59 / 160
第四章 マガラ神殿
第十七話 今後の方針
しおりを挟む「リン。それで、今後の方針は?僕のオススメは、アゾレムの領都に乗り込んで、街中に火を放つかな?魔狼で、魔法が使える者に頼めば証拠も残らない」
「・・・。ミトナル。さすがにそれは・・・。それに、アゾレムが苦しまないのは、俺的にはなしだな。火を着けたら、簡単に終わってしまう」
「そうだった。特に、立花は苦しめないと駄目。トラウマが産まれるくらいにしたほうがいい」
「俺も同意見だな。そうだな。この村が盗賊の根城になるのもいいけど・・・。ロルフ!」
『はい。マスター』
「この村に、転移門を設置したり出来るか?」
『マガラ神殿が稼働し始めれば可能です』
「ヒューマたちに任せている転移門を移すのは可能か?」
『可能ですが、ヒューマたちへの、説明が必要です』
「そうだな。村で、領主たちに対抗しようと思ったら、今の戦力では難しいか・・・」
『1度や2度の戦闘は大丈夫だと思いますが、永続的に支配するには、力不足です』
「力不足か・・・。確かに、3種族で、リザードマンと狼と栗鼠だからな」
「ねぇリン。気になったのだけど・・・」
「ん?どうした?」
ミルが話にはいってきたが、ロルフの声は聞こえていないはずだ。
「力不足とか言っていたけど、リンが魔物を眷属にする条件はあるの?」
「え?どうして?」
「僕を、ここに誘導してきた狼たちは、リンの眷属でしょ?」
「そうだけど・・・。条件か・・・」
ミルに、条件として考えられる内容を説明した。
「そうなると、話せると眷属に出来る可能性が高いということ?」
「そうなる」
ミルが言っている内容で概ね間違っていないだろう。
交渉が出来ない限りは、眷属にもなってもらえない。魔物と対峙して、屈服させることで、従わせることも出来るだろうが、”パス”がつながらなければ進化も出来ないだろう。
ミルは、それだけ聞いて何かを考え始めた。
「ロルフ。ヒューマも言っていたけど、魔物の基本は”個は全”なのだろう?」
『一部の上位種は違いますが、進化前の個体は”個”はないです』
ロルフに、魔物に関する認識を確認している時に、ミルは難しい顔をして何かを考えていた。
「ねぇリン。さっきの話だけど・・・」
「ん?”さっき”の話?」
「あっうん。戦力になるような魔物を眷属に・・・。って、話だけど、僕の育った村の近くにある。ヘルズ森林の中心部には”エルフの里”があるけど、昔から里の近くに、人の言葉を理解する、オークとゴブリンとコボルトが集落を作って住んでいる・・・。と、言われている」
「え?」
「リンの条件にぴったりだと思う」
『マスター。ミトナルの意見に賛同します。ヒューマと一緒に向かえば、可能性が高まります。アウレイアとアイルを連れていけば、探すのにも苦労しないと考えます』
「ミル。その魔物たちが居る場所はわかるのか?」
「ごめん。僕も、話を聞いただけで・・・。それに、村にはちょっと・・・」
「俺は、人型の魔物は配下に加えたい。ミル。途中まででも案内を頼めるか?村には行かないで済むのなら行かない」
「うん!もちろん!」
ミルの顔が、嬉しそうな笑顔になる。
両親の話は驚いたが、証拠がない話だ。それに、和葉の両親も巻き込まれたのは間違いが無いのだろう。敵は、立花であり、山崎だ。
マヤを殺した奴らにも報いが必要だ。そのための力を得たい。
「ロルフ!ヒューマに連絡をしたい。アウレイアやアイルを使者に出せば大丈夫か?」
『はい。眷属同士は、認識できますので、アウレイアかアイルかリデルが使者に出向けば、ヒューマには伝わります』
「わかった。アイル!眷属を何体か連れて、ロルフと一緒にリザードマンに使者として行ってくれ」
『はっ』
草むらに控えていたアイルが尻尾を高速に振りながら姿を現した。
気配を感じていたから、近くに居ると思っていたけど、間違いではなかった。
『マスター?』
「ロルフは、優秀だから、一人でも大丈夫だとは思うけど、アイルに乗っていけば早いだろう?それに、ロルフが使者となってくれれば、俺も安心だ。信頼しているぞ」
『わかりました。アイルと向かいます。マスターは?』
「俺は、アウレイアとリデルと一緒に、ミルの村に向かう。オークたちとの接触は、ロルフたちが合流してからにする」
『わかりました』
ロルフは、それだけ話をして、アイルたちを呼んで一言二言の話をして、俺の前に整列してから、遠吠えをしてから、走り去った。
ヒューマが居る、マガラ森林に向かっていった。
「さて、ミル。気がついていると思うけど」
「うん。僕の産まれた村に行くのだよね?」
「そうだな。でも、村ではなく、森の中で過ごそうと思うけど、いいか?」
「うん。それなら、僕も大丈夫。でも、一度、パパとママのお墓には行きたい。遺骨もなにも無いけど、挨拶はしたい。”育ててくれてありがとう”と伝えたい」
「わかった。一緒に行くのは、狼のアイルたちと栗鼠のリデル。それと、眷属たちだ」
「村はどうするの?」
「アウレイアの眷属が見張っていれば、大丈夫だと思う。そもそも、逃げ出そうとしても正面からなら勝手に出ていってくれていいと思っている。そうだ。アウレイア!村長の遺体は、洞窟に放置してあるのだよな?」
『はい。アンデットになってしまった場合に、速やかに排除するために、眷属が見張っています』
「村の中心に配置させられるか?」
『可能です』
「アウレイアたちの存在を隠しながらだぞ?」
『はい。問題はありません』
「頼む」
アウレイアに無茶振りをしたと思ったが、二つ返事で実行を了承した。眷属に頼んでいる圧力を緩和させた。逃げ出すしかない村を見捨てる理由が出来たのだ、村の者たちは散り散りになるのだろう。水も、食料もなくなって居る。リデルの眷属からの報告で、村人が村長の家に入って家探しをしていたらしい。村長が不正に貯めた金が狙いだったのだろう。多くの村人は知っていたのだろう。もしかしたら、村人の全員で不正を働いていたのかもしれない。
「ミル。アウレイア。リデル。移動しよう」
3日後に、ミルの案内で、ヴァズレ領にあるヘルズ森林に到着した。アイルの眷属が一体だけ先触れとして来た。
1日後に、ロルフとヒューマを連れて合流できるらしい。タイミングとしてはベストに近い。リデルの眷属が、ミルが言っていた、オークとゴブリンとコボルトの集落を探しだした。半日の距離にあるようだ。
『マスター』
翌日、ロルフたちが合流した。
ヒューマに、ミルを俺とマヤの仲間だと紹介した。
「マスター」
ヒューマが話しかけてきた。魔物が喋るという状態に、ミルが最初はびっくりしていた。ヒューマからの説明では、リザードマンたちの進化が落ち着いて、ヒューマが恩恵を受けたようだ。俺の眷属としての強い思いから、念話スキルが進化して”会話”になった。
「ん?」
「オークとゴブリンとコボルトですが、我らと同じ状態だと推測します」
「え?」
「初代様に名付けして頂いた者や末裔ではないかと思います」
もし、それならリザードマンと同じように会話が成立するかもしれない。
ヒューマが、集落を訪れて説得を試みると言ってくれた。ロルフが一緒に行けば、集落に居る魔物たちも安心するだろう。
俺は、ミルとアウレイアとアイルとリデルとヘルズ森林で待っていた。
そして、ヒューマとロルフが二日後に戻ってきた。
目の前に、オークとゴブリンとコボルトが来ている。
跪いているのは、リザードマンの時と同じだ。そして、それぞれの種族の長が初代から名を授かっていた。目の前に居るのは、次の長に決まっている者だ。集落をまとめている者だと紹介された。
「今の話では、皆が俺の眷属になるのに同意しているのだな?」
「「「はっ」」」
オークとゴブリンとコボルトに、名付けを行った。
ミルは、不思議な物を見る表情で、俺が行っている名付けを見ている。
そんなミルを俺も、観察をしていたが、コボルトに名付けを行って、ミルに話しかけようとした時に、意識が途切れた。
今後の方針として、一度マガラ神殿に戻ろうと思っていると伝えたかった。
0
お気に入りに追加
49
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
お姉さまは酷いずるいと言い続け、王子様に引き取られた自称・妹なんて知らない
あとさん♪
ファンタジー
わたくしが卒業する年に妹(自称)が学園に編入して来ました。
久しぶりの再会、と思いきや、行き成りわたくしに暴言をぶつけ、泣きながら走り去るという暴挙。
いつの間にかわたくしの名誉は地に落ちていたわ。
ずるいずるい、謝罪を要求する、姉妹格差がどーたらこーたら。
わたくし一人が我慢すればいいかと、思っていたら、今度は自称・婚約者が現れて婚約破棄宣言?
もううんざり! 早く本当の立ち位置を理解させないと、あの子に騙される被害者は増える一方!
そんな時、王子殿下が彼女を引き取りたいと言いだして────
※この話は小説家になろうにも同時掲載しています。
※設定は相変わらずゆるんゆるん。
※シャティエル王国シリーズ4作目!
※過去の拙作
『相互理解は難しい(略)』の29年後、
『王宮勤めにも色々ありまして』の27年後、
『王女殿下のモラトリアム』の17年後の話になります。
上記と主人公が違います。未読でも話は分かるとは思いますが、知っているとなお面白いかと。
※『俺の心を掴んだ姫は笑わない~見ていいのは俺だけだから!~』シリーズ5作目、オリヴァーくんが主役です! こちらもよろしくお願いします<(_ _)>
※ちょくちょく修正します。誤字撲滅!
※全9話
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる