62 / 323
第六章 開発
第六十二話
しおりを挟む
/*** スーン Side ***/
少し、認識を改めないとダメかもしれない。
私が持っていた知識では、統治者は、周りに異性を大量に置いて、交配行為を行うものと思っていた。
だが、大主様は、交配者は1人で良いと言っている。強き者は、複数の交配相手を持ち、子孫を残すことを求められる。獣人族の族長会議でも同じような事を議論していた。だが、大主様は違った考えをお持ちのようだ。
そもそも、我ら眷属は、大主様を中心にまとまっている。ご子息ができても、ご子息に従う事は無いだろう。種族の長としてお迎えするだけだ。また、大主様からのご依頼で、ご子息をお守りする事はあると思うが、その場合でも、個々の意思を持って行動する事になるだろう。人族のように、大主の子息だからと、我らが従うような事はない。
大主様の安全確保が、我らが第一に考えなければならない事で間違いはない。
その上で、大主様の意思が確認できたので、それに従う事にする。
カイ様とウミ様とライ様と、リーリア殿とオリヴィエ殿とエリン殿と、ヌラ、ヌル、ゼーロを交えた眷属会議を行う事になった。
提案者は、カイ様だ。まとめ役として、私をご指名していただいた。
眷属会議で、先日の居住区から出された提案のお話をさせていただいた。
カイ様とウミ様は、ご存知だったご様子でした。
改めて、リーリア殿とエリン殿に、大主様の交配者は1名だという取り決めになった事を説明した。その上で、クリスティーネ殿を含めた女性陣には、大主様から声がかかるまでは、待つ事をお願いした。
ただし、他にも大主様との交配を狙う者が居るのも確かなので、女性陣や眷属は、気配を察知して、近づけないようにする。
眷属会議なので、クリスティーネ殿は参加されていないが、リーリア殿が説明する事が決定した。
大主様の事を、一般的な統治者と同等に扱った事を含めて、しっかりと反省する事にした。大主様のためといいながら、自分たち種族の事を考えていた事もしっかりと反省する。
『でも、スーン。主様は、僕たちにも、好きに生きろと言ってくれるよ?』
『えぇそうですね』
『うんうん。カイ兄の言う通り、それにスーン。難しく考えすぎ!カズ兄は、”まだ”早いと思っているだけだよ。成人したら、しっかり考えてくれるよ。ね。カイ兄』
『僕もそう思います。スーン。ドリュアスの配置を止めたりしないようにね。やっと、主様が受け入れてくれたのだからな』
『・・・はい。わかりました』
『うん』『お願い!』
『そうだ!カイ兄。ウミ姉。スーンに、眷属代表をやってもらおうよ。獣人族も、族長会議みたいな事をしているよね?』
『それいいな。ライの意見に賛成だけど、スーン。頼めるか?僕たちの意見をまとめて、主様に具申してくれればいい』
『私がですか?』
『そう、スーンが1番適任だと思うよ』
皆の賛成も有って、私が、眷属代表になる事が決定した。
あくまで、眷属間での話しで、序列とかの話ではない。
その後、私が、皆さんを呼ぶ時の呼称も変更される事になった。
リーリア殿と、オリヴィエ殿と、エリン殿から、”殿”はやめて欲しいと言われた。カイ様とウミ様とライ様以外は、同列だという事に決定した。初期の眷属である御三方は別格扱いを受けるべきだというのが、私たちの考えだ。
「リーリア。クリスティーネ殿への説得お願いします」
「わかりました」
「エリン。申し訳ないのですが、小型ワイバーンを数体お貸し願えないでしょうか?」
「ん。いいけど?どうするの?」
「まず、商業区/黒狼区/竜族区との間で定期便として飛ばします」
「どこから飛ばす?居住区?ログハウス?宿区?」
「そうですね。ログハウスですと、大主様のご許可を頂いたほうがいいと思いますし、居住区への連絡が多くなるでしょうから、居住区から飛ばすようにしましょう」
「わかった、手配しておく」
「オリヴィエ。後で、居住区に行きましょう。大主様の護衛になれるように、武器やスキルの構成を考えましょう」
「いいのか!」
「大主様のご許可はいただく事になりますが、獣人族の獅子族や黒狼族や白狼族や熊族の方々から対魔物や人族の戦闘に関して聞くのは無駄では無いでしょう」
私たち眷属は、新たな一歩を踏み出す。
今までは、大主様の庇護下で、大主様にご負担を強いていた部分があった。我らは、我らとして、大主様の事を思って行動すればよいと思っていたが、それは間違っていた、大主様のご意向をしっかりと聞いてから行動に移す。そうしないと、大主様のお考えと違った結果になっています。
私たちのすべては、大主様のためにある事をしっかりと認識する。
/*** カズト・ツクモ Side ***/
拠点の開発も中途半端だけど、方向性だけは示せたと思っている。
ログハウスはまだまだ改良していくし、自重する必要はない。洞窟内部も同じだ。
俺たちが改造した馬車は思った以上に快適だ。
ライが居るので、荷物も少ない。ダミーで荷物は載せている。盗賊に襲われたら、それを捨てて逃げればいいようだ。カイとウミとライにも、同数以上なら逃げるように言ってある。そうしないと、10倍の戦力差でも、戦闘を開始しようとしてしまう。
『ライ』
『あるじ?なに?』
『荷物を載せたのは、スーンだったよな?』
『うん。そうだよ。でも、食事はドリュアスに頼んで作ってもらったよ?』
『あぁわかっている』
そうなると、スーンではないな。
宿区を出る時に、ナーシャに声をかけられて、話し込んだ時が1番可能性が高いな。
不自然に感じたのは、サラトガに近づいた時だ。1つの荷物だけ揺れが少ない。
「ふぅ・・・クリス!」
1つの荷物が揺れる。
「怒らないから出てこい。いつまでもそうしていられないだろう?」
「えへ?」
クリスが荷物から出てくる。魔核を持っている事から、何かしらのスキルを使用していたのだろう。
クリスの容姿は、正直に言えばかなり可愛い。美人になる要素は十分持っている。ドリュアスかエント系の先祖返りで、獣人族の血・・・白狼族だろうけど・・・が混じった、容姿をしている。髪の毛は回復のスキルカードを固定化した時に、もともと白かったものが、白銀に変わった。身長は、今の俺よりも少し小さい。胸は、クリスの名誉のために、これから大きくなるだろうと言っておくが、ナーシャや白狼族を見ると、それもあまり期待できないだろう。ドリュアスやエント系は、美形になりやすいのだと思う。ログハウスに居るドリュアスも、美形揃いだし、リーリアも美形だ。
「カズトさん。ごめんなさい」
「なんで着いてきた!?今から、魔蟲を付けるから、宿区に帰れ」
「イヤ!カズトさんと離れたくないのもだけど・・・・僕もいろんな所に行きたい!」
そうか、クリスは病弱だった事もあって、部屋からほとんど出た事がなかったらしい。カスパル=アラリコ・ミュルダ・メーリヒが、時々街に連れ出していた程度だ。
「クリス。それはわかった」
「じゃぁ一緒に!」
どうする。
今から帰すと言っても、かなりの場所まで来てしまっている。俺も一緒に戻ればいいのだが、結局ついて行くと言い出すに決っている。
「カイ。ウミ。ライ。クリスが一緒でも大丈夫か?」
「え!」
『大丈夫だと思いますが、安全を考えるのなら、魔蟲か、魔物を眷属として付けるのが良いかと思います』
『うーん。カズ兄。大丈夫だと思うよ』
『あるじ。僕が眷属呼び出して置くよ』
概ね大丈夫なようだ。
クリスも、やっと普通に生活できる環境になったのだし、好きに生きろと進めたのも俺たちだ。クリスに、眷属を付けるのも、1つの解決方法だな。適当な魔物が居た時に、進めてみる事にするか?
クリスがここに居るのも、スーン辺りがナーシャかイサークに依頼したのかも知れないな。
まぁ半日ちょっとだけど、カイとウミとライと過ごせたからな。ちょうどいい気分転換ができたな。
「ふぅ・・それで、クリス。誰の手引きだ?」
「えぇ・・・とぉ?」
「スーンか、族長会議辺りか?」
「え?あっ違う。僕が、偶然、居住区に行った時に、ミーシャがいろいろ準備していて、大変そうだったから手伝った時に、カイ兄に頼まれたと話していて、これは、カズトさんがどこかに行こうとしていると思っていたら、鼠族が居住区の奥から、馬車を動かしていたから、見張っていたの・・・そうしたら、ナーシャお姉ちゃんが来て協力してくれたの」
『主様。ミーシャが、猫族の娘です』
『スーン関係でも、リーリアでも無いのだな』
手引きした者が居たのは間違いないと思っていたけど、クリスが自分で見つけて、考えたのならしょうがないな。誰かから教えられたのなら、連れていなかいという選択肢も考えられたのだが、自分で考えたのならしょうがないよな。
『うん。みんな反省している』『ウミ!』『ウミ姉。それは内緒って約束!』
眷属で何かしらの会議をしているのは知っていたけど、反省会でも開いていたのか?
「クリス。危ないと思ったら、帰すからな。俺の指示には従えよ?」
「うん!ありがとう。カズトさん」
クリスが飛びついてきたが、ウミがガードした。
「ひどぉい。ウミ姉。僕も、カズトさんに甘えたい!」
賑やかになる。
この感じも嫌いではない。強要しないのなら、許容範囲だな。
ウミの話から眷属で会議をして、反省したのならリーリアやオリヴィエやエリンが居ても俺の邪魔をする事は無いだろう。
スーンやエントやドリュアスたちも、3人を連れて居ると知ったら、安心してくれるだろう。
「ライ。スーンに連絡して、リーリアとオリヴィエとエリンをこちらによこせ。呼び寄せるよりも、エリンが運んだほうがいいだろう。その時に、魔核や攻撃系のスキルを中心にスキルカードをもたせるように言ってくれ」
『わかった!』
馬車を駐めて、エリンの到着を待つことにした。
クリスがなにか、ブツブツ言っていたが無視する事にした。
ライから、到着には3時間程度かかりそうと言われたので、馬車の中で仮眠を取る事にした。クリスは近くを少し散策したいと言っていたので、ウミに付いていってもらう事にした。ウミがいれば、この辺りの魔物なら大丈夫だろう。
「カイ!」
『主様』
「久しぶりに一緒に寝るか?」
『よろしいのですか?』
「あぁライも居るし大丈夫だろう」
『あるじ。大丈夫。カイ兄にも休んで!』
「ライ。リーリアたちが来たら起こしてくれ」
『わかった!』
馬車の中に作っている休憩スペースで身体を休める事にした。
「ご主人様!」
「あっリーリアか、悪いな急に呼び出して」
「いえ、嬉しいです!それで、どういたしましょうか?」
「そう言えば、オリヴィエとエリンは?」
「エリンは、クリスを連れ戻しに行っています。オリヴィエは、今日は、ここでお休みになるのだと思って、野営の準備をしております」
「おっそうか、頼もうと思っていたから、丁度良かった」
馬車から降りると、野営の準備・・・なのか?オリヴィエが、木々を操って、簡易的な小屋を作っていた。
「オリヴィエそれは?」
「え?あっマスター。これは、マスターとカイ様とウミ様とライ様がお休みになる場所です」
「お前たちは?」
「あとで、クリスに、スキルの使い方を教えながら、もう一個作ります。そこで、クリスに休んでもらって、僕と、リーリアと、エリンで、交代で見張りをやります」
「オリヴィエ。それは、お前の考えか?」
「いえ、僕とリーリアとエリンで話をして決めました」
「そうか、でも、俺もカイもウミもライも交代で見張りに入るぞ?」
「ダメです!こればかりは、マスターのご命令でも聞けません。お願いします」
”お願いします”まで言われたらそれ以上強く言えない。
今日一晩だし、明日は、サラトガ経由でダンジョンに入る予定だからな。そうしたら、話し合って順番を決めればいいよな。
「わかった。お前たちには負担をかけるが、今晩は頼む」
エリンが、クリスとウミを連れて返ってきた。
どうやら、ウミがクリスにスキルの使い方を教えながら、狩りをしていたようだ。
「カズトさん!これ!」
クリスが嬉しそうに、レベル2のスキルカードを渡してきた。それと、レベル2の魔核もだ。
「クリス。これどうした?」
「僕が、初めて倒した、ゴブリンから出てきた!ウミ姉に、スキルの使い方を教わっていたら、近くに居たから倒した!」
ほぉいきなりの実戦をしたのか・・・大丈夫だったようだな。
見た感じ、怪我もしていない。ウミが居たようだし、ゴブリン程度では大丈夫だろう。
「それでね。それでね。ウミ姉に言われて、魔眼でゴブリンを見たら、右肩辺りに、魔力が集中していた場所があったから、そこをさけて攻撃したら、魔核が出現したの!」
テンションが高いのは、初めての狩りで興奮しているのだろう。
「え?あっクリス。ゴブリンは、その一体だけだったのか?」
「うん!倒して、スキルカードと魔核が出た時に、エリンちゃんが迎えに来てくれたの!」
クリスの魔眼は、魔力の流れを見る事ができると言っていた。
ちょうどいい。サラトガのダンジョンでいろいろ実験してみるか?
少し、認識を改めないとダメかもしれない。
私が持っていた知識では、統治者は、周りに異性を大量に置いて、交配行為を行うものと思っていた。
だが、大主様は、交配者は1人で良いと言っている。強き者は、複数の交配相手を持ち、子孫を残すことを求められる。獣人族の族長会議でも同じような事を議論していた。だが、大主様は違った考えをお持ちのようだ。
そもそも、我ら眷属は、大主様を中心にまとまっている。ご子息ができても、ご子息に従う事は無いだろう。種族の長としてお迎えするだけだ。また、大主様からのご依頼で、ご子息をお守りする事はあると思うが、その場合でも、個々の意思を持って行動する事になるだろう。人族のように、大主の子息だからと、我らが従うような事はない。
大主様の安全確保が、我らが第一に考えなければならない事で間違いはない。
その上で、大主様の意思が確認できたので、それに従う事にする。
カイ様とウミ様とライ様と、リーリア殿とオリヴィエ殿とエリン殿と、ヌラ、ヌル、ゼーロを交えた眷属会議を行う事になった。
提案者は、カイ様だ。まとめ役として、私をご指名していただいた。
眷属会議で、先日の居住区から出された提案のお話をさせていただいた。
カイ様とウミ様は、ご存知だったご様子でした。
改めて、リーリア殿とエリン殿に、大主様の交配者は1名だという取り決めになった事を説明した。その上で、クリスティーネ殿を含めた女性陣には、大主様から声がかかるまでは、待つ事をお願いした。
ただし、他にも大主様との交配を狙う者が居るのも確かなので、女性陣や眷属は、気配を察知して、近づけないようにする。
眷属会議なので、クリスティーネ殿は参加されていないが、リーリア殿が説明する事が決定した。
大主様の事を、一般的な統治者と同等に扱った事を含めて、しっかりと反省する事にした。大主様のためといいながら、自分たち種族の事を考えていた事もしっかりと反省する。
『でも、スーン。主様は、僕たちにも、好きに生きろと言ってくれるよ?』
『えぇそうですね』
『うんうん。カイ兄の言う通り、それにスーン。難しく考えすぎ!カズ兄は、”まだ”早いと思っているだけだよ。成人したら、しっかり考えてくれるよ。ね。カイ兄』
『僕もそう思います。スーン。ドリュアスの配置を止めたりしないようにね。やっと、主様が受け入れてくれたのだからな』
『・・・はい。わかりました』
『うん』『お願い!』
『そうだ!カイ兄。ウミ姉。スーンに、眷属代表をやってもらおうよ。獣人族も、族長会議みたいな事をしているよね?』
『それいいな。ライの意見に賛成だけど、スーン。頼めるか?僕たちの意見をまとめて、主様に具申してくれればいい』
『私がですか?』
『そう、スーンが1番適任だと思うよ』
皆の賛成も有って、私が、眷属代表になる事が決定した。
あくまで、眷属間での話しで、序列とかの話ではない。
その後、私が、皆さんを呼ぶ時の呼称も変更される事になった。
リーリア殿と、オリヴィエ殿と、エリン殿から、”殿”はやめて欲しいと言われた。カイ様とウミ様とライ様以外は、同列だという事に決定した。初期の眷属である御三方は別格扱いを受けるべきだというのが、私たちの考えだ。
「リーリア。クリスティーネ殿への説得お願いします」
「わかりました」
「エリン。申し訳ないのですが、小型ワイバーンを数体お貸し願えないでしょうか?」
「ん。いいけど?どうするの?」
「まず、商業区/黒狼区/竜族区との間で定期便として飛ばします」
「どこから飛ばす?居住区?ログハウス?宿区?」
「そうですね。ログハウスですと、大主様のご許可を頂いたほうがいいと思いますし、居住区への連絡が多くなるでしょうから、居住区から飛ばすようにしましょう」
「わかった、手配しておく」
「オリヴィエ。後で、居住区に行きましょう。大主様の護衛になれるように、武器やスキルの構成を考えましょう」
「いいのか!」
「大主様のご許可はいただく事になりますが、獣人族の獅子族や黒狼族や白狼族や熊族の方々から対魔物や人族の戦闘に関して聞くのは無駄では無いでしょう」
私たち眷属は、新たな一歩を踏み出す。
今までは、大主様の庇護下で、大主様にご負担を強いていた部分があった。我らは、我らとして、大主様の事を思って行動すればよいと思っていたが、それは間違っていた、大主様のご意向をしっかりと聞いてから行動に移す。そうしないと、大主様のお考えと違った結果になっています。
私たちのすべては、大主様のためにある事をしっかりと認識する。
/*** カズト・ツクモ Side ***/
拠点の開発も中途半端だけど、方向性だけは示せたと思っている。
ログハウスはまだまだ改良していくし、自重する必要はない。洞窟内部も同じだ。
俺たちが改造した馬車は思った以上に快適だ。
ライが居るので、荷物も少ない。ダミーで荷物は載せている。盗賊に襲われたら、それを捨てて逃げればいいようだ。カイとウミとライにも、同数以上なら逃げるように言ってある。そうしないと、10倍の戦力差でも、戦闘を開始しようとしてしまう。
『ライ』
『あるじ?なに?』
『荷物を載せたのは、スーンだったよな?』
『うん。そうだよ。でも、食事はドリュアスに頼んで作ってもらったよ?』
『あぁわかっている』
そうなると、スーンではないな。
宿区を出る時に、ナーシャに声をかけられて、話し込んだ時が1番可能性が高いな。
不自然に感じたのは、サラトガに近づいた時だ。1つの荷物だけ揺れが少ない。
「ふぅ・・・クリス!」
1つの荷物が揺れる。
「怒らないから出てこい。いつまでもそうしていられないだろう?」
「えへ?」
クリスが荷物から出てくる。魔核を持っている事から、何かしらのスキルを使用していたのだろう。
クリスの容姿は、正直に言えばかなり可愛い。美人になる要素は十分持っている。ドリュアスかエント系の先祖返りで、獣人族の血・・・白狼族だろうけど・・・が混じった、容姿をしている。髪の毛は回復のスキルカードを固定化した時に、もともと白かったものが、白銀に変わった。身長は、今の俺よりも少し小さい。胸は、クリスの名誉のために、これから大きくなるだろうと言っておくが、ナーシャや白狼族を見ると、それもあまり期待できないだろう。ドリュアスやエント系は、美形になりやすいのだと思う。ログハウスに居るドリュアスも、美形揃いだし、リーリアも美形だ。
「カズトさん。ごめんなさい」
「なんで着いてきた!?今から、魔蟲を付けるから、宿区に帰れ」
「イヤ!カズトさんと離れたくないのもだけど・・・・僕もいろんな所に行きたい!」
そうか、クリスは病弱だった事もあって、部屋からほとんど出た事がなかったらしい。カスパル=アラリコ・ミュルダ・メーリヒが、時々街に連れ出していた程度だ。
「クリス。それはわかった」
「じゃぁ一緒に!」
どうする。
今から帰すと言っても、かなりの場所まで来てしまっている。俺も一緒に戻ればいいのだが、結局ついて行くと言い出すに決っている。
「カイ。ウミ。ライ。クリスが一緒でも大丈夫か?」
「え!」
『大丈夫だと思いますが、安全を考えるのなら、魔蟲か、魔物を眷属として付けるのが良いかと思います』
『うーん。カズ兄。大丈夫だと思うよ』
『あるじ。僕が眷属呼び出して置くよ』
概ね大丈夫なようだ。
クリスも、やっと普通に生活できる環境になったのだし、好きに生きろと進めたのも俺たちだ。クリスに、眷属を付けるのも、1つの解決方法だな。適当な魔物が居た時に、進めてみる事にするか?
クリスがここに居るのも、スーン辺りがナーシャかイサークに依頼したのかも知れないな。
まぁ半日ちょっとだけど、カイとウミとライと過ごせたからな。ちょうどいい気分転換ができたな。
「ふぅ・・それで、クリス。誰の手引きだ?」
「えぇ・・・とぉ?」
「スーンか、族長会議辺りか?」
「え?あっ違う。僕が、偶然、居住区に行った時に、ミーシャがいろいろ準備していて、大変そうだったから手伝った時に、カイ兄に頼まれたと話していて、これは、カズトさんがどこかに行こうとしていると思っていたら、鼠族が居住区の奥から、馬車を動かしていたから、見張っていたの・・・そうしたら、ナーシャお姉ちゃんが来て協力してくれたの」
『主様。ミーシャが、猫族の娘です』
『スーン関係でも、リーリアでも無いのだな』
手引きした者が居たのは間違いないと思っていたけど、クリスが自分で見つけて、考えたのならしょうがないな。誰かから教えられたのなら、連れていなかいという選択肢も考えられたのだが、自分で考えたのならしょうがないよな。
『うん。みんな反省している』『ウミ!』『ウミ姉。それは内緒って約束!』
眷属で何かしらの会議をしているのは知っていたけど、反省会でも開いていたのか?
「クリス。危ないと思ったら、帰すからな。俺の指示には従えよ?」
「うん!ありがとう。カズトさん」
クリスが飛びついてきたが、ウミがガードした。
「ひどぉい。ウミ姉。僕も、カズトさんに甘えたい!」
賑やかになる。
この感じも嫌いではない。強要しないのなら、許容範囲だな。
ウミの話から眷属で会議をして、反省したのならリーリアやオリヴィエやエリンが居ても俺の邪魔をする事は無いだろう。
スーンやエントやドリュアスたちも、3人を連れて居ると知ったら、安心してくれるだろう。
「ライ。スーンに連絡して、リーリアとオリヴィエとエリンをこちらによこせ。呼び寄せるよりも、エリンが運んだほうがいいだろう。その時に、魔核や攻撃系のスキルを中心にスキルカードをもたせるように言ってくれ」
『わかった!』
馬車を駐めて、エリンの到着を待つことにした。
クリスがなにか、ブツブツ言っていたが無視する事にした。
ライから、到着には3時間程度かかりそうと言われたので、馬車の中で仮眠を取る事にした。クリスは近くを少し散策したいと言っていたので、ウミに付いていってもらう事にした。ウミがいれば、この辺りの魔物なら大丈夫だろう。
「カイ!」
『主様』
「久しぶりに一緒に寝るか?」
『よろしいのですか?』
「あぁライも居るし大丈夫だろう」
『あるじ。大丈夫。カイ兄にも休んで!』
「ライ。リーリアたちが来たら起こしてくれ」
『わかった!』
馬車の中に作っている休憩スペースで身体を休める事にした。
「ご主人様!」
「あっリーリアか、悪いな急に呼び出して」
「いえ、嬉しいです!それで、どういたしましょうか?」
「そう言えば、オリヴィエとエリンは?」
「エリンは、クリスを連れ戻しに行っています。オリヴィエは、今日は、ここでお休みになるのだと思って、野営の準備をしております」
「おっそうか、頼もうと思っていたから、丁度良かった」
馬車から降りると、野営の準備・・・なのか?オリヴィエが、木々を操って、簡易的な小屋を作っていた。
「オリヴィエそれは?」
「え?あっマスター。これは、マスターとカイ様とウミ様とライ様がお休みになる場所です」
「お前たちは?」
「あとで、クリスに、スキルの使い方を教えながら、もう一個作ります。そこで、クリスに休んでもらって、僕と、リーリアと、エリンで、交代で見張りをやります」
「オリヴィエ。それは、お前の考えか?」
「いえ、僕とリーリアとエリンで話をして決めました」
「そうか、でも、俺もカイもウミもライも交代で見張りに入るぞ?」
「ダメです!こればかりは、マスターのご命令でも聞けません。お願いします」
”お願いします”まで言われたらそれ以上強く言えない。
今日一晩だし、明日は、サラトガ経由でダンジョンに入る予定だからな。そうしたら、話し合って順番を決めればいいよな。
「わかった。お前たちには負担をかけるが、今晩は頼む」
エリンが、クリスとウミを連れて返ってきた。
どうやら、ウミがクリスにスキルの使い方を教えながら、狩りをしていたようだ。
「カズトさん!これ!」
クリスが嬉しそうに、レベル2のスキルカードを渡してきた。それと、レベル2の魔核もだ。
「クリス。これどうした?」
「僕が、初めて倒した、ゴブリンから出てきた!ウミ姉に、スキルの使い方を教わっていたら、近くに居たから倒した!」
ほぉいきなりの実戦をしたのか・・・大丈夫だったようだな。
見た感じ、怪我もしていない。ウミが居たようだし、ゴブリン程度では大丈夫だろう。
「それでね。それでね。ウミ姉に言われて、魔眼でゴブリンを見たら、右肩辺りに、魔力が集中していた場所があったから、そこをさけて攻撃したら、魔核が出現したの!」
テンションが高いのは、初めての狩りで興奮しているのだろう。
「え?あっクリス。ゴブリンは、その一体だけだったのか?」
「うん!倒して、スキルカードと魔核が出た時に、エリンちゃんが迎えに来てくれたの!」
クリスの魔眼は、魔力の流れを見る事ができると言っていた。
ちょうどいい。サラトガのダンジョンでいろいろ実験してみるか?
10
お気に入りに追加
1,656
あなたにおすすめの小説
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜
一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。
しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた!
今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。
そうしていると……?
※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!
『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?
mio
ファンタジー
特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。
神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。
そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。
日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。
神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?
他サイトでも投稿しております。
5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
弓使いの成り上がり~「弓なんて役に立たない」と追放された弓使いは実は最強の狙撃手でした~
平山和人
ファンタジー
弓使いのカイトはSランクパーティー【黄金の獅子王】から、弓使いなんて役立たずと追放される。
しかし、彼らは気づいてなかった。カイトの狙撃がパーティーの危機をいくつも救った来たことに、カイトの狙撃が世界最強レベルだということに。
パーティーを追放されたカイトは自らも自覚していない狙撃で魔物を倒し、美少女から惚れられ、やがて最強の狙撃手として世界中に名を轟かせていくことになる。
一方、カイトを失った【黄金の獅子王】は没落の道を歩むことになるのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる