165 / 178
第五章 共和国
第六十四話 尋問
しおりを挟む尋問を始めようとしたが、”意味がない”と解ってしまった。
生き残っている奴も壊れてしまっている。
まともに会話が出来ない。苦痛を与えられても、”へらへら”と笑っている。指を切り落としても、足の骨を折っても反応がない。痛みを感じないのか?
うめき声を上げるから、痛みは感じるのだろうけど、言葉が通じない動物や魔物を相手にしているような感覚になる。
「エイダ。死んでも構わない。記憶を抜き取ってくれ」
『了』
クォートとシャープの後をついてきた奴らだと報告を貰った。
俺を襲ったナイフの解析を進めている。大本は解ったのだが、まだ不明な部分も多い。
やはり、帝国が使っていた”黒い石”が材料のようだ。鋭くはないが、スキルが付与されている。毒の様な物も付与されていた。毒は、解析中だが、俺たちが知らない毒のようだ。
聞けなくなってしまったが、カルラが知っていなかったのだろう。知っていたら、自分にも対処を行っているはずだ。
エイダが抜き取った記憶から襲撃の様子は大まかに解ってきた。
俺は刺された。
脇腹だ。いきなり刺されて、俺は倒れた。
そして、追撃をしてきた奴らを、カルラが一掃した。
第二撃に来た奴らを、アルバンが対応した。
カルラは、俺を助けようと持っているポーションやワクチンを俺に使い始める。
ここで効果があったのか解らない。
アルバンが倒しきって戻ってきた。
その時に、倒したと思っていた奴なのか?伏兵なのか?存在は解らないが、俺たちに襲い掛かってきて、カルラが俺を庇って刺された。カルラを刺した奴を倒そうとしたアルバンが別の奴に刺された。
刺されながらも、アルバンは反撃をして、二人を無力化した。
順番は理解が出来た。
問題は、目的だ。
ナイフを落とした時点で、こいつらの精神が壊れて、動かなくなっている。
”ひゃはひゃは”笑っている奴は居る。
よく見れば、アルトワ町の町長の妻だった奴だ。他にも、俺たちを襲撃した奴らの家族だ。
復讐なのか?
復讐と言われれば、理由は解るが、どこからかナイフを入手した。
本数も、27本?探せばまだあるかもしれない。全部、回収しておく必要があるだろう。こんなナイフは存在しないほうがいい。
帝国というか、やつらの組織が作っていたのだとしたら、何か対策を考える必要がある。
必ず、対峙する時が来る。今は、まだ対峙できない。俺には力がない。
「マスター」
クォートが、周りの探索から帰ってきた。安全の確保は絶対だ。何度でも確認をしておこう。カルラとアルバンをこれ以上の傷をつけずに連れて帰る。俺ができる最大の行いだ。絶対に、連れて帰る。
「クォートは、奴らの回収が終わったら、ナイフの探索と回収を頼む」
クォートには、散らばっている奴らの回収を頼む。
奴らは、捨てておきたい気持ちがあるが、”黒い石”に浸食されている場合に、放置したらどんな影響があるか解らない。共和国がどうなろうと構わないが、アルトワ・ダンジョンに居る連中に被害がでる可能性を考えれば、放置はできない。
「かしこまりました」
クォートには、俺たちを襲撃した奴らの回収をシャープと行ってもらっている。
散らばっている奴らも居る。魔物に襲われた奴らも居る。アルバンが無力化した奴らは、精神は壊れているけど、身体は大丈夫だ。動けなくはなっているが、生きては居る。人としては、死んでいるかもしれないが、生命活動は続いている。
どうやら、俺には天罰が下ったようだ。
笑い声を上げている人物が、俺に天罰を与えたと騒いでいる。
気持ち悪いうえに、気分も悪い。
「煩い。黙れ!」
顔を蹴り上げる。
歯が数本折れる音がするが気にしない。簡単には死なせない。殺さない。なんとか、精神を戻す方法を探す。戻したうえで、罪と罰を与える。それこそ、死んだ方が”まし”だと思えるような苦しみを与える。与え続ける。カルラもアルバンも望んでいないことは解っている。俺は、俺のために、こいつらを許せない。
そして、こいつらは道具だ。
ナイフで人を殺して、ナイフが訴えられて、罰せられることは考えられない。だから、道具を使った奴らを探して殺す。
壊れたレコードの様に、同じことを繰り返す。
「エイダ。こいつら、精神支配とか、精神系のスキルは見られないのだよな?」
『是』
やはり、秘密はナイフか?
「なぁこいつら、生きているよな?」
『生命活動の確認は出来ています』
「そうだよな・・・」
何か、違和感がある。
生きているのは、生きているのだろう。精神が壊れただけなのか?
ナイフに付与されていたスキルが原因なのか?
俺が、ヒューマノイドタイプに行っているように、人格のインストールができるのか?
そんな事ができるとは思えないが・・・。精神を壊したうえで、上書きを行う。同調する。スキルか?
ナイフの解析を進めないと解らないことだらけだ。
そして・・・。
大きな問題も存在している。
カルラとアルバンの死を伝えなければならない。
ヒルデガルドに何と言って詫びればいいのか・・・。詫びて済むような話ではない。ユリウスにも、報告をしなければ・・・。
クォートと一緒にナイフを集めていたシャープが戻ってきた。
「マスター。ナイフは、全部で31本です」
「そういえば、捕えた奴らは?」
「死者を含めて、31名です。私とシャープの後ろに居た者は、30名です」
「一人増えているのか?」
「はい」
「シャープ!こいつらの服装で、一人だけ違った奴は居ないか?」
「調べます」
「居たら、そいつだけは、別枠で頼む。もし居なかったら、手を調べてくれ」
「”手”ですか?」
「あぁ手が綺麗な奴が居たら、そいつが主犯格の一人だ」
「わかりました」
シャープに任せておけばいいだろう?
服や手を調べて行けば、わかるはずだ。
クラーラが言っていたことがヒントになるとは・・・。
俺の予想が当たっていたら、俺はまた奴に乗せられたことになるのか?
「マスター。一人だけ、手が綺麗な者が居ました」
ダメだ。
感情が抑えられない。
爆発しそうだ。
「エイダ。シャープが見つけた奴は・・・」
『死んでいます』
「だろうな。そいつが、ナイフを作って、黒い石をばらまいた奴だ。名前は解らない。クラーラが”殺した”と言っていた奴だ。そいつだけは、最初から死んでいたのだろう」
『わかりません』
「大丈夫だ。俺が、”そう”と考えているだけだ。正しくても、正しくなくても、どちらでも構わない」
エイダとクォートとシャープには答えられない。
当たり前だ。感情が芽生えていると言っても、元はAIだ。答えが無いのは解っている。必要もない。納得が出来れば、十分だ。
死んだ奴は、帝国の人間なのだろう。
クラーラの言葉からは、妖精の涙とかいう組織の人間なのだろう。席次があるようなことを言っていた。何番目なのか解らないが、クラーラに簡単に殺される程度だとしたら、実力は俺と同じくらいなのだろう。
「エイダ。クォート。シャープ。奴らはスキルで運ぶ。国境を目指すぞ」
「はい」
クォートが代表して答えている。
カルラなら・・・。
違う。考えても仕方がない。
---
国境までは、行商も居なかった。
国境の壁が見え始めた。
カルラとアルバンは、何としても一緒に帰るとしても、問題は死にかけている奴らだ。国境を越えられるとは思えない。
いくら、共和国の国境が緩くても、通過は無理だろう。
俺たちだけなら、俺の身分を明かして、強行突破が可能だとは思う。
「なぁカルラ・・・」
そうだな。
これからは、俺が考えて、俺が動かなければ、エイダもクォートもシャープも動かない。
わかったよ。カルラ。
明日になれば、何かが変わるとは思えないが、今日は休もう。
国境の検問が見える丘で、休息を取ろう。
疲れた。
俺は、ここで何をしているのか?
何日が経った?
0
お気に入りに追加
306
あなたにおすすめの小説
勇者召喚に巻き込まれたおっさんはウォッシュの魔法(必須:ウィッシュのポーズ)しか使えません。~大川大地と女子高校生と行く気ままな放浪生活~
北きつね
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれた”おっさん”は、すぐにステータスを偽装した。
ろくでもない目的で、勇者召喚をしたのだと考えたからだ。
一緒に召喚された、女子高校生と城を抜け出して、王都を脱出する方法を考える。
ダメだ大人と、理不尽ないじめを受けていた女子高校生は、巻き込まれた勇者召喚で知り合った。二人と名字と名前を持つ猫(聖獣)とのスローライフは、いろいろな人を巻き込んでにぎやかになっていく。
おっさんは、日本に居た時と同じ仕事を行い始める。
女子高校生は、隠したスキルを使って、おっさんの仕事を手伝う(手伝っているつもり)。
注)作者が楽しむ為に書いています。
誤字脱字が多いです。誤字脱字は、見つけ次第直していきますが、更新はまとめて行います。
パーティ追放が進化の条件?! チートジョブ『道化師』からの成り上がり。
荒井竜馬
ファンタジー
『第16回ファンタジー小説大賞』奨励賞受賞作品
あらすじ
勢いが凄いと話題のS級パーティ『黒龍の牙』。そのパーティに所属していた『道化師見習い』のアイクは突然パーティを追放されてしまう。
しかし、『道化師見習い』の進化条件がパーティから独立をすることだったアイクは、『道化師見習い』から『道化師』に進化する。
道化師としてのジョブを手に入れたアイクは、高いステータスと新たなスキルも手に入れた。
そして、見習いから独立したアイクの元には助手という女の子が現れたり、使い魔と契約をしたりして多くのクエストをこなしていくことに。
追放されて良かった。思わずそう思ってしまうような世界がアイクを待っていた。
成り上がりとざまぁ、後は異世界で少しゆっくりと。そんなファンタジー小説。
ヒロインは6話から登場します。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
転生したので、とりあえず最強を目指してみることにしました。
和麻
ファンタジー
俺はある日、村を故郷を喪った。
家族を喪った。
もう二度と、大切なものを失わないためにも俺は、強くなることを決意する。
そのためには、努力を惜しまない!
まあ、面倒なことになりたくないから影の薄いモブでいたいけど。
なにげに最強キャラを目指そうぜ!
地球で生きていた頃の知識と、転生するときに神様から貰ったチートを生かし、最強を目指します。
主人公は、騎士団に入ったり、学園に入学したり、冒険者になったりします。
とにかく、気の向くままに、いきあたりばったりに書いてるので不定期更新です。
最初シリアスだったのにギャグ要素が濃くなって来ました。
というか登場人物たちが暴走しすぎて迷走中です、、、。
もはや、どうなっていくのか作者にも想像がつかない。
1月25日改稿しました!多少表現が追加されていますが、読まなくても問題ありません。
スマートシステムで異世界革命
小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 ///
★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★
新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。
それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。
異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。
スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします!
序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです
第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練
第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い
第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚
第4章(全17話)ダンジョン探索
第5章(執筆中)公的ギルド?
※第3章以降は少し内容が過激になってきます。
上記はあくまで予定です。
カクヨムでも投稿しています。
これがホントの第2の人生。
神谷 絵馬
ファンタジー
以前より読みやすいように、書き方を変えてみました。
少しずつ編集していきます!
天変地異?...否、幼なじみのハーレム達による嫉妬で、命を落とした?!
私が何をしたっていうのよ?!!
面白そうだから転生してみる??!
冗談じゃない!!
神様の気紛れにより輪廻から外され...。
神様の独断により異世界転生
第2の人生は、ほのぼの生きたい!!
――――――――――
自分の執筆ペースにムラがありすぎるので、1日に1ページの投稿にして、沢山書けた時は予約投稿を使って、翌日に投稿します。
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる