48 / 57
【銃弾の行方】最後の銃弾
しおりを挟むお前たちが居なくなって、丁度20年が経った。
長いようで、短い20年だ。世の中は変わったよ。お前と娘と三人で住むはずだった家の跡地は公園になった。やっと、財産の処分が出来た。もう、俺も60に手がかかる年齢だ。本当なら、お前と観光地を回っていただろうな。
お前たちの所にはいけない。解っている。お前たちが、こんな事を望んでいない。いつも、自分の事よりも、私の事を、娘の事を優先していた。だから、最後も私のやりたいことを優先する。
お前たちを弄んで、火を付けて殺した奴らを許せると思うか?
20年だ。
20年。この日を考えて、夢見て、準備をしてきた。お義父さんとお義母さんを見送った。そっちで見ていてくれ、愚かな男の「最後の・・・」。
さぁ始めよう。
最後の宴だ。
---
男は、一人の男性を銃で脅しながら、廃墟となっている港近くにある船大工の工房に入った。
そこには、4人の男が、口枷をされ手足を拘束されて、転がされている。
拘束された日時にばらつきがあるのか、既に衰弱している者も居る。
排泄物だけではなく、男たちに食べさせた物だろうか、腐った臭いが充満している。
「安心して君で最後だ」
男は、連れてきた男の後頭部を殴った。手際よく、手足を拘束する。抵抗が出来ない状況にしてから、口枷を嵌める。
「大変だったよ。やっと、やっとだよ。君たちに辿り着いた。まさか、警察にも仲間が居るとは思わなかったよ」
警察手帳を取り出して、楽しそうに床に投げ捨てて、制服姿の警官の頭を持って、床に置かれた警察手帳に顔面を打ち付ける。
鼻血がでるが、構わずに何度も何度も打ち付ける。警官は抵抗をするが、
男は、衰弱している男を殴りつける。
拳から血が出てきているが気にする様子を見せない。復讐の為に拉致を繰り返して、20年前の事件の首謀者を追い詰めた。そして、最後の一人を拘束してきた。
「まさか君が主犯だったとは思わなかったよ」
転がされている男の髪の毛を持ち上げて、頬を蹴り上げる。
「娘の恋人の君が・・・。残念だよ。まさし君」
まさしと呼ばれた男は、必死に何かを訴えているが、口枷が邪魔で言葉にならない。
まさしと呼んだ男の眉間に、黒く光る冷たい銃口を押し付けた。
今まで、喚いていたまさしだが”殺される”恐怖が襲い始める。
言葉は既に何も意味を為さない。
まさしを壁に寄りかかるように座らせる。
他の4人を椅子に座らせる。しっかりと手の届く範囲に来るように調整をしてから、まさしの顔を思いっきり踏みつけるように蹴る。
首に細いワイヤーを巻き付ける。最後の一人であるまさしも椅子に座らせる。
全員の首にワイヤーを巻き付けてから、天井に取り付けられている滑車にワイヤーを通す。
ワイヤーには重りが付けられている。
重りは、5人の中心の上下するテーブルに置かれる。重りを置けば、テーブルが下がる。テーブルが下がれば、自然と5人の首が絞まる形になる。
ワイヤーは、別々になっている。ワイヤーの切断に成功すれば、首が絞まることはない。
銃口をまさしに向けながら引き金を引いた。
破裂音が鳴り響いた。
「安心しなさい。殺しはしない。私は、君たちとは違う」
所謂リボルバーと言われるものだ。6発の銃弾が入っている。男が空砲を撃ったので、残りは5発。
男は、銃を中央のテーブルに置いた。銃の重さで少しだけテーブルが下がる。
「そうだ。解っていると思うけど、助けは期待しないほうがいい」
「ん?あぁまさし君には説明をしていなかったね。ドアと窓には・・・」
男は、朗々と仕掛けを語った。
そして、持ってきたカバンからビデオカメラとパソコンを取り出す。男は、パソコンを起動してビデオカメラを設置する。
「大丈夫ですよ。君たちの告白を録画するだけですからね」
そういって、男はトンカチとペンチを持ち出した。
「最初は、そうですね。妻を凌辱した貴方からにしましょうか」
一人の男は青い顔をさらに青くして、首を横に振り続ける。
「そんなに喜んでくれると嬉しいですよ。ほら、首を下げると、貴方の重りが宙に浮いて、首が絞まりますよ」
楽しそうな男の声だけが部屋の中に響いている。
持っていたペンチで、嫌がる左手の小指の爪を挟み力いっぱいに握り込む。
男の絶叫が部屋に響き渡る。
「気を失うのはまだ早いですよ。あぁそうだ言い忘れましたが、まさし君以外には痛覚が鈍くなる薬を飲ませてありますよ。それと、気付けの薬も大量に仕込んでいるので、なかなか気を失わないはずですよ。まずは左手を潰しましょう」
男は、爪を切るように左手の指を潰していく
「どうしました?」
必死に何かを訴えている。口枷があるので、言葉にならない。
「そうでした。忘れていました。口枷を外しましょう」
「やめ、て、くだ、さい。お、れは、たの、まれ、た、すけて」
「ははは。助ける?私の妻は、貴方に犯されたのですよ?」
「ち、がう。お、れ」「いいえ、貴方です。そうですよね」
男が、他の4人を見ると、皆が首を縦に振っている。必死だ。
「それに、別に違っていても構いません。どうせ、残りも話を聞くのですから、楽しみましょう。そうだ。警察官が居るので、言っておきますが、私は昨日、ガン宣告を受けて、延命治療を断った。痛みを和らげる薬だけを貰っています。そうです。貴方たちが、横流しをしている物と同じ覚せい剤です。さすがに、医療用なので合法ですが、法律は便利ですね。私は、覚せい剤で夢と現実の区分ができないことになっています。その為に、この場と同じ内容の小説を書いてあります」
男は楽しそうに、口枷を外した男の左手をハンマーで叩く.骨の折れる音や肉片が周りに飛び散る。
「さて、次は娘を犯してくれた者ですが、全員なので順番は難しいですね。まぁいいでしょう。まさし君は、最後にしておきましょう。そうなると、時計回りにした方がよさそうですね」
左手を潰された男の左側の男が、身を捩って逃げようとするが、身体を逃がそうとすればワイヤーが首に食い込む。
逃げられるはずがない。
「あぁ君は、左利きでしたね。右手を潰しましょう。大丈夫ですよ。順番に潰してあげます」
首を横に振るが、男は構わずに椅子に足を固定してから、右手の爪を潰してから、ハンマーで右手を打ち付ける。
ぐちゃぐちゃにした右手から流れる血を止める為に、右腕の血管を紐で絞める。
まさしを除く5人の男の利き手ではない手を潰した。
「まさし君は違った趣向にしようとおもっています。君だけは特別な存在ですからね。大丈夫ですよ」
男は、まさしの足も椅子に固定する。
拘束してから、取り出したのは5寸釘だ。
足の甲に釘の先を当てて、ハンマーを振り下ろす。
口枷を嵌めた状態での絶叫だが、はっきりと解る。
合計10本の五寸釘で足を床に縫い付ける。
「痛かったですか?娘は、もっと痛くて、悔しくて、哀しくて・・・。貴方は、よく平気でしたね」
男は、カバンの中から何かの溶液が入った注射器を取り出す。
「これですか?安心してください。毒ではないです。ただの麻酔薬です。部分麻酔の時に使う物です。まさし君を殺さないように、一生懸命に勉強したので大丈夫です。下半身の痛みを感じなくなりますよ。足の痛みも無くなると思います」
男は、部分麻酔をまさしに施す。
もちろん、今までまさしのグループの人間を使って実験を繰り返している。
麻酔が効いてきたことを確認して、まさしの足をハンマーで叩いてぐちゃぐちゃにする。
そのあとで、ハンマーで股間を殴打する。何かが潰れる音と、血と混じった物が足下に貯まり始める。
「さて、準備が出来た」
男は、外に出てから、数分で戻ってきた。
男たちが座っている椅子の下に30cmくらいの箱を置いていき、そこからひも状の物を伸ばした。
鼻歌でも謳いだしそうな機嫌の良さで、男は作業をしている。
男に急ぐ必要はない。
「よし。椅子の下には、火薬を仕込んだ箱を置いた。まさし君以外は、足の拘束を解けば逃げられるだろう。まさし君は、麻酔が切れた状態で、足の釘を抜けば逃げられるかもしれないけど、その足では難しいだろうね」
男たちは、虫の息だ。
男の言葉に耳を傾けるしかない。
「さて、君たちと違って、君たちにも生き残るチャンスをあげよう。最後のチャンスだと思ってくれていい」
男は、持っていた拳銃をテーブルに置いた。
「銃弾は5発。誰かを上手く殺せば、椅子が倒れる。一人分の重りが浮いて、ワイヤーに余裕が産まれる。二人殺せば?三人殺せば?四人殺せば?後は解るよね?」
男は楽しそうに、男たちに小型マイクを取り付ける。ワイヤーに巻きつけるような形にしている。
「準備は整った。まずは、パソコンで録画を開始する。インターネット上に保存して、パソコンからの応答が獲られなくなったら、動画をインターネット上に公開する」
「録画が開始されたら、ろうそくに火を灯すよ。2時間程度で、導火線に火が付くと思う。それからは早いよ。出来れば、導火線が燃え始める前に脱出するようにしてください」
「そうだ。言い忘れました。20年前に、私の妻と娘にしたことを告白してくれたら、助けてあげますよ。もちろん、誰かに罪を被せてもいいですよ」
男は、そう言って、パソコンの横に置いてあった椅子に腰を降ろした。
「私の、最後のゲームを開始します」
録画を開始した。ろうそくも燃え始める。口枷を外した男たちは、絶え絶えの口調で、罪の告白と擦り付けを始めた。
男への暴言も含まれているが、意味がないことは本人たちが解っている。
男は、椅子に座って、男たちの醜い抵抗を眺めている。
昼のドラマでも見ている雰囲気だ。
1時間が経過した。
男たちは、拳銃に手を伸ばさない。手を伸ばして拳銃が握れれば、生き残れる可能性は高い。しかし、握れなかったら、最初に殺されるのは自分だと思っている。牽制しあって拳銃に手が伸ばせない。
「あと、15分」
4回の音が部屋に響いた。
銃は、まさしの手にある。
残りの銃弾は1発。
最後の銃弾は・・・。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる