上 下
50 / 161
第四章 マガラ神殿

第八話 訓練

しおりを挟む

 どのくらい寝ていたのだろう。

「ロルフ?」

 枕元で、猫が丸くなっている。
 やっぱり、精霊じゃなくて、猫がたまたま精霊になったのだろう。猫で間違っていない。

「おい。ロルフ!」

「マスター。おはようございます」

「お前、やっぱり猫だろう?」

「違います。精霊です。猫型の精霊です」

「わかった。わかった。ロルフ。状況は?」

「マスターを運んでもらって、休んでもらいました」

 微妙にポンコツなのは、気のせいなのだろうか?
 もしかして、俺に合わせてポンコツになってしまっているのか?

「ロルフ」

「ヒューマを呼んできます。マスターは起きてください」

「わかった」

 ロルフが、伸びをして、跳躍したかと思うと、部屋から出ていった。
 やっぱり、猫だな。

 すぐにロルフが戻ってきた。俺の肩に飛び乗った。

「リン様!いえ、マスター」

 ん?ヒューマか?
 身体が一回りほど小さくなって、野性味が薄れた感じがする。

「あぁ、長が進化と言っていたが、無事に終わったのか?」

「マスターのおかげで進化することが出来ました」

「そうか、よかった。この祠は、大事な場所だ。これからも頼むな」

「御意。マスター。それから、戦闘訓練をお望みだとお聞きしました。我を筆頭に、リザードマン一族。ご協力致します」

「ありがとう。リザードマンやヒューマは、この場所を守護して欲しい。神殿とつながる唯一の場所だ」

「はい。マスター」

「ヒューマには戦い方を教えて欲しい」

「戦い方ですが、リザードマンの戦い方が主になってしまいます」

「ん?」

「マスターは人族ですので、剣や盾を持って戦うと思いますが、リザードマンは尻尾も武器として使います」

「あぁ基礎だけでいい。まったく戦えないのが問題だからな」

「マスター。何か、想定している”敵”が居るようですが?よかったら、教えて下さい」

 どこまで話をしていいのか考える。
 転生云々の話は隠すとして、敵は貴族であると伝える。

 ステータスは、俺の倍以上はあると過程出来ると伝えた。

「マスター。その者たちとは?」

「うーん。暫くは、大丈夫だと思う。まずは、村長だ。奴を殺す」

「それならば、まずは基礎の訓練を行って、武器を決めましょう。そして、眷属を増やしましょう。リザードマンは我が掌握します。初代は、万の魔物を掌握したと言われています」

「どういうことだ?リザードマンを眷属に加えていけばいいのか?」

「長に確認したのですが、我が掌握した配下は、そのままマスターの力になります」

「そうか、わからないけど、任せる」

「訓練は、すぐに行いますか?」

「そうだな。村長に、自分の行いの結果を知らせるのは早いほうがいい。それに・・・」

 マヤの側に居てやりたい。

「わかりました。ロルフ様。よろしいですか?」

「マスターの望みを叶えるのが、大事だ」

 ロルフがヒューマにはなぜか偉そうだ。

「はい」

 ヒューマとロルフの間でも問題はないようだ。
 立ち上がったが、身体に違和感はない。

 それから、リザードマンの訓練施設に移動した。やはり、洞窟の中にある広場になっている場所だ。
 ヒューマがリザードマンたちに指示をだし、武器や防具が並べられる。

 ヒューマが受け役になって、俺が武器を試していく、適正がないのか、槍や弓はあまりしっくり来なかった。大剣も扱えるのだが、体力が先になくなってしまいそうだ。短剣が中でも使える感じでは有ったが、戦えるのかを言われると少しだけ不安になってしまう。村長程度なら問題は無いだろけど、同級生たちには無理だ。

「どうですか?」

「短剣かナイフだけど、なんかしっくりと来ない」

「そうですね。スムーズに動かせるのは、短剣ですが、戦えるのかと言われると難しいですね」

 ヒューマの言葉だが、俺もそう感じている。村長を脅すためなら十分だが、実戦経験がある奴だと太刀打ちできそうにない。

「リン様。ヒューマ」

「長?!」

 長が、リザードマンを一人?連れてきている。何かを持ってきているようだ。

「リン様。初代様が使っていた武器があります。”かたな”と初代様は呼んでいました」

「刀?」

「はい。初代様も、リン様と同じで、合う武器がなくて、鍛冶に作らせた物の一本です」

「俺が使っていいのか?大切な物なのだろう?」

「構いません。初代様からも、”かたな”は使ってこそ意味がある。使える者が居れば、”渡せ”と言われています」

「そうか、使えるかわからないから、試させてもらう」

「はい」

 大太刀ではなく、太刀と打刀の間位の長さか?もっと、刀について勉強してくればよかった。
 鞘も作られている。俺の力では、片手持ちは無理だろう。両手持ちにして、振り抜く。

 他の武器よりは、しっくりと来る。
 ”刀”が俺にあわせているように思えてしまう。

「マスター。”かたな”が良さそうですね」

「そうだな」

 素振りを行う。手に馴染む。

「マスター。軽く当たりましょう」

 ヒューマが剣と盾を構える。
 踏み込んで、刀を振る。短剣と違って、両手なのが影響しているのか、狙った場所に打ち込める。短剣よりも、力を乗せることができそうだ。

 徐々に力を入れていく、気持ちがいい。

『”スキル:刀剣術”を取得』

 ん?

「ヒューマ。刀剣術というスキルを知っているか?」

「いえ、初めて聞くスキルです。”剣術”ならリザードマンの戦士が持っております」

「リン様。”刀剣術”は初代様が持っていたスキルです」

「そうなのか?初代は、他にどんなスキルが有った?」

「はい。儂が知っているのは、”魔装刀剣術”というスキルがあり魔法を”かたな”に纏ながら戦っておられました」

「そうか、魔法か・・・。俺は、使えそうに無いからな」

 ロルフを見るが、首を横に降っているので、俺は魔法が使えないようだ。

「リン様。初代様も魔法に関するスキルはお持ちではありませんでした」

「え?ならなんで魔法が使える?」

「それが、”動物使い”の本領です。眷属から力の流入が増えれば、スキルが使えるようになります」

「そうなのか?」

「はい。スキルとして使えますが、スキルには表示されないようです」

「そりゃぁ便利だけど、訓練が必要だな」

「はい」

 長が、眷属を増やすことをすすめる理由も納得できた。初代もいろいろ実験を繰り返して、同系統の種族は複数を眷属にしても流入は発生しない場合が多いようだ。氏や族が違えば変わるようだがよく解っていない。
 知恵なき魔物や動物を眷属にする場合には、力で屈服させる必要があるが、その場合は2段階目の変化が発生しない。
 他にも、いろいろ条件があると言っているが、まとめられた書物は初代がどこかに隠したようだ。長も場所は知らないようだ。話を聞いた感じでは、攻略本のようになっているようだ。

 2日間。リザードマンの住む洞窟で、戦闘訓練を行った。
 結局、初代が置いていった”刀”を俺のメイン武器にして、予備として”ナイフ”を使うことになった。

 ”刀剣術”のスキルを覚えてから、短剣は駄目だけど、ナイフは使えるようになった。長さが関係するのか、よくわからない。

 洞窟から出て実践訓練を行った。
 知恵なき魔物を狩る。マガラ渓谷で経験していると言っても、まともな戦闘は初めてだ。洞窟の周りは、リザードマンたちが駆除しているので魔物は存在しない。森になっている部分の奥は、強い魔物の縄張りになっていて、今の俺では向かうのは難しい。表層部分に居る魔物を狩る訓練を行った。

 ”刀剣術”も使えるようになってきた。まだスキルの恩恵である”技”は使えていないが、”刀”を使うのには問題がなくなった。

「ヒューマ」

「はい」

「本当に、助かった」

「マスター。我たちは、マスターの剣です。今回は、マスターのお気持ちを優先致しますが、力が必要な時には、お呼びください。リザードマン一族でマスターにお味方いたします」

「・・・。ヒューマ。ありがとう。俺も鍛錬を続ける。ヒューマたちも戦力の拡充を頼む。敵は貴族だ。どれだけ力があっても困らない」

「わかりました」

 ヒューマが俺の前に跪いて、刀の鞘を渡してくれる。
 同時に、ヒューマの後ろに控えていたリザードマンが、俺にマントを付けてくれた。これも初代が置いていったものらしい。認識阻害の効果があり、魔力を流すことで、認識しづらい状況になるようだ。ヒューマも試したことがないので、効果はわからないと言っているが、村に行ったら試してみれば解るだろう。

「ロルフ!」

「マスターに付いていきます」

「たのむ」

「はい」

「ロルフ様。マスターをお願い致します」

 ヒューマたちと別れて、森の表層に向けて歩き出す。
 道に出れば、そこから村に向かえばいい。食料は、ヒューマたちに分けてもらった、食べられる魔物を解体して肉になっている。

「行くか!」

 ロルフが小型猫のサイズになって、俺の肩に乗る。自分で歩くつもりはないようだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界の物流は俺に任せろ

北きつね
ファンタジー
 俺は、大木靖(おおきやすし)。  趣味は、”ドライブ!”だと、言っている。  隠れた趣味として、ラノベを読むが好きだ。それも、アニメやコミカライズされるような有名な物ではなく、書籍化未満の作品を読むのが好きだ。  職業は、トラックの運転手をしてる。この業界では珍しい”フリー”でやっている。電話一本で全国を飛び回っている。愛車のトラクタと、道路さえ繋がっていれば、どんな所にも出向いた。魔改造したトラクタで、トレーラを引っ張って、いろんな物を運んだ。ラッピングトレーラで、都内を走った事もある。  道?と思われる場所も走った事がある。  今後ろに積んでいる荷物は、よく見かける”グリフォン”だ。今日は生きたまま運んで欲しいと言われている。  え?”グリフォン”なんて、どこに居るのかって?  そんな事、俺が知るわけがない。俺は依頼された荷物を、依頼された場所に、依頼された日時までに運ぶのが仕事だ。  日本に居た時には、つまらない法令なんて物があったが、今では、なんでも運べる。  え?”日本”じゃないのかって?  拠点にしているのは、バッケスホーフ王国にある。ユーラットという港町だ。そこから、10kmくらい山に向かえば、俺の拠点がある。拠点に行けば、トラックの整備ができるからな。整備だけじゃなくて、改造もできる。  え?バッケスホーフ王国なんて知らない?  そう言われてもな。俺も、そういう物だと受け入れているだけだからな。  え?地球じゃないのかって?  言っていなかったか?俺が今居るのは、異世界だぞ。  俺は、異世界のトラック運転手だ!  なぜか俺が知っているトレーラを製造できる。万能工房。ガソリンが無くならない謎の状況。なぜか使えるナビシステム。そして、なぜか読める異世界の文字。何故か通じる日本語!  故障したりしても、止めて休ませれば、新品同然に直ってくる親切設計。  俺が望んだ装備が実装され続ける不思議なトラクタ。必要な備品が補充される謎設定。  ご都合主義てんこ盛りの世界だ。  そんな相棒とともに、制限速度がなく、俺以外トラックなんて持っていない。  俺は、異世界=レールテを気ままに爆走する。  レールテの物流は俺に任せろ! 注)作者が楽しむ為に書いています。   作者はトラック運転手ではありません。描写・名称などおかしな所があると思います。ご容赦下さい。   誤字脱字が多いです。誤字脱字は、見つけ次第、直していきますが、更新はまとめてになると思います。   誤字脱字、表現がおかしいなどのご指摘はすごく嬉しいです。   アルファポリスで先行(数話)で公開していきます。

【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
 異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。  億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。  彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。  四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?  道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!  気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?    ※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!

やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり 目覚めると20歳無職だった主人公。 転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。 ”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。 これではまともな生活ができない。 ――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう! こうして彼の転生生活が幕を開けた。

スキル【アイテムコピー】を駆使して金貨のお風呂に入りたい

兎屋亀吉
ファンタジー
異世界転生にあたって、神様から提示されたスキルは4つ。1.【剣術】2.【火魔法】3.【アイテムボックス】4.【アイテムコピー】。これらのスキルの中から、選ぶことのできるスキルは一つだけ。さて、僕は何を選ぶべきか。タイトルで答え出てた。

異世界母さん〜母は最強(つよし)!肝っ玉母さんの異世界で世直し無双する〜

トンコツマンビックボディ
ファンタジー
馬場香澄49歳 専業主婦 ある日、香澄は買い物をしようと町まで出向いたんだが 突然現れた暴走トラック(高齢者ドライバー)から子供を助けようとして 子供の身代わりに車にはねられてしまう

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

魔王が現れたから、勇者の子孫らしい俺がちょっくら倒してくる

あさぼらけex
ファンタジー
はるか昔。ここサーイターマルドは深い闇に包まれていた。 しかしどこからともなく現れた勇者ウラワが、神から授かったと言われる幻の金水晶の力を使って、闇の魔王を討ち滅ぼし、この地に平和が訪れた。 金水晶はこの地を治める時の王、ゴハン一世の手に渡り、勇者ウラワはどこかに姿を消した。 しばらく平和の世が続く。 しかしゴハン16世の御代になり、闇の魔王を名乗る者が現れた。 闇の魔王はお城にあった金水晶を奪い、この国の王女を連れ去った。 闇の魔王を倒すため、多くの者が旅たった。 しかし、戻ってくる者はひとりもいなかった。 この地に再び平和を! 誰もがあきらめかけたその時、預言者ミツフタは預言した。 勇者ウラワの血を引く子孫が、間もなく現れる。 そして闇の魔王を倒してくれるだろうと。

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

処理中です...