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第四章 発展
第四十二話
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/*** カスパル=アラリコ・ミュルダ・メーリヒ Side ***/
ナーシャたちが帰ってきた?
「領主様」
「あぁわかった。それで?」
「はい。4名揃って、ご相談があるとおっしゃっています」
「相談?わかった」
相談?
スキルカードがなくなったか?いや違うな。
会えばわかるか、サラトガに行っていたはずだが・・・。
会議室に向かう。
そこには、馬鹿面の1人の男と、可愛い娘が1人、そして、酒飲みが1人と、街領隊の斥候の1人が座っている。
「ただいま!」
「ただいまじゃない。今まで何をやっていた?」
ふぅ変わった所は・・・違うな。あまりにも変わっていない。
認識しているだけだが、1ヶ月近く放浪していたとは思えない。
「領主様。ナーシャが話し始めると、長いので、俺から話していいですか?」
「イサークか、頼む。その前に、儂からお主に聞きたい事があるが大丈夫か?」
「はい。なんでしょうか?」
「お主たち、あまりにも小奇麗な格好だが、どうやって逃げてきた?まさか?」
少し沈黙が流れる。
イサークたちはお互いの格好を見て、なにか納得している。
そして、ナーシャに関しては、笑いだしてしまった。
そんなにおかしな事なのか?
「失礼しました。領主様。それを含めまして、俺たちがどうやって、ここに帰ってきたのかお話します」
そう切り出したイサークの話は、信じられない話の連続だ。
イリーガル・デス・スパイダーや、イリーガル・デス・アント。イリーガル・デス・ビーナを眷属化している?
エルダー・エント?それだけじゃなくて、イリーガル・デス・ブルー・フォレスト・キャットとイリーガル・ブルー・スキル・フォレスト・キャットに、イリーガル称号を持つ、スライム?
イサークたちが夢を見たとか、集団幻覚のスキルを使われたと言われたほうが信じられる。
しかし、目の前に出された物で”村”が存在しているであろう証拠になりえるかも知れない。
そして、バカ息子のステータスカードと副隊長のステータスカード。それに、バカ息子が持ち出した、速駆の指輪に間違いない。
「イサーク。これは?」
「はい。そのこ主ツクモ殿が、洞窟を解放する時に倒したゴブリン共が持っていたそうです」
「そうか・・・しかし」
「はい。ツクモ殿が倒したという事も考えられますが、これを見てください」
そういって出されたのは、ザイデルのステータスカードだ。
あの裏切り者?あいつなら、確かに・・・やりかねない。ザイデルが、バカ息子と副隊長を騙して、闇討ちにして、スキルカードやアイテムを奪おうとしたと考えられる。ステータスカードを、アトフィア教に持っていけば、奴の教団内での発言力も増したのかも知れない。
闇討ちをした状態で、ブルーフォレストの奥地に踏み込んで、”なにか”に襲われたのだろう。
「イサーク。事情はわかった。納得できない事もあるが、お主たちが感じたことだろう。それを尊重する」
「ありがとうございます」
「でも、まだ、お主たちが、小奇麗な状態の説明はできていないぞ?」
「え?あっまずは、カズト・ツクモという人物が居るという事実を信じてください」
「あぁ解った。それで?」
「多数のイリーガル称号だけでなく、属性持ちに進化した魔物を多数従えているのも認識してください」
「あぁ納得しよう」
一息着いた。
イサークとピムがなにやら小声で話している。
「ねぇイサーク。だしていい?」
「まだ待て、さすがに、それはやばすぎる!」
今日の話しは長くなりそうだ。
「領主様。誰か、鑑定が使える者はいませんか?」
「鑑定持ち?おい!」
後ろに控えていた、執事が一歩前に踏み出す。
鑑定にも種類がある。普段は、秘密にしているが、こいつは触らなくても鑑定出来るスキルを持っている。
「はい」
「よかった。触っても、いいですが、絶対に、大きな声を出さないでください。俺たちが、カズト・ツクモ殿に貰った物で、ヤバそうな物をいくつか出します」
まずは、ガーラントが小汚い袋を取り出す。あの中になにか入っているのだろう。
そう思ったが、そのままテーブルの上に置いた。
執事が、ガーラントに触ってもいいかと訪ねている。この袋で間違い無いようだ。
「これは、ツクモ殿から借用している物で、返さなければならないが、異常性がわかっていただけると思う」
ガーラントがの宣言を聞いて、執事が再度鑑定を行っているようだ。
「中を触っても?」
「いいですけど、中身はまだ出さないでください」
執事が中に手をいれる。小汚い袋なのに、大切に触るのだな。
執事が、儂の方を向き直して、袋を儂の方に渡す。
「領主様。我が目を疑いました。今日始めて、スキルの結果を信じないという行動に出てしまいました。何度鑑定しても同じ結果が出ます」
「それで?」
「この袋は、”収納スキルが付与された袋”で、ございます」
収納スキル。別に珍しい物ではない。
商人も使っている物も多い。
「収納スキルなら、商人も使っているだろう?」
「いえ、違います。”収納スキルが付与された袋”で、ございます」
「だから・・・あっ!え?そうなのか?」
「はい。回数無制限の収納スキルが付与されています」
「アーティファクトではないか?」
「そうです。領主様。考えてみてください。アーティファクトでも、スキル収納が着いた袋は・・・」
「商人にしたら、殺してでも欲しいと思うな。しかし」
「はい。アーティファクトとしては、それほど珍しい物ではありません。アーティファクトとしてはです!」
たしかに、アーティファクトとして珍しい物ではない。
それに、このミュルダにも、1つ保管されている。本当に、街の緊急時に放出する物が収められている。
「領主様」
「なんだ?」
「袋を見てください」
「袋・・・・え?これ・・・は?」
「おわかりですよね?」
「あぁこの袋は、ミュルダで買う事が出来る・・・街領隊の装備品ではないか!」
”なぜ?”が頭の中から離れない。
これを作った者が・・・いや、話の流れから、カズト・ツクモという人物が作ったのだろう。
「ご理解頂けましたか?」
「・・・あぁ」
「でも、まだ始まりです」
イサークが、袋を手にとって、1つの魔核を取り出す。
大きさから、レベル5か6程度のものだろう。珍しいと言えば珍しいが、それほどの価値がある物ではない。
イサークが、それを、執事に渡す。
受け取った執事の手が震えている。あの執事が震えるもの?
それほど危ないものなのか?
「イサーク殿。間違いないのですか?」
「ガーラントの鑑定でも、実際に使った俺たちも、疑いましたが、その鑑定結果で間違いないです」
「ふぅ・・・試してみていいですか?」
「問題ないですよ。俺たちも何度も使っていますが、問題はありませんでした」
何度も使っているという事は、あの魔核もアーティファクトの一種なのか?
執事が魔力を流し込んで、魔核に付与されているスキルが発動する。スキルの発動時には、微妙な変化がある。
3回変化が観測できた。
3回?同じスキルを3回かける意味は?
「どういう事だ?」
「領主様。この魔核に付与しているスキルは」
執事はここまで行って、言葉を切った。ガーラントとイサークを見ている。
ふたりとも、うなずいている。
「ふぅー”結界と防壁と障壁”のスキルが着いています。それも、使用制限がありません」
「は?もう一度言ってくれないか?」
「結界と防壁と障壁です。領主様」
少々投げやりになっている執事の声を久しぶりに聞いた。
現実逃避したくなる事実だな。
レベル5のスキルが3つ付いている?それだけでも・・・えぇぇいわからん。価値なんて解るか!
冒険者なら、親を殺してでも欲しがる奴がいるかも知れない。レベル5に付与している事を考えると、街領隊で使わせたら・・・無限の可能性がある。
「イサーク。これも?」
「はい。ツクモ殿の眷属である、ドリュアスが、俺たちに渡してきた物です。どうぞ好きに使ってくださいと渡されました」
「は?貸すだけでも・・・いや、盗んだ・・・違うな」
「そんな事、気にしていないと思うよ。ね」
突然、ナーシャが横から話に加わる。
3人が諦めているような表情を見せるが、納得している所から、考えると、”この程度”の物という認識なのだろうか?
騙して・・・いやダメだ、全部話を聞くまでは結論を急ぐな。
「領主様。落ち着かれましたか?次の話にはいっていいですか?」
「まだ有るのか?」
イサークと、ピムと、ガーラントが、深い溜息をついた。
「”まだ”じゃなくて、始まってもいませんよ?これは、ピムが1人で、ツクモ殿に面会した後の話で、俺たちは会っても居ないときです」
「は?」
「次にうつります」
そう言って、イサークが取り出したのは、よくあるデザインで、今、イサークが着ている物と同じデザインの服の上下だ、綺麗になっているし、かなり上等な素材を使っているのだろう。
「イサーク殿?触っていいですか?」
「えぇもちろんです」
執事が青い顔をしている。それほどのものには見えないのだが?
「・・・。ガーラント殿?」
「あぁ残念ながら本当じゃよ。お主も、あれを見たことが有ったのだな」
「はい。あれは本当に美しかった・・・」
あれ?
何のことを言っている?
「おい。何の事を言っている?」
「その前に、領主様。その服は、俺だけじゃなくて、ピムとガーラントとナーシャも、同じ素材の物を持っています。あぁ下着は、何枚か必要だろうと言われて、複数枚もらいました」
「は?複数?え?あっそう言えば、イリーガル・デス・スパイダーが居るのでしたね?」
「えぇ正式には、イリーガル・グレーター・デス・フォレスト・スパイダーです。それの亜種や、属性種が、それは沢山居ました」
今、なんと言った?
イリーガル・デス・スパイダーだけでも・・・イリーガル・グレーター・デス・フォレスト・スパイダーだと、伝説級の魔蟲ではないか?よく、此奴等生きてかえって・・・あっ!
「まさか・・・そ」
「領主様。そうです。この服は、私の鑑定では、”イリーガル・デス・フォレスト・スパイダー”の糸で作られた布だと出ています」
確か、白い布で、レベル7相当だったはず・・・違っても大差ない。この服だけで、どれだけの価値がある?
それが、人数分、下着も?意味がわからない。
「さて、次の話にうつりましょう」
「まて、イサーク。これが最後ではないのか?」
「は?まだ序の口ですよ?あぁツクモ殿から、俺たちが、ミュルダに帰ると言ったらお土産が必要でしょと言われましてね。下着になってしまいますが、領主とお孫さんのクリスティーネの下着と服も預かっています。どうされますか?」
「クリスのか?」
「はい。ナーシャがツクモ殿にお願いしたそうです。服のデザインはナーシャですので、あまり期待しないでくださいね。あっそれから、この布は、もう暫くは出さないとおっしゃっていました。すみません。俺たちが、価値に関して、いろいろ喋っちゃいまして、市場を混乱させるのはダメだろうという事で、領主様とクリス殿の分で最後になるようです」
「さっきの魔核もか?」
「どうでしょう。価値に関しては、認識されましたが、生活が便利になる物なら提供すると言っていました。でも、レベル1や2の物にするみたいですよ」
「そうか・・・」
イサークは、そう言って袋を取り出した。
こっちは、普通の袋だと笑っていたが、中身が超弩級の爆弾だとは誰も思わないだろう。
「イサークよ。これでおしまいだろうな?」
「そうですね。ピム。ガーラント。そろそろ、ツクモ殿の異常性がわかってもらえたと思うから、いいよな?」
「えぇ大丈夫だと思いますよ」「儂も依存わ無いぞ!」
先程の収納袋から、大量の魔核と、大量のスキルカードが出てくる。
魔核は、大きさから、街で不足し始めている、レベル1~3程度のものだろう。数えるのも馬鹿らしくなるくらいの量だ。山になっている。スキルカードもレベル1~4程度だろうか?ざっと見た感じ、2百枚程度あるだろうか?
確かに、価値としてはそんなに高くないが、街として不足し始めている物だ。単純に嬉しい。スキルカードに関しては、数が多いが、街の穀物で支払えるだろう。魔核に関しても同じだ。備蓄してある穀物で払えるだろう。
そういう取引をしたいという事なのだろうか?
「イサークこれは?」
「カズト・ツクモ殿からの”支援”物質です」
「すまん。イサーク。儂は、疲れているかもしれん。もう一度言ってくれ、”支援”と聞こえたのじゃが?」
「えぇ”支援”物資といいました。ツクモ殿は、これだけの物を、ミュルダに無償提供すると言っているのです」
「はぁ?無償?なぜ?これだけの物を?」
いや違うな。先程のことから考えると、カズト・ツクモ殿にとっては、価値がある物と認識していないのだ。
「ねぇイサーク。まだ?」
「もうちょっとだ。待っていてくれよ」
「わかった。あっ!それから、さっき、リーリアちゃんのお姉さんから連絡が入ったよ!それも後で?」
「え?連絡って念話か?」
「うん」
「いい話か?」
「うん。すごくね!」
「そうか、それなら、最後かな?」
「わかった!」
なにやら、イサークとナーシャの会話も気になったのだが・・・。
「イサーク。それで、ツクモ殿は、なにか見返りを期待しておいでなのか?」
「どうでしょう。見返りという感じではないと思いますが・・・そろそろ、本題に入りたいのですがいいですか?」
「まだ本題じゃなかったのか?」
「えぇ残念ながら、でも、本題は、異常性はないですよ。多分」
イサークが語り出した話は、先程の話に輪をかけて信じがたいことだったが、いろいろなパーツを集めて考えると、納得するしか無い。
ツクモ殿が、獣人族を助けた。問題ない。ミュルダにとっては、良い事だ。助ける時に、アンクラムの兵とアトフィア教のほとんどを捕らえるか、殺害した。これも、別にどうでもいい。どうでもいいは間違いだな。ミュルダにとっては良い事だ。
獣人族の集落を作った?
ダンジョンに潜らせている?ダンジョンから得た物を獣人族の自由にさせている?
捕らえた教団関係者・・・司祭だろう・・・を、護衛してアンクラムに届けた?その時に、ツクモ殿配下の人間が、アンクラムに潜入した?
可愛い女の子?とてつもなく強い?治療スキル持ち?清掃スキルも?
情報が多すぎて混乱する。
しかし、アンクラムが、ミュルダへの侵攻を中止したのも、常備兵の9割の損失があったこと。教会のトップ3が全員一時的に不在だったこと。それから、先程のスキルカードのほとんどが、アンクラムの兵が持っていた物だという事だ。武装も全部解除されて、男も女も、全裸でブルーフォレストに放置されたのだと言っている。
生き残れた者も、それでは、死ぬか、精神を壊されて、兵としては使い物にはならないだろう。女には、ナイフを一本だけ渡してあるそうだが、それが同士討ちを招いたのだろう。
儂がほしかった、情報が手に入った。
安全になったと宣言するには、イサークたちだけの情報では足りないが、安心できる材料には違いない。
ツクモ殿は、ミュルダの恩人に違いない。
利用しようなどと考えるよりも、もっと違う関係が結べたらと考える事ができそうだ。
ナーシャたちが帰ってきた?
「領主様」
「あぁわかった。それで?」
「はい。4名揃って、ご相談があるとおっしゃっています」
「相談?わかった」
相談?
スキルカードがなくなったか?いや違うな。
会えばわかるか、サラトガに行っていたはずだが・・・。
会議室に向かう。
そこには、馬鹿面の1人の男と、可愛い娘が1人、そして、酒飲みが1人と、街領隊の斥候の1人が座っている。
「ただいま!」
「ただいまじゃない。今まで何をやっていた?」
ふぅ変わった所は・・・違うな。あまりにも変わっていない。
認識しているだけだが、1ヶ月近く放浪していたとは思えない。
「領主様。ナーシャが話し始めると、長いので、俺から話していいですか?」
「イサークか、頼む。その前に、儂からお主に聞きたい事があるが大丈夫か?」
「はい。なんでしょうか?」
「お主たち、あまりにも小奇麗な格好だが、どうやって逃げてきた?まさか?」
少し沈黙が流れる。
イサークたちはお互いの格好を見て、なにか納得している。
そして、ナーシャに関しては、笑いだしてしまった。
そんなにおかしな事なのか?
「失礼しました。領主様。それを含めまして、俺たちがどうやって、ここに帰ってきたのかお話します」
そう切り出したイサークの話は、信じられない話の連続だ。
イリーガル・デス・スパイダーや、イリーガル・デス・アント。イリーガル・デス・ビーナを眷属化している?
エルダー・エント?それだけじゃなくて、イリーガル・デス・ブルー・フォレスト・キャットとイリーガル・ブルー・スキル・フォレスト・キャットに、イリーガル称号を持つ、スライム?
イサークたちが夢を見たとか、集団幻覚のスキルを使われたと言われたほうが信じられる。
しかし、目の前に出された物で”村”が存在しているであろう証拠になりえるかも知れない。
そして、バカ息子のステータスカードと副隊長のステータスカード。それに、バカ息子が持ち出した、速駆の指輪に間違いない。
「イサーク。これは?」
「はい。そのこ主ツクモ殿が、洞窟を解放する時に倒したゴブリン共が持っていたそうです」
「そうか・・・しかし」
「はい。ツクモ殿が倒したという事も考えられますが、これを見てください」
そういって出されたのは、ザイデルのステータスカードだ。
あの裏切り者?あいつなら、確かに・・・やりかねない。ザイデルが、バカ息子と副隊長を騙して、闇討ちにして、スキルカードやアイテムを奪おうとしたと考えられる。ステータスカードを、アトフィア教に持っていけば、奴の教団内での発言力も増したのかも知れない。
闇討ちをした状態で、ブルーフォレストの奥地に踏み込んで、”なにか”に襲われたのだろう。
「イサーク。事情はわかった。納得できない事もあるが、お主たちが感じたことだろう。それを尊重する」
「ありがとうございます」
「でも、まだ、お主たちが、小奇麗な状態の説明はできていないぞ?」
「え?あっまずは、カズト・ツクモという人物が居るという事実を信じてください」
「あぁ解った。それで?」
「多数のイリーガル称号だけでなく、属性持ちに進化した魔物を多数従えているのも認識してください」
「あぁ納得しよう」
一息着いた。
イサークとピムがなにやら小声で話している。
「ねぇイサーク。だしていい?」
「まだ待て、さすがに、それはやばすぎる!」
今日の話しは長くなりそうだ。
「領主様。誰か、鑑定が使える者はいませんか?」
「鑑定持ち?おい!」
後ろに控えていた、執事が一歩前に踏み出す。
鑑定にも種類がある。普段は、秘密にしているが、こいつは触らなくても鑑定出来るスキルを持っている。
「はい」
「よかった。触っても、いいですが、絶対に、大きな声を出さないでください。俺たちが、カズト・ツクモ殿に貰った物で、ヤバそうな物をいくつか出します」
まずは、ガーラントが小汚い袋を取り出す。あの中になにか入っているのだろう。
そう思ったが、そのままテーブルの上に置いた。
執事が、ガーラントに触ってもいいかと訪ねている。この袋で間違い無いようだ。
「これは、ツクモ殿から借用している物で、返さなければならないが、異常性がわかっていただけると思う」
ガーラントがの宣言を聞いて、執事が再度鑑定を行っているようだ。
「中を触っても?」
「いいですけど、中身はまだ出さないでください」
執事が中に手をいれる。小汚い袋なのに、大切に触るのだな。
執事が、儂の方を向き直して、袋を儂の方に渡す。
「領主様。我が目を疑いました。今日始めて、スキルの結果を信じないという行動に出てしまいました。何度鑑定しても同じ結果が出ます」
「それで?」
「この袋は、”収納スキルが付与された袋”で、ございます」
収納スキル。別に珍しい物ではない。
商人も使っている物も多い。
「収納スキルなら、商人も使っているだろう?」
「いえ、違います。”収納スキルが付与された袋”で、ございます」
「だから・・・あっ!え?そうなのか?」
「はい。回数無制限の収納スキルが付与されています」
「アーティファクトではないか?」
「そうです。領主様。考えてみてください。アーティファクトでも、スキル収納が着いた袋は・・・」
「商人にしたら、殺してでも欲しいと思うな。しかし」
「はい。アーティファクトとしては、それほど珍しい物ではありません。アーティファクトとしてはです!」
たしかに、アーティファクトとして珍しい物ではない。
それに、このミュルダにも、1つ保管されている。本当に、街の緊急時に放出する物が収められている。
「領主様」
「なんだ?」
「袋を見てください」
「袋・・・・え?これ・・・は?」
「おわかりですよね?」
「あぁこの袋は、ミュルダで買う事が出来る・・・街領隊の装備品ではないか!」
”なぜ?”が頭の中から離れない。
これを作った者が・・・いや、話の流れから、カズト・ツクモという人物が作ったのだろう。
「ご理解頂けましたか?」
「・・・あぁ」
「でも、まだ始まりです」
イサークが、袋を手にとって、1つの魔核を取り出す。
大きさから、レベル5か6程度のものだろう。珍しいと言えば珍しいが、それほどの価値がある物ではない。
イサークが、それを、執事に渡す。
受け取った執事の手が震えている。あの執事が震えるもの?
それほど危ないものなのか?
「イサーク殿。間違いないのですか?」
「ガーラントの鑑定でも、実際に使った俺たちも、疑いましたが、その鑑定結果で間違いないです」
「ふぅ・・・試してみていいですか?」
「問題ないですよ。俺たちも何度も使っていますが、問題はありませんでした」
何度も使っているという事は、あの魔核もアーティファクトの一種なのか?
執事が魔力を流し込んで、魔核に付与されているスキルが発動する。スキルの発動時には、微妙な変化がある。
3回変化が観測できた。
3回?同じスキルを3回かける意味は?
「どういう事だ?」
「領主様。この魔核に付与しているスキルは」
執事はここまで行って、言葉を切った。ガーラントとイサークを見ている。
ふたりとも、うなずいている。
「ふぅー”結界と防壁と障壁”のスキルが着いています。それも、使用制限がありません」
「は?もう一度言ってくれないか?」
「結界と防壁と障壁です。領主様」
少々投げやりになっている執事の声を久しぶりに聞いた。
現実逃避したくなる事実だな。
レベル5のスキルが3つ付いている?それだけでも・・・えぇぇいわからん。価値なんて解るか!
冒険者なら、親を殺してでも欲しがる奴がいるかも知れない。レベル5に付与している事を考えると、街領隊で使わせたら・・・無限の可能性がある。
「イサーク。これも?」
「はい。ツクモ殿の眷属である、ドリュアスが、俺たちに渡してきた物です。どうぞ好きに使ってくださいと渡されました」
「は?貸すだけでも・・・いや、盗んだ・・・違うな」
「そんな事、気にしていないと思うよ。ね」
突然、ナーシャが横から話に加わる。
3人が諦めているような表情を見せるが、納得している所から、考えると、”この程度”の物という認識なのだろうか?
騙して・・・いやダメだ、全部話を聞くまでは結論を急ぐな。
「領主様。落ち着かれましたか?次の話にはいっていいですか?」
「まだ有るのか?」
イサークと、ピムと、ガーラントが、深い溜息をついた。
「”まだ”じゃなくて、始まってもいませんよ?これは、ピムが1人で、ツクモ殿に面会した後の話で、俺たちは会っても居ないときです」
「は?」
「次にうつります」
そう言って、イサークが取り出したのは、よくあるデザインで、今、イサークが着ている物と同じデザインの服の上下だ、綺麗になっているし、かなり上等な素材を使っているのだろう。
「イサーク殿?触っていいですか?」
「えぇもちろんです」
執事が青い顔をしている。それほどのものには見えないのだが?
「・・・。ガーラント殿?」
「あぁ残念ながら本当じゃよ。お主も、あれを見たことが有ったのだな」
「はい。あれは本当に美しかった・・・」
あれ?
何のことを言っている?
「おい。何の事を言っている?」
「その前に、領主様。その服は、俺だけじゃなくて、ピムとガーラントとナーシャも、同じ素材の物を持っています。あぁ下着は、何枚か必要だろうと言われて、複数枚もらいました」
「は?複数?え?あっそう言えば、イリーガル・デス・スパイダーが居るのでしたね?」
「えぇ正式には、イリーガル・グレーター・デス・フォレスト・スパイダーです。それの亜種や、属性種が、それは沢山居ました」
今、なんと言った?
イリーガル・デス・スパイダーだけでも・・・イリーガル・グレーター・デス・フォレスト・スパイダーだと、伝説級の魔蟲ではないか?よく、此奴等生きてかえって・・・あっ!
「まさか・・・そ」
「領主様。そうです。この服は、私の鑑定では、”イリーガル・デス・フォレスト・スパイダー”の糸で作られた布だと出ています」
確か、白い布で、レベル7相当だったはず・・・違っても大差ない。この服だけで、どれだけの価値がある?
それが、人数分、下着も?意味がわからない。
「さて、次の話にうつりましょう」
「まて、イサーク。これが最後ではないのか?」
「は?まだ序の口ですよ?あぁツクモ殿から、俺たちが、ミュルダに帰ると言ったらお土産が必要でしょと言われましてね。下着になってしまいますが、領主とお孫さんのクリスティーネの下着と服も預かっています。どうされますか?」
「クリスのか?」
「はい。ナーシャがツクモ殿にお願いしたそうです。服のデザインはナーシャですので、あまり期待しないでくださいね。あっそれから、この布は、もう暫くは出さないとおっしゃっていました。すみません。俺たちが、価値に関して、いろいろ喋っちゃいまして、市場を混乱させるのはダメだろうという事で、領主様とクリス殿の分で最後になるようです」
「さっきの魔核もか?」
「どうでしょう。価値に関しては、認識されましたが、生活が便利になる物なら提供すると言っていました。でも、レベル1や2の物にするみたいですよ」
「そうか・・・」
イサークは、そう言って袋を取り出した。
こっちは、普通の袋だと笑っていたが、中身が超弩級の爆弾だとは誰も思わないだろう。
「イサークよ。これでおしまいだろうな?」
「そうですね。ピム。ガーラント。そろそろ、ツクモ殿の異常性がわかってもらえたと思うから、いいよな?」
「えぇ大丈夫だと思いますよ」「儂も依存わ無いぞ!」
先程の収納袋から、大量の魔核と、大量のスキルカードが出てくる。
魔核は、大きさから、街で不足し始めている、レベル1~3程度のものだろう。数えるのも馬鹿らしくなるくらいの量だ。山になっている。スキルカードもレベル1~4程度だろうか?ざっと見た感じ、2百枚程度あるだろうか?
確かに、価値としてはそんなに高くないが、街として不足し始めている物だ。単純に嬉しい。スキルカードに関しては、数が多いが、街の穀物で支払えるだろう。魔核に関しても同じだ。備蓄してある穀物で払えるだろう。
そういう取引をしたいという事なのだろうか?
「イサークこれは?」
「カズト・ツクモ殿からの”支援”物質です」
「すまん。イサーク。儂は、疲れているかもしれん。もう一度言ってくれ、”支援”と聞こえたのじゃが?」
「えぇ”支援”物資といいました。ツクモ殿は、これだけの物を、ミュルダに無償提供すると言っているのです」
「はぁ?無償?なぜ?これだけの物を?」
いや違うな。先程のことから考えると、カズト・ツクモ殿にとっては、価値がある物と認識していないのだ。
「ねぇイサーク。まだ?」
「もうちょっとだ。待っていてくれよ」
「わかった。あっ!それから、さっき、リーリアちゃんのお姉さんから連絡が入ったよ!それも後で?」
「え?連絡って念話か?」
「うん」
「いい話か?」
「うん。すごくね!」
「そうか、それなら、最後かな?」
「わかった!」
なにやら、イサークとナーシャの会話も気になったのだが・・・。
「イサーク。それで、ツクモ殿は、なにか見返りを期待しておいでなのか?」
「どうでしょう。見返りという感じではないと思いますが・・・そろそろ、本題に入りたいのですがいいですか?」
「まだ本題じゃなかったのか?」
「えぇ残念ながら、でも、本題は、異常性はないですよ。多分」
イサークが語り出した話は、先程の話に輪をかけて信じがたいことだったが、いろいろなパーツを集めて考えると、納得するしか無い。
ツクモ殿が、獣人族を助けた。問題ない。ミュルダにとっては、良い事だ。助ける時に、アンクラムの兵とアトフィア教のほとんどを捕らえるか、殺害した。これも、別にどうでもいい。どうでもいいは間違いだな。ミュルダにとっては良い事だ。
獣人族の集落を作った?
ダンジョンに潜らせている?ダンジョンから得た物を獣人族の自由にさせている?
捕らえた教団関係者・・・司祭だろう・・・を、護衛してアンクラムに届けた?その時に、ツクモ殿配下の人間が、アンクラムに潜入した?
可愛い女の子?とてつもなく強い?治療スキル持ち?清掃スキルも?
情報が多すぎて混乱する。
しかし、アンクラムが、ミュルダへの侵攻を中止したのも、常備兵の9割の損失があったこと。教会のトップ3が全員一時的に不在だったこと。それから、先程のスキルカードのほとんどが、アンクラムの兵が持っていた物だという事だ。武装も全部解除されて、男も女も、全裸でブルーフォレストに放置されたのだと言っている。
生き残れた者も、それでは、死ぬか、精神を壊されて、兵としては使い物にはならないだろう。女には、ナイフを一本だけ渡してあるそうだが、それが同士討ちを招いたのだろう。
儂がほしかった、情報が手に入った。
安全になったと宣言するには、イサークたちだけの情報では足りないが、安心できる材料には違いない。
ツクモ殿は、ミュルダの恩人に違いない。
利用しようなどと考えるよりも、もっと違う関係が結べたらと考える事ができそうだ。
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僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
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ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
はぁ?とりあえず寝てていい?
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相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
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