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第十一章 飛躍
第百二十話
しおりを挟む俺は、影ツクモで一緒に行くことにした。
ルートガーが先導している。自由区にある”そこそこ”高級な宿が目的地のようだ。
途中でカイとウミとライも合流している。
思いっきり怒られた。主に、俺が”暗殺者”が居る事を認識しながら、カイたちを遠ざけた事についてだ。ルートガーに関しては、俺が許している事から、今回は問題ないと判断しているようだ。次は、無条件で殺すと言っている。
「ツクモ様が、カイ様たちに怒られる所なんて貴重な場面が見れて気分が晴れましたよ」
「ルート!いいか、今吐いた言葉を忘れるなよ」
あとでしっかりと働いてもらおう。
「ツクモ様」
「あそこなのだな?」
「はい」
「街には誰も連れてきていないのだろう?」
「いえ、俺が認識している9名を奴隷として連れてきています」
「そうか、それはこっちでなんとかする」
「・・・はい」
ルートガーが宿屋に入っていく、俺は宿屋の客として部屋を別に取る事にした。
今日で”誕生祭”が終わりなので、部屋は空いていた。奴らが使っている部屋の隣を借りる。
『あるじ!』
『配置はできたのか?』
『うん。いつでも大丈夫』
『部屋の中に、子供は居ないよな?』
『うん』
そうだろうな。
高級宿屋に子供を一緒に泊めているとは思えない。
人海戦術を・・・・。
『カズト様!』
『シロか?』
『はい。カズト様。僕たちも手伝います』
『ん?』
『今、僕たちも自由区に来ています。監視らしき者が居る建物を探せばいいのですよね?』
『待て、シロ。誰から聞いた!』
『影武者を使っているのですよね。いろいろ経由して、クリス嬢を問い詰めました』
『そうか・・・シロ。今はどのくらいの人数だ?』
『フラビアとリカルダも合流して、32名です』
『・・・全員か?』
『シロ。お前は、影武者に入って俺の所に来い。護衛だ』
『はい!』
『フラビアとリカルダで、自由区と外周部を探索。子供が捕らえられていそうな所を虱潰しにしろ』
『はい!』『はい!』
『見つけたら、俺かシロに連絡、現場に居た奴らは、殲滅しろ。捕らえる必要はない』
『承りました』『了解です。あっツクモ様』
『どうした?リカルダ?』
『イサーク殿たちが協力したいという事です』
冒険者の集団が”誕生祭”の治安維持をしていたのはよく知られている話だ。
『わかった。参加を許可する。イサークに伝えろ』
『っは』
『ライ。眷属達を使って、自由区と商業区・・・もしかしたら、外周部に捕らえられている子供が居るかも知れない。探してくれ』
『わかった』
『全力出していいと伝えてくれ』
躊躇しない。
子供を捕らえて、16歳のルートガーに”俺を殺せ”と命令するような奴らに慈悲をかける必要はない。
パレスケープだけの考えなのか?どのタイミングで、悪魔が囁いたのか?
ルートガーが使者の中に居るのを見て思いついたのか・・・。なんにせよ自分たちの選択を後悔させてやる。
『ライ。中の奴らを拘束できるように準備してくれ』
『もうできているよ』
『ルート。俺だわかるか?天才で素敵で無敵のツクモだ』
『・・・・はぁこちらルートガーです。なんですか、その緊張感がなくなる自己紹介は?』
『ん?あぁ子供はそこに居ない。ライが確認した』
『・・・え?あっありがとうございます』
『それからな、お前の合図で拘束できるように、ライが手配した。全方位に念話で”拘束”と言えば、実行される。ちなみに、部屋の奴らを宿屋に確認したが、最初から一緒に居る連中だと解っている。もし違う奴がいたらルートが謝れよ』
『はい。はい。わかりました・・・本当に、ありがとうございます』
『そうだ、シロたちと冒険者が子供を探している』
『・・・本当に、貴方は・・・本当に、ありがとうございます。クリスティーネ様の事以外なら、なんでも言ってください。従います』
『そうか・・・残念なだ。クリスにその気持があれば、お前との婚姻を認めようと思ったのだけど、クリスの事以外というなら無理だな。他の誰かを探さないとな』
『・・・ツクモ様・・・』
『わかった。わかった、今度ゆっくり話そう』
『はい。クリス様は・・・』
『解っているよ。クリスを除いて、ミュルダ老と話をしよう』
『それでは行ってきます』
『あぁわかった。俺たちが後ろに居ることを忘れるなよ!』
『はい!』
ドアをノックして中に入る。
”これは、これは、エルミニオ様”
そう言えば、ルートガーの前の名前は、エルミニオだったな。そんなときの名前から知っているのだな?付き合いが有ったのか?
”これでいいのだろう?早く解放しろ!”
スキルカードを投げたのだろう。
”おや、おや。面白い事をいいますね”
”なにぃ”
一度程度の脅迫じゃ割に合わないだろうな。
この声、代官だな。可哀想に・・・。
『カズト様。子供9名を確保しました』
『シロ・・・遅いと思ったら・・・すぐに来い。子供も連れてこい』
『はい!』
『そうだ、シロ!褒めていないからな!洞窟で説教だからな!』
『え?あっはい』
横からの声がきこえてくる。
やはり、サラトガから逃げ出した子供を人質にして、ルートガーを動かしているのだろう。
”エルミニオ様。これからもよろしくお願いしますね。貴方には、ツクモとかいう餓鬼の代わりに、ミュルダやサラトガをまとめる領主になってもらわないとならないですからね”
”・・・・”
”あぁそうでしたね。貴方は、そのツクモとかいう奴を殺したのですね。貴方ごときで殺せるのでしたら、私達が雇った者で十分だったかも知れないですね”
”・・・・”
”そう言えば、あのガキの後ろに居た女はいい身体をしていたな。儂がもらうことにしよう”
シロの事だろう。
簡単に死ねなくなってしまったな。
『ルート。今のセリフの奴は殺すな。俺の前につれてきてくれ』
『はい。首謀者なので、俺にもやらせてください』
『そうだな。回復が欲しいそうだから、回復を埋め込んで、何度でも剣の実験やスキルの実験に使ってもいいな』
『それは楽しそうですね』
『あぁそうだ。もうすぐ、シロが、9人の子供を連れて、こっちに来る』
『本当ですか!』
『あぁちょっと前に・・・面倒だなシロからそっちに繋げさせる』
『はい!』
『シロ。聞いていたな。ルートに繋げて指示に従ってくれ』
『・・・わかりました・・・だから・・・』
『わかった。上手くできたら、説教の時間を考えてやる』
『はい!』
本当に返事はいつも良いのだよな。
もうすぐ到着するだろう。
ルートガーもよく耐えているよな。俺ならとっくに切れている。
それとも、シロと念話で話していて、奴らの言葉を聞いていないのか?
どうやら、ルートガーの言っていた通り、仲間が多数いるという事らしい。
アトフィア教関連かと思ったけど、どうやら単純に、既得権益を奪うペネム街が許せないようだ。あとで、ミュルダ老やシュナイダー老とも相談だな。もうこれ以上、手を広げてもしょうがないとは思うけど、今後のためにもしっかり考えないとダメだろうからな。
『ルート。俺は、隣で待機しているけど、終わったら来てくれ』
『かしこまりました』
さて、俺は戻るとするか・・・少しだけ、ルートガーにいたずらをしておくか
シロと下ですれ違った。
丁度良かった。終わったら、ログハウスに来るように直接伝える事ができた。
次は、クリスと従者たちを宿屋に呼びつけておいた。
心配になってクリスたちも独自で動いていたらしい。自由区に来ていたのですぐに呼び寄せる事ができた。
フラビアとリカルダからも子供を監禁していたグループや女性を連れ去ろうとしていた連中を外周部で見つけたと連絡が入った。
まだまだゴミ掃除が必要だな。誰にやらせるか・・・だけどな・・・ルートガーにやらせてもいいけど、奴には、クリスの補佐として、ダンジョンの管理をさせたほうが効率的だよな。最初のゴミ掃除は、ルートガーにやらせるとして、その後の掃除担当者を探さないとな。
イサークたち冒険者は、今回限りにしておいたほうが良さそうだからな。
後ろで、何か大きな戦闘音が聞こえたけど、気のせいだろうな。
シロが切れたのか・・・それとも、眷属が攻撃を開始したのかだろうな。
先に、ミュルダ老を呼び出して事後処理を任せるほうがいいだろうな。
ルートガーへの説教は、クリスからの説教が終わってからでいいだろう。
さて・・・と・・・。
確認しておく必要があるな
『ルートガー。終わったか?』
『はい。ありがとうございます。あとは、少しここで尋問したいと思っています』
『それはいいけど、首脳部は全員居たか?』
『いえ。代官と息子、パレスケープの商隊の長、大陸からの使者とその護衛の7名です。あと6名居ます』
『カズト様。シロです。大陸からの護衛の二人は、子どもたちを監禁していました。何やら”大陸の人間だ”とか、”獣人族だ”とか喚いていたので、うるさかったので縛ってあります』
『ツクモ様。こちらも外周部に居た者が、パレスケープ商隊の護衛で来たとか言っていました。2名です』
『ツクモ様。こちらも同じくです』
『わかった。ルートガー。これで13名だが、顔を見ないとわからないよな』
『はい。でも、大丈夫です。特徴を・・・うぉ!』
あぁ眷属が遠見を使ったのだろう。
『今、認識しました。全員です。あとは・・・』
『そうだな。パレスケープには、朝日が登る前に、エリンたちで行くぞ』
『はい!』『っは!』
『フラビアとリカルダは留守番な。それほど戦力は必要ないだろう』
『かしこまりました』『かしこまりました』
『カイとウミとライとエリンとシロとルートガーで行く』
適当な宿屋に入ってエントを呼び出して影武者を頼む。
そのまま、行政区で、ミュルダ老を呼び出す。執務室で待つこと5分。
ドアがノックされて、ミュルダ老が来たようだ。
「ツクモ様。申し訳ありません」
執務室に入ってくるなり、謝罪から始まった。
「ミュルダ老。俺は別に怒っていないし、これからの事を考えたい。そのためにも、老の情報が・・・話が聞きたい」
「はっはい」
ミュルダ老が言うには、パレスケープは自分達から恭順を申し出てきたという事だ。
クリスからの報告書通りだ。
違うのは、ルートガーが”使者”だと言っていた人間をミュルダ老が認識していなかった事だ。
大陸からの使者と言っていたが、パレスケープだと、エルフ大陸やアトフィア教の総本山がある大陸と違って、巨大な大陸でその一部しか開発ができていないという話だよな。
どうやら、”絵を描いた”者が別にいそうだな。
パレスケープの代官と商隊は欲をかいてしまったのだろう。それとも、保護したサラトガの子どもたちを有効利用したかったのだろうか?
護衛の質も悪そうだな。
「わかった。それでどうしたらいいと思う?」
「ひとまず、パルスケープは、リヒャルト殿に任せるのが良いかと思います」
「どういう事だ?」
ミュルダ老の考えでは、パレスキャッスルは元の領主を差し出してきた。ユーバシャール区のバカ兄弟に与していた事が解っている。上層部を一新した。ユーバシャール区の代官からの推薦があった人物を代官にしている。
もちろん、パレスケープにも同じ様に推薦された代官を置くつもりだったのだが、彼らから恭順の申し出があり、こちらか出した条件を全部飲み込んだので、問題なしと判断したという事だ。代官がこちらに来ていることもあり、暫くはリヒャルトが代官の代理という立場で治めて、早急にユーバシャール区から元々推薦されるはずであった代官を、行政区に呼び寄せて、パレスケープの代官にするのが良いという話だ。
リヒャルトには、ミュルダ老が打診してくれる事になった。
打診といいながら”命令”になってしまうのだろう。
すぐにリヒャルトが呼ばれた。
「ミュルダ殿。あっツクモ様」
「あぁ話は聞いたか?」
「えぇ大筋は?」
「やってくれるよな?」
「わかりました」
「報酬は、バトルホースとワイバーンでいいか?」
「え?あ!!!もちろんです」
「わかった、繁殖次第だが、10頭ずつお前に渡す。後は好きに使ってくれ」
「ありがとうございます」
これで、代官代理は確保できた。代官は、後日になるのだろうけど、混乱がなければいい。
そろそろやってくるかな?
「ツクモ様。ルートガー殿が面会の申し込みです」
「わかった。執務室では狭いだろう。ダンジョンに行くか?」
「いえ、テラスで構わないという事です」
「わかった」
確かにダンジョン内よりはいいだろうな
さて、どんな話で俺を楽しませてくれるのだろうかな?
自分で立ち向かってこない愚か者たちが・・・そして、子供を人質に取るような行為を行って恥じ入ることがない者たち、弱き者から搾取するのが当たり前だとでも思っているのだろう。自分たちが、その弱き者の立場になったときに、どういう反応を示してくれるのか楽しみだな。
テラスに着くなり、シロが俺の後ろに立つ。
カイとウミとライとエリンも俺の近くに並ぶ。最大戦力だけど、そう見えないのだろうな。ルートガーは苦笑しているが、ほっぺたに紅葉を作っている所から、クリスに殴られたのだろう。黙っていた報いはしっかり受けたようだな。
「ツクモ様」
「ルートガー。ご苦労。子供は救い出せたか?」
「はい・・・26名中21名の生存を確認しました。その他に捕らえられていた者11名の保護ができました。ありがとうございます」
「そうか・・・5名は」
ルートガーが首を横にふる
「そうか・・・そこに転がっているゴミ掃除の理由ができたな」
「・・・はい。しかし・・・」
「構わない。大陸の使者だろうと、俺の街で好き勝手やってくれた報いは受けてもらおう」
「・・・はい」
「ルート。それで、どのゴミが使者だ?それ以外は、オークかゴブリンの餌にする。それとも・・・スライムでは簡単に死んでしまうのだったな。魔蟲の餌にして、生きたまま身体の中から食べてもらうか?」
「ツクモ様。そう言えば、この冒険者は、シロ様と交尾がしたいと言っていました」
「そうか・・・どいつだ?」
ルートガーが指差す。使者の護衛の1人だろう。
冒険者たちは戦意喪失しているのだろう。首を横にふるだけだ。
「ほぉ面白い事を言ったのだな。交尾か・・・それならいい話がある。俺たちが飼っているゴブリンとオークの雌が交尾相手を探していたからな。好きなだけ相手してくればいい。手足は必要ないだろうから、手足を切り落としても問題ないだろう。ゴブリン共にも殺さないように命令しておけば、餌位もらえるだろうからな」
「ふざけるな!そんな事が許されるものか!」
「煩い」
収納から刀を取り出して、喚いた男の腕を切り落とす。
喚きながら切られた部分を抑えながら転がる。
止血のために、炎で患部を焼く。血の匂いと肉が焼ける匂いが辺りに漂う。不快な気分になるので、風で匂いを拡散させる。
「連れていけ」
「はっ」
部屋の隅に控えていたエントが冒険者の1人を連れて部屋から出ていく。
大陸の者だとか喚いている。
「だから?大陸?関係ない。だって、誰も戻らなければ、途中で死んだと思うだろう?」
急に代官が慌てだす。
やっと理解が追いついたのか?
「待て!儂の事は・・・」「お前は最後に聞いてやる。黙れ、臭い」
代官だった者の首に刀を突きつける。
「儂にこんな事して、デ・ゼーウ様が黙っていないぞ!今なら儂に謝罪して、その女とスキルカードをよこせば許してやる!」
「煩い黙れ」
代官だった者の耳を切り飛ばす。
「おい!そうだ、お前だ!その耳を拾って、そこの豚の口に入れろ!」
「・・・でき」
「できるよな?できなければ、お前も同じ様になるだけだ」
「はっはい」
素直なのは良い事だ。
さて続きをやるか。
「サラトガからの難民を捕らえて、隷属したのは誰の命令だ?」
誰も何も言わないか?
「そうか、それじゃ順番に聞いていくか?」
まずは、端に居る冒険者からだな
「知っているか?」
「し、しらな」「そうか、知らなければ、役に立たないな。死ぬか?」「まってくれ、本当に、しらな」
刀を足に突き刺す
「ぐぎゃぁ・・いてぇぇぇ。俺は、本当に命令されただけだ。雇われただけだ」
「雇った?雇ったのは誰だ?」
「し、しりませ」
「いい加減にしろよ?」
足に刺さった刀を奥に差し込む。
「ほっほんとうだ。リーダーがリーダーが受けてきた」
「リーダーは誰だ?」
「・・・」「誰だ?足一本なくなってもいいみたいだな。リーダーを教えれば」
「助けてくれるのか?」「命はここでは助けてやろう」
「あいつだ。あいつがリーダーで、俺はあいつに雇われただけだ!」
「そうかわかった」
刀を抜いて、腹を蹴る。悶絶している所を、わからないように、スキル拘束とスキル麻痺を使う。
指名された男は、使者の護衛の1人なのだろう。
「俺に何かしてみろ、ゼーウ街が敵に回るぞ!」
「あ?別に構わない。それに、誰がお前に”何か”したのか、そのゼーウ街の連中に報告する?解っているか?お前たちは、俺に捕らえられているのだぞ?全員ここで死ねば、証拠も残らないよな?」
「・・・て、定期連絡が」
「ほぉ・・・その定期連絡が来るのだな?お前たちは、その定期連絡に今まで何を報告していた?」
「なに・・・を・・・」
「美味しいい話なんて報告していないだろうな。俺の事も甘く見ているような事だろうし、”代官”になって、”恭順します”なんて報告していないだろう?」
「・・・」
「それに、大陸の街から何か言われたら、”お前たちから街に攻めてきた”というつもりだからな」
「なっなんだと!?そんな事が」
「簡単だよ。証拠が無いからな。お前たちの屋敷は、明日にでも抑えて、あら不思議、隠し部屋から、大量の魔核とスキルカードが出てきて、その中からサラトガへの侵攻計画が書かれたメモが見つかるだろうからな。それに、お前たちがゼーウ街で申し開きをするためには、この場を生きて抜け出して、その上で、街の監視網を突破して、生きてパレスケープまでたどり着いて、俺が手中にしているパレスケープで船を探して、ゼーウ街にたどり着かなければならないのだからな。お前たちがどんなに優秀なのか知らないけど、ルートガーに捕らえられている程度じゃ無理だろうな」
ルートガーを見ると肩をすくめている。
「さて、お互いの立場が理解できた所で、再度聞くが、難民を捕らえて、隷属したのは誰の命令だ?あとお前たちが殺したのは何人だ?」
「めっ命令したのは、そいつだ!俺たちを雇ったのも、女を犯して殺したのも、全部、そいつだ!」
雇われたと言っている冒険者が次々に声を上げる。
使者と言われている奴と、代官と息子が名指しされている。
「代官と息子と使者の3名からの命令で間違いないのか?」
「あぁ俺たちは何もしていない。本当だ。信じてくれ、殺したりしていない・・・本当だ、助けてくれ」
「貴様ら!嘘つくな!お前たちも喜々として女を犯していただろう!」
言い争いが始まった。
醜いな。
「見るに堪えないな。ルートガーどうする?こんなゴミ生かしておく必要はないと思うけどな?」
少し考えるフリをする。
実験区送りが決まっているのだけど・・・な。
「そうですね。捕らえられていた者たち”全員”が許せば、命を助けてもいいとは思いますけどね?どうでしょうか?」
「そうだな。そうするか?良かったな。お前たちが、今まで捕虜にしたり、隷属していた者たち全員が許せば、助けてもらえる事になったぞ」
全員から、スキルカードと武器を取り上げる。
固有されていたスキルも抜き出せる物は全部奪った。大した物が無かった。よくこれで大きな事が言えたな。
外周部で保護した者たちももうすぐ到着するだろう。
「ルートガー。後は任せていいか?」
「はい」
「それから、始末が終わったら執務室に来てくれ、竜族に頼んでパレスケープに行くからな」
「かしこまりました。私一人でしょうか?」
「誰か連れていきたいのか?」
「いえ、そうではありません」
「俺と、カイとウミとライとエリンとシロだ。クリスはダメだ」
「・・・わかりました」
「どうした?」
「いえ、サラトガから一緒に来た者の兄弟が」
「それなら、リヒャルトに頼んでおけばいいだろう。リヒャルトが来るまで、お前が代官代理の代理だ」
「拝命致します」
「よし。俺は、執務室に戻る。何かあれば知らせてくれ。あぁ怖いだろうから、捕らえられていた者たちには、剣や槍を渡していいからな。それから、これとこれを渡しておく」
「これは?」
「隷属のスキル道具だ。詠唱はわかるだろう?これで隷属を解除できるからやってみろ。あと、そっちは”回復のスキル道具”だ、簡単に死なないようにしてやったほうがいいだろう?」
「あっありがとうございます」
執務室に戻ると、フラビアとリカルダとイサークが待っていた。
3人からの報告を聞いた。”女”は近くの集落を襲って捕らえてきたばかりだと言っていた。そうか・・・これじゃ1人も許してもらえないだろうな。
3時間後に予想が的中した事が、執務室を訪ねてきたルートガーによって判明する。
残念ながら最初に送った1人以外実験区に送る事ができなかった。子供と女性は、精神的な疲労もあるので、一度神殿区に送って様子を見る事になった。
そんな手配をしながら、俺とルートガーとカイとウミとライとエリンとシロで、パレスケープ区に竜族を使って急行する。
宣言通り、朝日が登る前には、パレスケープ区の主要な建物を全て抑えた。
抵抗してきた守衛や護衛を捕らえた。尋問は、パレスケープ区の代官代理の代理に任せる事にした。代官代理は、2週間後に到着予定で、それまでにルートガーだけでは不安なので、エントとドリュアスが手伝いをする事になった。
護衛として、ライの眷属を呼び出して配置しておく。
代官は、2ヶ月後には来られるだろう。
それまで、ルートガーはパレスケープに残ってゴミ掃除をしてもらう事になった。
こうして、俺の”誕生祭”は無事(?)終わった。
これで俺たちが住んでいる大陸は、魔の森とチアルダンジョンの下層部分を除いてペネム街の支配下になった。
洞窟だけが俺の支配地域だった事を考えると、数年でだいぶ大きくなったものだな。
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