異世界でもプログラム

北きつね

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第五章 共和国

第十二話 増援

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 朝になって、シャープが朝食の用意を始めている。
 落ち着く為に、飲み物だけを頼んだ。朝には、コーヒーを飲んでいたが、紅茶を飲むのが多くなった。

 紅茶を飲んでいると、アルバンが部屋に入ってきた。

「兄ちゃん!おはよう!」

 アルバンの声が頭に響く。

「もうすぐ、朝食だ。アルも食べるだろう?」

「うん!でも、兄ちゃん!おいらも、エイダたちと戦いたかった」

 アルバンの分の紅茶が置かれる。朝食まで、ここで待っていて欲しいという意味なのだろう。
 カルラもだけど、アルバンは探索や御者以外の能力が欠如しているのか?食事には関わらせないという強い意思を感じる。

「夜だったし、アルは夜目が効かないだろう?」

「そうだけど・・・」

 結局、昨夜は、オーガに率いられた魔物の集団と、俺たちを監視していた者たちが村を抜け出した以外の進展はなかった。

「旦那様」

「クォート。どうしたらいいと思う?」

 進むか、留まるか?
 それとも、問題を解決した方がいいのか?

 いろいろなオプションが考えられるが、どれも決定打にかける。

「そのことなのですが、パスカルより状況分析が届きました」

 疑似的に組み込んだ、機械学習がうまく作動しているのだろう。膨大なデータの解析は、パスカルに担当させて正解だ。
 戦闘データだけではなく、クォートやシャープが見聞きした内容をモニタリングさせていた。他にも、エイダやユニコーンやバイコーンの状況もモニタリング対象にしていた。一人一人のデータでは些細なことでも、見える角度が違う情報を突合させれば、違った結果を導き出すだろうと思っていた。
 ダンジョンや、ウーレンフートにいる者たちの情報もモニタリング対象になっている。パスカルから申請が来て、許可をだした件が意味を持ち始めている。ダンジョン内の管理運営以外にも、ウーレンフートの各所にヒューマノイドタイプの情報収集端末?を配置している。

「それで?」

「はい。旦那様たちを監視していた者たちが、オーガを使役または操っていた可能性が出てきました」

 俺も、それは考えたが、監視していた奴らに、オーガを操れるような者は居なかったと思う。それに、盗賊まがいの行為を繰り返すよりは、オーガの使役ができるのなら、もっと違うことに使えるだろう。
 可能性としては考慮していたが、かなり低く見積もっていた。

「そうか・・・」

「旦那様。パスカルが一つの可能性を伝えてきました」

「可能性?」

「はい。監視をしていた者たちには、オーガを討伐できるだけの力はありません」

 そうだ。
 俺が可能性を低く見積もっていたのも、どうやってオーガを使役したのか解らなかったからだ。オーガを討伐できるだけの者が居れば、迷宮を探索したほうが稼げる。オーガ程度では、攻略は無理だとしても、かなり裕福な生活が送れる。

「そうだな」

「それで、旦那様。彼らが、アイテムを利用した可能性を、パスカルが算出しました」

「アイテム?オーガを使役するほど、強力な?」

「はい。そして、そのアイテムの出所の一つに、帝国を上げています」

 持っていた、カップにひびが入るのが解る。
 手に、暖かい・・・。そう、人の血と同じような熱さを持った液体が流れて来る。

「旦那様!」

「大丈夫だ。もう、大丈夫だ。それで?」

 俺は、大丈夫だ。クラーラに繋がる一本の糸?なのか?クォートが慌てて、カップを取り上げて、俺の手を治療する。

「はい。旦那様。パスカルから、アルトワ町で待機して欲しいと請願が来ております」

「請願?待機?」

「はい」

 クォートの説明で納得した。
 ウーレンフートに残してきたホームから、救援物資を送らせる。これは、向こうに残してきたマニュアルで対応が可能だ。誰が率いて来るのか解らないのが唯一の不安要素だが、問題はないと思いたい。
 実際には、補給物資というのは建前で”アルトワ町”への救援だ。シャープが見て回った所、栄養が行き届いていない者だけではなく、怪我で苦しんでいる者も多い。それらを治療する。依頼された内容ではないが、アルトワ町を、補給基地化する。

 そして、本来の目的は、パスカルに情報伝達が可能な端末を増やすことだ。
 ヒューマノイドタイプの増産を行う。魔物の姿ではなく、動物の姿や、小型化した昆虫の姿をしている者たちを運んでくる。馬車の情報端末の強化を行う。同時に、魔力の補給が行える仕組みを構築する。

 帝国の奴らの影が見えた事で、慎重に行動しなければならない。情報の収集も、今まで以上に行う必要が出てきている。

 奴らが入り込んでいる可能性があるのなら、情報は多い方がいい。そして、奴らが準備に使った時間の分だけ、俺たちは遅れてしまっている。焦ってもしょうがない時間だ。それなら、これから挽回できるように準備をした方がいいだろう。

「わかった。許可する」

「ありがとうございます」

「到着予定は?」

「2週間後です。急げば、もう少しだけ早まります」

「無理はしなくていい」

「かしこまりました」

 クォートが連絡の為に、馬車に向かうのと同時に、シャープが朝食を持ってきた。

 あとは、町に滞在する理由を作れば問題はなさそうだ。

 朝食を食べて、部屋でまったりと過ごしていた。
 クォートに頼んで、端末を持ってきてもらって、魔法の改造を行う。

 アルバンは、町の周りを見て回りたいらしいので、エイダを連れて行くことと、ユニコーンを連れていくことを条件に許可を出した。カルラは、バイコーンと一緒に少しだけ遠くまで探索に出かけた。両名とも、本日中には戻ってくるように命令している。

 クォートは、馬車の見張りを行っている。
 馬車は機密な情報が詰まっているが、本当に秘密にしなければならない情報は、俺が持ち歩いているから大丈夫なのだが、馬車の見張りが居ないのは不自然だと言われて、クォートに頼んでいる。

 シャープは、俺の後ろで控えている。

「兄ちゃん!」

「アル?何か見つかったのか?」

「うん!多分、できたばかりだと思うけど、ダンジョンが有った!」

「場所は?」

「うーん。エイダが記憶している」

『マスター。端末に情報を表示します』

 エイダが、端末に情報を転送した。
 地図の作成は中途半端だな。アルバンが辿った場所が表示されているのか?地図の作成も急務だな。増援が来てからでもいいか・・・。

「なぁアル。このダンジョンは、未発見だよな?」

「うん。村長や村の人も知らないと思う」

「アル。町長な。村じゃなくて、町だからな」

「あっそうだった。でも、秘匿している雰囲気はなかったし、未発見じゃないかな?」

「わかった。そん・・・。町長に報告して、特権を主張しよう」

「特権?」

「ん?アルは知らないのか?未発見だったダンジョンを発見した場合には、発見者が2週間~1か月程度の占有が認められる」

「へぇ。占有して、探索を行うの?」

「そうだ。増援が来るまで時間つぶしになるだろう?」

「うん!」

「シャープ。町長に報告を、クォートも話を聞いていると思うから、連れて行って、交渉してくれ、攻略を目指すのか?それとも、資源化したいのか、聞いてきてくれ」

「かしこまりました」

「アルとエイダは、馬車の護衛を頼む」

「うん!」『かしこまりました』

 シャープが部屋から出ていく、アルバンがエイダを抱きしめて馬車が止めてある場所に向かう。

 面白くなってきた。
 ダンジョンは久しぶりだ。できれば、攻略して潰してしまいたい。この辺りに、多くの人目を集めるのは得策ではない。俺の、俺たちの補給基地化を考えれば、人目が少ない方がいい。繁栄ではなく、現状よりも少しだけいい生活がおくれて、補給を目的とした物資の集積場兼制作場所になるのがベストだ。

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