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第二十三章 旅行
第二百三十二話
しおりを挟む眷属達との宴会は、朝まで続いた。
朝、風呂に入っていると、シロが一緒に入りたいと言ってきたので、一緒に入る事にした。
そして、どこで覚えたのか口と手を使った方法で慰めてくれた。あの満足そうな顔を見るともっと早くやらせても良かったのかと思ったのだが、シロが自主的にやりたいといい出すまで待ったので、それはそれで良かったのかと思う。
風呂では、お互いを洗いあった。今日から、シロはしばらくフラビアとリカルダとローレンツの所に行く事になっている。
戻ってくるのは結婚式の当日の予定になっている。
間に合いそうにない場合には、エリンに竜形態で飛んでもらうつもりなので時間的には余裕がある。
風呂を出て、着替えをすませて周りを見ると殆どの眷属達はホームに戻っている。オリヴィエとリーリアは、ログハウスに戻っていた。
宴会をした場所も綺麗に片付けられていた。
オリヴィエが手配してくれたようで、一人のメイドがペンションに来ていた。
「旦那様。本日より、こちらの専属になりました。よろしくお願い致します」
「早いな。いろいろ大変だと思うけど頼む。人手が必要になったら教えてくれ」
「はい。大丈夫です。奥様のお手伝いが優先だとお聞きしましたが間違いないでしょうか?」
「そうだな。ここは、俺とシロしか居ない。使う頻度はそれほど多くはないと思うけど、維持管理に必要な物は言ってくれ」
「はい。それでしたら、お屋敷の隣に小さな小屋を頂けませんでしょうか?」
「ん?あぁそうだよな。そのほうがいいよな。わかった手配しておく」
「それから、小屋に護衛や買い出しの為に、執事を一人置くことをお許しください」
「わかった。相性がいい者を連れてきてくれ、それから護衛に必要な人員も見繕ってくれ」
「かしこまりました。あと、奥様から私への連絡方法を作成いただければと思います」
「なにか考えておく」
「ありがとうございます」
ペンションを出ようとしたら、正面に馬車が停まっていた。
フラビアとリカルダが呼んだ物のようだ。
「旦那様。お久しぶりです」
「おっギュアンとフリーゼか?そうか、シロを送ってくれるのはお前たちか?」
「はい。旦那様からお借りした馬車を使ってしまい申し訳ありません」
「ん?あぁそうか、わかった。今日から、その馬車はお前たちの物だ。帰ってきたら、行政区に顔を出せ、ルートに言っておく・・・。俺が忘れるかもしれないな。ちょっとまっていろ」
二人が後ろで”なに”か言っているが今は無視させてもらおう。
ペンションに入ってからホームに戻った。ホームの中に確か・・・。ルートに言って作ってもらった試作品が有ったはずだ。
俺の印影を入れた紙を試作していた。行政区やルートなら見れば解るはずだし、いちいち確認に来ないはずだ。紙に、馬車と馬2頭をギュアンとフリーゼに譲り渡す旨を書いた。封筒に入れて封をする。
表に出ると準備が終わったシロたちが馬車に乗り込もうとしていた。
「ちょうどよかった。フラビアかリカルダに頼みがある」
「なんでしょうか?」
「ギュアンとフリーゼに、馬車を譲り渡したい。手続きを頼めるか?」
「かしこまりました」
「旦那様!私達は、今のままで十分です。旦那様には、湖の家だけではなく、漁に出られる船まで頂いています。それに馬車まで頂いてしまうと」
「そういってもな。俺は使わないし、馬もギュアンとフリーゼが世話しているのだろう?」
「はい。旦那様からお預かりしている大事な物ですので・・・」
「だったらこれからも大事にしてくれる人の所に行ったほうがいいだろう?馬車の修理が必要になったら、自分たちでやってくれよな?」
「え?あっ!もちろんです」
「うん。だから、馬車をギュアンとフリーゼに任せたい。これからも、シロやフラビアやリカルダを運んでもらう事になると思うからよろしく頼むな」
「はい!」「かしこまりました」
二人を納得させた所で、近づいてきたフラビアに譲渡依頼書を渡す。
「旦那様」
「ん?」
「馬車を少し飾ってよろしいですか?」
「なんでだ?」
「シロ様を旦那様の所にお連れする方法が決まっていませんでした」
「そう言えば、歩いてくるとか言っていたな」
「はい。でも、馬車があるのですし、信頼できる御者が居ますのに、歩くのは襲撃の事もありますので避けたいと思います」
「わかった。フラビアに任せる。ギュアンとフリーゼの安全も考慮しろよ」
「はい。ありがとうございます」
目が点になっている。ギュアンとフリーゼに簡単に説明する。
「二人には、結婚式の当日に、馬車を使って、俺の所にシロを届ける役目を頼みたい。もちろん、二人だけじゃなくてフラビアとリカルダも一緒に居る事になる」
「え?」
「頼めるか?」
「僕たちでいいのですか?」
ギュアンが驚きすぎて言葉遣いが元に戻ってしまっている。
頑張って、私と言っていたのに、僕と言ってしまっている。馬車をもらう事よりも、結婚式の最初にシロを運ぶという事に驚いているのか?
「あぁシロもいいよな?」
「はい。僕も、ギュアンとフリーゼなら安心できますし嬉しいです。お願いできますか?」
「はい!」「是非。僕たちに、シロ様をお届けする役目をお与えください」
細かい事は、ルートとフラビアかリカルダが話をするだろう。
ルートもワイバーンでの移動にも慣れたようだし、もうチアル大陸の全部を任せても大丈夫じゃないかな?
もともと、ルートの目標はそれだったのだから・・・。
シロたちを載せた馬車が森に入っていく、道は整備していないがかろうじて馬車が通る事ができる状態にはなっている。執事たちがうまく作ってくれたようだ。真っ直ぐではない道で、建物がある事を知らない者が立ち入らないようにしてくれている。最終的には、ダンジョンになっているので、入る事ができないのだが、何があるのかわからない状態になっている方がいいだろうという判断だ。
さて、やりたくは無いし面倒な事だけど、俺に課せられた義務だろう。
元老院に移動する事にする。まずは、ログハウスでオリヴィエと合流する。今日の護衛は、カイとウミだ。ライも一緒に来てくれるようだ。
元老院に入ると、ルートが出迎えてくれた。
「それで?」
「まだ喚いております」
「狙いは?」
「カズト・ツクモの暗殺。できなければシロ様の誘拐。あと・・・」
「なんだ?言えよ」
「はい・・・。私、ルートガーの説得。無理ならばクリスティーネの誘拐してからの説得です」
「ハハハ。死刑。いいよな?」
「はい。問題ありませんが、簡単に殺してしまっていいのですか?」
「そうだな。結婚式の前に血を流すのは良くないな」
「そう思います」
元老院の中を歩きながら処遇を決める。
俺を狙っただけなら黒幕を吐かせて殺してしまえばよかったのだが、シロを狙った事は許せない。簡単に死ねると思うなよ。見せしめは必要ないが、それでも愚か者共に情報が回るようにはしておいたほうがいいだろう。
執務室に入ると、ミュルダ老とメリエーラ老が待っていた。
今回は、メリエーラ老が持ってきた情報から始まっていた。エルフ大陸経由での情報だった。
結婚式に合わせて襲撃計画があると知らせてきたのだ。いろいろ調べては居たようだがホームの事までは知らなかったようで、検閲が緩いと思ってロックハンドから大陸に上陸しようとした。
確かに、あそこは手薄になっている感じがする。各大陸や街からの諜報員もチアル大陸に来ているのは解っている。
ダンジョンの制御を行っている場所や元老院と俺のプライベート空間に入らない限りは基本無視している。
しかし、今回の情報を元に調べると、俺たちが許していた一線を越えていた。
軽く裏を調べると、サラトガの残党とデ・ゼーウで粛清された者に連なる者がチアル大陸・・・。カズト・ツクモ憎しで繋がったのだ。
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