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第五章 共和国
第十七話 攻略開始
しおりを挟むアルバンとダンジョンに向かっている。
道中に現れた獣は無視した。
盗賊たちが使っていると思われる拠点を発見したが、すでに使われなくなっているようなので、燃やして、穴を掘って埋めておいた。新しい盗賊が住みついたり、魔物の巣になったり、何かの拠点に使われるのは俺が望む未来ではない。
「アル。悪いな」
「いいよ。兄ちゃん。これも大事なことだよね」
「あぁ新しい盗賊が住みついたら、町は大変な目にあう」
「うん」
「それに、この前のようなゴブリンが住みついても厄介だろう?」
「そうだね。おいらの最初の村も・・・」
アルバンがクリスの所に来るまでの話は簡単に聞いた。
言葉は悪いがよくある話だ。盗賊たちが、近くの廃村に住みついた。そして、アルバンの村を襲った。クリスの父親が治める領地の隣。事情が解って、秘密裡に騎士が駆けつけた時には、数名を残して殺されていた。
逃げ出したアルバンたちが見つかったのは、襲撃があってから10日後だ。その間に、アルバンたちは最初に逃げ出した17名から5名まで人数を減らしていた。そして、残った5人もアルバンともう一人以外は、動くことが出来なかった。
辺境伯の領軍は、アルバンたちを自領に連れて帰った。
「そうだな。アル。しっかりと、村を潰すぞ」
「うん!」
時間を欠けて、村を自然に戻していく、その過程で見つけた物もあったが、検証は後で行う。
2時間ほどで、元村の野営地は更地になった。
「兄ちゃん?どうするの?」
少しだけ考えてしまった。
更地になったのはいいが、このままでは野営地として十分な広さが出来てしまっている。水場が近くにないから、いきなり野営地にはできないが、元村があった場所だ。近くに水場が存在している可能性は排除できない。
「うーん。エイダ!」
『はい』
「ここに、ヒューマノイドたちを使って、砦を作る。可能か?」
『可能です。しかし、距離の問題があります』
「そうだよな。何か方法はないのか?」
『・・・。現状では、解決方法は存在しません』
「わかった。それなら、この場所を、拠点として使えなくするのは可能か?」
『可能です。魔物タイプのヒューマノイド型を10体ほど呼びつけて、徘徊させれば十分だと判断します』
「そうすると、討伐隊が編成されたりしないか?」
『現在の、共和国の状態では、可能性は低いと判断します』
「そうか・・・」
『街道から外れています。現状、この場所を拠点にしても、旨味が低く、村を作るリスクを考えれば、討伐隊の編成は考えられません』
「わかった。エイダ。パスカルと協議してくれ、あとダンジョン外での活動になる。十分に注意するように伝えてくれ」
『了』
エイダが通信を始めたのを見て、アルバンに声を掛ける。
「アル。ダンジョンに行くぞ!」
「うん」
寄り道をしてしまったが、元々は息抜きだ。
アルバンの説明では、ダンジョンまで半分くらいの距離だ。まだ半分なのか、もう半分なのか、判断に迷う。
アルバンと話をしながら、時々エイダからの報告を聞いて、ダンジョンに到着したのは、予定を1時間ほど過ぎた頃だ。村を更地にしていた時間を考えれば、驚異的な速さだ。
俺もアルバンも、複数のスキルを同時に利用できる。索敵をしながら進んでも問題はない。鍛錬に来ているのだから、移動中も鍛錬をしても問題はない。
「アル。ここか?」
「うん!おいらが見つけたダンジョンはここ!」
アルバンが自信満々に言っているけど、どう見ても、ダンジョンには見えない。
『マスター。ダンジョンです』
エイダから補足が入った。
アルとエイダが指摘したのは、雪山に広がるようなクレバスだ。崖?とでも表現すればいいのか?
「ほら、兄ちゃん。あの場所が、入口が見える。あそこから、中に入られる!」
「おぉぉ」
納得はしたが、なかなかのミッションだぞ?
アルバンは、確認のために、中に入ったと言っているけど、5メートルくらい崖を下ってから入口に入る?
ロープを垂らしても・・・。
「あっ」
「兄ちゃん?」
「いい方法を思いついた。アル。縄は必要ないぞ?あっ縄も併用した方が安全だな」
近くにあった木に縄を括り付けて、ダンジョンに入ろうとしていたアルバンに指示を出す。縄は使うがメインではない。
「え?」
崖のギリギリの所で、スキルを発動する。
「兄ちゃん?」
今回は、魔法をしっかりと組み上げる。
足物に木と石で踏み台を作る。
(よし!)
「アル。見て居ろ!」
詠唱を口に出すのは卒業した病気が再発しそうなので、しっかりと詠唱はしない。
でも、大丈夫だ。
崖に石の階段を突きさす。重さは、100キロくらいは耐えられるだろう。祖霊ジュだと、使う力が増えてしまいそうだ。
思い通りにプログラムが発動すると嬉しくなる。
放出系は、テストが難しいから、使ってきていないけど、こういう単発の魔法だと一発勝負でもうまくできる。
ふぅ・・・。
石で、階段もどきを作って、木の枝で石を覆うようにする。滑り止めだ。あとは、石同士を木で括るようにすれば万が一の時に対応ができる。
「おぉぉ!兄ちゃん!階段ができた!」
「簡易的な物だけど、何もないよりはいいだろう?」
「うん。行こう!」
アルバンが木に縄を括り付けてくれたので、縄と併用して崖を降りていく、階段も無事に自らの責務をはたしてくれた。落下しない状態で、崖に張り付いている。
縄を外して、アルバンに合図をすると、器用に縄を伝って降りて来る。
「兄ちゃん。階段があると便利だね」
必要だったのか疑問なくらいだが、アルバンが”楽”になったと言っているのを受け入れよう。
二人とエイダでダンジョンに降り立った。
ウーレンフートのダンジョンとは雰囲気が違う。
『マスター』
「どうした?」
『このダンジョンは、生きています』
「生きている?」
『はい。魔物を生み出します。注意してください』
「わかった。アル。聞こえていたな」
アルバンを見ると頷いている。
両手に武器を持っている。エイダは俺の肩(首?)に捕まって移動する。アルバンが前衛を行い。俺が、後衛から援護を行う。エイダは、情報解析や罠の発見を主に行う。カルラが居れば、もう少し違った方法が考えられるだろうけど、居ないのだからしょうがない。
「兄ちゃん!」
「うーん。低層と同じか?」
「え?あっ。ウーレンフートと同じ」
「よし、一気に駆け抜けよう。エイダ。罠の気配を探ってくれ」
『了』
俺も前線に出る。魔物が居ない時には、エイダは俺が背負っている。
魔物が出てきたら、俺とアルバンで瞬殺する。
5階層で、ダンジョンの雰囲気が変わる。
「草原か?珍しいな」
「兄ちゃん。魔物が居ないよ?」
「居ない?」
『マスター。このフロアーには、魔物は存在しないようです』
「セーフエリアってことか?それとも?」
『わかりません』
「少しだけ、休んでから、下に向かおう」
「うん」
草原に腰を降ろす。
ダンジョンの中とは思えない。快適と言える。
アルバンは、寝息を立て始める。
”寝る”能力は、プログラマには必須の技能だと思っていた。アルバンにもその資質があるようだ。疲れを取る意味もあるが、情報の整理には”睡眠”は必須だ。いろいろ考えて、いろいろ試して、それでもダメなら、入力されたデータを整理するのが一番だ。その為にも、”睡眠”を取って、頭の中に入っている情報を整理しないと、無駄なことを連続でやることになってしまう。
そのために、”睡眠”は必要なことだ。しっかりとした技能だと思える。すぐに寝られて、すぐに起きる。できたら、決めた時間通りに起きられるようになれば、”技能睡眠”のレベルが上がったことになる。
何時に寝ても、起きなければならない時間を想定していれば、目が覚めた。
アラームも必要なかった。時間の確認と、寝過ごし防止でアラームは使っていたが、アラームが鳴る寸前で起きるように身体がなってしまった。
あとは、寝る場所だ。
こんな草原なら、気持ちよく寝られるのだろう・・・。しかし、実際には、ファンの音が鳴り響くサーバルームや、パイプ椅子しか置いていない場所で睡眠を取るのは慣れるまで苦痛だ。それができるようになって、キャスター付きの椅子とパイプ椅子で爆睡できるようになる。
『マスター。お休みください』
「エイダか?そうだな。1時間で起きる」
『わかりました』
エイダに起きる時間を告げてから、意識を手放した。
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