異世界でもプログラム

北きつね

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第五章 共和国

第五十一話 再びのアルトワ

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 ダンジョンの攻略を終わらせて、王国に帰還するために、拠点を築いたアルトワ町に向かっている。
 より正確に言えば、アルトワダンジョンに向かっている。

 俺たちだけなら、アルトワダンジョンの最下層からウーレンフートに移動することも出来るのだが、国境で証拠を残す必要がある。

『マスター』

 俺の横で静かに作業をしていたエイダが話しかけてきた。

「終わったのか?」

『是』

 クォートとシャープと合流して、報告を受けたのだが、俺たちが攻略を見送った小さなダンジョンや、未発見状態だったダンジョンを攻略してきた。眷属を自由に増やしてよいと権限を与えたら、眷属を増やして、攻略を行ったようだ。最下層に問題が設置されていた場所もあったが、サーバに問い合わせを行って答えたようだ。変な”なぞなぞ”が無くてよかった。
 眷属は、ヒューマノイドタイプだけではない。テイマーを装って、魔物を配下に加えている。

 ヒューマノイドベアであるエイダが居るから考えていなかったけど、機動力を考えれば、テイマーは”有”だな。

 クォートとシャープの合流で、攻略したダンジョンの統廃合を行った。未発見のダンジョンで、コアが存在していたダンジョンは、育つに任せることにする。食べられない魔物やドロップ品を絞る程度の調整を行って、フロアにも資源はない状態にした。

 資源があるダンジョンは潰した。リソースは、アルトワダンジョンに吸収するようにした。
 発見はされていたが、資源のダンジョンとして認識されていなかったダンジョンは、1-10階層は資源が皆無になった。11階層から下は、資源がある状態にしているが、魔物の強さを2段くらい強くした。ウーレンフートの中層以降と同じレベルだ。

 クォートとシャープの報告から、やはり黒い石や黒い魔物が見つかっている。

「黒い石の対応も終わったのか?」

『把握できる範囲で対処済みです』

「エイダは、そのまま監視の強化」

『了』

 支配下のダンジョンが増えた事で、できる事が増えた。
 正確に言えば、情報量が増えた。未発見のダンジョンを活かす方法として、増えた情報量の処理を行わせることにした。リソースを喰わないようにして、魔物も最低限の配置にしてある。
 階層は増やしてあるので、何もないダンジョンに潜っていく苦痛を味わってもらうコンセプトだ。そのうえで、階層主だけは強いけど、何もドロップしないように設定してある。潜るだけ赤字になる素晴らしいダンジョンだ。

「旦那様」

 俺の作業がひと段落したのを見てカルラが声をかけてきた。
 モニターには、ログの解析の状況が流れているが、異常は見られない。

「どうした?」

 モニターにしっかりとログが流れている事を確認して、カルラに返事をする。
 カルラも、俺からの返事を待って本題に入ってくれた。

「アルトワ町に寄りますか?」

 確かに、寄った方がいいだろう。
 町というか、村の様子も気になる部分がある。

「そうだな。アルトワダンジョンの事が知られているのか気になる」

 ダンジョンが発見された事や、資材を持ち込んで拠点にして、実質的な支配をされているとは思っていないだろうけど、何か情報が流れているとしたら、対処が必要になるだろう。
 共和国の兵がアルトワダンジョンの拠点に向かったとしても、対処は可能だろう。

「わかりました」

 カルラの様子が?
 何か、懸念があるのか?

「どうした?何か、心配事か?」

 聞いたほうがいいだろう。
 カルラが何かを感じたのなら、それは考えた方がいい事だろう。直感は、無視しないほうがいいことが多い。特に、カルラの様に経験を積んでいるのなら、なおさらだ。

「はい。自業自得ですが、アルトワ町の町民や町長を私たちが殺したのは事実です」

 完全に忘れていた。
 情報が伝わっているとは思わないけど、情報が伝わっていたとしても、俺たちが恨まれるのは間違っているが、間違っていることを正面から受け止める事ができる者は少ない。
 村が静かな衰退に向かって行くのを止めようと動いたが、間違った方法を取った結果だから、受け入れて欲しい。

 でも、残された者たちは、楽に恨むことができる俺たちを恨むだろう。

 情報収集は諦めた方がいいだろう。

「あぁそうか・・・。やめておくのが無難か?」

 アルトワ町の連中だけなら、対処は可能だろうけど、俺は、俺たちは、殺戮者ではない。襲われれば、返り討ちにするけど、襲ってこない者を切って捨てようとは思わない。
 面倒ごとを避ける意味でも、アルトワ町には寄らないほうがいいだろう。

 補給の必要もない。
 そもそも、補給ならアルトワダンジョンの拠点で行えばいい。

「はい」

 カルラの進言を受け入れる。
 アルトワ町に寄ろうと思ったのも、アルトワダンジョンの情報が流れているか確認する為だし、必要はないだろう。

「旦那様。私とシャープで聞き込みを行いましょうか?」

 俺とカルラの話を聞いていた、クォートが自分たちで行くと言い出した。

「うーん」

 確かに、クォートとシャープなら上手くやるだろう。

「元々は、目立たない様になっていますので、大丈夫だと思います」

 そうだな。
 目立つ目立たないで言えば、目立つのだが、印象に残らないような作りになっている。
 テンプレートの執事とメイドだ。貴族や、豪商なら一緒に行動しても不思議ではない見た目をしている。だから、執事とメイドとして印象には残るが、主人までは印象に残らない(はず)。

「わかった。クォートとシャープでアルトワ町での聞き込みを頼む。無理はしなくていい。アルトワダンジョンに人が来ていれば、見つかったと判断ができる」

 クォートとシャープでアルトワ町に入ってもらう。
 その時に、新しく加わった眷属を連れて行くことになった。魔物も一緒だ。印象が完全に違うようにしてしまえば、クォートとシャープが目立たない。

 クォートとシャープは、馬車で移動する。俺たちは森の中を移動するので、馬車は不要だ。
 髪の毛の色と目の色を変えて、アルトワ町に向かう。

「カルラ。アル。エイダ。俺たちは、森の中に入って、アルトワダンジョンに向かう」

「はい」「うん」『了』

 森の中を進むのには慣れている。
 大きな問題もなく、アルトワダンジョンの拠点に辿り着いた。

「大将!」

 ベルメルトか?
 相変わらずだけど、アイツも呼び方を改めないな。

「悪いな。少しだけ世話になる」

「了解です!おい!」

 塀の上から俺を確認して、門を開けるように伝える。

 門が開いて、橋が掛けられる。

 ここの頭は、ベルメルトで大丈夫だな。
 紛れ込んだと言っている者たちも素直に従っているのだろう。

「ベルメルト」

「はい!大将!」

「だから、大将は辞めろ」

「ダメです。大将だから、大将なのです!そうだろう!」

”はい。大将!”

 見事に揃っている。
 子供が増えている?

 その辺りを含めて、状況の確認が必要だな。

 その前に・・・。

「エイダ。パスカルやリスプへの接続は?」

『問題はありません』

「わかった。リソースは?」

『想定の範囲内。12%の利用です』

「ん?12%?」

『はい。ダンジョンにリソースを振り分ける事で、一時的にリソースの利用が上がっています』

「あぁそうか、それならしょうがない」

『また、アルトワダンジョンで戦闘が行われて、リソースを利用しました。パフォーマンスを上げますか?』

「そうだな。利用率は、10%未満にしてくれ、ウーレンフートからサーバを補充してくれ、弾の残りはあるよな?」

『はい。ラックサーバを設置しますか?』

「必要か?」

『必要になる可能性は43%です。現在、非活性のダンジョンに戦闘が行われるようになると、リソースが不足します』

「わかった。リスプを増強してくれ、他の非活性のダンジョンも、できる限り増強してくれ」

『了』

 俺とエイダのやり取りを黙って見守っていた者たちが、綺麗に並んでいる。
 必要ないと言っても辞めないのだろう。

 このアルトワダンジョンを要塞化してしまおうか?
 ベルメルトに代官の真似事をさせればいいだろう。共和国が認めなくても、認めても、どちらでもいい。俺たちが実効支配してしまえばいいだけだ。
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