上には、マヤが座っている。凄くシュールだ。

「ロルフ。魔力とリソースの確認を頼む」

「わかりました。あっ・・・。にゃ」

 忘れていた語尾をつけ始めた。
 人が増えると伝えたので、キャラ付けが必要になってくる。と、思っているのか?
 別にいいのだけど、ロルフとしては譲れない部分なのだろう。

 ロルフを残して、ゲートを設置した場所に向う。

 まずは、神殿の街に出る。俺たちが居た神殿の内部とは別の雰囲気にしている。あえて、王都の街並みと似たような雰囲気にしてある。
 ロルフが設定した場所だ。表向き、神殿は”通路”になっていると説明をする。通路の両端に、ゲートが設置してある。

「あるじ!すごい!」

 ミアが、神殿の街を楽しそうに見ている。
 いろいろな建物を指さして、ミトナルに聞いている。

 内部から繋がっているのは、俺が所有する屋敷だ。
 屋敷から出ると、中央広場だ。中央広場の真ん中には、噴水を設置してある。道は石畳だが、色分けしてある馬車の通行レーンの目安にしている。貴族が通ることも考えているが面倒なので、その辺りはギルドとセバスチャンに丸投げの予定だ。

 建物は立ててあるが、何に使うのか未定の物も多い。
 俺の屋敷の隣?には、ギルド用の建物を用意した。俺の屋敷とは、庭を挟んでいる。庭は、石壁で遮っている。

 建物は、デフォルトで用意できる物を置いてあるだけだ。確認をしたら、修繕が可能な為に、今の状況にしてある。

 大事な施設への入口も作った。
 ギルドの俺の屋敷とは反対側に、ダンジョンへの入口を作った。これは、ヒューマたちの訓練用のダンジョンとは違って、本気モードのダンジョンだ。しっかり考えて進まないと、怪我ではすまない罠も点在している。もちろん、階層に適したボスや魔物も配置している。俺の眷属になった魔物と同種は配置していない。魔物は、本当に”魔物”だとわかるようなタイプだけにした。

 使い方は、ギルドに任せることにする。
 必要がなければ、閉鎖してしまえばいい。

 中央の広場から、両端に道が伸びている。
 今回は、メルナ方面に向う。距離にして1キロ程度だ。街の幅は2キロ程度にしている。

 ゲートを置いた場所は、関所が設置できるようにしている。
 ゲートは3箇所設置予定で、現在は1箇所だけだ。すぐい、二か所目の設置を行う必要がある。

 森の中に、神殿に入ることができたカバーストーリーを用意する必要がある。

 ゲートの装置だけは設置してあって、”現在は使えない”様に見せている。
 そのゲートが3か所分、設置されている。

 ゲートは、別々の部屋のような場所に設置してある。王都の道幅を真似た幅を確保してあるから、王都で使える馬車ならそのまま使えると思っている。高さは、馬車の二倍にした。問題は、馬車を曳いている馬?がゲートを使えるのか?だけど、心配してもしょうがない。実際に試してみないと解らない。

 動いているゲートを抜けると、メルナの外れにある屋敷に出た。

 一番喜んでいるのは、ミアだ。

 すぐに、セバスチャンがやってきた。どうやって認識したのか解らないが、丁度よかった。

「セブ。これが、神殿に繋がるゲートだ」

「これが・・・」

 セバスチャンは、ゲートを見つめている。
 信じられないのもしょうがないが、こういう物だと思ってもらうしかない。

 裏側を見ると、ただの岩になっている。
 ヒューマたちの里にある祠も同じようになっているのだろう。

「セブ。このゲートは、貴族や富裕層が使うことを前提と考えたい。ギルドとの調整にはなるが、管理はセブたちに任せたいが大丈夫か?」

「ギルドの面子との打ち合わせを行いまして、管理方法や責任の所在をどうするのか考えます」

「頼む。それから、このゲートを覆う形で、建物を築いてほしい」

「かしこまりました。どのような建物にしますか?」

「そうだな・・・」

 社にはしない。
 馬車で来て、馬車のまま通過できるようにしたい。

 俺のイメージをセバスチャンに伝える。
 すぐに着手すると言っていた。

 ここは、任せて大丈夫だろう。

 セバスチャンと一緒に屋敷に戻ると、使用人?が揃っていた。
 ミアがびっくりして、ミトナルの後ろに隠れてしまったことを除けば、問題はない。

 使用人というよりも、従業員という考えの方が近い。
 セバスチャンから、何ができるのかと、何を担当しているのかと、名前を合わせて紹介された。

 俺もミトナルも鑑定が使える。
 名前には嘘はなかった。経歴には、”嘘”が紛れ込んでいたが、些細な事だ。皆が、同じ貴族家に仕えていた。貴族家の名前は聞いたことがないが、ハーコムレイが問題にしていないことや、アッシュが何も言わなかった。
 もしかしたら、ミヤナック家と同じ派閥にいた貴族家の家臣だった人たちなのかもしれない。

 それなら連携も取れているだろう。貴族の相手も大丈夫なのだろう。

 セブではなく、執事見習いから、帳簿を渡される。
 これから、定期的に帳簿を渡されることになった。簡単なお小遣い帳レベルなら嬉しいが・・・。どうやら、もう少しだけ複雑な帳簿になっている。後で、説明を聞かなければ解らない。

 途中から、ミアが屋敷を見学したいと言い出したので、セバスチャンに頼んで俺たちの部屋に案内してもらった。
 俺の部屋は執務室と繋がっている部屋だ。ミトナルとマヤとミアは同じ部屋になる。もちろん、レオが一緒に居ても狭く感じない。隣の部屋になっていて廊下に出なくても、扉で繋がっている。

 屋敷の見学を終えたミアは眠くなってしまったようで、ベッドで横になっている。
 俺は、セバスチャンを連れて、ギルドのメンバーが居る場所に向った。

 ミトナルは、マヤと一緒に、ベッドで横になっているミアの近くに居ることにしたようだ。俺もそっちの方がよかったが、ギルドのメンバーを神殿に案内しないと話が進まない。

 アデレード殿下の問題もある。
 ローザスとハーコムレイを待とうかと思ったが・・・。説明の二度手間は避けたかったが、難しいようだな。

 ゲートの説明は、セバスチャンにしたから、ギルドとの打ち合わせの場所に顔を出せば俺の役目は終わり。だと、思いたい。
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