73 / 161
第五章 マヤとミル
第十三話 ミルと狩り?
しおりを挟む「リン。おはよう」
「マヤ?」
「うん!」「リン。今日は、マヤが身体を使う」
二人で取り決めでもしたのか?
ミルが妖精の姿で、俺の肩に止まる。
「リン。僕。今日は、ロルフと神殿の調整を行うけどいい?」
「え?調整なら俺が行うぞ?それに、言ってくれたら、施設を作るぞ?」
「・・・。リン。僕にやらせて、お願い」
「・・・。わかった。無理するなよ?神殿の調整には魔力を使うぞ」
「うん!大丈夫だよ!ありがとう」
マヤがミルの止まっていない方向から抱きついてきて、頬に唇をあてる。
「マヤ!」
ミルが、俺の耳元で大きな声を上げるが、マヤは気にもとめないで、部屋から出ていく。ドアを閉める時に、意味ありげにミルを見ていたので、約束以外のことをしたのだろう。
「ミル?」
「ごめん。リン。あのね」
「ん?」
「僕と一緒に狩りに行って欲しい。ダメ?」
「狩り?いいけど、どこに行く?目立つ場所は避けたほうがいいよな?」
「うん。ヒューマに聞いたら、近場に意識がない魔物たちが溜まっている。湧いてくる場所がある。魔力溜まりがあるみたいだから、その場所の調査を兼ねて・・・。どうかな?」
「俺に問題は無いけど・・・。ミル。その姿で戦えるのか?」
「あっ!そう、この姿で戦えるのか、確認したい」
取って付けたような理由だ。
なにかを隠しているようだ。聞いても、教えてくれる様子はない。
「ミル。スキルは使えるのか?」
「うん。剣技は無理だけど、魔法系は大丈夫。だから、戦闘も大丈夫」
「なぁステータスを見ていいか?」
「僕の?許可なんて必要ないよ?」
ミルの許可を得て、鑑定を使って、ミルのステータスを表示させた。
体力:280(-60)
魔力:360(+1200)
腕力:190(-100)
敏捷性:190(+250)
魅力:100
魔法:青(3(+1))・赤(3)・黄(1(+2))・灰(1)・黒(2(+1))
スキル:隠蔽、(隠蔽)魔法の吸収、(隠蔽)剣技の吸収、念話
ユニークスキル:(隠蔽)鑑定
エクストラスキル:?????(隠蔽)(1)
エクストラスキル:融合(マヤ・アルセイド)
「え?すごいな」
「どうしたの?」
「数字が2つになっている」
「それは、マヤの能力らしいけど、よくわからない。でも、僕の本体?は、マヤと一緒らしい」
「うーん。今後、マヤを交えて・・・。無理だな。俺とミルで検証しないとわからないよな」
「うん。僕とマヤのステータスを足したのが、僕たちのステータス」
「そうか・・・。そうなると、妖精体に、魔力を振り分けてしまっていないか?」
「あっ。違う。妖精は、僕であって、僕じゃなくて、うー。上手く説明できない」
「ステータスから予想すると、マヤとミルのステータスの合計を振り分けているように見える。魔力だけは、ミルが全部もらっているように見える。スキルは共通になるのか?」
「そんな説明をされた。それから、魔力は二人で身体・・・。今は、マヤの中に存在している物を使う。妖精は、魔力の塊みたいな物だから、その分だけ多く見えるけど、魔力はマヤが管理する」
「へぇ・・・。そうなると、妖精が魔法を使って、人が剣技を使うなんてことができるのか?」
「うん!でも、スキルが発動できるのか・・・。不安だから、リンに付き合って欲しい」
「わかった。そういう話なら、戦闘力を確認する必要もあるな。ブロッホ」
後ろからついてきていたブロッホに声をかける。ドアの前で、待機していたようだ。
「はっ。ヒューマに確認をします。護衛は、アウレイアとアイルとリデルを付けます」
「多くないか?」
「いえ、リン様だけではなく、ミル様もご一緒なら少ないくらいです」
ブロッホが大げさに言いすぎているように感じるが、眷属たちの総意なら受け入れるほうがいいだろう。
俺は大丈夫だとしても、ミルやマヤが怪我をするのは避けたい。
「それで、ミルが言っていた場所はわかるのか?」
「はい。アイルの眷属が確認をしました」
「わかった」
ブロッホが、俺の前を歩く。
転移門に入っていった。すぐに戻ってきた。安全の確認を行ったと言っているが、ヒューマが管理している場所なので、確認の必要性は感じていない。
転移門を出ると、ヒューマだけではなく、リザードマンたちが片膝をついて控えていた。
どうやら、ブロッホが先に転移門に入ったのは、先触れの意味も存在していたようだ。
「大げさにしなくていい。ヒューマ。それで、魔力溜まりができているのか?」
「はい。初期な物ですが・・・」
「魔物は?」
「意識なき者が湧いています」
「種族は?」
「いろいろです」
ヒューマの言い方から、ゴブリンやコボルトなどの魔物が湧いているのだろう。
ヴェルデもビアンコも気にしないと思うのだが、ヒューマとしては種族名を口にしたくはないのだろう。
「わかった。俺と、ミルと、アイルとリデルで対処する。アウレイアは、周辺の警戒に当たってくれ」
「はっ。我々は、周辺に誘い込まれる者がいないか、警戒しています」
「わかった。ミル。アイル。リデル。準備はいいか?」
アイルは、ひと鳴きして応える。リデルは、アイルの上で俺を見てうなずく。魔力溜まりだと、リデルが活躍するだろう。
「大丈夫!」
ミルは、俺の肩からアイルの上に移動した。
アイルが場所を知っているらしいので、先導を任せる。
20分くらい走ったら、魔物がいる気配がしている。
「ミル。どうする?俺がやろうか?単体みたいだから、魔法で仕留める?」
「うーん。リンに任せるよ。僕は、魔力溜まりを消す」
「わかった」
どうやら、ミルの目的は魔力溜まりにあるようだ。
さくっと、ゴブリンを倒した。リデルが、死体を燃やしている。魔石が残らないかと思ったが、何も残っていない。生まれたばかりのゴブリンだと、魔石が残る方が少ないらしい。素材として使える場所もないので、燃やすか、埋めるかの選択肢しか存在しない。埋めてしまうのは処理としては楽だが、エントや植物系の魔物が生まれてしまう可能性ある。または、魔力溜まりが発生する可能性があるために、素材の剥ぎ取りの必要がなければ、処理としては燃やしたほうがいい。
「ミル?」
先頭を進んでいたアイルが止まる。
ミルが、アイルの上から木に移動する。
「リン。魔力溜まりは、5メートルくらい先にある。魔物が湧いて出てくるから、討伐をお願い」
「わかった」
ミルは、前を見据えている。
「来た!」
ミルの言葉通りに、魔物たちが出現する。ゴブリンやコボルトだ、魔虫も含まれているが、単体で湧いて出ているので、討伐するのは難しくはない。
ミルがどうやってタイミングを測っているのかわからないが、湧いて出る魔物の種別や数を的確に把握している。
「リン!大物が湧きそう」
ミルが警戒の声を発する。
「アイルは、俺の横に、リデルはミルのところで防御を優先!リデル、ミルを頼む!」
俺の言葉で、二匹は行動を開始した。
「グレートウルフか?」
「来る!」
「わかった。アイル。俺が、止める」
アイルが横に移動して、グレートウルフの首を狙う。単調な攻撃だ。爪での攻撃を2回行ったら、噛みつき攻撃、距離が離れていたら突進してくる。ヘイト管理を間違えなければ、このまま倒しきれそうだ。
体力が多かったのだろうか、倒し切るのに5分の時間が必要だった。
「リデル。頼む」
リデルは、生命活動を終えたグレートウルフの横に立ってスキルを使用する。毛皮は素材として使えるのに、持って帰る予定だが、肉は食用にはならない。リデルのスキルで、血抜きをする。解体は無理だが、持てる量は減らしておきたい。
「リン!」
「どうした?」
「魔力溜まりが姿を表すよ」
「え?」
ミルが、木の上からダイブした。
空気の層が渦になっているように見える場所に突入していくのがスローモーションのように見えている。
ミルの目的なのだろうけど、魔力溜まりに突入するのなら、やる前に教えておいて欲しかった。
0
お気に入りに追加
49
あなたにおすすめの小説
異世界の物流は俺に任せろ
北きつね
ファンタジー
俺は、大木靖(おおきやすし)。
趣味は、”ドライブ!”だと、言っている。
隠れた趣味として、ラノベを読むが好きだ。それも、アニメやコミカライズされるような有名な物ではなく、書籍化未満の作品を読むのが好きだ。
職業は、トラックの運転手をしてる。この業界では珍しい”フリー”でやっている。電話一本で全国を飛び回っている。愛車のトラクタと、道路さえ繋がっていれば、どんな所にも出向いた。魔改造したトラクタで、トレーラを引っ張って、いろんな物を運んだ。ラッピングトレーラで、都内を走った事もある。
道?と思われる場所も走った事がある。
今後ろに積んでいる荷物は、よく見かける”グリフォン”だ。今日は生きたまま運んで欲しいと言われている。
え?”グリフォン”なんて、どこに居るのかって?
そんな事、俺が知るわけがない。俺は依頼された荷物を、依頼された場所に、依頼された日時までに運ぶのが仕事だ。
日本に居た時には、つまらない法令なんて物があったが、今では、なんでも運べる。
え?”日本”じゃないのかって?
拠点にしているのは、バッケスホーフ王国にある。ユーラットという港町だ。そこから、10kmくらい山に向かえば、俺の拠点がある。拠点に行けば、トラックの整備ができるからな。整備だけじゃなくて、改造もできる。
え?バッケスホーフ王国なんて知らない?
そう言われてもな。俺も、そういう物だと受け入れているだけだからな。
え?地球じゃないのかって?
言っていなかったか?俺が今居るのは、異世界だぞ。
俺は、異世界のトラック運転手だ!
なぜか俺が知っているトレーラを製造できる。万能工房。ガソリンが無くならない謎の状況。なぜか使えるナビシステム。そして、なぜか読める異世界の文字。何故か通じる日本語!
故障したりしても、止めて休ませれば、新品同然に直ってくる親切設計。
俺が望んだ装備が実装され続ける不思議なトラクタ。必要な備品が補充される謎設定。
ご都合主義てんこ盛りの世界だ。
そんな相棒とともに、制限速度がなく、俺以外トラックなんて持っていない。
俺は、異世界=レールテを気ままに爆走する。
レールテの物流は俺に任せろ!
注)作者が楽しむ為に書いています。
作者はトラック運転手ではありません。描写・名称などおかしな所があると思います。ご容赦下さい。
誤字脱字が多いです。誤字脱字は、見つけ次第、直していきますが、更新はまとめてになると思います。
誤字脱字、表現がおかしいなどのご指摘はすごく嬉しいです。
アルファポリスで先行(数話)で公開していきます。
一人だけ竜が宿っていた説。~異世界召喚されてすぐに逃げました~
十本スイ
ファンタジー
ある日、異世界に召喚された主人公――大森星馬は、自身の中に何かが宿っていることに気づく。驚くことにその正体は神とも呼ばれた竜だった。そのせいか絶大な力を持つことになった星馬は、召喚した者たちに好き勝手に使われるのが嫌で、自由を求めて一人その場から逃げたのである。そうして異世界を満喫しようと、自分に憑依した竜と楽しく会話しつつ旅をする。しかし世の中は乱世を迎えており、星馬も徐々に巻き込まれていくが……。
小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします
藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です
2024年6月中旬に第一巻が発売されます
2024年6月16日出荷、19日販売となります
発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」
中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。
数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。
また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています
この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています
戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています
そんな世界の田舎で、男の子は産まれました
男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました
男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます
そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります
絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて……
この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです
各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます
そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます
カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております
世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜
ワキヤク
ファンタジー
その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。
そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。
創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。
普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。
魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。
まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。
制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。
これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。
暇だったので、なんとなくダンジョン行ってみた
himahima
ファンタジー
勢いで会社を辞めたおばさんは暇だった。
なんもかんも嫌になって仕事を辞めたが、目標も気力もない自堕落な生活をおくっていた。
ある日、テレビに映る探検者なるキラキラした若者達を観てなんとなく近所のダンジョンに行ったことから、第二の人生がはじまる。
★初めてのファンタジー投稿です。
貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
異世界のリサイクルガチャスキルで伝説作ります!?~無能領主の開拓記~
AKISIRO
ファンタジー
ガルフ・ライクドは領主である父親の死後、領地を受け継ぐ事になった。
だがそこには問題があり。
まず、食料が枯渇した事、武具がない事、国に税金を納めていない事。冒険者ギルドの怠慢等。建物の老朽化問題。
ガルフは何も知識がない状態で、無能領主として問題を解決しなくてはいけなかった。
この世界の住民は1人につき1つのスキルが与えられる。
ガルフのスキルはリサイクルガチャという意味不明の物で使用方法が分からなかった。
領地が自分の物になった事で、いらないものをどう処理しようかと考えた時、リサイクルガチャが発動する。
それは、物をリサイクルしてガチャ券を得るという物だ。
ガチャからはS・A・B・C・Dランクの種類が。
武器、道具、アイテム、食料、人間、モンスター等々が出現していき。それ等を利用して、領地の再開拓を始めるのだが。
隣の領地の侵略、魔王軍の活性化等、問題が発生し。
ガルフの苦難は続いていき。
武器を握ると性格に問題が発生するガルフ。
馬鹿にされて育った領主の息子の復讐劇が開幕する。
※他サイト様にても投稿しています。
豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜
自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成!
理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」
これが翔の望んだ力だった。
スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!?
ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる