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思い出の味

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弟:『姉さん。前見て歩かないと危ないよ』

弟:『ほら、食べながら歩かなくても・・・』

弟:『もちろん。ホットドックは大好きだよ』

弟:『うん。解っているよ。美味しいよね』

 マスタードが苦手なにの、そんなに付けたら・・・。

 皆が姉さんを見ている。
 僕の自慢の姉さんだ。でも、誰にもやらない!

 もう僕には姉さんしかない。他には何もいらない。

弟:『ほら、よそ見しながら、話しかけたくてもいいから、食べながらでもいいから、前向いて歩いてよ。危ないよ』

 姉さんはいつもそうだ。
 僕のことを弟だと言って世話を焼く。もう僕は、大丈夫だよ。姉さん。
 僕の大切な大切な人。

---

姉:「おばちゃん。ホットドック2つ頂戴」
「今日も2つ?」
姉:「うん。ユウと食べるからね!」

 うん。美味しい!

姉:「おばちゃんのホットドックは、ユウが大好きだからね」

 一つはユウが食べる。

姉:「そうだ、今日はパパとママにもなにか買って行こう!」

姉:「ね。ユウ。それがいいよね?」

 弟のくせに、私のことを、危ないとか言って世話を焼いてくる。
 私は大丈夫だよ。ユウ。ほら、ホットドックもしっかり食べられるようになったよ。マスタードも平気だよ。

 ママの連れ子だと教えられた。でも、私の弟。世界で一番大切な大切な大切な人。

---

「今日も、あの子」
「そうね」

 店番をしている女性たちの間で、女の子は有名人だ。
 毎日決まった時間に、同じホットドックを2つ買っていく。
 それこそ、雨が振っていても、雪が振っていても・・・。

 以前は、同い年くらいの男の子と買いに来たり、両親と思われる夫婦と一緒に買いに来たりしていた。
 しばらく買いに来ないなと思っていたら、何時の頃からか女の子1人で買いに来ている。

 そして、ホットドックを買う時に別々に袋に入れて欲しいとお願いしてきた。
 一つは、弟に渡すのだと言っていた。

 しかし、女の子は一つを歩きながら食べて、時々後ろを振り返って、そこに男の子が存在するかのように話しかけている。一つのホットドックを食べ終わると、すごく悲しそうな顔をして、近くの教会まで歩いて、残っているホットドックと共に祈りを捧げている。

 毎日のように繰り返される行為。
 ホットドック以外に、果物を捧げる事もある。

 教会から出てくる時には、晴れやかな顔に戻っている。
 そして、女の子はいつも後ろを歩いていた、男の子に話しかけながら、父親と母親が待っていた家に帰っていく。

--

 ねぇユウ。
 一年が経っちゃったよ。私、ユウより1歳お姉さんだよ!

 ねぇパパ。
 なんで、ユウだけ連れて行ったの?

 ねぇママ。
 なんで、私だけ生きているの?

 ねぇねぇねぇ
 私、笑えているよ。
 ユウが一緒だからね。
 ユウ。またホットドックを食べようね。
 ユウ。雪の中で食べるホットドックは美味しいよね。
 ユウ。私のバッグのなか、ユウで一杯だよ!
 ユウが失敗したホットドックの袋。私、ゴミ箱に入れられたよ!
 ユウが買ってくれた手袋・・・。汚しちゃったから怒ったの?
 ユウ。私のマフラー上げるから、寒くないから、早く戻ってきてよ・・・。私1人じゃ寂しいよ。

fin.
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