異世界でもプログラム

北きつね

文字の大きさ
上 下
146 / 179
第五章 共和国

第四十五話 設定?

しおりを挟む

 扉を抜けると、階段が見えた。
 下の階層に向うようだ。

 降りていくと、途中で二つに別れていた。

 一つは、扉で塞がれている。
 もう一つは、扉はついていない。

「扉がないのは、地上に戻る部屋か?」

「わかりませんが、その可能性が高いでしょう」

 扉に触れると、面倒な”箱”が現れた。寄木細工だ。

「兄ちゃん?」

「ん?アル。やってみるか?」

「うん!」

 アルバンに寄木細工の箱を投げ渡す。簡単に説明をするが、俺もそこまで詳しくない。
 振ると、何か入っているのが解るが、そのまま蓋を開けたのでは、鍵は取り出せない。

 俺も、何度か触ったことがある程度だから自信はないが、それほど複雑な細工はないと思っている。

 そんな考えが俺にもあった。
 甘かった。

 途中で、箱の破壊も考えたが、ダンジョンのオブジェクトになっているようで、破壊ができない。思いっきり切りつけても傷が付かない。もちろん、スキルも意味がない。

 動かせる場所は4箇所。4箇所がスライドする。スライドは、7段階。その組み合わせなのか、順番なのか?

 アルバンは、途中で飽きてしまった。
 カルラも試したが、自分には向いていないと早々に諦めてしまった。

 最終的に、この手の単純作業に向いているのは、エイダだと結論が出た。
 エイダが黙々と試している。こんな面倒だったか?もっと楽しかった思い出がある。

 2時間後、エイダが鍵を取り出した。
 寄木細工は、鍵を取り出したら消えてしまった。欲しかったがしょうがない。

 扉を開けて、階段を降りると、俺たちの予想通りに、制御室に辿り着いた。

「X1turbo?それに、X68Kか!SUPERか!SCSIインターフェースがある!PROでもいいけど、やっぱりSUPERだな」

 奥を見ると、ポケコンの山が出来上がっている。
 これは嬉しい。宝の山だ。

 MZシリーズまである。シャープの展示場か?

 え?あれは・・・。SM-UX8000?嘘だろう?UNIXを積んだ機種だ。
 俺も、実物は触ったことがない。博物館か?

 ふぅ・・・。
 興奮してしまった。

「旦那様?」

「なんでもない。ポケコン・・・。そっちの山になっている物を頼む。エイダ、いつものように、ウーレンフートに繋いでくれ」

『了』

 これからは、手慣れた作業だ。
 問題は、データの互換性があるのかだけど、大丈夫だろうと勝手に思っている。

 今までも、PC88やPC98でダンジョンが動いていたことがあった。
 管理端末の入れ替えを行って、徐々にデータの移行を行えば多少の問題は発生したが、移行は完了した。

 今回は、最難関だけあって、X68Kに拡張ボードが入っている。

 管理している端末のスペックに依存した深さになるのだろう。
 概ねの感触なので、間違っているのかもしれない。

『マスター。ボスと仕掛けはどうしますか?』

「最下層のボスと仕掛けは継続」

『了』

 あのボス戦は面倒だけど、考えられている。
 確かに、途中で辞めてしまいたくなる。

「エイダ。ボス戦だけど、途中で、地上に戻る魔法陣は出せるか?」

『可能です』

「頼む」

『了』

 設定を変更して、ウーレンフートに繋ぐ前に、”黒い石”の調査を行う。
 全フロアのチェックなので時間が必要だ。

「旦那様。お食事にしますか?」

 俺の返事を聞く前に、カルラが準備を始めている。
 確かに、時間を考えれば、食事をして仮眠をとっても十分な時間だ。

 エイダに後を任せて、仮眠をすることにした。



「旦那様」

 カルラが起こしに来たようだ。

「終わったのか?」

「はい」

 カルラでは、正確なことは不明だろう。
 作業していた場所に向うとエイダがケーブルを繋げて作業を行っている。

「エイダ」

『マスター。移行作業は終了しました。黒い石の探索および駆除も終了しました』

「そうか、黒い石は?」

『37個の存在を確認。動作していた物は、13個でした。駆除ワクチン適用は終了しています』

「魔物は?」

『駆除が終了しています』

「わかった。移行は・・・」

 見れば、ヒューマノイドが居るのだから、ウーレンフートと繋がったのだろう。
 ネットワークの構築も終了しているようだ。

 以前に伝えたように、サブ拠点として使えるように、ハードウェアを持ち込んでいるようだ。

「ネットワークの構築か?」

『是』

 ウーレンフートが落ちた時のためのバックアップ環境が欲しかった。
 確かに、このダンジョンがボスの難易度から適切だろう。

「エイダ。前室を作って、ダミーの制御室を作ろう」

『是』

 エイダがヒューマノイドたちに指示を出して、部屋を構築する。
 俺たちは、何もすることがないから、作業を見ているだけだ。

 もう少しだけ寝ていられるな。
 今日は、寝て過ごそう。

「カルラ。アル。俺は、もう少しだけ寝る。自由にしていいぞ?あっ外には行くなよ」

「うん」「はい」

 丁度、パイプ椅子が3つあったので、贅沢に3つ使って寝る事にする。
 二つだとバランスが悪い。3つあれば寝るのには十分だ。

 カルラは、連絡用の資料をまとめるようだ。
 アルバンは、何もやることがないので、前室に戻って訓練をすると言っていた。

 まぁ問題はないだろう。
 ボス戦のトリガーを引かなければ大丈夫だ。

 階段を使った模擬戦を行うようだ。



「旦那様。旦那様」

 カルラが、パイプ椅子の前で跪いている。

「ん?カルラ?」

「はい。エイダから、旦那様にご報告があるようです」

 エイダから?
 なら、エイダが起こせばいいのに、何か問題が発生したのか?

「どうした?」

 エイダは、相変わらずコネクトした状態で作業を行っている。

『マスター。前室の設置が終了しました』

 前室の設定は終了したのか?
 前室の様子はモニタリングが出来ているようだ。

 既に、X1turboやX68Kは持ち出されている。
 移行も終わったようだ。細かい設定は違っても、問題にならない。問題になっても、なんといっても、不思議空間のダンジョンだ。大騒ぎするほうが問題だと思われてしまう。

「わかった?それで?」

『はい。予期せぬことですが、ダンジョンの中にダンジョンが発生してしまいました』

「ん?ダンジョン?それは大丈夫なのか?」

『ログを調べていますが、大きな問題にはなっていません。リソースの食いあいも発生していません』

 ログ?
 モニターには表示ができないのか?

「何が違う?」

『設定が違うダンジョンの設置が可能です』

「ん?ウーレンフートでもできるのか?31階層を海にするのとは違うよな?」

『はい。処理の分散が可能になります』

「うーん。わかった。ひとまず、現状を維持、様子を見よう。あっ!前室は、スタンドアロンだよな?」

 そうか、それでログでの監視になってしまうのだな。
 ログを見るためのツールが必要になりそうだ。

 面倒だな。現状で監視を強化しておこう。
 端末で見ていないと、リアルタイムでの監視ができない。ログでは、タイムラグが出てしまう。問題にはならないとは思うが・・・。

『はい』

「わかった。遊びのダンジョン以外では、メリットが少ない。ここも、あまり大きくならないように調整してくれ」

『了』

 ログだけなら、リモートでも確認ができる。
 これで、設定は終わったかな?

 最初に決めていた通りに設定が行われた。

 これで、このダンジョンからもドロップが渋くなる。採取も難しくなるだろう。

 パーティーの問題は、何も設定が行われていない。
 デマではないが、偶然が続いたことで、禁則事項になったのかもしれない。

 ダンジョンの設定には、人数で区切っている場所は見当たらない。
 引き続いて、ヒューマノイドタイプには調査をしてもらっている。該当するような機能が見つからなければ、設定を作ってもいいと思っている。少しだけ厄介だが、スタート時点のプロパティを監視すればいいだけなので、出来そうな気がする。

 さて・・・。

「カルラ!アルを拾って、地上に帰るか?」

「かしこまりました」

 階段で、ヒューマノイドタイプと模擬戦をしていたアルバンを拾って、もう一つの階段を降って、魔法陣が書かれた部屋に辿り着いた。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

ふたつぶの涙

こま
ファンタジー
「わたしは、ユッポ。かくしてくれて、ありがとう!」 僕が出会ったのは、失踪した父を探す少女に見える、人形。意思を持って動くモノなんて、本職の人形師でも作れないのに。家具を作る職を離れたとはいえ師の作品。僕は興味のまま、人形の父親探しを手伝うことにした。 ユッポが故障し、修理すると、人間的な感覚を得ていくようだ。ユッポはどうなるのか、父を見つけることはできるのか。人が苦手な家具職人の青年と、天真爛漫な人形の少女。でこぼこなふたり旅は前途多難!

異端の紅赤マギ

みどりのたぬき
ファンタジー
【なろう83000PV超え】 --------------------------------------------- その日、瀧田暖はいつもの様にコンビニへ夕食の調達に出掛けた。 いつもの街並みは、何故か真上から視線を感じて見上げた天上で暖を見る巨大な『眼』と視線を交わした瞬間激変した。 それまで見ていたいた街並みは巨大な『眼』を見た瞬間、全くの別物へと変貌を遂げていた。 「ここは異世界だ!!」 退屈な日常から解き放たれ、悠々自適の冒険者生活を期待した暖に襲いかかる絶望。 「冒険者なんて職業は存在しない!?」 「俺には魔力が無い!?」 これは自身の『能力』を使えばイージーモードなのに何故か超絶ヘルモードへと突き進む一人の人ならざる者の物語・・・ --------------------------------------------------------------------------- 「初投稿作品」で色々と至らない点、文章も稚拙だったりするかもしれませんが、一生懸命書いていきます。 また、時間があれば表現等見直しを行っていきたいと思っています。※特に1章辺りは大幅に表現等変更予定です、時間があれば・・・ ★次章執筆大幅に遅れています。 ★なんやかんやありまして...

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

処理中です...