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第十八章 神殿
第百八十八話
しおりを挟む「マスター。お待たせいたしました」
「ご主人様。お待たせして申し訳ありません」
「旦那様。奥様。時間が掛かってしまって申し訳ありません」
3人が謝罪する。
ステファナとレイニーも恐縮した表情で頭を下げている。
「オリヴィエ、リーリア、エーファ、ステファナ、レイニー。謝罪の必要はない。良かった無事で・・・」
「はい。マスター。マスターが残してくださった岩壁で状況が認識できました」
「そうか、役に立ったのだな」
「はい。一部壊されている岩壁を最初に修復いたしました。それで、各個撃破ができましたので、問題なく倒すことができました。それに、ライ兄さまがいらっしゃいます」
「ライ。ありがとう!」
『カズ兄!』
ライを抱き寄せて、撫でてやる。
「オリヴィエ。損耗は?」
「殆どありません。スキルで対応しました」
「そうか、わかった。ペネム!ティリノ!」
『主様。同じです』
『ダメです』
そうか、支配領域を作る事はできないようだ。
スロープで魔物が出てきた事はなかったが、6階層でいきなり状況が変わったことを考えると、何があるかわからない。支配領域が作られれば安心して休む事ができると思ったのが、ダメだったようだ。
「わかった」
全員の無事が確認できたので、7階層の扉の前まで移動する事にした。
1/4ほど移動した所で、扉が通路につけられている。内側にではなく、外側に向けてだ。
「マスター?」
「なにか用意してくれたようだ。開けてみるか」
「はい」
オリヴィエが扉に近づくと、自動的に扉が開いた。
中には何もなさそうだ。しかし、魔法陣が出る事も考えられる。
「旦那様」
「ん?」
ステファナとレイニーが声をかけてきた。
「どうした?」
「私たちが入ってよろしいですか?」
2人では心配だよな。
「そうだな。エリン。アズリ。ステファナとレイニーと一緒に入ってくれるか?」
「うん」「わかった」
「ステファナ、レイニー。エリンとアズリと一緒に入ってくれ」
4人が部屋に入っていく。
5分くらい経ってから、ステファナが部屋から出てきた。
「旦那様。何の問題もありません。ただ、扉の上にいつもの数字が表示される物があります」
「そうか・・・。オリヴィエ。どう思う?」
「マスター。この部屋で休めという事ではないでしょうか?」
「そう思うか?」
皆を見ても、同じ考えのようだ。
深く考えすぎたようだな。
「せっかくの申し出だ。有効に使わせてもらおう」
部屋に入ったが、ステファナがいう通りなんの問題もなさそうだ。
扉を閉めると、扉の上に数字が表示された。
480=8時間くらいだろうか?
休憩には丁度いい時間だ。
ペネムとティリノが申告してきたのだが、ここでも支配領域を作る事はできないようだ。
俺とオリヴィエとシロが、皆の武装のメンテナンスをしている時に、リーリアとステファナが食事の支度をする。レイニーとエーファが浴場の準備を行う。役割分担ができている。
今回は、ステファナとレイニーの武器と防具の損耗が少しある状態だ。
スキル中心で戦ったと言っていたが、一度も攻撃を受けないで突破するのは難しいのだろう。この程度の傷で乗り切ってくれたことを感謝しよう。
メンテナンスの途中だけど、食事の準備ができたと呼ばれた。
3日程度滞在予定だった7階層を一日で通過したので、食事も少し豪華にしたようだ。
久しぶりに野菜が中心の料理だ。
ステファナが嬉しそうにしている。レイニーを見ると、そんなステファナを見て嬉しそうにしている。もしかしたら、レイニーがリーリアに言ってお願いしたのかもしれない。
食事が終わってから、各々が自由に過ごす事にした。
眷属達は、エーファが風呂に入れるようだ。ゆったりと温まってくるようだ。
俺とオリヴィエとシロは、メンテナンスのつづきを行う。
つづきと言っても、おおよその所は終了していて、あとは清掃を行うだけになっている。
「マスター。あとは、リーリアとメンテナンスしておきます。奥様とお休みください」
シロを見ると、まだ眠そうではないが、早く休めるのなら休ませてやるのがいいだろう。
「いいのか?」
「はい。問題ありません」
「わかった。シロ。風呂に入って寝よう」
カウンタを見ると、あと6時間程度は残っている。
しっかりとした睡眠は無理でも、疲れを取るくらいの仮眠+αはできるだろう。
お互いの身体を洗ってから、浴槽に身体を沈めた。
6階層で得たスキルカードは、それほど多くはなかった。
何度も戦えば、ある程度の枚数は入手できたかもしれないが、リスクが大きい。欲しかったスキルカードもいくつかあるが、無理をしてまで欲しいかと言われると、眷属やシロやステファナやレイニーのほうが大事だ。
まったくないわけではないので、上手く使っていく事にしよう。
次の7階層も同じようになっている事が考えられる。
中に入って戦う組み合わせを考えないとダメかもしれない。
俺とシロとステファナとカイとウミとエリン
オリヴィエとリーリアとレイニーとライとアズリとエーファ
レッチェとティアとティタとレッシュとエルマンとエステルは、呼び寄せる。
「カズトさん?」
「シロ・・・。次の7階層だけどな」
シロに、考えていた組み合わせを話した。
「カズトさん。僕とエーファを交換してもいいと思うのですが?」
「うーん。ダメだな。俺が心配という事も有るけど、俺とシロは先に抜けないと、呼び寄せる事ができないからな」
「あっ!」
「それに、オリヴィエやリーリアはもちろんだけど、ステファナやレイニーやエーファも納得しないと思うぞ?」
「・・・。はい」
それから、7階層の話をしたが、結局わからないので、ひとまず俺が考えた6人で入ってみる事になった。
一緒に風呂に入るのに慣れてきて、全裸に近い状態で寝る事にも慣れてきた。
今日も、全裸に近い状態のシロに抱きつかれながら目を閉じた。
---
今、7階層の扉の前に来ている。
目が覚めてから、軽めの食事を取って、スロープを上がると、大体同じ程度の位置に下層と同じように扉が存在していた。
食事の時に、皆にも相談したのだが、俺の意見が採用された。
最初に扉に入るのは、俺とシロとカイとウミとエリンとステファナだ。
さて、どうなるかと思ったが、6階層と同じ状況になるようだ。
ステファナが部屋の中に入ったら、扉が自動的に閉まって、魔法陣が出現した。
大きさも6階層と同じくらいだ。
しかし、出現した魔物がちがう。
中央に出現した魔物は、馬の身体に人間らしき上半身が乗っている。いわゆるケンタウロスの様だ。
中央の者が階層主なのだろう。身体が大きく盾と槍を持っている。それ以外は、二回りくらい身体が小さく武器もいろいろだ。
魔法陣はそれだけではなく、6階層と同じように、オークとゴブリンとコボルトが出現する。
慌てることなく、皆に指示を飛ばす。
戦い方は同じだ。
岩壁でケンタウロス以外を隔離する。
それから、ケンタウロスから倒していく事にする。
「カイ、ウミ。ステファナを頼む」
『はい』『うん』
「旦那様。私は?」
「ステファナ。はぐれた魔物を各個撃破。スキル中心で攻撃」
「はい!」
「シロ。俺と一緒に階層主を叩く。エリンも一緒だ」
「はい!」「うん」
「行くぞ!」
魔法陣が消えて、魔物が動き出す。
ケンタウロスは機動力を活かして突っ込んでくるかと思ったが、距離を保ったまま、弓で牽制してくる。
「ステファナ。弓を持った奴を頼む」
「はい!」
ステファナが、弓を持ったケンタウロスを攻撃する。
攻撃しやすい位置に移動した事で、カイとウミが攻撃しやすくなった。
30体近くいたケンタウロスがみるみる数を減らしていく。
階層主に到達した時には、数えるほどしか残っていない。
エリンの攻撃が、階層主の盾を飛ばす。これで、攻撃がしやすくなる。シロが槍を牽制している間に、馬の足に俺とエリンが攻撃を集中する。
足に攻撃が通った。
前足が折れるように曲がる。これで勝負あり。あとは、届くようになった、身体に攻撃を当てていくだけだ。
10分後に、ケンタウロスは1体も残っていない。
「ステファナ。大丈夫か?」
「問題ありません」
「シロ!」
「大丈夫です」
カイとウミとエリンは聞くだけ野暮という感じだ。
「ステファナ。オークをやるぞ、岩壁の一部を消してくれ」
「かしこまりました」
丁度一体だけが出られるサイズで岩壁を削る。
オークの通常種を倒していく。階層主は、ウミが倒した。
ゴブリンとコボルトも同じ方法で倒していく。
最後のコボルトの上位種が倒れて、神殿に吸収されたのを確認した。
6階層と同じように、上層階に向かう扉が開かれた。
やはり、同じように戦闘が終了したら、念話が通じるようになった。
『オリヴィエ。終わったぞ。岩壁を残しておくから使ってくれ、ケンタウロスとオークとゴブリンとコボルトが出る。進化体は居なかった』
『ありがとうございます。呼子は?』
『今から試す』
「シロ!レッチェを呼び出してくれ。あっ扉から抜けてから試せよ」
「はい!」
シロの下にレッチェが呼び出されたのが確認できた。
『大丈夫なようだ』
『わかりました』
『俺も少ししたらティアとティタとレッシュとエルマンとエステルを呼び出す』
『はい。お願いします。呼び出しが終了したら、7階層の攻略を開始します』
『待っている。全員、無事に会おう』
『はい!』
俺が上層階につながる扉を抜けたら、7階層の扉が閉じた。眷属達を呼び寄せた。
それから、1時間くらいが経過してから、閉じられていた扉が開いた。
全員の姿が見える。
今回も無事に抜けられたようだ。
「マスター。無事に抜けられました」
「オリヴィエ。お疲れ様」
「はい!」
「8階層につながる回廊の途中に同じように小部屋がある」
「そうなのですか?」
「あぁステファナとエリンが確認したのだが、下の階層にあった物と同じ仕組みのようだ」
「わかりました。そこで休むのですね?」
「せっかく用意されているからな」
俺とシロとオリヴィエとリーリアとレイニーとアズリとエーファとライで、エリンとステファナと呼び寄せた眷属たちが待っている小部屋に移動した。俺たちが部屋に入ったことを確認して扉を閉める。
魔法陣が現れる事はなく、扉の上の数字が1200と表示された。
今度は、20時間の様だ。仮眠ではなく、しっかりと休めそうだな。
6階層の時と同じように、俺とシロとオリヴィエで、武装のメンテナンスを行って、食事と浴場の準備を頼んだ。
食事をしてから、武装のメンテナンスを先に行ってから、風呂に入って、ゆっくりと休む事にした。
時間も十分あるので、カイとウミとライも、しっかりと休むようだ。
万が一の為に、見張りを順番で眷属達が行う事になった。
戦闘には参加していなかったので、見張りくらいはしたいという事だ。
最初を、ティアとティタが担当して、次はレッチェとレッシュ、次はエルマンとエステルだ。15時間残されていたので、4時間ごとで交代する事にした。最後の3時間は、8階層での戦いの準備に当てる事にしたのだ。
---
「マスター。時間です」
「・・・お。そうか、ありがとう」
テントの外から、オリヴィエに声をかけられて起きた。
横を見ると、幸せそうな顔でシロが寝ている。
シロの綺麗な裸を見ていると欲しくなるので、布団をかけてから、鼻をつまむ。
「ん。ん。・・・」
「おはよう。シロ。起きたか?」
「ん。カズトさん。ひどいです」
「ん?」
「もっと優しく起こしてください」
「優しく?十分優しいと思うぞ?」
「違います。鼻をつまむのは優しいとはいいません!」
「それじゃどんな起こされ方がいい?次の時に考えるぞ?」
「えぇ・・・。キスで起こしてください」
「え?」
「聞こえていますよね?」
「シロ。もう一度言って」
「・・・うぅぅぅぅ。カズトさん。今度は、キスで起こしてください」
言い直した。
恥ずかしくて、言えないかと思ったけど、しっかり言い直した。
「わかった。キスですね。奥様」
「うん!優しいキスで起きたいです」
「わかった。こんな感じでいいよな?」
シロにかけていた布団を剥ぎ取って、全裸に近いシロを抱き寄せて、唇をあわせるキスをする。
「うん!」
「よし、起きよう。食事をしてから、8階層に挑むぞ!」
「はい!」
切り替えが早いのも、シロのいいところだ。
甘い雰囲気を一気に切り替える。
下着を付けて、武装を整えていく。
俺も着替えを済ませてから、装備を整える。
テントを出ると、ステファナとレイニーが食事の支度をしていた。
オリヴィエとリーリアが、テントの側に控えていた。
片付けをしてから、テントを収納するのだろう。
「マスター。浴場はどういたしましょうか?」
「片付けてくれ」
「かしこまりました」
テントは、リーリアが片付けるようだ。俺もシロも気にしないのだが、俺とシロが使っているテントは、リーリアやステファナかレイニーが設置して片付ける事が多い。シロの下着が有ったりするのを気にしているようだ。
浴場も、エーファが片付けを始めている。眷属用の浴場を先に片付けるようだ。
食事は、軽くする事にした。
食事が終わって、ギリギリの時間までトイレは出しておいてから片付ける。
この休憩場所では秒でのカウントダウンは無い。
表示が0になった所で、扉が開くだけだ。
扉を順番に抜けて、通路に出る。
スロープを上がっていって、8階層の扉の前にたどり着いた。
8階層でも同じ事が考えられるので、7階層と同じ順番で入る事にした。
ステファナが8階層の部屋に入っても、扉は閉まらないし、魔法陣も出ない。
今度は、全員で戦えるようだ。エルマンとエステルが慌てて、部屋の中心点に降り立った。
その後、ティアとティタが入ってきて、レッチェとレッシュが続く。
まだ扉が閉まる気配も無ければ、魔法陣も出ない。
残っていた、メンバーが部屋に入って、扉を閉める。
魔法陣が現れない。
全員が武装を確認して、スキルカードの最終確認をする。
複数の魔法陣の出現の可能性を考慮して、岩壁を作る指示を出す。必要ないかと思ったが、2階層でレベル2岩のスキルカードを大量に取得しておいてよかった。足りなくなっていたかもしれない。
「エルマン、エステル。戻ってこい!」
飛び立った瞬間に魔法陣が現れる。
大きめの魔法陣が中央に一つ。左右に一つずつ。その周りを取り囲むかのように、中型の魔法陣が3つ表示される。
階層主として、6種類の魔物が出てくるようだ。
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